カナダは、日本と長年にわたり政治・経済・文化の各分野で緊密な関係を築いてきた国です。また2024年は訪日旅行者数・消費額ともに過去最高を記録しています。
この記事では、カナダの基本情報から日本との関係、インバウンド動向、カナダ人の日本へのイメージなどをわかりやすく解説します。
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カナダの基本情報
まずカナダの基本情報から見ていきましょう。カナダから日本を訪れる場合の所要時間、カナダ市場のインバウンドデータについても深く掘り下げていきます。
基本情報
面積 | 約998.5万平方キロメートル(日本の約27倍) |
人口 | 約4,010万人(2023年) |
主要都市 | オタワ(首都)、トロント、モントリオール、バンクーバー、カルガリーなど |
言語 | |
宗教 | キリスト教53.3%(うちローマ・カトリック約29.9%)、無宗教34.6%(2021年) |
1人当たりGNI |
5万3,930米ドル(2023年) |
57万9,445人(2024年) |
カナダは北アメリカ大陸に位置し、面積は約998.5万平方キロメートルとロシアに次いで世界第2位であり、日本の約27倍におよぶ広大な国土を有しています。人口は約4,010万人(2023年時点)で、首都はオタワです。
主要都市としては、経済の中心地であるトロント、多文化都市モントリオール、西海岸の玄関口バンクーバー、内陸部のカルガリーなどが挙げられます。公用語は英語とフランス語の2言語です。宗教はキリスト教が主流で、ローマ・カトリックの信者が多い一方で、無宗教の割合も3割を超えています。
経済面では、1人当たりGNI*が5万3,930米ドル(2023年)と高水準かつ安定した先進国です。
*GNI(Gross National Income)…国民総所得
日本との距離
カナダの主要都市であるバンクーバーやトロントからは、日本(成田空港・羽田空港など)への直行便が運航されています。特にバンクーバー=成田間、トロント=羽田間は定期便があるため、アクセスしやすい都市といえるでしょう(運航状況は時期により変動)。
フライト時間は、バンクーバー=東京間が9〜10時間、トロント=東京間が12〜14時間程度です。カナダは広大な国土を持つため、都市によって所要時間に差があります。
また時差は都市により異なり、バンクーバーとは17時間、トロントとは14時間です。サマータイム*が適用される期間は、それぞれ16時間と13時間になります。
カナダと日本の移動は、距離や時差の面でややハードルがあるものの、直行便の運航により、ビジネスや観光の往来はスムーズに行えます。
*カナダでは毎年3月第2日曜日から11月第1日曜日までサマータイムが適用される
インバウンドデータ
2024年の訪日カナダ人数は57万9,445人となり、過去最高を記録しました。コロナ前の2019年と比べて54.4%増、前年比でも36.1%増の伸びとなっています。

旅行消費額も大きく増加し、2024年は1,765億円となりました。2019年比で163.4%増、2023年比では49.5%となり、過去最高を記録しています。
また、1人当たりの旅行消費額は30万6,272円と全市場平均(22万6,851円)を大きく上回っています。
関連記事:2024年の訪日カナダ人数は57.9万人【最新インバウンドデータを解説】
カナダと日本の関係をわかりやすく解説
日本とカナダはG7のメンバーとして、多くの分野で緊密に連携しています。ここでは、両国の関係を政治・経済の視点からわかりやすく紹介します。
G7のメンバーとして幅広い分野で協力
カナダと日本は、ともにG7メンバーとして長年にわたり信頼関係を築いており、政治・経済・安全保障・人的交流など幅広い分野で協力しています。
両国は、ルールに基づく国際秩序を促進するために協力し、パートナーシップを深めるよう努めています。
2021年には、法の支配や平和維持活動、自由貿易の促進、気候変動への対応といった、自由で開かれたインド太平洋地域に資する6つの優先分野で協力していくことを合意しました。また2022年には、これを着実に推進していくため、「自由で開かれたインド太平洋に資する日加アクションプラン」を発表しています。
相互補完的な貿易関係を構築
日本とカナダの貿易関係は、相互補完的な構造になっています。カナダからは鉱物性燃料や農産品といった資源・原材料を輸入し、日本からは自動車や機械などの生業用品を輸出しています。
2023年の貿易額は、日本からの輸出が約1兆5,365億円、輸入が約2兆326億円となっています。近年は、AIやIoTといったイノベーション分野での相互投資も活発化しています。
両国間では1976年から日加次官級経済協議(JEC)を開催しており、エネルギーや農業、観光など6分野での協力強化が進められています。
2018年には、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」に署名し、両国間で初の経済連携協定が成立しました。
