JNTOの今後の方針は?MICE・日米観光交流年・地域連携 ほか【メディアブリーフィング2024年7月】

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日本政府観光局JNTO)は2024年7月24日にメディアブリーフィング(メディア向けの報告会)を開催。訪日インバウンド観光をめぐる最近動向とMICE(国際会議)誘致に向けた動き、そして日米観光交流年をはじめとする今後の取り組みなどを説明しました。

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インバウンド観光をめぐる最近の動向について

報告会の冒頭は、JNTO理事の出口まきゆ氏が登壇。既に発表されているJNTO観光庁の調査を踏まえ、インバウンド観光の最新動向について解説しました。

▲日本政府観光局(JNTO)理事 出口氏:訪日ラボ撮影
▲日本政府観光局(JNTO)理事 出口氏:訪日ラボ撮影

訪日外客数は2023年10月から直近の2024年6月まで、9か月連続で2019年同月比を上回る水準を維持。2024年1月から6月の累計は1,778万人で、過去最高を記録した2019年同期を100万人以上上回りました。また、2024年6月には過去最高だった2024年3月の水準を超え、単月の過去最高を更新しています。

訪日外国人旅行消費額は、2024年4月〜6月の3か月で2兆1,370億円を記録。2019年同期比で68.6%増となり、四半期として過去最高を更新しています。

宿泊数については、都道府県により回復率は変わるものの、コロナ前と比べて回復傾向を維持。JNTOとしては今後も地方との連携を進め、魅力発信をきめ細かく行いながら地方誘客につなげていく考えを示しました。

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国際会議誘致の政府目標と課題

次にMICEプロモーション部次長の板垣彩子氏が登壇し、国際会議誘致における国内向けプロモーションの取り組みについて説明を行いました。

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国際会議誘致の経済効果

まず国際会議開催の意義について、板垣氏は「高い経済波及効果が望める」と説明。国際会議を理由とした訪日外国人は、一般的な旅行者と比べて滞在日数が長く、滞在地での消費額が多いことから、地域経済へ大きく貢献しうると述べました。

例えば、2017年に京都で開催された「第23回世界神経学会議」では、会議参加者8,641人のうち41%にあたる3,542人が外国人でした。域内消費額は21.3億円に達し、そのうち外国人の個人消費額は8億2,900万円を記録。さらに、平安神宮や醍醐寺など世界遺産を活用したパーティーなども開催され、地域の観光資源を国内外に発信する機会となりました。

国際会議は、地域経済へ大きな影響を与えると同時に、欧米市場への訴求力強化や新しい観光コンテンツの開発など様々なメリットがあるといいます。一般旅行者だけでなく国際会議などのビジネス往来の促進も観光振興においては大切な取り組みのひとつです。

MICEに関する政府目標

国際会議開催地として日本政府が掲げる目標は次の2点です。

  • アジア主要5か国(日本・韓国・中国・豪州・台湾)における国際会議の開催件数に占める割合を3割以上とし、アジア最大の開催国とする。
  • 2030年までに国際会議の開催件数で世界5位以内

2023年の世界の国際会議開催件数は、国別で日本は全体7位(アジアでは1位)であり、「アジア最大の開催国」という目標は達成しています。しかし、世界5位以内とする目標は未達で、2023年度の世界5位であるドイツとは100件以上の差がある状況です。

一方でアジア太平洋地域における都市別の開催件数をみると、日本では東京や京都以外にも、富山や新潟といった地方部を含む13都市での開催実績が示されています。この結果を踏まえ板垣氏は、日本は地方都市でもインフラが整い、学術的な拠点がある点を大きな強みとして積極的にアピールしていきたいと述べました。

目標達成への課題と対策

世界5位以内という目標を達成するために、JNTOとしては以下の5つを課題として具体的な取り組みを進めていく予定です。

  • 若手の研究者による学会活動への積極的な貢献の促進
  • 国際学会において主導的な立場に立つ研究者の輩出
  • 学術分野における日本の研究力の維持・向上
  • 国内学会や大学、研究者の国際化の推進
  • JNTOや国内のコンベンションビューロー等の取り組みに対する認知度向上

