難しい市場ではない!?訪日インド市場を“近づける”ヒントと共通点

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前回の記事では、訪日インド人旅行者の目的・行動パターン・情報収集チャネルをタイプ別に整理し、インド人旅行者の解像度を上げる=ターゲット理解の重要性をお伝えしました。今回は更にDeepDiveし「なぜインド人は日本を訪れるのか?」「どんな体験に価値を感じているのか?」など、“インサイト”の部分に迫っていきます。さらに、インド市場を“特別な、難しい市場”ではなく、“他市場との共通点を持つ、アプローチ可能な市場”として捉え直す視点もご紹介いたします。

東南アジア市場(タイインドネシアなど)との共通点に注目し、インド市場向け訪日プロモーションのヒントを探ります。

最後に、こうしたインサイトや共通点を踏まえて「どうアクションにつなげるか?」についても、方向性案をお話させて頂きます。

文/大瀧直文(BRANDit Japan)

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第4章:インド人旅行者インサイト/東南アジア市場との共通点とは?インド人旅行者のタイプ別インサイト

訪日インド人旅行者を効果的に呼び込むためには、「なぜ彼らが日本を訪れるのか?」「どんな体験に価値を感じているのか?」という視点から、旅行タイプごとの“インサイト”を理解することが重要です。以下に、代表的な旅行者タイプごとに、日本への期待や感動ポイントを整理しました。

1. 富裕層ファミリー・三世代旅行者

特徴・行動傾向:

インド富裕層ファミリーは、家族全員での上質な文化体験を求めています。高級ホテルやプライベートツアー、伝統文化体験を好み、特に三世代での旅行が主流です。全員が安心して過ごせる環境や食事(ベジタリアン)への配慮、多言語対応のガイドが求められます。

また、Marriott Internationalの報告によれば、インドの高所得者層は、料理体験や高級宿泊施設を優先しており、ラグジュアリーな旅行体験への需要が高まっています。

(参照 - India's New High Net Worth Travelers – India Report)

2. ミレニアル&Z世代旅行者

特徴・行動傾向:

SNS映えするスポットやグルメ、アニメゲーム文化に興味を持つミレニアル&Z世代の旅行者は、無料Wi-Fiキャッシュレス決済英語対応の案内など、利便性も重視します。

Amadeusの「Travel Dream」レポートによると、インドの旅行者の約50%が、旅行先の選定にSNSインフルエンサーの影響を受けていると報告されています。

(参照 - How Travel Influencers Are Shaping the Way India Travels)

3. ハネムーン&カップル旅行者

特徴・行動傾向:

桜や紅葉など季節限定の自然美、リゾートホテル、プライベートディナーなどロマンチックな演出を求めるカップル旅行者は、特別プランや記念写真を重視します。

Skyscannerの報告によれば、インドの旅行者にとってビデオゲームが旅への憧れを掻き立てる大きな要因として浮上しているといい、文化的な体験や共有できる冒険を重視し、伝統的な観光から専門的な・情熱に基づいた旅行へとシフトしています。

(参照 - Travelling levels up with gaming-inspired getaways)

4. アドベンチャー&スリル体験探求者

特徴・行動傾向:

富士登山、スキー、アミューズメント施設など、自然と一体になれる体験を好む層は、安全対策と多言語のガイド、アクセスの良さが行動に影響します。

Expedia Indiaによれば、インドの旅行者の約半数が、旅行先の選定においてアクティビティの有無を重視しており、目的地よりも体験を重視する傾向が強まっています。

(参照 - Travel Trend: Indian Travelers Make Decisions Based on Activities Over Destination)

実は多い!?東南アジア市場との共通点

続いて、インド市場を“特別な、難しい市場”ではなく、“他市場との共通点を持つ、アプローチ可能な市場”として見るため、心理的ハードルを下げるための視点をご紹介します。

インド市場は「人口の多さ」「距離が遠い」「多様性」などの点から「非常に難しい市場」と感じられている方が未だに大多数かと思います。

一方「食などの生活習慣」「メディアタッチポイント」「人気の日本カルチャー」など、すでに他のアジア市場で培ってきた知見、対応策を“応用できる”領域が多いのも事実です。

1. 宗教的配慮や食文化の対応

タイインドネシアムスリム対応と同様、ベジタリアンメニューの整備はある程度は進んでいるケースもあると感じています。また「インド人は全員がベジか?」というと決してそうでなく「決めた曜日のみベジだが、その他の曜日はそれ以外も食べる」など「日本の食、その地域の食を楽しむ機会がある」方が居るのも事実です。(ヒンドゥー教の「曜日断食(Fasting)」を守る人も多くいらっしゃいます。)

