【欧米豪編】インバウンド市場の最新動向、今後の取り組みは?:JNTO「インバウンド旅行振興フォーラム」(1日目)

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日本政府観光局JNTO)は9月に「第27回 JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」を開催しました。

インバウンド旅行振興フォーラムは、訪日インバウンド旅行市場の推進を目的として2004年にスタートしました。海外全26拠点の海外事務所長などが登壇し、具体的なプロモーションの取り組みや市場別の最新動向などを紹介してきました。

2024年はさらに、持続可能な地域づくりや地方誘客などをテーマにしたパネルディスカッションやトークセッションも実施されました。

訪日ラボでは両日のフォーラムの様子を取材。充実した講演内容の様子とインバウンド対策に役立つ情報の中から、今回は初日の内容をお届けします。

関連記事:JNTO「インバウンド旅行振興フォーラム」について(2023年)

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「市場横断的な戦略が必要不可欠」主催者 JNTO理事長挨拶

まずは日本政府観光局JNTO)理事長 蒲生 篤実氏から主催者挨拶がありました。

JNTOの創設60周年を迎えた2024年、インバウンド市場は非常に活況で、訪日外客数は過去最高であった2019年を超えて3,500万人が視野に入る勢いです。

蒲生氏は、JNTOは「持続可能な観光消費額拡大と地方誘客促進の実現に向けて、戦略的かつきめ細やかなインバウンドプロモーションに取り組んでいる」と説明。

特に「市場横断的な戦略は欠かすことができないもの」とし、海外事務所や国内関係者とのネットワークを最大限活用して、地域の環境・文化・経済の持続可能性を高める施策に重点的に取り組んでいくと述べました。

関連記事:8-9月訪日客 前月より減少でも「インバウンド需要は衰えていない」といえるワケ:JNTO取材

観光庁の国際観光戦略

続いて、観光庁 国際観光部の飯田 修章氏より、観光庁の国際観光戦略について解説がありました。

市場動向については、訪日外国人旅行者数と消費額ともに過去最高のペースを維持しています。観光立国推進基本計画では訪日外国人旅行消費額の目標を「早期に5兆円」と設定していましたが、現状のペースを維持した場合「2024年は8兆円も視野に入るのではないか」と述べました。

また、「(観光業は)自動車や半導体などの電子部品に次ぐ、第3の輸出産業といえるほど成長してきている」としつつ、地方の誘客へは引き続き課題感があると発言しました。

訪日外国人旅行者数の約7割が三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)に宿泊している状況を踏まえ、「魅力的なコンテンツの開発や販路開拓などを地域と連携して進めていく」と述べ、地方周遊や地方で長期滞在できる環境を整え、大阪・関西万博に関連した地方への周遊促進を強化する方針を示しました。

地方誘客のほか、快適に旅行できる環境整備の一環として、入管と税関に必要な情報の同時取得が可能となる「共同キオスク」の導入も予定。空港での待ち時間の軽減を目指します。

さらに、2024年1月から2025年3月まで続く「日米観光交流年」と関連した観光イベントの実施や姉妹都市交流の活発化を推進。アメリカ以外にもブラジルやサウジアラビア、中国韓国ASEAN諸国などとの交流活性化にも取り組む予定だといいます。

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地方誘客強化に向けたJNTOの今年度の取り組み

続いて、JNTOの企画総室長 竹内 大一郎 氏が登壇。地方誘客強化に向けたJNTOの今年度の取り組みについて紹介しました。

▲JNTO 企画総室長 竹内 大一郎 氏:インバウンド旅行フォーラムにて訪日ラボ撮影
▲JNTO 企画総室長 竹内 大一郎 氏:インバウンド旅行フォーラムにて訪日ラボ撮影

JNTOでは、2023年3月31日に閣議決定された観光立国推進基本計画(第4次)に基づくプロモーションを展開。

以下の3つのキーワードを軸に、きめ細やかなプロモーションを展開していくための戦略として「訪日マーケティング戦略」を策定しました。

  • 持続可能な観光
  • 消費額拡大
  • 地方誘客促進

地方部にインバウンドを呼び込むために、竹内氏は「ターゲットを絞ったプロモーションを行い、より効果的な情報発信をしていくことや横の連携強化が大事」と指摘。外国人観光客に向けた効果的な情報発信策として、WebサイトSNSでの多言語発信に加え、2024年度は生成AIを活用した観光情報提供も実証実験中であると述べました。