課題解決のための具体策として、まずは国内プロモーションを強化し、幅広く国際会議開催の意義を周知していく方針です。将来的に国際会議誘致の中心人物になり得る大学教授や若手研究者を対象に、日本での国際会議開催に対する興味関心を喚起していきます。

さらに、国内候補都市の選定や誘致委員会の出席、立候補提案書作成のサポートなど具体的な誘致活動に対しても国をあげて支援を実施するといいます。英語で適切なプレゼンテーションが行えるようネイティブスピーカーによるコンサルティング支援なども含め、多角的な支援体制を整えています。

「日米観光交流年」に関連した取り組み

続いてJNTO海外プロモーション欧米豪・中東グループマネージャーの山本祐輔氏が登壇。日米間の観光交流の現状や「日米観光交流年」に関わる取り組みについて紹介しました。

▲日本政府観光局(JNTO)海外プロモーション部 欧米豪・中東G マネージャー 山本氏:訪日ラボ撮影
▲日本政府観光局(JNTO)海外プロモーション部 欧米豪・中東G マネージャー 山本氏:訪日ラボ撮影

関連記事:2024年は「日米観光交流年」。米国市場のインバウンド動向や需要について、JNTOニューヨーク事務所長 山田氏に取材した

日米の観光客数の状況

日本を訪れる米国人の数は、2019年に172万3,861人、2023年は204万5,900人を記録。2024年に入ってからも順調に推移し、2024年の1〜6月の訪日米国人数は134万2,900人で、6月は単月の過去最高を更新しました。

一方でアメリカを訪れる日本人の数は、2023年は151万8,522人と2019年(375万2,980人)の半分以下。2024年1〜5月の訪米日本人数は約70万人との発表もあり、日本からのアウトバンド市場は伸び悩みが続いている様子です。

日米観光促進のためのJNTOの取り組み

日米間の相互往来の回復・拡大に向けては両国共に様々な取り組みが進んでいます。2024年1月〜2025年3月は「日米観光交流年」とすることで両国が合意。官民観光関係者が密接に連携し、双方向の観光交流の拡大に向けた取り組みが進行中です。

JNTOが現在進めている主な取り組みは下記の3つです。

・日米観光交流年特設ページ作成・ロゴの活用

米国向けJNTOウェブサイト内に特設ページを設置し、日米観光交流年の概要や関連イベント、様々な観光情報について発信。サイト内では日米観光交流年のロゴを活用し、交流促進に向けた機運の醸成を目指しています。

・ジャパンパレード&ストリートフェア2024

2024年5月にニューヨークで行われた日本文化の魅力を発信する「ジャパンパレード&ストリートフェア2024」で、JNTOは観光情報ブースを出展しました。ブースのほか、『スター・ウォーズ』で有名な映画制作会社Lucas Film社と連携した山車をパレードで披露。現地メディアや参加者に向けて日本への観光を呼びかけました。

・一般消費者向け訪日促進キャンペーン

ジャパンパレードの参加を皮切りに、日本行き航空券やホテル宿泊券などが当たるキャンペーンを実施。5月11日〜6月末までの間に、応募数が1万4,000名を超えるなど大きな反響がありました。(キャンペーン期間は9月末まで継続中)

「日印観光交流年」に関連した取り組み

近年はアメリカだけでなく、インドとの交流促進に関しても取り組みが進んでいます。14億人の人口を誇るインドですが、そのうち海外旅行に出かける層は約2,500万人ほど。人気の旅行先はヨーロッパで、日本を訪れるインド人は2024年1月〜6月で約12万人(2019年比31.2%増)となっています。

