オムニチャネル(Omni-Channel)とは、オンラインとオフラインのさまざまな販売チャネルを統合し、シームレスな顧客体験を提供する戦略です。
顧客は、どのチャネルを利用しても統一されたサービスや情報を得られるため、利便性が向上し、企業にとっても売上の最大化につながります。
インバウンド需要が高まっていますが、オムニチャネルを活用することで、旅マエ・旅ナカ・旅アトのすべてのフェーズで外国人観光客にリーチができるようになり、インバウンド対策としても有効です。
今回は、オムニチャネルの基本やメリット、導入時のポイントなどを解説します。
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「オムニチャネル」とは
まずは、オムニチャネルという概念について簡単に紹介します。
また、同じくマーケティング戦略で目にするマルチチャネルや、オムニチャネルとO2Oとの違いについても解説します。
オンライン、オフラインにかかわらず顧客と接点を作る戦略
オムニチャネルの「オムニ(Omni)」は「全て」、「チャネル(Channel)」は「経路」を意味します。
オムニチャネルとはすべての販売経路を統合し、顧客がどの方法を使ってもスムーズに購入できるようにするマーケティング戦略です。近年、多くの企業がこの仕組みを取り入れています。
たとえば、アパレルショップで欲しい色やサイズの服が店舗に在庫がない場合、オムニチャネルを導入していないと、店員が取り寄せ手続きを行い、顧客は数日から数週間待つことになります。
しかしオムニチャネルを活用すれば、その場でオンラインショップの在庫をチェックしたうえで、在庫があればすぐに自宅などへ配送手配が可能になります。
また、オンラインで注文した商品を実店舗で受け取ることもできるため、顧客は自身に合った方法でスムーズに買い物ができます。
このように、オムニチャネルは顧客にとって利便性を高める仕組みであり、企業にとっても機会損失を防ぎ、売上アップにつながるメリットがあります。
「マルチチャネル」「クロスチャネル」との違い
オムニチャネルに似た概念として、マルチチャネル(Multi Channel)があります。
マルチチャネルも、オンラインショップや実店舗など、複数の販売経路(チャネル)を持つ点ではオムニチャネルと共通しています。
しかし、マルチチャネルでは各チャネルが統合されていないため、顧客にはそれぞれのチャネルが独立した別のブランドやサービスのように見えます。
たとえばマルチチャネルの場合、ショッピングサイトと実店舗で別々に会員登録が必要になるため、氏名や住所などの情報をチャネルごとに入力しなければなりません。また、各チャネルで在庫を個別に管理する必要があるため、企業側の負担も大きくなります。
この問題を解決するために、クロスチャネル(Cross Channel)という仕組みがあります。
クロスチャネルでは、在庫管理や顧客情報をシステムで連携させ、チャネル間でデータを共有します。これにより、どのチャネルでも共通の在庫情報を参照できるため、在庫管理が最適化されます。
オムニチャネルでは、顧客の情報や購買履歴がすべてのチャネルで統一されているため、一人ひとりに最適な「一対一マーケティング」が可能になります。
たとえば、オンラインで閲覧した商品が実店舗でもすぐに確認できたり、過去の購入履歴をもとにしたおすすめ商品が提示されたりなど、よりパーソナライズされた顧客体験を提供できます。
O2Oとの違いは
O2Oとは、Online to Offlineの略称で、オンラインのサービスとオフラインの実店舗を連携させ、オンラインで獲得した顧客をオフラインに呼び込むことを意味します。
O2OではWebサービスやショッピングサイトにて会員登録した顧客に対し、メールマガジンや割引券を送ったりポイントを付与したりすることで実店舗へと導き、最終的には実店舗で消費をしてもらうのが目標です。
一方、オムニチャネルではオンラインから実店舗、実店舗からオンラインを相互に行き来できるため、顧客に最も合ったチャネルでのサービスを提供できます。
