【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】 |
「オンラインで情報収集し、実店舗で購入する」といった消費者の行動が一般化する中、「O2O」と呼ばれるマーケティング戦略が注目を集めています。
O2Oとは「Online to Offline」の略で、Webサイトやアプリ、SNSといったオンラインチャネルを活用して、実店舗(オフライン)への来店や購買を促進するマーケティング施策のことです。
とくに実店舗での売上が重要な飲食店、小売店、美容室などにとって、オンラインでの接点を効果的に来店へつなげるO2Oは、売上向上に不可欠なアプローチとなりつつあります。
この記事では、「O2Oとは具体的に何を指すのか?」という基本的な疑問にお答えするとともに、その仕組み、重要性、具体的な施策事例、そして混同されやすい「オムニチャネル」との違いまで分かりやすく解説します。
インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)
Online to Offline
「O2O」とは、「Online to Offline(オンライン トゥ オフライン)」の略称です。
オンライン(インターネット上)での情報収集や申込みをきっかけとし、オフライン(実店舗等)で購入・契約に至るマーケティング施策のことをいいます。読み方は「オー・ツー・オー」で、「On2Off」と表現されることもあります。
はじめに、O2Oの意味と特徴を解説します。
オンラインからオフラインへの顧客誘導
O2Oは、「オンラインからオフラインへ」、オンラインとオフラインを連携させて購買活動を促進させるマーケティング施策のひとつです。
店頭で使用できるクーポンの提示や、SNSなどで会員になった(例えばLINEの友だち追加)顧客に対する商品情報提示、スマートフォンのGPS機能を活用したチェックインクーポンの提示などが、O2Oに該当します。
もともとはeコマース、すなわち自社のネットショップなどでの取引について用いられた表現ですが、現在は幅広く使用されています。
株式会社ALL CONNECTが実施した調査によると、「1万円以上の高額商品を買う際に最も多い購入パターンを教えてください」という問いに対し、19%の人が「インターネットで調べてから店頭で購入する」と回答しています。
![▲[ 株式会社 ALL CONNECT「ネットショッピングに関する意識調査」]:PR Timesプレスリリース](https://static-media.kutikomi.com/uploads/editor_upload_image/image/327/main_kutikomi.png?auto=format)
オンラインでの購入者が多い一方で、インターネットやSNSで調べてから店舗で購入する人も20%近くおり、こうした顧客に効果的にアプローチすることが収益の拡大につながります。
「店頭で見て直接購入する」人は18.8%と少なく、約80%の人がインターネットを見て購入を検討しており、そうした顧客に「店頭で買うとお得」と感じる特典を提示すればオフラインへ誘導する可能性が高まります。
店舗に行って初めて成立する商品・サービスには、O2Oマーケティングがより効果的に働くでしょう。
効果測定がしやすいマーケティング施策
O2Oの特徴のひとつが、効果測定がしやすいという点です。
オンラインを対象としたマーケティングは数多くありますが、そのほとんどが効果を測定するのが容易ではありません。一方、O2O施策では、オンラインで配布したクーポンなどが店舗で利用されるため、効果測定が比較的容易です。
インターネット上のマーケティングに詳しくないビジネスオーナーでも、比較的簡単に取り組みやすく、簡単に効果を測定できるでしょう。
O2Oマーケティングがもたらす主なメリット
O2O施策を導入することには、効果測定のしやすさ以外にも、事業者にとって見逃せない多くの重要なメリットが存在します。
最も直接的な効果として挙げられるのは、オンラインでの情報発信や魅力的なクーポン配布などを通じて、実店舗への効果的な集客が実現できる点です。これにより、WebサイトやSNSで商品やサービスに興味を持った潜在顧客を、実際の来店へとスムーズに誘導することが可能になります。
さらに、スマートフォンアプリやLINE公式アカウントなどを活用すれば、顧客との継続的なデジタル接点を確保し、パーソナライズされた情報や特典を提供することで顧客エンゲージメントを高め、ブランドへの親近感や愛着を育むことができます。
また、店舗で利用できる限定オファーや来店ポイントといったインセンティブは、顧客の「その場で購入したい」「また来たい」という気持ちを効果的に刺激し、購買行動を直接的に促進する上で大きな役割を果たします。
加えて、O2O施策を通じて得られるクーポンの利用率、来店頻度、顧客の属性といったデータは、その後のマーケティング戦略をデータに基づいて客観的に評価し、改善していくための貴重な資源となります。勘や経験だけに頼らない、効果的な施策立案が可能になるのです。