こうした状況を踏まえ、海外プロモーション東南アジアグループ 次長の中野知明氏は、インドとの「日印観光交流年」に関する取り組みについて解説を行いました。

体験型アクティビティを開催

インドと日本の両政府は2023年3月に2023年度を「日印観光交流年」とすることで合意。その後、期間は2024年度へ延期され、現在イベントを中心としたさまざまな交流促進活動が続けられています。

具体的には、インドの旅行会社向けセミナーや、日本の観光地を直に体験してもらう取り組みを実施。日本のゴールデンルートに広島を加えた観光ルートに体験型アクティビティを取り入れた旅行会社向けのツアーを開催し、日本旅行をアピールしました。

インド人誘客の課題

インド旅行会社向けの体験ツアーを実施した際、インド人誘客に向けた課題も見えたと中野氏は話します。

インド人にはベジタリアンが多いものの、食べられるものは人によって様々で、その度合いは人によって大きく異なります。そのためツアーでは、その場で食材が確認できるお好み焼きが非常に好評だったそうです。一方で、一般的には外国人にも人気だとされている天ぷらは、「中に何が入っているかわからない」との理由で一部では不人気だったといい、食材を説明しても警戒心を解けない場面があったそうです。

また、インド人観光客は消費額における宿泊費の割合が約41%と高く、食の多様性への対応に慣れている外資系ラグジュアリーホテルが人気です。こうした点からも、インド人誘客のためには安心できる食環境の構築が大切といえるでしょう。

今後の取り組み

JNTOの今後の取り組みとしては、現地の商談会など関連イベントを多数行う予定だといいます。2023年度の商談会はムンバイとベンガルールの2都市で開催し、2024年度はデリーを加えた3都市で実施する方針です。

また東京などの大都市だけでなく、北海道東北北陸などでも誘客活動を進めていく予定だといいます。またインド人に人気の桜を契機としたプロモーションにも力を入れていくと述べました。

JNTOの地域連携の取り組み

インバウンド客の地方誘客は国を挙げた取り組みのひとつであり、JNTOとしても各地域と連携を進めながら各種支援を行っていく予定です。

海外事務所職員による地域観光コンテンツの磨き上げサポート

地方誘客促進の策としてJNTOは2024年6月から「海外事務所職員による地域観光コンテンツの磨き上げサポート」を実施。JNTOの海外事務所職員が日本各地域を訪れ、観光資源の視察・体験を行い、観光コンテンツの磨き上げに関するアドバイスを行っています。

訪問地域は全国5コース・10地域を対象としており、各地で地域の方々へ視察内容を踏まえたフィードバック等の講演を実施。視察と講演会は6月下旬から順次行われ、8月いっぱいまで各地で行われる予定です。

「第27回JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」の開催

2024年9月5日〜6日には、国際観光における現状の共有や海外の訪日市場の理解促進などを目的に「第27回JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」の開催が決定。JNTO海外事務所長の公演や、MICE関係者と地域関係者とのトークセッション、サスティナビリティ(持続可能な観光地域づくり)に関するパネルディスカッションなどが予定されています。

2024年後半も積極的なプロモーションを展開

報道陣からの質疑応答では、今後の見通しや地方誘客についての質問がありました。以下に質疑応答の内容を一部ご紹介します。

質問1:訪日客数について、2024年後半の見通しについて教えてください。

訪日客数の増減には様々な要素が関係してくるので、現時点ではっきりとした見解をお伝えすることはできません。観光庁は「力強い成長軌道に乗っている」とのことなので、JNTOとしても、このままの好調なペースを維持できるように積極的にプロモーションをしていきたいと思います。

質問2:地方誘客について力を入れて取り組む旨を岸田総理も語っていたが、JNTOとしては地方誘客をどのように進めていくのか教えてください

先ほど説明した通り、海外事務所職員による地域観光コンテンツの磨き上げサポートの実施や各種イベントを通じて、地方の魅力度向上・プロモーションを強化していく予定です。世界26か所に事務所があることがJNTOの強み。それぞれの事務所から得た情報を関係各所に紹介したり、DMOとの連携も進めたりしながら、誘客を進めていきたいと思っています。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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