2024年度は「地方誘客の強化」と「高付加価値旅行の推進」が鍵。JNTOの方針と取り組みを聞いた

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日本政府観光局JNTO)は4月24日、メディアブリーフィング(メディア向けの報告会)を開催。訪日インバウンド観光をめぐる最近の動向や、地方誘客の強化に向けた2024年度の主な取り組み等を説明しました。

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訪日インバウンド観光をめぐる最近の動向について

訪日インバウンド観光についてはJNTO 理事の中山氏から解説がありました。

すでに発表されているJNTO観光庁の調査を踏まえ、2024年3月が単月で300万人を超えたこと、最初の3か月で856万人に達していることなどを説明。月別の推移を見ても、過去最高の水準でスタートを切っているとしています。

日本政府観光局(JNTO)理事 中山氏
▲日本政府観光局(JNTO)理事 中山氏:訪日ラボ撮影

中国は2019年同月比65%程度で推移していますが、昨年2023年と比較してかなり回復してきていると指摘。コロナ前は団体で来る人が目立ちましたが、今は個人旅行が多く、それなりに所得水準が高い人が来ているとしています。欧州市場も桜の季節があったことを踏まえ、「好調すぎる」くらいの状況だと話し、全体として平均泊数が伸び、長く滞在する人が増えていることも良い傾向だとしました。

宿泊者数を見ると、地方部も2019年の水準に近いところまで戻ってきているものの、引き続き都市圏へ集中する傾向がみられ、地方部へどう誘客していくかが課題だとしました。

今後はボリュームが期待できる東アジア市場を高めつつ、泊数や消費の多い欧米市場を誘客し、底上げしていく方針だということです。

2024年度、地方誘客の強化に向けたJNTOの主な取り組みについて

続いて、地方誘客の強化に向けた、2024年度のJNTOの主な取り組みについて、同じく中山氏から説明がありました。大きな方向性としては既存の訪日マーケティング戦略をベースに、持続可能な観光、消費額の拡大、地方誘客の促進を軸とし、その中でも2024年度は地方誘客の促進に重点を置くとしています。

具体的には以下のような取り組みを行います。

1. 航空会社、旅行会社と連携した地方誘客の取り組み

「あと一押しすれば訪日してくれそう」なターゲットへ向けて、予約・購入を促す取り組みです。台湾香港タイなどを中心に直行便を活用したプロモーションを実施しつつ、今年度初の取り組みとして欧州市場に向けた地方訪問を働きかける取り組みも行うとしています。

2. アジアにおける大規模キャンペーン

昨年度に引き続き実施するもので、市場ごとに重点地域を選定し、メディア・インフルエンサーの招請や、OTAと連携した販売促進キャンペーンを実施します。

3. 高付加価値旅行の推進

地方における消費額を増やす観点で、コンテンツの磨き上げなどを実施します。観光庁によるモデル観光地を中心に、ネットワーク化や情報発信を支援していくとしています(これについては後半に詳しく紹介します)。

4. アドベンチャートラベル(AT)の推進

昨年度北海道にてATWSを開催したところで、ATの目的地としての日本の魅力を訴求しました。今年度以降はより取り組みを進化・具体化させるべく、11月に沖縄で「Adventure Week」を実施するなどの施策を実施します。

5. サステナブル・ツーリズムの推進

日本らしいサステナブルな観光コンテンツの収集、情報発信を進めます。

また、今年度の新たな取り組みとして、サステナブル・ツーリズムに関心の高い海外の旅行会社を招請し、厳しいフィードバックをもらい地域へ連携するとしています。

6. 大阪・関西万博に向けた取り組み

昨年度まではBtoBに注力してきましたが、今年度は1年後に控え、BtoCの取り組みを強化していくとして、万博を契機とした日本全国の魅力発信などを実施するということです。

能登半島の観光復興の取り組み

次に、1月1日に発生した能登半島地震の影響を受けた被災地について、風評被害防止や観光復興をはかる訪日プロモーションを重点的に実施すると表明しました。

被災地の復旧状況を踏まえ、かつ北陸新幹線延伸の機会も捉え、正確な情報発信を精力的に行っていくということです。具体的には、メディア、インフルエンサー、旅行会社招請などを実施します。

