2024年9月、浅草に日本初の「食品サンプル製作体験カフェ」がオープンしました。
開店から間もないにもかかわらず、Googleマップには国内外から高評価の口コミが多く集まっています。
食品サンプル製作体験カフェとは一体どんな場所なのか、どういった点が評価されているのか、訪日ラボは実際に店舗を訪れ、取材を行いました。
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「食品サンプル製作体験カフェ」ってどんな場所?編集部が体験してみた
「食品サンプル製作体験カフェ」は、東京・浅草駅から徒歩5分の場所に位置します。
作れる食品サンプルは、オムライスとミートソーススパゲティ(取材当時*)。今回編集部は、オムライスを製作しました。
*12月7日より、新メニューとしてクレープとジェリーパフェが追加されました。
オムレツの部分はすでに完成されており、編集部が作るのはケチャップライスから。
プラスチックで作られた玉ねぎ、にんじん、鶏肉、米、ケチャップの量を計り、それらを混ぜます。その後、オムレツにライスを盛り付け、上からケチャップで好きな模様を描いたら、あとはオーブンで焼き上がるのを待ちます。
焼き時間を含め、完成までは50分ほどかかりました。
出来上がった食品サンプルは、プラスチックとは思えないほど本物そっくり。仕上がりにこだわり、ケチャップの色味など、何度も修正を重ねているといいます。
編集部が印象的だったのは、スタッフの方が最後まで付きっきりで教えてくれたこと。そのため、初心者でも上手に作ることができました。
また、作業のなかで会話が途切れる時間はほぼ無く、和気あいあいとした時間を過ごせました。
今回は食事なしのコースでしたが、食事がつく場合は、同じ見た目の本物のオムライスを食べることができるそうです。
ただサンプルを作るだけでなく、実際の食べものと見比べられることが他にはない体験となり、観光客から非常に好評だといいます。
始まりは「食品サンプルと同じ料理が出てきたら面白い」
訪日ラボは、株式会社食品サンプル製作体験カフェ代表の齊藤氏、現場責任者の竹谷氏、Web担当の荒木氏にお話を伺いました。
相撲体験や寿司作りといったインバウンド向けの体験施設が流行る中で、それらとは違う、日本ならではの文化でできないかと考えた、代表の齊藤氏。
そこで目をつけたのが、食品サンプルでした。きっかけは、「作った食品サンプルと全く同じ料理を出すカフェがあったら面白いのでは」という単純な好奇心です。
しかし創業メンバーに食品サンプルの知見がある人はおらず、「どこで作ったらどういったものが出来上がるのか」から調査を始め、様々な会社に問い合わせしたといいます。
知識がないからこそ事前に深い調査ができたと、現場責任者の竹谷氏は話します。
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食品サンプルを見たことがないインバウンドも来店
ーーお店には、どういった方が訪れるのでしょうか。
具体的なターゲットは、食品サンプル好きの日本人と、訪日客です。国内には食品サンプルを作りたいという層が一定いるので、年代によらず、一度は体験してみたいという方を広く見据えています。
オープンしてまだ2ヶ月ほどしか経っていないため、8割ほどは日本人ですが、徐々にインバウンドも増えています。そもそも食品サンプルを見たことがないような、欧米からのお客さまが多いですね。
また、オープン当初は家族連れを想定しましたが、国内外にかかわらず、大人同士でいらっしゃる方も多いです。そのため、かなり広い層を押さえられているのではないかと思っています。
ーーインバウンドの方は、どういった経路でお店を認知されているのでしょうか。
浅草という土地柄もあると思いますが、訪日客の方は、浅草でどんな体験ができるのか、事前に調べています。
そのなかで、体験内容として珍しく、かつ作った食品サンプルと同じ料理を食べられるという点で、このカフェに惹かれる方が多いのではないかと思います。
そこからGoogleマップなどの口コミを調べて、来店を決めているのではないでしょうか。
英語は話せなくてもOK コミュニケーションを取る姿勢を大切に
ーー先ほど、食品サンプルを見たことがない方が来店されるという話がありましたが、そうすると、体験でつまずくことも多いのではないでしょうか。
訪日客の方は、食品サンプルがどういうものかイメージできない状態からスタートするため、当然扱いに手こずることが多いです。
その点を最初から想定した上で、説明書きやジェスチャーを交えながら、しっかりと横に付き添ってレクチャーします。そして、最終的にはご自身で完成まで作っていただくようにしています。
ーー編集部が体験した時もそうでしたが、スタッフの方が完成まで付きっきりで説明されるんですね。