カナダで日本のさまざまな文化が浸透
カナダには多くの日系の人々が暮らしており、文化や人々のつながりも強くなっています。ここでは、カナダ国内における日本文化の広がりを紹介します。
日本のアニメが幅広い世代で人気
カナダでは、十数年前から日本のアニメが子どもを中心に人気を集めています。現在では当時親しんでいた世代が成人し、幅広い年齢層に人気が広がっています。ストーリー性に優れている日本のアニメはファンの裾野を広げており、主なテレビ局でも頻繁に放映されています。
またモントリオールやトロントでは大規模なイベントが毎年開催されており、会場にはコスプレをした数万人の来場者が集まります。アニメの他にも、漫画やゲームなどのファンを対象としたイベントも開かれています。
アニメの聖地である日本への関心も高いため、日本政府観光局(JNTO)はモントリオールやトロントの会場で、訪日旅行促進のプレゼンテーションを行っています。
関連記事:聖地巡礼によるインバウンド集客の可能性は?ポイントや事例も紹介
健康志向を背景に日本食に注目が集まる
カナダでは中高年層を中心に健康志向が高まっており、そのなかで日本食にも注目が集まっています。
トロントやバンクーバーなどの大都市では、寿司やラーメンを提供する日本食レストランの増加が目立っています。また、チーズケーキや抹茶スイーツといったスイーツが味わえるお店や、居酒屋なども増えています。2023年の農林水産省の調査によると、カナダ国内の日本食レストラン数は2,610店舗でした。
カナダ国内で日本食の人気が高まる一方、ヨーロッパ系カナダ人の中には、生の魚介類が苦手な人もいます。また、カナダのレストランでは、菜食主義者用のメニューが用意されているなど、食べられない食材やアレルギーに対して、柔軟に対応しています。日本のレストランにおいても、同じような配慮ができると望ましいでしょう。
関連記事:世界で注目「抹茶・緑茶」人気の理由とは?インバウンド集客のポイント・事例も解説
カナダ人が日本に抱くイメージ
カナダ人の日本に対するイメージは良好な一方、訪日旅行についてはさまざまな障壁があるようです。ここでは、カナダ人が抱く日本のイメージを紹介します。
日本は「いつかは行きたい憧れの国」
カナダ人が日本に持つイメージとしては、「豊かな伝統と文化を持つ国」「経済力・技術力の高い国」「自然の美しい国」「アニメやファッション、食など新しい文化を発信する国」などが多く見られます。また、カナダ人が抱く好感度について、日本はアジアの中で首位となりました。
旅行地としても、日本は「いつかは行きたい憧れの国」です。訪日カナダ人の多くはヨーロッパ系カナダ人と中華系カナダ人で、ヨーロッパ系カナダ人は日本の伝統文化やおもてなし、中華系カナダ人は買い物を魅力として感じているようです。
その一方、訪日旅行に関する知識はあまり浸透しておらず、実際の旅行計画に進むまでの障壁となっているようです。日本政府観光局(JNTO)では、オンラインでの情報発信や航空会社との共同広告を実施し、訪日客の増加に向けた取り組みを進めています。
関連記事:【欧米豪編】インバウンド市場の最新動向、今後の取り組みは?(インバウンド旅行振興フォーラム)
訪日旅行の不安は「言葉の壁」
物理的な距離などに加え、訪日旅行における不安要素としては「言葉の壁」が挙げられています。
こうした課題に対しては、多言語対応の強化が有効です。たとえば飲食店では、英語やフランス語に対応したメニュー表の整備、言語がわからなくても伝わる写真の掲載などができます。
また、スタッフの言語対応に不安がある場合でも、ピクトグラムやイラストなど視覚的な案内を活用することで、スムーズな案内や注文が可能になります。
関連記事:壁を扉に変える言葉 ~カタカナ英語でひらくインバウンド接客~【今考える インバウンド集客の「本質」】
信頼関係を築いてきた両国 さらなる訪日客増加にも期待
カナダと日本は、ともにG7のメンバーとして多くの分野で緊密に連携しており、長年信頼関係を築いてきました。
訪日旅行においては「距離の遠さ」や「言葉の壁」といったハードルがあるものの、近年では受け入れ体制の強化も進みつつあります。
今後もこうした対応を引き続き行うことで、さらなる訪日カナダ人の増加が期待されます。
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<参照>
- 外務省:カナダ(Canada)基礎データ
- Government of Canada:日加関係
- 農林水産省:海外における日本食レストランの国・地域別概数
- 日本政府観光局(JNTO):
- 観光庁:インバウンド消費動向調査
- 内閣府:アニメツーリズムの推進
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
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