そのほか、航空会社・旅行会社との共同広告や、アジア10市場を対象にした大規模キャンペーンを実施し、地方誘客を働きかけるプロモーションを展開。さらに市場横断マーケティングとして、高付加価値旅行やアドベンチャートラベル、サステナブル・ツーリズムを引き続き推進していく予定です。

市場別のインバウンド最新動向

ここからは、市場別の最新動向とインバウンド誘客に向けた取り組み状況をそれぞれお届けします。

※本記事で取り上げるのは、初日の講演(欧米豪市場)に特化した内容です。

北欧市場

北欧市場は2023年に重点市場に追加され、2024年3月にストックホルム事務所が開所しました。講演ではストックホルム事務所長の若林 香名氏から、北欧の市場感について説明がありました。

日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

北欧市場はバルト3か国を含む合計8か国。その中でスウェーデン・デンマーク・ノルウェー・フィンランドの4か国を重点市場に位置づけています。

2019年度の4か国合計の訪日者数は14万人で、イタリアスペインなどに匹敵する規模となっています。訪問先はゴールデンルートが中心で、「日本ならではの体験」「自然アクティビティ」「知的好奇心をくすぐる体験」を求めている人が多いとのこと。平均滞在日数は約10日と比較的長く、訪日客のピークは桜や紅葉の時期と夏休みシーズン(6〜7月)です。

北欧市場の海外旅行需要の最盛期は1月と2月であることから、日本の冬ならではの魅力を紹介していくことで、冬の需要も喚起していきたいと述べました。

所得水準が高く休暇が取りやすい北欧は、旺盛な海外旅行需要が見込まれる新規市場です。訪日マーケティング戦略としては、日本側からの積極的なセールスとプロモーションの強化が必要だといいます。

関連記事:JNTO、スウェーデンにストックホルム事務所を開設 北欧のインバウンド促進を図る狙い

イタリア市場

続いてイタリア市場について、ローマ事務所長の豊田 健氏から解説がありました。

イタリアでは、海外旅行者の大多数が欧州内へ旅行に行く傾向がありますが、欧州以外に行く海外旅行者に占める訪日観光客数の割合は増加傾向にあります。コロナ前の2019年は5%であった比率が、2023年には8%まで上昇しており、日本人気が増している状況がうかがえます。

日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

またイタリア旅行会社の利用比率が比較的高く、団体ツアー購入者が12.1%(世界平均11.7%)、FITパッケージ購入者が11.8%(世界平均4.4%)、その他、旅行会社経由で個別手配をする層も合わせると4割近い人が旅行会社を利用していることから、豊田氏は「イタリア旅行会社へのアプローチによって成果が出やすい市場」との考えを示しました。一方で、イタリア語に対応可能なガイドの不足などを課題として挙げています。

訪日イタリア人観光客の大半は初訪問で、まずは、ゴールデンルート等の有名な観光地を巡る傾向が強いようです。今後、新規訪日層の獲得を図るため、食や歴史・伝統、アートについて重点的に情報発信を行う予定だといいます。

また、ターゲット別のプロモーション施策も展開し、20・30代に対してはSNSやオンライン広告を活用した情報発信で地方誘客を強化。40代以上向けには旅行会社との連携を通してゴールデンルートを中心とした情報発信を行っていく予定です。

関連記事:イタリア市場の最新インバウンドデータを徹底解説【2024年上半期】

スペイン市場

次にスペイン市場について、マドリード事務所長の原田 靖之氏が解説しました。

スペイン人の海外旅行者数は、2024年第1四半期(1〜3月)で474万人で、2019年同期比17.9%増加しており、需要は順調に回復しています。

2024年1~7月の訪日スペイン人数は8万4,600人(2019年同期比25.9%増)を記録。1人当たり平均旅行支出額は38万191円(2019年同期比で70.7%増)となっており、旺盛な訪日旅行需要がうかがえます。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

