株式会社JTB総合研究所は、「日本におけるツーリズム2035 55の視点」を公表しました。
同レポートは、専門家22名へのアンケートをもとに、2035年の観光に影響を与えると考えられる要因をまとめ、今後の観光を考えるための資料となっています。
本記事では、55の視点のうち、インバウンドに関わる項目を一部ピックアップして紹介します。
AI・プラットフォームビジネスの参入拡大
今後3年以内に起こり得ることとして、AI・プラットフォームビジネスの参入拡大が進むと予測されています。
テクノロジーの導入によって、AIやプラットフォーム関連企業が主要な情報収集・予約手配の手段となり、観光産業の中心がそうした企業に変わると考えられています。
また、今後、参入の障壁が緩和されることで新たなテクノロジーを活用したサービスが登場するものの、シェア拡大には時間がかかり、消費者の支持を得られる企業は限られるとしました。
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小規模宿泊施設の参入拡大
今後3年以内に起こり得ることとして、小規模宿泊施設の参入拡大が予測されています。
訪日客の増加により、従来の宿泊施設とは異なる中長期滞在型マンション、古民家のような宿泊施設の選択肢が増え、宿泊の多様化が進むと考えられています。
現在ではAirbnbなどの仲介サイトの普及により、民泊という宿泊形態が定着しつつありますが、今後もさまざまな層に向けて民泊が拡大すると見られます。
一方、宿泊施設の多様化によって施設運営上のトラブルやコストの増加なども起こり得ると指摘されています。
また全国で課題となっている空き家などの住宅問題との連動についても注視する必要があります。空き家問題については、JTBはAirbnbと連携協定を締結し、空き家の利活用による地域の受け入れ環境整備に取り組んでいます。
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文化・価値観の均質化が人とのつながりを重視
今後4〜5年先に起こり得ることとして、文化や価値観の均質化が一層加速し、「人とのつながり」などのコンテンツが重視されるようになると予測されています。
テクノロジーが発展しリアルとバーチャルの融合が加速することで、人とのつながりを重視する新たな価値観が創造されます。リアルでのコミュニケーションの価値が高まることで、人とのつながりを創出するコンテンツが重視されるようになるということです。
実際に、地元の人々と交流し、現地の生活を体験する旅行スタイルは世界的なトレンドとして注目されており、人との交流に価値を見出す傾向は続くといえそうです。
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ライドシェアの全面解禁
今後6〜7年先に起こり得ることとして、ライドシェアの全面解禁に向けた動きが加速すると予測されています。
ライドシェアとは、一般のドライバーが自家用車を使って有償で人を運ぶサービスで、地方部における交通空白の解消や観光の移動の足としても注目されています。日本では、「日本版ライドシェア」としてタクシー事業者の管理下で自家用車・一般ドライバーを活用した運送サービスが運用されています。
レポートでは、世界のライドシェアの動きや訪日客からの要望などを背景に、政府が制度設計を進め、全面解禁に向けた動きを加速させていく可能性を示しています。
一方で、国内規制の限界やライドシェアに対する抵抗感など、将来に向けた課題も残っています。
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時間・場所の分散による混雑の緩和
今後6〜7年先に起こり得ることして、時間・場所の分散により観光地の混雑が緩和すると予測されています。
現在、人気の高い観光地では混雑に対する問題が拡大しており、旅行者の満足度、質の維持、地域住民の生活環境の保全・安定などの視点から対応策が求められています。
その一つとして「時間と場所の分散」が重点政策となり、先端技術を活用したリアルタイムの混雑情報や価格変動(ダイナミックプライス)、その他付帯サービスなどの分散誘導サービスが広がるとしています。また、自動運転などの技術進歩によって人材不足が補完され、移動がより容易になることで、観光客の分散が促進されるということです。
一方で、桜など期間が限定される観光資源では、混雑解消への取り組みは困難になるとされています。また、混雑を知らせる技術や利用者が分散する動機付けなどは検討事項として残ります。
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<参照>
株式会社JTB総合研究所:日本におけるツーリズム2035 55の視点
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