日本政府観光局(JNTO)は10月23日、メディアブリーフィング(メディア向けの報告会)を開催。インバウンド観光をめぐる最近の動向や、万博、高付加価値旅行といった分野におけるJNTOの取り組みについて説明しました。
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訪日客数の動向について、JNTOの見解は
はじめに、インバウンド観光をめぐる最近の動向について、日本政府観光局(JNTO)理事 出口 まきゆ氏より説明がありました。
まず訪日外客数については、既報の通り2024年1〜9月の累計で2,688万人となり、2023年年間の2,507万人を上回る状況となっています。市場別では、回復が遅れていた中国市場について、過去最高には届いていないものの2023年を上回っており「堅調に回復している」としました。そのほか東アジア3市場、東南アジア6市場、欧米豪市場も非常に好調に推移しているとしています。
また、観光庁が発表している訪日旅行消費額についても、同じく2024年1〜9月の累計で5兆8,582億円と2023年年間の消費額を上回っており、1人あたり旅行支出も増加したと報告しました。
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8〜9月の訪日客数、前月比減少でも「むしろ例年より好調」
一方、一部報道では、2024年8月・9月の訪日外客数がそれぞれ前月(2024年7月・8月)よりも減少しているとし、直近の円高傾向や中国・米国の不景気などを要因として挙げるものもあります。しかし、2019年やそれ以前の訪日外客数の動向を見ると、例年7月をピークに8〜9月は少しずつ減少する傾向が見られており、円高や不景気により減少したといえるのかは疑問です。果たして、JNTOの見解はどうなのでしょうか。
これについて出口氏に伺ったところ、やはり「8〜9月は例年7月よりも減少する傾向がある」とのこと。これは訪日外客統計が「入国日」を対象とした調査であり、学校などの夏季休暇が終わる直前となる8月後半には入国する人が減るためなのだといいます。つまり8〜9月の動きは例年のトレンドに沿った減少であり、円高や不景気などによって訪日需要が衰えたわけではない、といえます。
さらに例年と比較した際、2024年8〜9月のグラフの傾きはむしろゆるやかで、JNTOとしては「8、9月“なのに”この程度の減少で済んでおり、好調に推移している」という見方をしているということです。
地方部の外国人宿泊者数も2019年同月超えに
宿泊旅行統計調査を見ると、東京・京都・大阪の三大都市に外国人宿泊者が集中する傾向は未だ続いているようですが、地方部でも2019年同月比を超えており「回復傾向にあると見ている」ということです。
市場別に見ると台湾、韓国、米国、豪州、シンガポールといった市場で2019年同期を上回り、特に欧米各市場を中心に地方部への宿泊者数が伸びてきているとしています。
欧米圏で「魅力的な観光地」として注目浴びる日本
出口氏は最後に、欧米において、日本が観光地として注目を浴びていると報告しています。
たとえば『コンデナスト・トラベラー』米国版の読者投票「世界で最も魅力的な国」において、日本が2年連続の1位を獲得。ほかにもデンマークのトラベルメディアノルディックによる「トラベルアワード」の「欧州以外で最も魅力的な国」を日本が初めて受賞したり、『ナショナルジオグラフィック』による「ベスト・オブ・ザ・ワールド2025」25選に金沢が選出されたりと、欧米圏の権威あるアワードにおける日本の快進撃が続いています。
大阪・関西万博 / 高付加価値旅行推進の取り組みについて
来年2025年に開催を控える大阪・関西万博の取り組みについて、日本政府観光局(JNTO)市場横断プロモーション部 市場横断グループ 次長 渡部 顕氏は、万博を契機とした訪日旅行の認知獲得、想起や予約促進、地方への誘客を進めていくと述べました。ターゲットは、アジアでは中国・台湾を中心に、欧米豪中東では米国・イタリア・ドイツ・中東地域を中心とするとのことです。具体的な施策としては、
- 旅行博・商談会による情報発信
- デジタルプロモーション:取材記事制作、動画制作、デジタルアート制作
の2点を実施。特に来月11月からはNFTを活用したデジタルアート制作に取り組み、日本の自然・食・文化の魅力を水墨画で表現していくとしています。
また、高付加価値旅行推進に向けた取り組みについて、同じく市場横断プロモーション部 高付加価値旅行推進室 マネージャー 伊藤 亮氏は、JNTOとして高付加価値旅行を推進するにあたり、まず高付加価値旅行者に刺さるコンテンツの収集・蓄積、次に商流に乗せていくための国内・海外のネットワーキングが重要な役割だと述べています。
具体的には、たとえばSerandipians(欧州の高付加価値旅行を扱う旅行会社が加盟するコンソーシアム)と連携した旅行会社招請事業を実施。福井の越前和紙工房、瀬戸内・倉敷の藍染デニム工房や備前焼工房などの場所を訪問、職人技を視察してもらう取り組みを行っています。
今後は国内関係者のネットワークイベントや、Japan Luxury Showcase(海外旅行会社との商談会)、高付加価値旅行ガイド研修などを実施していくとしています。なかでも、「ラグジュアリートラベルに対応できるガイドがいない」という点を課題に挙げたDMCが多いといい、50名程度を対象にガイド研修プログラムを実施し、ガイド不足の解決に貢献していくということです。
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