オムニチャネルが注目されている理由
オムニチャネルがここまで注目されるようになった理由に、スマートフォン普及により顧客と事業の接点が多様化したことがあります。
スマートフォン普及にともないインターネットサービスがより広い世代に浸透したことも理由のひとつです。
買い物といえば実店舗や電話や郵送を使った通販が主流でしたが、今では自社ECや、ECモールへの出店、SNSのショップ機能と、顧客の購入機会は多様化しています。
多くの企業がいずれかのサービス、あるいは複数のサービスを利用し、販売窓口を広げています。特に、消費者の購入機会が多い小売業界ではオムニチャネル化がすすんでいます。
オムニチャネルのメリット3つ
オムニチャネルを導入することで得られる効果について解説します。
在庫の無駄を減らせる
実店舗の在庫と自社ショッピングサイトなどの在庫を一本化することで、顧客の需要に合わせて商品が提供できます。
実店舗に在庫がない商品はオンラインの在庫から即座に取り寄せ、オンラインにない在庫は実店舗の在庫を用意するなど柔軟な対応ができるため、機会損失も減少します。
顧客の購入や成約のタイミングを逃さない
オムニチャネルを導入するメリットを顧客視点で見てみると、いつでもどこでも買い物ができるという点があります。
実店舗と自社ショッピングサイトの両方で同じ商品を購入できるため、わざわざ実店舗まで行かなくとも自宅で購入を済ませられます。実店舗でじっくりと商品を選んでから購入することもできます。
顧客データを活用できる
オンラインとオフラインなど、各チャネルにおける顧客の行動を分析したデータを一本化することで、顧客の動向が掴みやすくなります。
顧客の動向を可視化すれば顧客が本当に必要としているものや商品が購入されやすいタイミングなども予測できるため、顧客にとって最適なマーケティング戦略施に活用できます。
オムニチャネル成功のポイント
オムニチャネルを導入する際に気をつけておきたいポイントについて4点紹介します。
1. ロードマップの策定
オムニチャネルの導入は今までの在庫管理や顧客管理のシステムに大きく影響を与える場合もあるため、事前にロードマップを策定することが大切です。
まずは現状を分析し、以下を把握した上で、オムニチャネルの方向性を決定すると良いでしょう。
- 顧客満足度(CS)
- 商品またはサービスの長所短所
- 現在のチャネルが抱えている問題点
- 競合他社の動向
2. 社内体制の整備
チャネルの統合を図るため、もし社内の部署がチャネルごとに分かれていた場合は一旦それらを解体し、オンラインとオフラインなど各チャネルの連携が取れるような社内体制を整える必要があります。
本格的にオムニチャネルを導入し一定の成果を上げている企業は、社内のマーケティング部門に力を入れている場合が多くあります。
代表やCMO(Chief Marketing Officer、マーケティング担当役員)などがマーケティング部門の責任者となり、全体の売り上げを一番に考えつつビジネスモデルを構築することで、オムニチャネルの特性を存分に活かせるような社内環境の構築に成功しています。
3. データ連携、システム統合
オムニチャネルの導入にあたっては、まず顧客の行動を分析し、顧客が必要とする情報を必要とするタイミングで提供できるような体制を整えると良いでしょう。
場合によっては現在のシステムや社内体制を大幅に変更する必要もあり、情報やシステムの統合は特に慎重に進める必要があります。
4. 店舗用ハードウェアの準備
オフラインの店舗からも他チャネルの様子を確認できるように、各種ハードウェアを整備する必要もあります。
オフライン専用のPOSシステムでは顧客との関わりが会計のときに限られるため、タブレット端末やパソコンなどを活用して顧客の動向を参照することで、接客に活かすことも可能です。
オムニチャネルの成功事例
最後に、オムニチャネルを導入し、売上や顧客満足度を向上させた企業の事例を紹介します。
ユニクロ|オンラインと実店舗の連携で顧客体験向上
ユニクロは、実店舗とオンラインの垣根をなくし、売上の最大化に成功しています。