地域・関係機関との連携の強化

次に、地域・関係機関との連携の強化については、以下の方針となっています。

1. 広域連携DMOとの連携事業

10の広域DMOと連携し、デジタルマーケティング支援や旅行会社との共同広告による商品販促などを通じ、地方部における周遊促進をはかります。

2. 全国各地の特別な体験等の情報発信

JNTOオウンドメディアを活用し、積極的に情報発信をする取り組みです。昨年度は地方の観光コンテンツを77件発信しており、2024年度も観光庁が支援する事業について発信していくとしています。

3. 関係機関と連携した情報発信

観光庁以外に、環境省、農水省、文化庁などと連携します。一方的に発信して終わりではなく、発信への反応・反響を各省庁にフィードバックしていくということです。

国際会議・インセンティブ旅行の誘致

最後に国際会議・インセンティブ旅行の誘致について、欧米豪からのMICE誘致の強化、さらにはインセンティブ旅行の開催意欲が高いスペイン、メキシコなどからの旅行会社招請を実施するということです。

高付加価値旅行モデル観光地と連携したプロモーション強化について

続いて、高付加価値旅行モデル観光地と連携したプロモーション強化について、市場横断プロモーション高付加価値旅行推進室 マネージャー 伊藤氏から解説がありました。

日本政府観光局(JNTO)市場横断プロモーション部 高付加価値旅行推進室 マネージャー 伊藤氏
▲日本政府観光局(JNTO)市場横断プロモーション部 高付加価値旅行推進室 マネージャー 伊藤氏:訪日ラボ撮影

観光庁およびJNTOでは、着地消費額1人あたり100万円以上の旅行者を「高付加価値旅行層」と定義しています。人数ベースでは全体の1%ですが、消費額では14%を占めており、経済効果が非常に高い層です。また、知的好奇心が高く、地方誘客とも親和性が高いはずだと指摘しています。

現状では高付加価値旅行層を誘致するにあたり、コンテンツの不足、宿の不足、人材の不足、旅行会社のコネクションが弱いなど、課題が山積みの状況です。観光庁は2023年3月に11のモデル観光地を選定し、重点的な取り組みを実施しています。

これに付随する形で、JNTOは以下4つの柱に沿って施策を実施するとしています。

  1. 高付加価値旅行のサービス内容の収集・蓄積
  2. 国内関係者のネットワーク化
  3. 海外に向けたセールスの強化
  4. 海外に向けたBtoB、BtoCの情報発信の強化

国内関係者のネットワーク化については、高付加価値旅行を取り扱うDMCとのマッチングイベントを実施しています。

DMC…Destination Management Company

昨年度初めて実施し、700件近くの新たなネットワーキングを作れたとのことで、参加者からも「今後の商品造成に役立った」「ターゲットが明確になった」などの評価を受けたとのことです。

次に情報発信の強化については、高付加価値旅行コンテンツの収集と発信を実施します。すでに4言語で特設ウェブページを運営しており、今年度は11地域のブランディングを各地域でも進めてもらいつつ、どういったデスティネーションなのかを紹介するページの制作などを実施するとしています。

海外の旅行会社へのセールス強化については、昨年度「Japan Luxury Showcase(商談会)」、ファムトリップを実施しています。

関連記事:注目が高まる「高付加価値旅行」とその戦略とは?JNTO「Japan Luxury Showcase」を取材

海外旅行会社から評価が高かった高付加価値旅行コンテンツとは?

商談会に対するバイヤー、セラーの評価は、海外バイヤーからは90%、セラーからは70%の最高評価を受けています。セラーからの評価が比較的低かったことについては、商談、ネットワーキングの時間が短かったとのフィードバックを受けているとしています。

日本への送客意向も97%と高く、アンケートの時点では2024年に4,000人、2025年に5,300人の送客を見込んでいるとしています。

ファムトリップの中で評価が高かった高付加価値旅行コンテンツとして、たとえばその道を極めた職人の工房を訪ね、どういう思いで作品をつくっているのかなどを聞いていくような体験が、「Authenticな(本物の)体験」として評価されたとのこと。さらに、実際に沖縄で暮らしている人と交流するような体験も高評価を得たそうです。

新たな気づきとして、欧米豪は初訪日が多いため、「まずは東京を見てから地方に行きたい」というニーズが強いことから、東京と地方を組み合わせて発信するのが重要だと指摘しました。

最後に、今後はモデル観光地の認知度を上げていくことが重要だとして、グローバルメディアの招請による情報発信も実施するとしています。昨年度はCNNと連携し、沖縄(やんばる)、鳥取・島根・富山を特集したところ、接触者数はそれぞれ推計2.1億人、3.4億人と大規模なものになったことから、今年度も同様の施策を予定しているということです。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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