【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】 |
バズマーケティングとは、口コミを意図的に発生させて、商品やサービスの感想を広範囲に広めていくマーケティング手法のことをいいます。
SNSが普及し、誰もが手軽に情報を発信できる近年、この手法は社会に浸透してきつつあります。
本記事では、バズマーケティングの具体的な内容や、似た意味を持つ「バイラルマーケティング」との違い、メリットやデメリットについて詳しく解説していきます。
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バズマーケティングとは
バズマーケティングとは、戦略的に口コミを発生させて、商品やサービスの感想を広めていくマーケティング手法のことを指します。
そもそも「バズ(る)」とは、インターネット、特にSNS上で情報が広範囲に拡散され、大きな話題に発展する現象のことです。言葉の由来は「がやがや言う・ブンブン飛ぶ・うわさになる」などの意味を表す、英語のBuzzという単語に由来しています。
バズマーケティングでは、この「バズ」のメカニズムを分析し、情報をコントロールすることによってマーケティングに役立てることを目指します。
特に、SNSでの情報拡散を狙う方法が主流となるため、SNSを日常的に利用しているターゲット層に効果的な訴求方法といえます。
似た意味を持つ「バイラルマーケティング」
バズマーケティング同様、口コミを利用したマーケティング手法に「バイラルマーケティング」があります。バイラル(viral)とは「ウィルス性のある、感染力がある」という意味です。
バイラルマーケティングでは、バズマーケティングと違って意図的に口コミを発生させて注目を集めるのではなく、商品やサービスへの高評価が人から人に自然に(ウイルス感染のように)伝わっていく仕掛けをつくることを目指します。
また、バイラルマーケティングは、オンライン上での施策に限定される点が特徴です。
バズマーケティングが注目される理由
バズマーケティングがマーケティング手法として注目され始めた理由は、消費者の情報収集手段の変化にあります。
1. 消費者の情報収集手段の多様化
従来のマーケティングでは、企業が地上波テレビや新聞広告、電光掲示板などを使用して一方的に情報を発信し、市場全体に広くアピールすることで消費者の購買を促す「マスマーケティング」の手法が主流でした。しかし、インターネットやSNSが普及した現在では、消費者一人ひとりが情報発信と情報収集の両方を行えるようになったため、マスマーケティングの効果は以前より得られにくくなりました。
一方で、バズマーケティングはSNSと相性が良く、より大きな販促効果が得られる手法といわれています。
2. SNSの普及による購買行動の変化
マーケティング支援などを手掛ける株式会社ネオマーケティングが2022年に実施した「SNSでの商品購入に関する調査」によると、SNS経由で商品を購入した人のうち、当初購入を予定していなかった人の割合が最大75.9%にのぼることが分かりました。
これは、SNS上で商品情報に触れることで購買意欲が刺激され、衝動的な購入につながるケースが多いことを示しています。
また、SNSでの商品購入のきっかけとしては、1位が「商品の紹介動画」(43.2%)、2位が「友人やフォロー中の一般ユーザーの口コミ投稿」という結果が出ています。
これは、SNSが消費者の「購入前の情報収集」と「購入後の口コミ発信」の両方において、大きな影響を与えていることを意味します。
このように、SNSの拡散力を活用し、口コミを通じて話題を生み出すバズマーケティングは、企業が消費者の購買行動を促進するための有効な手段として注目されています。特に、消費者同士の情報共有が購買に直結する現代において、SNSを活用したマーケティング戦略は不可欠となっています。
<参照>
株式会社ネオマーケティング「SNSでの商品購入に関する調査」
バズマーケティングのメリット・デメリット
どのようなマーケティング手法にも、メリットとデメリットの両方があり、バズマーケティングも例外ではありません。
バズマーケティングのメリット
バズマーケティングには複数のメリットがあります。まずは、拡散力に優れていることです。SNSや口コミサイトなどの利用者が増えていることで、消費者の口コミが広まる速度は早くなっています。企業が一方的に情報発信をするよりも、口コミを通じて、情報の発信者側が無数に増えていくため、広まりやすいともいえます。
また、消費者目線の口コミは、他の消費者の共感を呼びやすいほか、個人の利益に関係のない客観的な意見であるため、信頼されやすいでしょう。