アプリ・ECサイトと実店舗の在庫を連携し、「店舗で試着 → オンラインで注文 → 自宅配送」を可能にしました。これにより、店舗の在庫状況をアプリでリアルタイムに確認でき、顧客の利便性が向上。
さらに、「店舗受け取りサービス」を導入し、ECサイトで購入した商品を、返品や交換の際に店舗で対応できる体制を整えています。
特に「店舗受け取りサービス」は、ECサイト経由の売上増加に貢献しています。
<参照>
ユニクロ:
スターバックス|モバイルアプリ×店舗でのスムーズな購買体験
スターバックスは、「モバイルオーダー&ペイ」(アプリで事前注文・支払い → 店舗で受け取り)を導入することで、店頭の待ち時間を削減して混雑緩和に成功しました。これにより利用者が増加し、売上の30%以上がデジタル経由になっています。
また、会員プログラム「スターバックス®リワード」で、オンラインとオフラインの購買履歴を統一。購買データを活用し、顧客ごとに最適なクーポンやキャンペーンを提供しています。
また、オンラインと実店舗でポイントを統一することで、リピート率の向上にも成功しました。
<参照>
スターバックス:スターバックス®リワードとは?
資生堂|オムニチャネルで訪日外国人の購買体験を強化
資生堂の公式ECサイト「資生堂オンラインストア」では英語や中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ベトナム語など多言語に対応しています。
店頭とオンラインの連携を行い、 店頭でのカウンセリング情報をオンラインで共有し、旅アトもパーソナライズされた商品提案や購入が可能な体制を構築。
帰国後もオンラインで商品を購入できる環境を整えることでリピーターにつながり、継続的な売上増加を達成しています。
<参照>
資生堂:資生堂、公式ECサイト「資生堂オンラインストア」を7月25日スタート
ABCマート/ECサイトから実店舗での試着へ
靴業界最大手のABCマートでは、EC特有の「実際に試すことができない」という問題をオムニチャネル化で解決しました。
ABCマートはオムニチャネル化により、オンラインで購入した商品を、顧客の希望する店舗で試着し必要に応じてサイズ変更できるサービスを提供しています。オンラインで購入を決定した商品を、オフラインで引き続き検討し変更できる点は、これまで業界になかった形式といえるでしょう。
オンラインで心惹かれた商品があったのに、店舗に行ったらなかったという顧客のがっかりする体験を防ぐことにもなります。
<参照>
ABCマート:店舗受取りサービスとは
無印良品/アプリ「MUJIpassport」での情報提供やポイント付与で実店舗へ流動
幅広いジャンルの商品を販売する無印良品では、スマートフォンアプリ「MUJI passport」をリリースし、オムニチャネル化を図りました。
アプリを通して顧客に無印良品の新商品情報や在庫状況の情報を提供し、実店舗の集客につなげています。
リアルからオンラインという方向の情報の流れには、実店舗を訪れるとポイントがたまるマイレージプログラムがあります。これにより、ユーザーの来店動機を高めています。実店舗の近くを通った際に無印良品に行きたくなる仕組みを作っています。
また店舗で購入した商品の配送先の設定を、アプリの会員情報読み取りで完了できます。
<参照>
無印良品:MUJI passport | 無印良品
シームレスな購買体験を提供することで満足度を高める流通戦略
オムニチャネルの導入は社内体制の変更やシステムの統合など、さまざまな改修が必要な大変な作業です。
オムニチャネルを導入すれば、顧客は時間や場所を問わずに欲しいものが手に入り、企業は機会損失を減少させ顧客の動向を把握できるなど、多くのメリットがあります。
導入に伴うコストや現状抱えている問題点を事前に具現化させておくことで、よりスムーズにオムニチャネルを導入でき、高い効果が期待できるでしょう。
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