日本政府観光局(JNTO)は7月22日、メディアブリーフィング(メディア向けの報告会)を開催。
インバウンド観光をめぐる最近の動向や、米国市場に向けた訴求、5月に開催された「Japan Luxury Showcase 2026」の成果などについて説明しました。
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インバウンド観光の最新動向 進む国籍の多様化
はじめに、インバウンド観光をめぐる最近の動向について、日本政府観光局(JNTO)理事* 出口 まきゆ氏より説明がありました。
*肩書きは会見当時のもの

2026年上半期訪日外客数、東アジア3市場は全月で前年以上の水準に
2026年上半期の訪日外客数は、2,108万4,800人となりました。2年連続2,100万人を超えたものの、今年は前年同期比2.0%の減少となっています。
今年は旧正月(春節)やイースターの期ずれ、一部市場での航空便減便などの影響もあり、上半期は2月・3月以外の月で前年同月を下回る結果でした。これには、2025年12月以降中国市場で前年同月を下回る状況が続くことも関係しているとみられます。
ただし出口氏は、全体としては堅調で、6月には15市場で月としての過去最高を更新したと強調。エリア別の状況をみると、東アジア3市場(韓国・台湾・香港)は特に好調で、すべての月で前年同月を上回ったほか、東南アジア6市場(タイ・シンガポール・マレーシア・インドネシア・フィリピン・ベトナム)でも多くの月で前年以上の訪日客数を記録したと説明しました。
また、欧州5市場(英国・フランス・ドイツ・イタリア・スペイン)と、米州・豪州・その他の国・地域でもほとんどの月で前年同月を上回り、好調な結果だとしています。
関連記事:6月の訪日外客数は315万人、香港が28.5%増 2026年累計は2,100万人を突破
地方部延べ宿泊者数、カナダと欧州市場の多くで増加率10%超
続いて出口氏は、観光庁が発表している訪日外国人旅行消費額についても言及しました。2026年4-6月期の訪日外国人旅行消費額は前年同期比0.2%増の2兆5,096億円で、国・地域別でみると米国が第1位でした。
訪日外国人1人当たり旅行支出(着地分のみ)は同3.3%増の24万4,457円となっています。
宿泊旅行統計調査(2026年1~4月(速報))については、地方部への延べ宿泊者数が17市場で前年同期を上回ったと説明。出口氏は、カナダや欧州市場の多くで前年同期比10%以上増加し、特に好調な推移をみせていると述べました。
欧米豪の訪日客数は10年で3倍に 家族・親族での訪日が特に伸長
これらの結果をふまえ、出口氏は欧米豪市場*からの訪日客数の成長についてさらに補足しました。
2015年から2025年までの10年間で、同市場からの訪日客数は245万人から703万人と、約3倍に成長。国・地域別の構成比では12.4%(2015年)から16.5%(2025年)と4.1ポイント増加し、訪日旅行市場の多様化に寄与していることがわかります。
また、2024年度にJNTOが同市場の人々に「今後行きたい国」を聞いたアンケート(VJ重点市場基礎調査)では、8か国中6か国で日本が1位になりました。2023年度の同調査と比較すると、1位を維持した豪州以外のすべての国で順位が上昇しています。この結果について出口氏は、世界的に著名な旅行雑誌で日本が魅力的な目的地として選ばれるなど、注目度や露出機会が高まっていることを理由として挙げました。
加えて出口氏は、家族・親族との訪日が10年間で2.6ポイント増加していること、0歳~10歳代(未成年)の訪日客の伸び率が全年代よりも高いことに触れ、日本が欧米豪の旅行者にとってスタンダードな目的地化しているとも述べています。
JNTOはこれらをふまえつつ、今後もインバウンドの多様化に向けたプロモーションを続けていく方針です。
*米国、カナダ、豪州、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペインの8か国
米国市場へウェルネスデスティネーションとしての日本を訴求
次は、米国市場に向けた日本ならではのウェルネスの訴求について、海外プロモーション部の熊野氏より紹介されました。
米国建国250周年をふまえ、「日米観光交流促進キャンペーン2026」を実施