訪日観光客の多くが初来日で、ツアーではゴールデンルートに金沢・高山・白川郷などを追加したものが人気となっています。日本への注目度が高まっている要因として、「子どもと一緒に楽しめる」「安心・安全」などの要素が挙げられています。

今後のプロモーションは、航空会社と連携した共同広告やオンラインでの情報発信、スペイン旅行業協会(CEAV)との連携強化を予定しています。

他の欧米豪重点市場よりも英語での発信が強く響かないケースも多く、スペイン語での情報が圧倒的に不足している状態を踏まえ、原田氏は「スペイン語の情報発信によって存在感が増す」と強調しました。

関連記事:スペイン市場の最新インバウンドデータを徹底解説【2024年上半期】

米州市場(米国市場・カナダ市場・メキシコ市場)

次に米州市場の動向について、ニューヨーク事務所長 松本 将氏、ロサンゼルス事務所長 田中 陽子氏、トロント事務所長 鈴木 結佳氏、メキシコ事務所長 山田 麻須美氏の4名より解説がありました。

米州の海外旅行市場規模は、アメリカカナダ・メキシコの3か国で1,510億USドル(約23.4兆円 / 1USD=155円)。訪日旅行の規模は、欧米豪主要市場の58%を占め、比較的長い滞在期間と高めの旅行支出が見込まれます。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

コロナ後、米国市場の訪日観光客数は順調に推移しており、特に人気の高い観光コンテンツは、アドベンチャートラベルやクルーズ旅行などです。商談会などを通じて現地旅行会社との連携を図り、メディアへの露出を高めるなどして、地方誘客促進と高所得者層獲得による旅行消費額単価の向上を図ります。

カナダ市場は、個別手配で旅行するFITの割合が高く、2023年は9割を超えたといいます。ゴールデンルートの需要が高い一方で、九州北陸信越、中国地方などの滞在も増加。現地旅行会社のヒアリングの結果、近畿中部地方も今後注目エリアであるようです。訪日客増加に向けては、オンラインでの情報発信や航空会社との共同広告を実施し、現地旅行会社との連携を強化して50代以上の中高所得者層の取り込みも狙うといいます。

訪日メキシコ人観光客は、基本的にはゴールデンルートである東京と京都が旅行のメインで、プラスして大阪や奈良を訪れる人が多い傾向です。家族旅行で来日することが多く、2組以上の家族が一緒に旅行したり、3世代で一緒に旅行したりするケースもあります。

家族で楽しめる体験型コンテンツの開発や、航空会社や旅行会社との連携強化、SNSでの情報発信などを通じて、訪日観光客数の増加と消費額の拡大を図ります。

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ドイツ市場

続いてドイツ市場について、フランクフルト事務所長の臼井 さやか氏から解説がありました。

ドイツ人は旅行意欲が旺盛で、非常にポテンシャルのある市場だといいます。2019年の外国人延べ旅行者数は中国アメリカに次いで第3位、2023年のアウトバウンド消費額は中国アメリカに次いで第3位を記録しています。

旅行の動機としては、リラクゼーションや自然を楽しむことが多い傾向にあるといいます。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

訪日旅行も増加傾向にあり、訪日者数は2024年1-7月で2019年比の131.5%を記録しています。ゴールデンルートに加えて地方部への関心も高く、2023年の訪問先トップ10には広島(5位)、長野(6位)、沖縄(8位)、石川(10位)がランクインしています。

一方で、ガイド不足やFITニーズへの対応などの課題解決に向けた取り組みも急務となっています。また、日本ならではの景観とアウトドアコンテンツを拡充して韓国などの競合国との差別化を図ることも必要とされています。

今後の訪日マーケティング戦略としては、訪日客の獲得に向けて、オンライン媒体を活用して「豊かな自然」「食・お酒」に関わる情報発信を強化する予定です。

関連記事:ドイツ市場の最新インバウンドデータを徹底解説【2024年上半期】

フランス市場

続いてフランス市場について、パリ事務所長の永井 初芽氏から解説がありました。

フランス市場では、日本はここ十数年で急激に伸びている旅行先だといいます。2024年に入り、コロナ前の2019年を上回る訪日客数となっています。一方で韓国も非常に好調で、日本を上回る伸び率を記録。日本と韓国のコンビネーション旅行も増えているといいます。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

