訪日外国人にとっていまや外せない代表的な買い物スポットとなっているのが、総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」です。運営する株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、PPIH)によると、訪日外国人の同店来店率は24.7%(2025年時点)に達しており、じつに4人に1人が足を運んでいる計算になります。
そんなドン・キホーテが6月25日、東京都台東区に新店舗「ドン・キホーテ浅草EKIMISE店」をオープンしました。訪日ラボが同店を取材し、その売場づくりからドン・キホーテのインバウンド対応の最前線に迫りました。
人気観光エリアで、訪日外国人特化型の新店舗をオープン
浅草EKIMISE店は、東武スカイツリーライン「浅草駅」直結の商業施設「浅草EKIMISE」の4階に出店しています。「駅直結で気軽に立ち寄れるインバウンド型ドン・キホーテ」をコンセプトに、観光や移動の合間に、短時間で効率的に買い物を楽しめる店舗をめざしています。
浅草エリアにおけるPPIHの出店は、雷門から徒歩圏内にある「ドン・キホーテ浅草店」に続く2店舗目となります。先行する浅草店は来店客数が訪日外国人だけで1日1,500人以上に達する人気店です。
新店舗である浅草EKIMISE店の売場面積は542.5平方メートルと、浅草店の4分の1ほどのサイズです。
最大の特徴は、この限られたスペースを有効活用し、インバウンド需要に特化した、売上効率の高い店づくりを実践している点です。
とくに品揃えについては、浅草店の実績に基づき、訪日外国人の需要が高い商品に絞り込みました。具体的には、化粧品や医薬品、健康食品、和物土産品、家電製品、キャラクターグッズといった、人気カテゴリーを中心とした売場を展開しています。
主要客層は欧米と台湾、平均客単価が2.5万円に達する時期も
PPIHの東京C第4支社支社長で、秋葉原、上野、浅草、御徒町エリアの店舗を統括する花井章郎氏は、訪日外国人の利用動向について「浅草店では、訪日外国人による売上が全体の7割以上を占めている。国籍別では、欧米と台湾からの来客が圧倒的に多い」と話しています。
平均客単価は台湾をはじめ東アジアは2万円強、欧米のなかでも米国は約2万5,000円に達する時期もあります。
昨今のインバウンド市場については、「訪日中国人客の減少による業績への影響を懸念していたが、そのほかの国からの来店が増えており、全体のインバウンド売上は着実に伸びている」と花井氏は述べています。
カテゴリー別の売上高構成比では、とくに化粧品の割合が高く「一度使って良かったから再度購入する」といったリピート購入が定着しています。
メーカーとも協業 インパクト溢れる売場で買い物の楽しさを演出
浅草EKIMISE店では実際にどのような店づくりをしているのでしょうか。
まず、コンパクトな店舗でありながら、陳列や什器の工夫によって、圧倒的なインパクトと買い物の楽しさを体感できる売場演出を行っています。
たとえば、メインの出入口すぐの場所では、食品サンプル売場を展開しています。浅草周辺では同ジャンルの専門店が訪日外国人から支持を得ており、同店でもその需要を取り込むべく売場の一等地に配置しました。
ショーケースを設置してバリエーション豊かな寿司サンプルを陳列し、来店客に「選ぶ楽しさ」を提供しています。
また、店内で一際目を引くのが、メーカーとの協業による売場づくりです。ドン・キホーテ店頭でのプロモーションは売上貢献度が高いことがすでに実証されており、メーカー側から積極的な提案が行われています。
オープン時、株式会社資生堂の人気ヘアケアマスク売場では、浅草EKIMISE店限定デザインの什器を導入するとともに、商品を大量に陳列していました。
徹底した多言語表記や免税対応で、快適な買い物環境を提供
売上効率を高めるためには、訪日外国人客にとって快適な買い物環境を提供することも重要です。
浅草EKIMISE店では、PPIHが独自開発した多言語対応のAI画像検索サービス「AI商品ナビ」によって、訪日外国人の効率的な買い物をサポートしています。
これはインバウンド型店舗を中心に展開を進めているシステムで、店頭の二次元コードからアクセスし、目的の商品名を入力するか商品画像を読み込ませるだけで、AIが該当する売場を店内マップ上に提示してくれる仕組みです。
免税手続きにおいても迅速な対応が求められます。先行する浅草店では免税レジが混雑する傾向にあるため、浅草EKIMISE店は免税レジを合計6台と手厚く配置しました。
体験イベントで旅マエから来店動機をつくる
そのほか、浅草EKIMISE店は「買うだけでなく、体験できる店」を掲げ、店頭でのイベントにも力を入れています。
店舗上階にある催事スペースで、日本ならではの文化や季節の要素を取り入れたイベントを定期的に開催する計画です。開店日には、餅つき体験イベントを実施し好評を得ました。
ドン・キホーテでは、こうした体験型イベントをインバウンド強化店舗で積極的に実施していく方針を取っています。店頭での体験をSNSなどで拡散してもらうことで、未来の訪日客に対して、「旅マエ」の段階から来店動機の創出を図ります。
体験型イベントでは、店舗の売上が伸長する効果も出ています。浅草店では、訪日外国人から人気の高い日本産のイチゴに着目し、プランターを店頭に並べてイチゴ狩りを体験できるイベントを開催しました。その結果、開催日は通常時を大幅に上回るイチゴの売上を記録しました。

免税売上4,000億円目指し、インバウンド対応店舗を積極出店へ
こうした売場づくりや店頭イベントにより、浅草EKIMISE店はコンパクトな店ながら日本人も含めて1日約400人の集客を見込んでいます。
今後について花井氏は「今回の浅草EKIMISE店をオープンしても、浅草エリアの需要はまだ取り切れない。都心部では引き続き、出店機会をうかがっていく」と話しています。
PPIHは、インバウンド市場の獲得を、重要な成長機会の1つと位置づけています。同社の2025年6月期の免税売上高は1,742億円に達しており、2035年6月期までにこれを4,000億円へと拡大させる意欲的な目標を掲げています。この達成に向けて、今後もインバウンド対応を強化した店舗の出店を進める方針です。
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