さらに、拡散されることでブランドの認知度向上や購買促進にもつながります。
加えて、費用対効果の高さもバズマーケティングの大きな魅力の一つです。高額コストのかかるマス広告などに比べて、低額でありながら高い効果を得られます。
高い拡散力がデメリットになる場合も
バズマーケティングでは、メリットである拡散力の高さがデメリットになることもあります。ポジティブな評価だけでなく、ネガティブな情報も同様に広範囲に拡散されてしまうためです。なかには事実に基づいたものでなく、消費者側の誤解などで間違った情報が拡散される可能性もゼロではありません。
企業によらない拡散の力が優れている分、企業側が意図しない内容が多くの人に広がってしまうケースもあることに注意する必要があります。
バズマーケティングの6つの手法
バズマーケティングは、特に、消費者が自発的に情報を拡散しやすい仕組みを作ることが重要になります。
バズマーケティングにはさまざまな手法がありますが、ここでは代表的な手法を6つ紹介します。1. SNSマーケティング
1つ目は、SNSを使用する方法です。SNSキャンペーンやSNS広告などを用いて、情報が拡散される仕掛けをつくります。
たとえば、X(Twitter)でフォロー&リポストキャンペーンを行うと、フォロワーを増やせるほか、リポストで情報を広めてもらえるため、拡散力が大きくバズにもつながりやすいです。
2. インフルエンサーマーケティング
影響力のあるインフルエンサー(YouTuber、Instagramer、TikToker など)にPR投稿を依頼し、レビューをしてもらって拡散を狙う方法もあります。
インフルエンサーと呼ばれる人のなかには、著名人だけではなく、InstagramやYouTubeで多くのフォロワーをもつ一般人も多く存在しています。
フォロワーの多いインフルエンサーが発信することで、商品に対する信頼感が生まれ、短期間で広く拡散される可能性があります。特に、美容・ファッション・食品業界では効果的な施策として活用されています。
3. ユーザー参加型キャンペーン
消費者自身がSNS上でコンテンツを投稿し、拡散してもらう仕組みを作る手法です。企業は特定のハッシュタグを設定し、ユーザーに投稿を促すことで自然な口コミを生み出します。
キャンペーンとしてプレゼント企画を組み合わせることも多く見受けられます。
4. 画像や動画の投稿
視聴者の興味を引きやすい画像や動画を作成し、SNSで拡散を狙う手法です。感動的なストーリー、ユーモアのある映像、衝撃的な演出など、シェアしたくなる要素を組み込むことで話題を生み出します。
5. 口コミマーケティング
消費者のリアルな口コミを促進し、信頼性の高い情報として拡散させる手法です。特に、実際に商品を使った消費者がレビューを投稿することで、購買意欲を高める効果が期待できます。
企業がサンプルを配布し、利用者にSNSで感想を投稿してもらうなどが考えられます。
6.メディアへの記事掲載
記事掲載は「寄稿」や「記事広告」という形で、特定のメディアに費用を支払って、情報を掲載してもらいます。
プレスリリースの配信も効果的です。従来、プレスリリースとは企業がマスコミ向けに新情報を発信する文書でしたが、近年はそれがYahoo!ニュースやLINEニュースなどのWebメディアに取り上げられることで消費者の目にも広く届くため、積極的に用いられています。
バズマーケティングの成功に必要な「口コミ」と「メディア」
バズマーケティングの効果を高めるためには、口コミを多く集めることと、信頼できる伝達者を選択することが重要です。
人に伝えたくなるような口コミを集める
まず、口コミを集めることはバズマーケティングの肝であり、多少企業が意図しない内容の口コミであっても、多く集まればそれだけ多くの人の注目を集められているということになります。
口コミをより多く集めるには、消費者が人に伝えたくなるような「口コミネタ」を提供する必要があります。
適切なメディアを選ぶ
また、拡散された情報を消費者に「信頼できる」と判断してもらうためには、適切な伝達者を選ぶことが大切です。これは、どのメディアを通じて情報を伝えるかということを意味します。
メディアには、個人メディアと企業メディアのふたつがあります。
個人メディアは、その名のとおり個人が運用するSNSアカウントのことです。気軽に投稿した内容が多くの人からの共感を呼び、思いがけずバズることがあります。個人メディアが発信した情報がSNSで話題になり、それを企業メディアが取り上げることでさらなる拡散も期待できます。
