日本政府観光局(JNTO)バンコク事務所が主催する訪日旅行博 「第16回FITフェア」が11月8日〜10日、タイの首都バンコクで開催されました。
本イベントは2024年度のビジットジャパン事業の一環で、バンコク中心部にあるショッピングセンター「サイアム・パラゴン」で開催。日本から自治体や観光関連団体、企業が出店するとともに、航空会社やタイ現地の旅行会社も訪日旅行商品を販売しました。
参加団体は日本側が67団体、タイ側が41団体の計108団体。訪日意欲の高いタイ人旅行者に向け、日本の魅力をアピールしました。
訪日ラボは、日本ブースに出展した9団体を取材。会場の雰囲気と合わせて、各出展団体の様子をお届けします。
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訪日旅行博 「FITフェア」とは
FITフェア(Visit Japan FIT Fair)とは、JNTOが主催するタイの大型旅行博です。毎年、タイの首都バンコクで開催され、一般人向けに訪日観光に特化した旅行商品が並びます。FITフェアのターゲットは、その名の通り、FIT(Foreign Independent Tour = 個人旅行)層です。会期中はパッケージツアーや団体旅行を利用しないタイ人訪日客に向けて、国内のさまざまな観光地・観光商品をPRします。
FITフェアとTITFの違い
タイで開催される大規模旅行博としてはTITF(タイ国際旅行博)も有名です。FITフェアとTITFの違いは、主に扱うエリア。FITフェアは訪日旅行のみを対象としたイベントですが、TITFでは海外旅行とタイ国内旅行の両方が対象になり、海外旅行に関しては日本以外にも世界各国から旅行事業者が出展します。
また、FITフェアは毎年11月に開催されるため、フェア参加者の訪日時期は12月〜2月の年末年始頃がピークです。一方でTITFは毎年1月または2月頃に開催されるため、訪日時期は春頃がピークとなるという違いもあります。
タイ旅行博「FITフェア」日本ブースに出展した9団体を取材
ではここから、「FITフェア」日本ブースに出展した9団体に取材した内容をお届けします。
1. 西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)
お話を伺った方:
- 西日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部 グループインバウンド推進室担当室長 宇野謙二氏
(出展した目的は?)
西日本エリアおよびJRの認知度向上です。西日本の観光地はまだタイではあまり知られていないので、旅行博を機に知っていただけたらと考えています。
(売り出している主なコンテンツは?)
西日本エリアの観光地で使えるお得な観光チケット(「Have Fun in ~」シリーズ、Have Fun in Okayama、Have Fun in Hiroshima、 Have Fun in Yamaguchiなど)とJR西日本のレールパスをセットにした商品を販売しています。例えば、関西ワイドエリアパスは、指定区間内の新幹線(山陽新幹線)、特急列車、JR西日本の在来線が5日間乗り放題となるパスです。鉄道は移動手段でしかないので、各地域の方々と連携して旅行商材を作り、盛り上げるという取り組みを実施しています。
(会場の盛り上がりや来場者の反応は?)
全体的な盛り上がりは、コロナ禍前の2019年を上回っていると感じます。
来場者からの問い合わせが多いのは、京都の天橋立、広島、岐阜県の高山で、関西ワイドエリアパスや関西広島エリアパスの人気も高いですね。また、福岡から入国する方も多いようで、北九州を観光した後に広島、大阪を巡って、関空から帰国するルートも注目度が高いと感じます。引き続き旅行博などを中心に地方への誘客を行っていきたいです。
2. 東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)
お話を伺った方:
- JR East Business Development SEA Pte.Ltd. ゼネラルマネージャー 鈴木慶氏
- 東日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部 くらしづくり・地方創生部門 観光・地域活性化ユニット(インバウンド)ガファーリイマ氏
- 仙台ターミナルビル株式会社 日本一楽しいフルーツパーク実現PT ホテル事業本部 事業企画室 海外戦略グループ 菅原禎氏
- 同社 ショッピングセンター事業本部 エスパル福島 ショップパートナーG チーフ 半澤亜耶氏
(出展した目的は?)