FIT層が全体の9割を占めますが、高齢者や地方都市在住社など日本旅行への心理的障壁が高い層は、旅行会社を利用するケースもあります。

フランス市場はリピーターが少数派のため、新規訪日層の獲得が引き続き重要です。また地方誘客の促進も大きな課題で、地方のアクティビティに関する情報発信を強化することで認知拡大を狙うといいます。

関連記事:フランス市場の最新インバウンドデータを徹底解説【2024年上半期】

英国市場

続いて英国市場について、ロンドン事務所長の本蔵 愛里氏から解説がありました。

英国市場の訪日旅行需要は非常に強くなっている傾向です。2024年夏の訪日ツアーは完売した旅行会社も多く、追加販売して即日完売したケースもあるといいます。

来春の訪日ツアーも8月末時点で予約率はすでに8割を超える状況で、訪日旅行に関する検索量も増加しており、三大都市圏だけでなく地方部の検索量も上昇。日本に対する注目度が高まっているといえます。

▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

今後の訪日マーケティング戦略としては、訪日旅行未経験者が8割を占めるため、日本独自の強みである伝統文化と近代都市を対比したコンテンツの発信を強化するといいます。オンライン媒体を活用し、新規訪日層の獲得を図ります。

特に訪日意欲の高い20〜30代に向けて、地方誘客に向けたプロモーションも強化する予定です。

関連記事:英国市場の最新インバウンドデータを徹底解説【2024年上半期】

豪州市場

続いて豪州市場について、シドニー事務所長の北澤 直樹氏から解説がありました。

オーストラリアアウトバウンド市場はコロナ後、順調に回復。2024年4月には2019年同月比で105.2%となっています。

訪日旅行需要も2023年6月から継続して2019年水準を超えており、「人気の訪問先ランキング」では日本が5位にランクイン。人気訪問先3位のアメリカスキーリゾートとして人気ですが、現在豪ドルと比較して米ドル高の為、人気が下がってきてます。日本でもニセコ北海道)や白馬(長野)など上質なスキーリゾートの多くあり、スキー旅行は大きなポテンシャルがあるといえます。

訪日オーストラリア人観光客の最大のピークは12月で、ホリデー+スノー需要で最大の訪日シーズンといえます。また3月〜4月の桜シーズンや9月〜10月の紅葉シーズンも人気です。

日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋
▲日本政府観光局(JNTO)配布資料より抜粋

オーストラリア人観光客の1人当たり旅行支出額は34万661円(全市場平均21万2,764円)で全市場中1位となっており、平均宿泊数は13.8泊(全市場平均10.1泊)です。旅行時の消費単価と平均泊数の値が他市場に比較して高く、冬の閑散期に訪日してくれる優良顧客といえます。

今後の訪日マーケティング戦略として、スキーや豊かな自然、ローカルフードなどの観光情報を地方の魅力とともに発信することで、新規訪日層とリピーター層の獲得を狙うといいます。

関連記事:豪州市場の最新インバウンドデータを徹底解説【2024年上半期】

市場横断プロモーションの取り組み

次に、市場横断プロモーション部長の藤内 大輔氏から、市場を横断するプロモーションについて解説がありました。

JNTO 市場横断プロモーション部 藤内大輔氏:インバウンド旅行フォーラムにて訪日ラボ撮影
▲JNTO 市場横断プロモーション部 藤内 大輔氏:インバウンド旅行フォーラムにて訪日ラボ撮影

市場横断プロモーションは以下3つの柱で構成されています。

  • 大阪・関西万博
  • 高付加価値旅行
  • アドベンチャートラベル

大阪・関西万博に関連した施策としては、「万博×観光」をテーマに取り組みを推進。2024年は万博開催の前年として、地方誘客に向けたBtoCの取り組みを強化します。

主要市場の旅行博などに出展し、「万博+観光」キーワードに、万博テーマと連動した日本各地のサステナブル・ツーリズムを発信。合わせてデジタルプロモーションも強化し、開幕までのフェーズに合わせて制作するコンテンツ(記事・動画・NFT)を活用した万博来場・地域誘客を促進します。

