「EXPO 2025 大阪・関西万博」まで1か月。2024年は訪日外客数、インバウンド消費額が共に過去最高を更新したところです。観光立国基本推進計画(第4次)3か年の最終年度となる2025年度を控え、日本政府観光局(JNTO)は、万博を契機としてどのような誘客施策を実施するのか。市場横断プロモーション部の藤内大輔部長に話を聞きました。

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万博を機に訪日する意欲の高い市場を特定し、海外プロモーションを展開
——まず、市場横断プロモーション部がどのような活動をしているのか、JNTOにおける役割についてお聞かせください。
藤内氏「JNTOはアジアや欧米豪など各市場の海外事務所を拠点として訪日プロモーションを行っていますが、市場横断プロモーション部は市場別でなく、テーマ別に誘客施策を実行する部署です。直近のマーケティング戦略3年間の主要テーマは3つで、高付加価値旅行者、アドベンチャー・トラベル、そして大阪・関西万博です」
——令和7年度の観光庁関連予算「戦略的な訪日プロモーションの実施」には、「大阪・関西万博開催を契機とした日本各地の魅力発信に向けて(中略)効果的なプロモーションに取り組む」と書いてあります。万博を契機に、どのような施策を行っているのでしょうか?
藤内氏「JNTOは内閣官房の博覧会推進本部事務局や公益社団法人2025年日本国際博覧会協会と連携して、具体的なアクション・プランを実行しています。万博を契機とした観光の全国への普及と、教育やスポーツ領域を含む観光交流の推進に取り組んでいます」
——「ラグビーワールドカップ2019」では、熱心なサポーターが自国チームの出場する開催都市を数週間にわたり周遊する様子が見られました。一方、「東京2020オリンピック・パラリンピック」は(結果的に無観客開催だったものの)当初は観戦客の集中を見込んで大会後の訪日需要喚起に期待するなど、国際イベントごとにそれぞれ訪日客の周遊行動やマーケティング戦略が違います。「万博を契機」に来る訪日客の属性や消費行動について、どのように想定していますか?
藤内氏「市場としては中国や台湾を中心としたアジア各市場、米国、イタリア、ドイツ、そして中東をメインに想定しています。これはオリンピック・パラリンピックの効果検証事業で調査を行った際、万博を機に訪日する意向が高かった市場で、さらにこのうち台湾以外は万博の開催実績がある国々です。周遊パターンは2つ想定していて、万博を目当てに来る層には大阪や関西外への周遊を促し、訪日タイミングがたまたま万博開催期間にかかる旅行者の場合は、万博への来場を促したいと考えています」

——今年度(2025年3月まで)は、その主要ターゲットに対してどのような訪日プロモーションを実施しましたか?
藤内氏「海外事務所の声によると現地旅行会社などの間ではまだまだ万博の認知が十分ではないことから、インセンティブ旅行誘致やインフルエンサー招請など、各海外事務所を通じて、以下のような施策を実施してきました」
- 中国:北京国際旅遊博覧会へ出展、Weibo及びWeChat投稿、インセンティブ旅行など旅行会社招請や商談会
- 台湾;高雄市旅行公会国際旅展や台北国際観光博覧会へ出展、Facebook投稿
- 韓国:日韓交流おまつりやトラベルショー出展、Facebook投稿
- 米国;Japan Showcase商談会開催、L.A & N.Y. Travel and Adventure Show旅行博およびAnime NYC出展
- ドイツ;大阪特設サイト、メディア招請、InstagramとYou Tubeの対談組、各SNS投稿
- イタリア;メディア招請、インフルエンサー招請、Facebook、Instagram投稿
- 中東;Arabian Travel Market 旅行博、Tourista EXPO出展、消費者向けイベントやセミナー
藤内氏「デジタル・マーケティングでは、万博の前売チケットが発売開始された2023年11月に万博特設ウェブサイトを開設。観光スポットやモデルコースを紹介するページやコンセプト動画などを制作しました。また『The New York Times』をはじめ海外メディア関係者の招請を、関西+瀬戸内、関西+北陸、沖縄の3コースで実施しました」
JNTO万博特設ページから、体験商品を販売する万博公式サイトにも連携
——「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」など、JNTOの重点テーマと関連した施策は実施していますか?
藤内氏「マーケティング戦略では、『万博のテーマと連動した日本各地のサステナブル・ツーリズムを発信することで地方誘客を促進』することを、キー・メッセージとして挙げています。関西のみならず北海道から沖縄まで、万博のメインテーマ『いのち輝く未来社会のデザイン』と関連するコンテンツをピックアップし、豊富な体験素材を提供していきたいと思っています。

