Booking.comのトップマネジメントに聞く、日本市場の可能性と「AI検索体験」の未来

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世界最大級のオンライン旅行予約プラットフォームBooking.com」。近年では、生成AIなども活用しながら、ユーザーの利便性向上や事業の最適化に貢献しています。

今回は、Booking.com アジア太平洋地域担当マネージング・ディレクターのローラ・ホールズワース氏にインタビューを実施。AIを活用した旅行検索体験の変化、今後の展望について伺いました。

Booking.comアジア太平洋地域マネージング・ディレクター ローラ・ホールズワース氏
▲Booking.comアジア太平洋地域マネージング・ディレクター ローラ・ホールズワース氏


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Booking.comから見る、アジア太平洋地域および日本市場のトレンド

── ローラさんは現在、Booking.comアジア太平洋地域担当のマネジメントディレクターを務めていらっしゃいますが、普段はどういった業務を担当されているのでしょうか。

私たちマネジメントディレクターは、Booking.comに掲載しているホテルの運営会社様との調整や、旅行客を獲得できるようにするための発信など、幅広い分野に関わっています。

なかでも私は、アジア太平洋地域を成長させることを重視しつつ、地域内・地域外からの旅行客をさらに獲得できるように魅力を伝えていくことを仕事としています。

── 現在、日本では訪日インバウンド旅行者と消費額が過去最高となっています。コロナ禍前以上に好調となっている傾向がありますが、アジア太平洋地域とその他地域を比較した上で、日本市場の動向をどのように見ていますか。

ここ最近のトレンドを見ていても、日本はアジア太平洋地域のなかでもインバウンドに勢いがある国だと感じています。

私たちは、アジア太平洋地域内での旅行者の動きのうち、ひとつの地点から次の地点までの経路を「コリドー」と呼んでいるのですが、人気のあるコリドーには必ず日本が含まれているんです。

とくに台湾や韓国、タイ、シンガポールといった国から日本に来るルートが盛んで、その動きはBooking.com上でも顕著にあらわれています。

── 宿泊を伴う旅行プランの動きは、今後どう変化すると予想されていますか。

世界全体と比較して、アジア太平洋地域内では「地域内での旅行」が多い傾向にあり、タイや中国などを旅行先として選ぶ方が多いです。ただ、最近は地域外においても、ヨーロッパをはじめとしたアジア太平洋地域外の各国から日本へ旅行をする層は増えており、インバウンドは盛り上がりを見せています。

ただ一方で、オーバーツーリズムについても話題にあがっていることについても留意しなければなりません。オーバーツーリズムの問題は大都市圏への集中により起こる傾向があり、少しでも地方に分散し、解消させたいという想いは、アジア太平洋地域で共通のものといえるでしょう。

旅行プランを練るなかで、彼らを大都市から分散させていく流れについては、私たちがサポートできるポイントだと思います。

── 具体的に、Booking.comだからこその強みはどこにあると思いますか。

リサーチした内容をもとに、その国や地域ならではの魅力を見つけられるところでしょうか。

私たちはリサーチしたデータをもとに、毎年旅行のトレンド予測を立てています。 予測をするなかで、世界の旅行者のトレンドや行動の変容に関するデータも集まるので、それをもとに観光の価値をサポートすることができるんです。

たとえば、コロナ禍を経て、旅行者の60%以上の人がサステナビリティやウェルネスを軸に旅行するようになった、80%以上が文化体験のために旅行している……といったデータがあります。私たちはそれらを分析した上で、日本の文化と掛け合わせて「ウェルネスやウェルビーイング、文化体験といった文脈は日本だからこそ提供できる価値だ」と見出し、提案することができます。

AIの登場による検索行動や予約体験の変化は

── Booking.com上では、旅行客のニーズを汲み取ったうえで適切な観光プランを提供する「AI Trip Planner」機能などを展開されていますが、AIの登場によって検索行動や予約体験の変化はありましたか?

AIの発展によって、検索行動や予約体験はポジティブな方向へと変わってきています。たとえばこれまでなら、ホテルや旅行プランを探す際に泊まりたい場所や部屋の条件を検索フィルターにかけていたところを、「フライト地点の東京から3時間で行けるスポット」「ホテルの部屋は広すぎないほうがいい」といった抽象的な希望をもとに検索ができるようになりました。

これらの検索にあたっては、ホテル側が入力している情報はもちろんのこと、3億7,000万ものゲストからのレビューも参照しながら、旅行の計画を立てることができるように設計されています。

現在AI Trip Plannerは英語でのみの提供となりますが、多言語での展開も準備しています。ただ情報に正確性が求められるので、取得できるデータの正確性の確認に時間を要しているところです。

── 先ほどBooking.comの強みとして「その国や地域ならではの魅力を見つけられるところ」とおっしゃっていましたが、それとAIを組み合わせるとさらにどんな価値が生まれるとお考えですか?