また高付加価値旅行者の獲得に向けて、2023年3月には「地方における高付加価値インバウンド観光地づくりモデル観光地」を観光庁が11地域選定。高付加価値商材の開発のほか、国内関係者のネットワーク化・旅行会社へのセールス・情報発信・ガイド育成などに着手していきます。

アドベンチャートラベルの拡大に向けては、ファムトリップの開催や特設ページの運営、グローバルメディアと連携した情報発信などを実施。継続的な販路拡大、情報発信強化に取り組むといいます。

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パネルディスカッション「持続可能な観光地域づくりに向けた取り組み」

最後に、株式会社石見銀山群言堂グループ 松場 忠氏、一般社団法人越前市観光協会 上城戸 佑基氏、Tricolage株式会社 吉田 史子氏、ファシリテーターとしてJNTO 市場横断プロモーション部 門脇 啓太氏の4名によるパネルディスカッションが行われました。

ディスカッションのテーマは「持続可能な観光地作りに向けた取り組み」です。登壇者は「地域事業者」「地域での取りまとめ役」「旅行手配会社」と、それぞれの立場から、持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)について取り組み内容を紹介しました。

インバウンド旅行フォーラム
▲左から、一般社団法人越前市観光協会 上城戸氏 、JNTO 市場横断プロモーション部 門脇氏、Tricolage株式会社 吉田氏、株式会社石見銀山群言堂グループ 松場氏

日本のものづくりをテーマにしたブランド「群言堂」などを手掛ける石見銀山群言堂グループの代表の松場氏は、持続可能な地域とは「新しいものを開発するだけでなく、今あるものをどうつなげていくかが大事」といいます。

同社の本社があるのは、石見銀山にある人口約400人の大森町です。石見銀山が世界遺産登録された平成19年当時、町には約80万人の観光客が訪れ、住民生活に支障が出ていました。そこで住民憲章が作られ、観光を「生活観光」という言葉に置き換えて捉え直し、訪れた人に町の暮らしそのものを楽しんでもらう観光のあり方を構築していきました。

2023年にはオーストラリアからきた家族が3か月ほど町に滞在。地域の人と生活を共にすることで「観光客ではなく友達のような関係性」を築けたといいます。そうした取り組みの結果、同地域は「Sustinable Japan Award 2024」の「Satoyama部門」で最優秀賞を受賞しています。

越前市観光協会の上城戸氏は、「見極め」と「マッチング力」をテーマに取り組みを紹介しました。上城戸氏は、ツアーなどを企画する際に「まずは地域事業者の意志を見極めることが大切」といいます。

地域事業者へツアー客の受け入れ意思や理想とする客層を、まずは丁寧にヒアリング。受け入れる側にとっての「適した客層」を明確にしたうえで、その客層を顧客に持つ旅行会社を選定することで、事業者と顧客の良質なマッチングを推進しているといいます。

こうした取り組みの結果、上城戸氏は「地域の事業者と顧客がお互い笑顔になる状況が増えた」と説明。「見極めとマッチングによって良い状況が続くような取り組みをしていきたい」と話しました。

Tricolage株式会社の吉田氏からは、「旅行会社の視点で考えるサステナブルな旅」について解説がありました。

吉田氏は、旅行会社がサステナブルな旅を提供するには「地域との関係構築が最も重要」と話します。Tricolageでは旅行プランを作る際に、可能な限り現地に足を運ぶことで、現地のDMOや観光協会、地域事業者との信頼関係を構築。オンラインの情報だけでは知り得ないリアルな魅力を把握することで、付加価値の拡大につなげているといいます。

たとえば伝統工芸に興味がある外国人観光客に対して、ギャラリーに立ち寄るだけの旅行と、「工房で職人と交流する体験」では付加価値が大きく異なります。吉田氏は「(旅行会社が)地域を知っているからこそ、顧客に魅力を伝えられる。その重要性が増している」と述べました。

最後にファシリテーターである門脇氏は、「旅の魅力を存分に味わってもらうことが必要」と説明し、「観光客に楽しんでもらうことを一番に目指すことが大切」と述べました。

またJNTOとしては、グローバルメディアと連携した情報発信や旅行会社の招請などを通じて、サステナブル・ツーリズムを推進していくとしています。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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