日本政府観光局(JNTO)は10月22日、メディアブリーフィング(メディア向けの報告会)を開催。
インバウンド観光をめぐる最近の動向や、デジタルマーケティング、AdventureWeek2025東北などの取り組みについて説明しました。
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インバウンド観光をめぐる最近の動向について
はじめに、インバウンド観光をめぐる最近の動向について、日本政府観光局(JNTO)理事 出口 まきゆ氏より説明がありました。訪日客数、過去最速で3,000万人超え 消費額・宿泊数も好調
9月の訪日外客数は326万6,800人となりました。また、9月までの累計は3,165万500人となり、過去最速で3,000万人を突破しました。観光庁が発表している訪日外国人旅行消費額については、2025年7-9月期は2兆1,310億円(前年同期比11.1%増)で好調でした。宿泊数についても、三大都市圏の宿泊者数だけでなく、地方部でも引き続き増加傾向にあるとしました。
また2019年を100%とした「世界全体と日本における外国人旅行者の成長率」では、2025年上半期は世界全体の伸びが103.7%であったのに対し、日本は129.4%となり、世界全体の伸びを上回ったと述べました。
ほかにも出口氏は、米国市場で訪日旅行の選択率が上昇していると紹介。米国における2024年の国外旅行者が2019年の1.08倍の伸びであったことに対し、訪日者数は1.58倍となりました。これに伴い、訪日旅行の選択率も2019年の1.7%から2.5%に上昇しました。
出口氏は、訪日選択率の上昇が好調なインバウンドを支えているとして、「JNTOとしては、各市場および市場横断でさまざまな取り組みを実施することで、引き続きインバウンド誘致に力を入れたい」と述べました。
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日本が3年連続で「世界で最も魅力的な国」に
そのほかに、日本が欧米の旅行雑誌や業界紙で高評価を受けていると報告しました。大手旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」が発表した米国版ランキングでは、日本が3年連続で「世界で最も魅力的な国」に選出されました。また、人口50万人以上の大都市部門「世界で最も魅力的な大都市」では、東京が2年連続で1位になったほか、京都が2位に選出されました。
北欧地域の旅行業界に特化したデンマークのメディアグループ「Travelmedia Nordic」が主催する「Danish Travel Awards(デンマーク・トラベル・アワード)」においては、日本が2年連続で「欧州外で最高の旅行先」に選出されています。
また、米有力旅行メディア「ナショナル ジオグラフィック」が発表した「2026年に行くべき世界の旅行先25選」には、山形県が選出されています。
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大阪・関西万博について 「得られた知見を横浜花博に活用していく」
10月13日に閉幕した大阪・関西万博について、観光庁の村田茂樹長官は10月15日、定例会見にて「国際相互理解の増進による、諸外国との友好関係のさらなる深化が進んでいることを実感した」と振り返り、「万博を契機として、大阪方面を中心とした国内旅行の増加や訪日客の関西地域以外への誘客に一定の効果を生んだ」と述べました。大阪万博の振り返りと今後の観光に向けたJNTOの考えを伺ったところ、出口氏は、開幕後に海外事務所と連携したインフルエンサーやメディアの招請を行い、「万博+観光」を掲げて四国など他地域も巡るようなプロモーションを実施したと振り返り、これまでの取り組みを今後につなげていきたいと語りました。
市場横断プロモーション部の高橋氏は、大阪万博で得られた知見を2027年に横浜で開催予定の「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」に活かしていきたいと述べました。また10月1日に開設された園芸博の特設Webサイトを紹介し、園芸博への誘客および園芸博を契機とした日本全国への誘客につながる取り組みを今後検討していきたいと話しました。
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JNTOの取り組みについて
続いて、JNTOのさまざまな取り組みについて紹介がありました。デジタルマーケティングの取り組み SNSや生成AI対策に注力
まずは企画総室 デジタルマーケティングセンターの鄭氏より、JNTOのデジタルマーケティングの取り組みについて説明がありました。近年の旅行者の情報収集に関する大きな変化として、SNSと生成AIの影響力の増加が挙げられます。
JNTOは時代の変化に沿ってWebサイトおよびSNSの運用を続けてきたとして、SNSでは旅行インスピレーションを刺激するようなショート動画やリールを作成していると説明しました。
また生成AIについては、生成AIに好まれるWeb情報設計が重要だとして、来年度にかけて、E-E-A-T対策*の最適化や内部リンク構造の最適化、生成AIが参照しやすい情報(FAQやランキング記事など)の拡充などを実施する予定だと述べました。
*Google公開の検索品質評価ガイドラインで定義されている、Webサイトを評価する基準の一つ。「Experience(体験)」「Expertise(専門性)」「Authoritativeness(権威性)「Trustworthiness(信頼性)」の頭文字をとったもの
関連記事:生成AIが観光の課題をどう変える?活用事例や注意点も解説
「AdventureWeek2025 東北」の取り組みと成果について
続いて、市場横断プロモーション部 高付加価値旅行推進室の春原氏より、「AdventureWeek2025東北」の取り組みと成果について説明がありました。AdventureWeek2025東北は、東北観光推進機構、ATTA、JNTOの主催にて9月に開催されました。ツアー名を「Authentic Japan TOHOKU ~From Spirituality to Resilience, Through Nature‘s Embrace~」として、ハイキングやトレッキングを盛り込んだ行程を作成したと述べました。
参加したバイヤーの声として、「東北にはまだ知られてない本物(authentic)の日本の魅力がある」といった好意的な感想が寄せられたほか、「スルーガイドと専用車両の利用が前提のツアー以外にも、公共交通機関を利用したセルフガイドツアーにも対応できる環境が必要」といった指摘もあったと紹介しました。
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「VISIT JAPAN トラベル & MICE マート」の取り組みと成果について
続いて、市場横断プロモーション部市場横断グループの高橋氏より、「VISIT JAPAN トラベル & MICE マート」の取り組みと成果について説明がありました。VISIT JAPAN トラベル & MICE マートとは、JNTOが主催する国内最大級のインバウンド専門の商談会で、今年は9月に実施された「ツーリズムEXPOジャパン2025 愛知・中部北陸」との同時開催となりました。
今回は海外バイヤーとして、アラブ首長国連邦、カタール、カンボジアが初参加となりました。日本側のセラーにおいては、小規模自治体を対象とした、従来の半分の期間である1.5日の参加を可能とする「地域優先枠」を新設しました。高橋氏は、セラーの参加数を前回よりも約1割増加させたことで、商談機会も拡大したと振り返りました。
また商談会参加後は、中部・北陸エリアを中心とする12コースのファムトリップも実施し、好感を得られたと述べました。
地域の取り組み支援について 人材育成やコンテンツの磨き上げを支援
最後に、地域連携部の吉越氏より、地域の取り組み支援についての説明がありました。JNTOでは、インバウンド誘致に取り組む地域を支援するためにさまざまな施策を実施しているとして、「地域におけるインバウンド人材育成支援」と「海外事務所職員による地域観光コンテンツ磨き上げサポート」について紹介しました。
インバウンド人材育成支援では、全国10都市でインバウンド研修会を開催し、講演やJNTO職員との個別相談会が実施されています。
また地域観光コンテンツ磨き上げサポートでは、海外事務所職員が地域の観光コンテンツを実際に視察し、視察内容をフィードバックして磨き上げにつなげるといった取り組みを実施していると説明しました。
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