万博を主催する公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会は、万博のテーマと親和性が高い体験商品を販売するウェブサイト『Expo 2025 Official Experiential Travel Guides』を2024年4月にオープンしました。こちらに掲載する体験商品の募集に対して、全国の事業者から900件を超える申請が集まっています。
この博覧会協会のサイトへ、JNTOの万博特設サイトからリンクして閲覧者を送客し、観光体験商品やツアーを予約できる導線を用意しています。JNTOが発信する万博テーマと関連した観光動画や記事を見て、興味を持ったらそのまま具体的な商品を探し、予約できるといった流れに期待しています」

万博開催地の関西圏のみならず、全国各地への観光周遊を促進していきたい
——万博の特設サイトに対するニーズを考えると、万博目的で訪問する観光客が関西圏で行動するための情報や商品が中心になるのでしょうか?
藤内氏「JNTOの特設ページでは、北海道から沖縄まで8地域で、観光体験を紹介するプロモーション動画を制作するなど、関西圏のみならず全国各地への周遊促進となるようなコンテンツを強化していきます」

——2025年度はいよいよ万博が開催されます。2025年4月からの誘客戦略では、どのような活動に注力しますか。
藤内氏「3か年の活動をまとめると、2023年は万博特設サイトを開設し、万博のテーマに沿ったコンテンツ紹介を行いました。2024年度はグローバル・メディアの招請と取材記事の掲載、ブロック毎のテーマ動画、観光地デジタルアート(NFTアート)の配布にもチャレンジしました。2025年度も各市場での旅行博出展などの現地プロモーション計画が多数決まっています。特設ウェブサイトでの情報発信とデジタル広告、NFTアート配布、インフルエンサーやメディアの招請といった、デジタルメディアを軸にしたプロモーションも引き続き行っていきます」

——4月以降の万博開催期間の誘客に向けて、現在の課題は何でしょうか?
藤内氏「海外の旅行会社からは、パビリオンの予約販売の確定情報がまだ十分に入ってこないと言われています。万博公式サイトに掲載する体験商品も、また関西に集中している現状があります」
——最後に、開催地だけでなく全国の自治体やDMO、観光事業者などに対するメッセージをお願いします。
藤内氏「お話しさせていただいた通り、万博を契機とした訪日プロモーションは、関西地域に限らず全国への周遊を促進するべく活動しています。全国の観光関係者のみなさんにも万博に関心を持っていただき、開催期間中に当地への誘客に向けてできること、特に万博公式サイトでの体験商品販売など、この機会を活かして取り組んでいただくなど、気運の醸成が進むとありがたいですね」
著者プロフィール:萩本 良秀
地方創生パートナーズネットワーク 事業支援ディレクター
民間企業や関東広域DMOなどインバウンド観光関連事業で、多言語ウェブサイトやInstagramなどSNSを活用したデジタル・マーケティング担当を歴任。全国通訳案内士(英語)として150名以上の外国人旅行者をガイド。観光庁「地域周遊・長期滞在促進のための専門家派遣」など観光庁事業の委員、自治体や観光団体のイベントでの講演、大学ではホスピタリティ科目の講師も務める。
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