2. メディアタッチポイント

インドはスマートフォン保有率・インターネット利用率ともに急伸(インターネットユーザー8億以上*)しており、SNSなどを中心とした“モバイルファースト”な情報設計も、他アジア市場での「旅前、旅中、旅後」のアプローチ実績の応用できる可能性があります。もちろん、その8億の中で訪日可能性が高い「デモグラフィックは?」「保有携帯電話のOSは?」などターゲティング設計は重要な要素となります。

(*参照 - Digital 2025: India — DataReportal – Global Digital Insights)

3. 旅行スタイルの共通性

近年、インドの若年層旅行者は「体験重視」の傾向を強めており、観光地を“見る”よりも“感じる”ことに価値を見出す傾向が顕著です。これはタイインドネシアなど東南アジア諸国の若年層旅行者とも共通しており、アクティビティ性の高い旅行体験や文化参加型のプログラムのニーズが高まっています。

(参照 - Skift – India’s New High-Net-Worth Travelers)

インドでは、祖父母、両親、子供といった複数世代による家族旅行が一般的です。Booking.comの調査によると、インドの家族旅行の57%が複数世代での旅行を計画しており、これは東南アジア諸国でも見られる傾向です。このような旅行スタイルに対応するためには、すべての世代が楽しめるアクティビティや、コネクティングルームなどの宿泊施設の整備が求められます。

(参照 - Booking.com Unveils New Insights on India’s Intergenerational Travel Surge)

第5章:インサイト・共通点を踏まえて、取るべき今後のアクション、対応策の方向性は?

今後のアクションアイディア

インド市場への対応に不安を感じる声としてよく挙げられるのが「言語」「食文化の違い」「要望が多い」という点です。それぞれの“懸念”を、視点を変え「今後のアクションへヒント」として捉える例をご紹介します。

よくある不安

「実は…」不安の解消とNextアクションへのヒント

英語が通じるか不安

都市部出身のインド人旅行者は英語が堪能。案内・POP・スタッフ対応が英語であれば、十分満足されるケースが多い。

ベジタリアンばかり?対応できないのでは?

先に上げた通り、実際には非ベジタリアンや完全なベジでない方も多く「インド人だから、、」でなく、“選べる環境”「選択肢の提示」をして上げる事で満足度の向上に繋がる傾向があります。

要望が多く、対応に追われる。

要望が多い=わがまま。扱いづらい。と捉えられがち、、
しかし「とりあえず言ってみる」感覚の彼らからすると、ダメなら仕方ない。とすぐに切り替えてくれます。
「聞く姿勢。真摯に受け止める」その姿勢を見せる。それが全てであり、「全てを受けようとする。叶えようとする」必要はないケースが多いです。
(参照 - What is the Negotiation Style in India?)

14億人ではなく、“理解できるターゲット”から始める

今回の記事では、訪日インド人旅行者のタイプ別インサイトを整理するとともに、東南アジア市場との共通点に着目しながら、インド市場攻略のヒントを探りました。

インド=特別で難しい市場」と構えるのではなく、すでに実績のある東南アジア諸国と“似ている点”を出発点にし、受け入れの心理的ハードルを下げ、実行可能なアクションを見つけに行くのがはじめの一歩となると感じます。

「14億人の国」ではなく「どんなインド人が日本に来ようとしているのか?」「その一人のインド人」の解像度を上げることが重要だと感じます。

私たちはBRANDitは、約14,000のインド旅行代理店及び業界メディアとのネットワークにより、日々情報収集を行っています。その中で、インドの最新トレンドやインド人旅行者の現在の嗜好をキャッチアップし、引き続き日本の皆様へお届けして参りたいと思います。

著者プロフィール:BRANDit Japan・カントリーマネージャー 大瀧直文

日本、海外の広告業界で18年の実績を持ち、オンオフ統合メディアキャンペーン、インフルエンサーマーケティング、クリエイティブ制作、イベント、TV番組制作などの現場実績を持つ。
5年間のインド駐在を経てインドにおける観光マーケティングに精通。JNTOデリー事務所をクライアントとし、「Japanブランド」のブランド戦略、メディアキャンペーンの実行、ブランドリフト調査、セールスレップ活動、イベントプロデュースなどを牽引。その他日系企業のメディアキャンペーン、クリエイティブ制作など多数プロデュース。

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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

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「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる

【インバウンド情報まとめ 2025年5月後編】2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? ほか


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      この記事の筆者

      大瀧直文

      大瀧直文

      BRANDit Japan・カントリーマネージャー

      日本、海外の広告業界で18年の実績を持ち、オンオフ統合メディアキャンペーン、インフルエンサーマーケティング、クリエイティブ制作、イベント、TV番組制作などの現場実績を持つ。
      5年間のインド駐在を経てインドにおける観光マーケティングに精通。JNTOデリー事務所をクライアントとし、「Japanブランド」のブランド戦略、メディアキャンペーンの実行、ブランドリフト調査、セールスレップ活動、イベントプロデュースなどを牽引。その他日系企業のメディアキャンペーン、クリエイティブ制作など多数プロデュース。

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