このように、O2Oは単にオンラインからオフラインへ顧客を誘導するだけでなく、集客、顧客関係構築、購買促進、データ活用といった多方面にわたるメリットをもたらします。
オンラインでのアプローチとオフラインでの実体験を結びつけることで相乗効果を生み出し、最終的には顧客満足度の向上やLTV(顧客生涯価値)の最大化にも貢献する、現代ビジネスにおいて非常に重要な戦略と言えるでしょう。
近年はOffline to Online
O2Oはオンラインとオフラインの連携を指しますが、その普及の背景には、店舗での商品確認後にネットで購入する「ショールーミング」という動きに対抗する必要があったことも関係しています。
オンラインとオフラインを融合させることがO2Oマーケティングの重要な目的であり、「オフラインからオンラインへ」もマーケティング施策として意識したい点です。
近年では、来店した顧客にスマートフォン上で公式アプリをダウンロードしてもらい、新商品情報や割引情報を提示することで購買を促進するといった事例が見られ、オンラインとオフラインの融合も多様化しています。
オムニチャネルとの違い
オンラインとオフラインの融合を考える時に取り入れたい販売戦略のひとつが、「オムニチャネル」です。ここからは、オムニチャネルとは何かやその意義、O2Oとの違いを解説します。
オムニチャネルとは
「オムニチャネル」は、全ての流通経路を連携させたマーケティング施策を言います。
「オムニ」はラテン語で「全て」、「チャネル」は英語で「経路、流通ルート」という意味です。チャネルの英語表記は「channel」でテレビのチャンネルなどと同じですが、日本語では「チャネル」と「チャンネル」で使い分けられています。
すべてのチャネルを連携させるとは、例えば店頭にいながらインターネット上で注文ができる、ECサイトで注文した商品を店頭や近くのコンビニで受け取れる、などのように全ルートから顧客へアプローチすることです。
ECサイトやSNSといったインターネット上の接点だけでなく、テレビやラジオといったメディアも含まれます。顧客は、商品を好きな時に好きな場所で購入し好きな場所で受け取ることができて、購買活動が促進されるだけでなく、顧客満足度も上昇します。
またオムニチャネルは、選ぶ場所や買う場所がオンラインとオフラインのいずれかに固定されることを防ぎます。オンラインかオフラインかを顧客が意識しないシームレスな購買活動を促す施策です。
関連記事:オムニチャネルとは?マルチチャネルと違いやメリット、成功のポイントを紹介
違いは「双方向か一方通行」
O2Oが特定の方向(主にオンライン→オフライン)への顧客の流れを作ることを重視するのに対し、オムニチャネルはチャネル間の双方向・多方向の連携によってシームレスな購買体験を目指す点が異なります。つまりO2Oは、オムニチャネルの複数ある矢印の中のひとつと言えるでしょう。
O2Oはオンラインでの魅力的なクーポン提示やポイントシステムによって顧客を惹きつけ、店舗での購買活動につなげて利益を出します。
一方でオムニチャネルは、インターネットと店舗とで顧客情報管理や商品在庫管理を連携させており、例えば店頭で商品の欠品があった場合にはオンラインですぐに購入できて利益獲得のチャンスを逃さないというメリットがあります。
この点を踏まえると、O2Oは一方通行の「誘導」であるのに対し、オムニチャネルは全方位からの「囲い込み」と言えます。
マーケティングでの使い方
一口にO2Oと言っても、やり方はさまざまです。ここでは、マーケティングでよく見られる6つの使い方を紹介します。
ECサイト連携型
ECサイトと店舗の情報などを連携させた使い方です。
具体的に次のような方法があげられます。
- ECサイト上で各店舗の在庫が確認できる
- ECサイト上で注文した商品を店舗で受け取れる
- ECサイトと店舗のどちらで購入してもポイントが貯まる
わかりやすさと情報の速さが、ECサイトから店舗への顧客誘導につながっています。
クーポン型
主流のO2Oの使い方がクーポン型です。店舗で利用できるクーポンをインターネット上で提示し、顧客を店舗に向かわせる戦略です。クーポンの送信がプッシュ通知になり、例えば飲食店ならお店をランチの選択肢として思い出してもらうなどの効果があります。
スマートフォン上でQRコードやバーコードがついた「かざすクーポン」を開始したのはマクドナルドです。これによりクーポンの枚数を手で数えなくてもシステム上で使用数を管理し、すぐにデータ化することが可能になりました。なお、このサービスは現在終了しています。
位置情報活用型
スマートフォンに内蔵された位置情報システム(GPS機能)を活用したサービスが各分野で広まっており、O2Oを含むマーケティング施策にも取り入れられています。
指定店舗や場所を訪れて初めて取得が可能になるポイントやクーポンが、位置情報活用型に該当します。
SNS活用型