現在、大都市に訪日外国人観光客が集中してしまうオーバーツーリズムの問題が起こっています。AIを活用することによって、彼らを地方に分散させるサポートができると考えています。

たとえば、日本の観光地で東京・大阪・京都くらいしか知らない観光客がいると仮定しましょう。そういった人が観光地を検索するとなると、これまではそうした大都市だけを観光することになってしまっていました。

今後はAIを使って検索するようになるので、ユーザーの要望に合わせつつも、「ユーザーがまだ知らない場所」を提案するというのもやりやすくなるはずです。

AI時代の検索体験では「フィーリング」が重要に

── AIの検索体験によって、これまでなかなか知られていなかった素敵なスポットが訪日外国人にも知られるようになるのは良いことですね。

そうなんです。また、もしホテルや旅館がBooking.comに提携されていれば、そのスポットの説明はもちろんのこと、エリアの説明や、これまで伝えることが難しいとされていた「フィーリング」を共有することも可能になります。

── フィーリングとは、どういったことを指すのでしょうか?

フィーリングというのは、実際に体験した上での「感情」をあらわします。たとえば、「ホスピタリティが良かった」「とてもいい体験ができた」といった、感情に訴えかけてくる部分のことをいいます。

これまでは具体的な条件やアクセスといった、運営しているホテル側が発信する「ファクト」を伝える側面が強かったのですが、ゲストのレビューを参照にしたデータをもとに提案できるので、「このスポットに訪れたら、どのような感情を抱けるのか?」といった点についても共有しやすくなりました。

AI時代の検索体験では、こうした「フィーリング」が情報として蓄積されているかどうかが重要になってくるでしょう。

AI時代、宿泊事業者や体験事業者がやるべきこととは

── 今後AIが普及していく社会で、宿泊事業者や体験事業者はどのように対応していくべきとお考えですか。

将来的に重要になっていくのが、なるべく多くの良質なデータを補足できる体制づくりだと思います。

具体的には、施設の説明などを常に最新の情報にしたり、変化をすぐに反映したりすることが大切だと考えています。

また、その説明も言葉だけではなくて、写真をはじめとしたビジュアルで見せていく姿勢を持つべきだと思います。

さらに、エリアの説明や魅力を伝えていくための情報を盛り込むことで、よりフィーリングに合った予約体験ができるようになるのではないでしょうか。

Booking.comが描く今後の戦略とは

── Booking.comのAIによるビジネスモデルや戦略について、今後の展望はありますか。

展望といっても、そもそもAIの技術の進化があまりにも早いので、なかなか予測が難しいところではあるのですが……。私たちのAI技術は、旅行計画に適用され、強化されているテクノロジーなので、今後も活用し続け、一般的なものとして浸透したら嬉しいと感じています。

また現状では、旅行の「検索」はしやすくなってはいるものの、AIを活用した「予約」をするまでには至っていません。予約に際しては個人情報も扱いますし、テクノロジーそのものやブランドに対する信頼が重要になっていくと思います。

Booking.com社としては、AIを活用したからこその利便性向上も実感してもらいながら、予約をするタイミングに信頼に足るブランドでありたいですし、あり続けると確信しています。 

── では最後に、Booking.comの日本市場における展望についてお聞かせください。

私たちは日本のことを、アジア太平洋地域のなかでもフォーカスすべき重要な市場であるという認識を持っています。

以前ほど中国から日本への旅行者の動きが活発ではありませんが、一方でインドではアウトバウンドの観光客が増加傾向にあるなど、日本を訪れる旅行者の層には変化が出てくるでしょう。

インバウンドを活性化させるために、ビザなどの規制が域内で緩和される流れが予測できるなかで、それらの国に注力しながら、「誰もが簡単に世界を体験できるようにする」というBooking.comとしてのミッションを達成していきたいです。

Booking.comのオフィスは、日本では東京・大阪の2拠点にあります。パートナーさんと常に対話を行い、データを共有しながら、事業を最適化しインバウンドを盛り上げるサポートを行っていきます。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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