タイ人旅行者の方々に「JR EAST PASS」をはじめとした東日本エリアの鉄道のパスや、弊社が運営する海外日本ファン向けの会員サービス「JAPAN RAIL CLUB*」のことをもっと知ってもらいたいと思い出展しました。
* 海外ファン向けにJR東日本が提供する、ヒト・モノ・コトを通じたコミュニケーションのプラットフォーム。毎月テーマに沿って編集された「おみやげボックス定期便」が届くとともに、各種のイベントや特別なツアーにも参加できる。 Omiyage Snack Box Subscription - Taste of Japan Monthly! (japanrailclub.com)
(会場の盛り上がりや来場者の反応は?)
今年は去年よりも来場者が多いですね。用意した配布物が足りなくなったくらいです。
旅行者の方々の反応としては、長野の上高地や、富山から長野をつなぐ立山黒部アルペンルートの人気が高いです。新潟県のガーラ湯沢スキー場についてのお問い合わせも多くあり、行き方や鉄道パスについても多くの質問をいただきました。
(今後の取り組みは?)
JNTOと足並みを揃えて取り組みを進めていきたいと思います。さらに、旅ナカでのシームレスな移動、インバウンドフレンドリーな旅行サービスの提供とともに、東北をはじめとした東日本の地域の皆さまとの連携により、JR東日本グループで地方誘客に取り組んでいます。
3. 西武鉄道株式会社
お話を伺った方:
- 西武鉄道株式会社 運輸部 スマイル&スマイル室 インバウンド担当 矢島綾乃氏
- 同社 運輸部 スマイル&スマイル室 インバウンド担当 森井なつみ氏
(出展した目的は?)
久しぶりのFITフェアで、現地の盛り上がりを確認したかったというのが一番の目的です。タイの方々と直接コミュニケーションをとり、感覚を掴めたらと思います。
(売り出している主なコンテンツは?)
冬の訪日シーズンに合わせて、あしがくぼの氷柱(秩父地域)、いちご狩り、川越のコンテンツをPRしながら、西武鉄道全線(多摩川線を除く)の1日乗り放題乗車券「SEIBU 1Day Pass」などを訴求しています。旅行者の反応を見ると、SEIBU 1Day Passに興味を持ってもらえていると感じますし、川越やいちご狩りの反応もいいですね。飯能市のムーミンバレーパークに行きたいという人も一定数いました。
(会場の盛り上がりは?)
昨年のバンコク日本博にも参加したのですが、そちらは旅行以外も含めさまざまな出展があったので、FITフェアよりも来場者数自体は多かったです。一方、FITフェアは訪日旅行に特化しており、日本に行く予定のある人や訪日旅行意欲の高い人たちが集まっていると感じます。
(今後の取り組みは?)
タイ人訪日旅行のピークシーズンは4月・10月とわかりやすいので、そこに焦点を当てて取り組みを進める予定です。また、エージェントやOTAと連携してパスを販売し、ワンストップでプロモーションをしていきたいと思います。
4. 株式会社阪急阪神百貨店
お話を伺った方:
- 株式会社阪急阪神百貨店 海外顧客ビジネスグループ 海外顧客事業部 海外顧客販売推進部 マネージャー 海外プロモーション担当 反田由美氏
- 同社 海外顧客ビジネスグループ 海外顧客化推進部 インバウンド企画部 アシスタントマネージャー OMO企画担当 太田祐梨奈氏
- 同社 海外顧客ビジネスグループ 海外顧客化事業部 海外顧客販売推進部 海外プロモーション担当 山野晴香氏
(出展した目的は?)
タイの訪日客が増えてきていることから、さらなる認知度の向上と現地の生の声を直接お聞きできる有効な機会と考え出展しました。
(売り出している主なコンテンツは?)
阪急百貨店うめだ本店の立地やサービスのPRを中心に阪急阪神百貨店の各店を紹介するとともに、今回特に力を入れているのはデパ地下グルメの商品紹介で、阪急阪神のオリジナルコラボ商品や、日本らしい和菓子を中心にピックアップしてお土産選びにも活用していただけるようアピールしています。
(会場の盛り上がりや来場者の反応は?)
日本への訪日意欲が高い方が多く、手応えを感じました。ニーズとしてはクーポンや免税の話が多いですね。クーポンや免税の条件など、使える店舗をしっかり確認され、大阪での買い物の計画をされていることがわかり来店意欲の高さを実感しています。
(今後の取り組みは?)