2025年の訪日米国人は前年比21.4%増の330万6,823人で、過去最高を記録。2026年(1月~6月期)も同7.1%増で推移し、引き続き好調な動きをみせています。2025年の訪日米国人旅行者の1人当たり旅行支出は33万9,708円で、コロナ前の2019年と比較すると79%増と伸びが目立つのも特徴です。
こうした潮目と、2026年に米国が建国250周年を迎えることをふまえ、現在官民一体で「日米観光交流促進キャンペーン2026」が実施されています。同キャンペーンで、一般消費者向けプロモーションやメディア招請に加えて重点的に行われているのが、ウェルネスをテーマとしたメディア広告の展開です。
ウェルネスツーリズム需要拡大に応え、地方誘客促進・滞在日数延伸へ
米国では、近年ウェルビーイング(健康や幸福)への関心の高まりから、旅行を通じて心身を整え、内面的な充足や自己成長を求めるウェルネスツーリズムの需要が拡大しています。なかでも米国で広がっているのは、伝統文化の体験、地域住民との交流、食文化との触れ合い、自然のなかでの滞在といった「Beyond Spa(ビヨンドスパ)」の概念です。
熊野氏は、日本にはお伊勢参りや善光寺参り、湯治や禅など、古くから根づく習慣や文化があり、これらには高い付加価値や競争力があると強調。これらを活かしながら、ウェルネスデスティネーションとして選ばれる国を目指すことで、地方誘客の促進や滞在日数の延伸を進める方針を今回打ち出しました。
具体的な施策としては、島根県、三重県でのウェルネス旅の様子を紹介した動画広告の制作や、こうした土地の食文化などに直に触れられるメディアイベントがすでに行われ、アンバサダーとして著書『人生がときめく片づけの魔法』が世界累計1,400万部を突破した「こんまり」こと近藤麻理恵氏が起用されています。
熊野氏は、JNTOの今後の方針として、今回制作した動画広告を活用しながら米国市場に向けて積極的なPRを展開していくと述べました。
MICE誘致・開催の工夫を表彰 国際会議誘致・開催貢献賞
MICEプロモーション部の佐藤氏からは、国際会議開催件数の現在地や国際会議誘致・開催貢献賞の取り組み紹介、今年度の推薦募集について説明がありました。
国際会議、約4割が地方都市開催 全体の伸びに寄与
2026年3月に閣議決定された「第5次観光立国推進基本計画(以下、基本計画)」でも、アジア最上位、世界5位以内という具体的な数値目標が掲げられている国際会議の開催件数。国際会議協会(ICCA)が発表した2025年の国際会議統計によると、日本は前年から1ランクアップして世界第6位、アジア太平洋地域では4年連続で第1位に位置しています。
コロナ前の2019年に558件とピークを迎えた日本での国際会議開催件数は、2025年はコロナ前比9割弱の491件にまで回復。アジア太平洋地域の都市別開催件数では、上位85位以内に京都、大阪、札幌など19都市がランクインしており、特に地方部(三大都市圏以外)での開催が全体の約4割を占め、件数の押し上げに寄与しています。
国際会議は開催日数が平均3.7日と長く、付随して1都市での滞在日数が長期化するのが特徴です。また、外国人参加者1人当たり平均消費額が54万9,000円と、一般的な観光滞在と比べ、非常に高い金額になる傾向があります。
今年も優れたMICE誘致・開催の取り組みを表彰 推薦募集は9/30まで
これらをふまえ、JNTOは施策強化を図るべく、2026年4月にMICEマーケティング戦略を策定しました。同戦略では「国際会議」「インセンティブ旅行」に加え、双方に共通する「基盤整備(人材育成)」が3本柱として掲げられています。基本方針では、大学研究機関などとの連携による開催意欲の喚起や、ベストプラクティスなどの共有を通じた地方開催の推進といった達成に向けたアクションも設定されました。
今回、佐藤氏より紹介された国際会議誘致・開催貢献賞は、誘致活動や開催時に優れた取り組みを行った国際会議の主催者、関係者を称えるべく、JNTO主催で2008年より毎年実施されているものです。昨年は、人口10万人規模の地方都市で地域を巻き込み、次世代育成にも寄与した「第16回国際クマムシ学会(山形県鶴岡市開催)」や、フードダイバーシティメニューの開発・提供、五島市と連携したスタディーツアーの実施など、地元の産官学民一体で受入体制を構築した「第8回保健システム研究グローバルシンポジウム(長崎県長崎市開催)」らが表彰されました。
今年度の国際会議誘致・開催貢献賞の推薦募集はすでに開始しており、締切は2026年9月30日17時となっています。佐藤氏は同賞を通じて、国際会議の誘致、開催に関するベストプラクティスを日本全国へ広く共有し、各地の意欲向上や日本全体でのノウハウ蓄積に向けて取り組みたいという考えを示しました。