近年はX(Twitter)やInstagramなどのSNSを利用する人が多く、商品情報をSNS上で収集する人も見られます。こうしたSNSの普及を効果的に取り入れているのが、SNS活用型です。
SNSでの口コミは顧客の体験に基づいており、店側が発信した情報よりも信頼されやすい面があります。拡散されやすいこともSNSの特徴であり、SNSで商品情報をシェアしてもらうことでより多くの見込み顧客へアプローチすることが可能です。
大手コンビニエンスストアのローソンはX(Twitter)と連携し、「#Ponta」のハッシュタグを付けてツイートすることでエントリーできるキャンペーンを実施しています。
LINE活用型
即時性に優れており、リアルタイムでユーザーとやり取りができるLINEを活用した販促がLINE活用型です。
メッセージの開封率も高いため、情報を確実に届けることができ、プロモーション効果が期待できます。
さらに、LINEではクーポンやキャンペーン情報をスピーディーに配信できるため、ユーザーの来店や購入を促す手段として有効です。
ゲーミフィケーション型
ゲームデザインの技術やメカニズムを取り入れているのが、ゲーミフィケーション型です。
顧客は、来店するごとにアプリ上でポイントを貯めるなどゲームのように特典を楽しむことができ、その達成感や喜びが次回の来店を促します。ゲーム感覚で特典を得ることで、マーケティング施策だと顧客に意識されにくい点がメリットです。
Gap Japanはこのゲーム感覚を取り入れ、顧客が貯めたポイントを使ってデジタルガチャを行い、結果画面を店頭で提示して商品を引き換えることで来店を促す施策を実施しました。
O2O戦略でオンラインとオフラインの架け橋を築く
本記事で解説してきたように、「O2Oとは」、オンライン(Webサイト、SNS、アプリなど)での情報接触やコミュニケーションをきっかけに、オフライン(実店舗)での具体的な行動(来店、購買、体験)へと顧客を誘導する一連のマーケティング戦略です。
スマートフォンの普及により、オンラインでの情報収集が購買行動の起点となることが当たり前になった現代において、O2Oマーケティングは実店舗を持つ事業者にとって、顧客接点を拡大し売上を伸ばすための鍵となります。
効果的なO2O施策は、新規顧客の獲得、リピーターの育成、顧客単価の向上、そして収集したデータを活用したさらなるマーケティング改善へとつながります。
オムニチャネルとの違いも理解した上で、自社のビジネスモデルやターゲット顧客に合ったO2Oの取り組みを検討し、オンラインとオフラインを連携させたシームレスな顧客体験を提供していくことが、今後のビジネス成長に不可欠と言えるでしょう。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
<参照>
株式会社 ALL CONNECT:【 20~50代の男女500名に聞く 「ネットショッピングに関する意識調査」 】約8割が我慢できる待ち時間は30分まで!?待てない現代人”時短ニスト”の増加がネット消費を後押し!
【5/8開催】初心者必見「インバウンドの基礎」を学ぶ!【訪日ラボ トレンドLIVE!Vol.10】
好調が続くインバウンド業界。あらゆる民間企業や自治体が新たに施策を始めたり、これまで実施してきた取り組みを広げたりしている一方で、 「この4月で初めてインバウンドの担当になったけど、何から始めていいかわからない…」 「外国人の集客や対応が大事っていうけど、基本的なこともよくわかっていなくて不安…」 などと、焦りを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、新年度に合わせた企画として「インバウンドを基礎から徹底解説」するセミナーを実施します。 新しくインバウンド事業の担当になった方や、改めてインバウンドについて学び直したいという方におすすめです!
<本セミナーのポイント>
- 初めてでも分かる「インバウンド」の基礎が学べる!
- 業界最大級のインバウンドビジネスメディア「訪日ラボ」の社内でも使われる講座内容!
- インバウンド業務に役立つ情報が理解できる!
詳しくはこちらをご覧ください。
→初心者必見「インバウンドの基礎」を学ぶ!【訪日ラボ トレンドLIVE!Vol.10】
【インバウンド情報まとめ 2025年4月前編】大阪・関西万博の来場「予想より多い」旅行商品予約も好調 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に4月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→大阪・関西万博の来場「予想より多い」旅行商品予約も好調 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年4月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!