タイでは大阪、梅田の認知度が東南アジアの他の国よりも高く、誘致にも伸びしろがあると感じています。継続的な広告配信などを次年度以降も実施していきたいです。
5. プレミアム・アウトレット(三菱地所・サイモン株式会社)
お話を伺った方:
- 三菱地所・サイモン株式会社 マーケティング部長 岡田博義氏
- 同社 マーケティング部 李珍鳳氏
(出展した目的は?)
東南アジアの中では特にタイからの観光客が多いので、来店客をもっと増やしていきたいと考え、認知拡大だけでなく誘客促進も目的に参加しました。
(売り出している主なコンテンツは?)
もともとタイからの来訪者が多い九州(鳥栖プレミアム・アウトレット)を重点的に訴求しつつ、他のエリアの施設もPRしています。九州以外だと御殿場やりんくう、神戸三田の外国人旅行者が多く、特に御殿場は知名度が高い施設です。河口湖に行くついでに来る方も多く、行き方について質問される方もいらっしゃいました。
(会場の盛り上がりは?)
今年は写真を撮ることが好きなタイ人の趣向に合わせて、インフルエンサーと写真を撮って自身のSNSにアップしてもらうブースイベントを行いました。他のマーケットと違ってタイの方は写真に抵抗がなく、反応がよかったです。
(今後の取り組みは?)
インセンティブツアー(企業の研修などを目的とした旅行)を増やしたいですね。タイもFITにシフトしてきたので、今回の旅行博のような機会を活かしてやっていきたいです。
6. 沖縄県
お話を伺った方:
- 一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー 海外・MICE事業部 海外プロモーション課 マネージャー 伊藤敦美氏
- 同 海外・MICE事業部 海外プロモーション課 コーディネーター 富永祐士氏
(出展した目的は?)
沖縄の認知度向上と直行便の誘致、そして「観光客の興味関心はどこにあるのか」「どのような方が何をしに沖縄に行くのか」などをタイ現地でヒアリングがしたいと思い出展しました。
(売り出している主なコンテンツは?)
今まで来ていたタイ人の方は、“映えスポット”やタイにはない食事コンテンツに関するニーズが高そうだったので、そこを重点的に推し出しています。
(来場者の反応は?)
2024年4月にバンコクー沖縄間の直行便が就航したことにより、沖縄の認知度は高くなっているようです。
昨年出展した際は、沖縄がどこにあるかさえ知らない方も多く、旅行会社も沖縄の商品をほとんど取り扱っていませんでした。しかし今年は、沖縄に旅行に行く意欲のある方や、沖縄に関する商品を取り扱う旅行社も増えたと感じます。
2025年にオープンするテーマパーク「ジャングリア」をすでにご存知の方もいますね。
(今後の取り組みは?)
引き続き航空会社と連携して、リピーター獲得を狙いたいです。また沖縄の自然や文化を目的に旅行される方をぜひ沖縄にお招きしたいと思っています。そのために、来年2025年のTITFにも参加予定です。
7. 新潟県
お話を伺った方:
- 新潟県 観光文化スポーツ部 国際観光推進課 海外誘客第2グループ 主任 久志直人氏
- 新潟市 観光・国際交流部 観光推進課 係長 村山忍氏
- 一般社団法人湯沢町観光まちづくり機構 事業戦略部門 課長 大口尚親氏
(出展した目的は?)
新潟の認知度を上げたいというのが一番の目的です。今回のイベントは11月開催なので冬と来春のPRができればと思っていますが、県全体としては通年での誘客も促進したい考えです。東京から70分で来れる点や、冬のスキーだけでなく春には美しい桜が楽しめる面もアピールできればと思っています。
(売り出している主なコンテンツは?)
日本三大夜桜と言われている上越妙高の高田城の桜を特に推しています。4月にインフルエンサーを招聘して取材をしてもらい、現在はFIT層の方にもちらほらと来ていただいている状況です。妙高では例年、ゴールデンウィークまで雪が残っているため、春は桜と雪を同時に楽しめます。上越、湯沢から新潟までエリアを跨いで旅行に来てもらいたいですね。
(会場の盛り上がりや来場者の反応は?)