一方、企業メディアは、ニュースメディアやキュレーションサイトを指します。企業メディアが発信した情報をSNSユーザーがシェアし、SNS上で爆発的に拡散されるパターンも考えられます。
このケースでは、情報感度が高く影響力のあるインフルエンサーによるシェアがきっかけとなり、バズることが多く見られます。SNSでバズることにより別の企業メディアが取り上げ、それがSNS上でまた拡散されるというようなサイクルが生まれます。
バズマーケティングを活用する際の5つのポイント
バズマーケティングを実施する上で気をつけたい5つのポイントを紹介します。以下のポイントを意識することで、より効果的なマーケティング施策を実施できます。
1. 商品とターゲットに合わせた手法を選定する
バズマーケティングは手法によってターゲット層や拡散力が異なります。そのため、商品やサービスの特性、ターゲット層のSNS利用状況を考慮し、最適な手法を選ぶことが重要です。
- 若年層向け → TikTokやInstagramのショート動画で拡散
- ビジネス層向け → X(Twitter)やLinkedInで専門家の口コミを活用
間違ったターゲティングをすると、拡散されても売上につながらないため、事前の市場調査が必要です。
2. 流行や傾向に合わせて発信する
バズを生み出すには、トレンドを的確に捉え、消費者が興味を持ちやすい内容で発信することが不可欠です。
過去にバズった例を参考にして同じような施策を行っても、再び成功するとは限りません。話題性のあるコンテンツや、流行のフォーマットを活用することで拡散の可能性が高まります。
- SNSで話題になっているハッシュタグを活用する(例:#〇〇チャレンジ)
- 季節イベントや流行に乗ったコンテンツを作る(例:ハロウィンや桜シーズンの投稿)
- インフルエンサーが取り上げている話題に関連づける
流行は移り変わりが早いため、リアルタイムな情報収集と柔軟な対応が求められます。
3. わかりやすさを重視する
バズマーケティングでは、短時間で多くの人の興味を引きつける必要があります。そのため、コンテンツのわかりやすさが非常に重要です。
万人が理解できる内容でなければ、拡散は期待できないでしょう。
- シンプルなメッセージ(短いキャッチコピーや視覚的に伝わりやすい画像・動画を活用)
- 直感的に理解できるデザイン(インフォグラフィックや短尺動画など)
- ストーリー性を持たせる(「共感」「驚き」「感動」を誘う要素を加える)
複雑なメッセージは拡散されにくいため、一目で理解できる構成を意識することが大切です。
4. SNSのリテラシーを高める
バズマーケティングは、思わぬことで炎上してしまう場合もあります。炎上を未然に防ぐためにもSNSのリテラシーを高めて、リスク管理を行うことが求められます。
リスクを回避するために、以下のポイントを意識しましょう。
- 過激・差別的な表現を避ける(ジェンダー、宗教、人種に関する配慮)
- 不確かな情報を発信しない(誤情報や誇張表現に注意)
- 企業の公式アカウントとしての責任を意識する
5. ソーシャルリスニングを実施する
SNS上の消費者の声を分析し、バズマーケティングの効果を測定することも重要です。
ツールを用いてSNS投稿のビッグデータを取得し、どんな反響が得られているか効果測定を行うことで、今回の施策が成功しているかを見極められます。問題点があればその原因を明らかにして、次につなげることができます。
具体的な活用法としては、以下が考えられます。
- 自社の商品・サービスに関する口コミの分析(ポジティブ・ネガティブの比率を確認)
- 競合他社の話題になっているポイントを調査(成功事例・失敗事例を参考にする)
- 消費者のリアルな意見を反映し、次のマーケティング施策に活かす
SNSのコメントやシェア数、エンゲージメント率を分析することで、バズの影響を定量的に把握し、次回の施策に活かすことができます。
事前の準備がバズマーケティング成功のカギ
バズマーケティングとは、口コミを意図的に発生させて「バズ」らせ、広範囲にサービスや商品の情報を広めるマーケティング手法です。
商品やサービスに関する情報を消費者が投稿し、それが運良く拡散され、注目を浴びるケースはよくありますが、意識的に「バズり」を起こすことは難しいといえます。
成功につなげるには、上記で紹介したようなポイントを1つずつクリアすることが必要です。加えて、他社の成功事例などを見ておくことも、新たな発見を得るきっかけになります。
ポイントをおさえた万全な準備で、多くの人の注目を集めるマーケティングを成功させましょう。
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