関連記事:2025年の国際会議開催地ランキング、日本は世界6位にランクアップ
グリーンシーズンの魅力をアピール 「Japan Luxury Showcase 2026」成果報告
さらに、市場横断プロモーション部長の藤内氏からは、前回のメディアブリーフィングでも紹介された「Japan Luxury Showcase 2026(以下、JLS2026)」の成果について、共有がなされました。
JLS2026は、欧米豪などのラグジュアリー旅行会社に向けて2026年5月17日~22日に開催された、招請・商談会です。今回は、2017年の開始以来初の大阪開催となり、バイヤーとして欧米豪・シンガポールといった計16か国の旅行会社40社が、セラーとして日本国内のラグジュアリーホテル・旅館、DMC、運輸事業者60社が参加しました。
藤内氏は今回、新たな試みとして開催時期を従来の2月から5月に変更し、グリーンシーズンの魅力訴求を強化したとコメント。時期をずらしたことでファムトリップが充実し、これまで見たことのない日本の一面を体験できたといったコメントが寄せられるなど、高い満足度を記録したと述べています。
同氏は、ファムトリップのなかでも、参加者全員が最上位の「満足」を選択し、特に満足度が高かった3つのコースを紹介しました。
東北海道
「手つかずの大自然を探訪する大地の旅」をテーマとし、知床五湖トレッキングツアー、アイヌ文化ガイドツアーを実施。屈斜路湖のカヌー体験では、ローカルな体験に加え大自然を独り占めできる付加価値が評価されたほか、アイヌ文化ガイドツアーではガイドの英語力・知識が高評価だったとしました。
山形
「山伏の精神とサムライの文化に触れる旅」をテーマとし、山伏による修行体験、上杉神社での書道体験を実施。日本の文化、精神性、自然が融合したコンテンツの提供が高評価を受けたほか、書道体験では書道家によるデモンストレーションや対話によって特別な体験が得られたことが高評価だったと述べています。
せとうち
「穏やかな多島美と文化が息づく旅」をテーマとし、瀬戸内海のプライベートクルージングや、船でのみアクセス可能な弓削島でのサイクリングを実施。いずれも特別感ある空間で移動、風景を楽しめる点が高い評価を得る結果となりました。
こうした取り組みによって、招請バイヤーを通じた訪日旅行者数は着実に増加しており、昨年実施されたJLS2025の成果として、すでに1万1,000人の送客効果が得られていると藤内氏は説明。九州、奈良・和歌山、北陸など、ファムトリップで紹介した地域の商品化も米国、ドイツ、イタリアなどですでに進んでおり、ツアー平均単価は国際航空券代を除いて1人あたり1万9,164USドル(約311万円)だと報告しました。
関連記事:海外バイヤーに聞いた、富裕層が訪日旅行で求めるものとは?JNTO「Japan Luxury Showcase 2026」を取材
9月開催イベントではガストロノミーツーリズム、GREEN×EXPO 2027をアピール
最後に、JNTO主催で9月に開催される「第29回JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」と「VISIT JAPAN トラベル&MICEマート 2026(以下、VJTM&VJMM2026)」について、それぞれの担当者より説明がありました。
いずれも毎年恒例のネットワーキング、商談会ですが、今年の特色として下記のトピックについての場が設けられると公表しました。
JNTOインバウンド旅行振興フォーラム
ガストロノミーツーリズムをテーマとしたパネルディスカッションが行われる予定となっています。
VJTM&VJMM2026
商談会の前後に関東エリアでの半日エクスカーションや、レジャーコース、MICEコースの2種・計12コースから選べるファムトリップを実施。また、同時開催の「ツーリズムEXPOジャパン2026」カンファレンスのテーマ別シンポジウムでは、「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」をテーマにしたインバウンドシンポジウムを開催する予定です。
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<参照>
- 日本政府観光局(JNTO)
- 観光庁
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