今年はブースの位置が奥だったので少し不安だったのですが、結果としては順調です。訪日旅行の人気は衰えていないと感じますし、来年もぜひ出展したいと思っています。
ガーラ湯沢スキー場の知名度は高いですが、最近は雪遊びにプラスして温泉に泊まりたいという声が多くなっています。湯沢にも温泉はたくさんありますし、県内には月岡温泉もある。タイ人観光客の間でも新潟を知っている人もいれば知らない人もいるので、認知度向上にしっかり努めていきたいですね。
(今後の取り組みは?)
タイの方はSNSで情報収集をしているので活用していますが、日本旅行について発信できるインフルエンサーの方は限られているので別のやり方を模索中です。
例えばCtoCの取り組みとして、SNSで特定のハッシュタグをつけて発信してくれた方に対するキャンペーン施策なども行っています。地道な取り組みとなりますが、どういった施策が成功するのかテストしていきたいです。
8. 札幌市
お話を伺った方:
- 札幌市経済観光局観光地域づくり担当部 観光誘致・受入担当課誘致担当係 吉村健氏
(出展した目的は?)
本フェアには例年タイの訪日意欲の高い方々が来場されると認識しており、そのような方々を中心に札幌の観光情報を発信すること。また併せて、タイからの観光客が北海道、とりわけ札幌に何を求めているのかを現地で直接ヒアリングすることが出展の目的です。
(売り出している主なコンテンツは?)
札幌初訪問の方には、さっぽろ雪まつりや市内でスキー・雪遊びができる施設など雪に関するコンテンツをはじめとして、イルミネーション、夜景、グルメ等、札幌の代表的なコンテンツをアピールしています。リピーターの方には、春の桜や夏のラベンダー、秋の紅葉といった冬以外の観光コンテンツなども訴求しています。
(来場者の反応は?)
私自身初めて本フェアに参加したのですが、やはり訪日意欲の高い方がとても多いことを肌で感じました。また、過去に札幌訪問経験のある方が、ブースへ「次に予定している札幌訪問の時期にどのようなものが楽しめるのか」と質問にいらっしゃることも度々あり、札幌へのリピーターの多さも感じました。
(今後の取り組みは?)
タイは札幌へ来られたことのある方も多くいらっしゃるので、今後は、今人気を集めている冬以外の季節のコンテンツや、まだあまり認知されていないコンテンツなどの情報を発信していきたいと考えています。また、こうしたフェアへの出展やSNSでの発信等も継続していければなと考えています。
9. 中央日本総合観光機構
お話を伺った方:
- 一般社団法人中央日本総合観光機構 マーケティング部 担当部長 古川伸次氏
(出展した目的は?)
当機構では、富山・石川・福井・長野・岐阜・静岡・愛知・三重・滋賀の9県における観光事業の中枢機関で、これらの広域連携を特に重要視しています。今回、台湾や香港、シンガポールなど別の国での出展案があった中でタイに決めたのも、連携する各県が単独で出展するよりも効果が見込まれると判断頂き、戦略的にも予算的にも実施可能だったことが大きな理由です。
(売り出している主なコンテンツは?)
食など各県で推しているコンテンツを中心に売り出しています。カニや牛などの名産品は複数の県にまたがることが多いため、広域的にまとめて紹介する形で対応しています。また、名鉄やJR東海、中部国際空港の方も今回ブースに参加いただいているので、外国人旅行者向けの周遊きっぷ「昇龍道フリーバスきっぷ」「JR-Central Tourist Pass」など、交通ルートを含めたプロモーションも積極的に展開しています。
(会場の盛り上がりや来場者の反応は?)
非常に細かいところまで聞かれますね。「長野県の松本に行くが、奥飛騨のロープウェイ(新穂高ロープウェイ)までは直接行けるのか?」「始発の時間は?◯◯(駅名)で乗り換えて行けるか?」など、思っていた以上に細部までヒアリングされる方もいらっしゃいました。
特に反応が良かったのは、白川郷や立山黒部アルペンルートなどです。ドラえもんの原作者である藤子・F・不二雄氏の出身地である富山県高岡市についての問い合わせもありました。
(今後の取り組みは?)
継続することが力になると思うので、来年も出展してPRを行っていきたいですね。各自治体にはすでに打診を行い、検討中です。
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