基本的にお店では、一組につきスタッフ一人が対応できる形で配置しています。そのため、お客さまに「あとは自由に作ってね」と任せる状態は起きないようにしています。
ーースタッフの方に教育する時に、大切にされていることはありますか。
お客さまに体験を楽しんでもらうためにはコミュニケーションが重要だと考えていますが、英語が話せないスタッフも多くいます。
必ず伝えるのは、英語が話せなくてもまったく問題ないということ。話そうとする意思があれば相手に伝わると思うので、誠実な姿勢を重要視しています。
もちろん、英訳したメニューを作成して用意するなど、基本的な対応も行っています。
ーーコミュニケーションに関して、具体的にどういったことを意識されているのでしょうか。
常に何かしゃべり続けるようにしています。体験中や食事を待たれてる時、飲み物を出す時などに、何かしら会話を交えるということです。
簡単な内容で良いから、どこから来て、どういった経路でお店を見つけてくれたのか、どんな体験がしたくて来店したのか、そういったヒアリングを行うことが、お店として一番重要な取り組みだと位置付けています。
先ほど、「インバウンドがどういった経路で認知しているのか」という話がありましたが、そういったことも会話の中で聞き出しています。
ーーオープンから間もないなか、お店にはたくさんの口コミが寄せられていますが、印象的だったものはありますか。
手順の説明や作業の進行などで、スタッフの対応が良かったと喜んでくださる方が多い印象です。丁寧なコミュニケーションを心がけているものの、実際に口コミに書いていただけると、心に残りますね。
言語が通じなくても、しっかりと相手に向き合う姿勢が響いてるのかなと思います。
ーーその他に、訪日客から好評だった点はありますか?
作った食品サンプルを持ち帰れることです。自分が作った日本ならではの文化を、お土産として自国に持って帰れるのが、一番喜ばれる点かと思います。
作業手順まで公開 ホームページでしっかりと魅力を伝える
ーー先ほど、訪日客は事前にWebで調べてくるというお話がありましたが、お店の公式サイトで工夫していることはありますか?
お店で作れる食品サンプルと、サンプルを作る手順をきちんと載せるようにしています。
食品サンプルは、ロウとプラスチック、2種類の作り方があるんですが、現在は、よりプロらしく作れるプラスチックが主流になっています。
ただ、世の中でよく体験される食品サンプルは、いわゆるレタスや天ぷらといった、手軽なロウのタイプが多いです。
そこで、他とは一味違った体験ができることを示すために、食品サンプルの製作手順を掲載して、「このカフェでは、よりプロっぽいプラスチックの素材で作れますよ」ということをアピールしています。
サイト上で詳細を書いておらず、来店して初めて何をするかがわかる施設も多いのですが、「食品サンプル製作体験カフェ」では、あらかじめ体験内容をイメージしてもらうことで、お客さまに興味を持っていただきたいと思っています。
一度だけでなく、何回も来たくなる店づくりが目標
ーーお店として、これから行っていきたいことはありますか?
何より、メニューを増やすことですね。
今はオムライスとミートソーススパゲティの2種類のみですが、12月中旬頃にはスイーツメニューを追加予定*です。これまではお昼や夕方の来店が多かったのですが、カフェ利用など、それ以外の時間にもきていただけたらと思います。
*12月7日より、新メニューとしてクレープとジェリーパフェが追加されました。
もちろんそれ以降もメニューも増やして、一度だけでなく何回も体験に来て欲しいと考えています。今回オムライスを作ったから、次回はデザートを作りたいな、とか。来店するたびに違うものが作れる状態を継続するのが目標です。
日本人のお客さまのなかには、公式サイトの情報を追いかけてくれていて、「メニューが増えるのはいつ頃ですか?」と質問される方もいらっしゃいます。インバウンドのお客さまでも、「去年行って良かったから今年も行こう」と思った時に、選べるメニューが増えていたほうが楽しいですよね。
あとはすでに取り組んでいることですが、店外のショーケースに、カフェで体験できる食品サンプルを飾っています。今までは何も置いていなかったため、お店の前を通っても、いったい何ができる場所なのかわからなかったんですよね。
ここは浅草駅から近く周辺にホテルもたくさんあるので、訪日客の方が、通りすがりに中を覗くこともあります。だからこそ、「予約していないから入らない」というのはもったいないと思っています。
もっと気軽に入れるお店だと知ってもらうために、色々なことに取り組んでいきたいです。
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