地方誘客を進めるには?訪日客の期待を可視化してわかった周遊ルートに隠された可能性【じゃらん観光振興セミナー2026】

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じゃらんリサーチセンターは7月29日、「観光振興セミナー2026 地域Meeting 〜地域でつくる、地域のミライ〜 関東・甲信越Meeting」を開催しました。

同セミナーは、じゃらんリサーチセンター(JRC)の研究員が、全国の先進事例やJRCの独自調査・研究を解説するもので、2006年より実施されています。

訪日ラボでは今回、各講演のなかからじゃらんリサーチセンター研究員 松本百加里氏が登壇した「インバウンド編:訪日旅行の期待を読み解く『インバウンド都道府県ポジショニング調査2026』」の様子をお届けします。

インバウンド強化には訪日客のルート・期待分析が重要

セミナーの冒頭では、松本氏が全国のインバウンド動向について解説しました。

2025年、訪日外客数は4,268.4万人、旅行消費額は9兆4,549億円とともに過去最高を記録し、1人当たり旅行支出も22.9万円と前年を超える結果となっています。国別でも、多くの国・地域が前年以上の訪日外客数を記録しました。

2026年の数字に目を向けると、1月~5月の訪日外客数は1,793.6万人(前年同期比1.1%減)と、若干減少しています。しかし、政府による渡航自粛要請の影響から、前年同期比56.2%減となる中国の減少幅を他市場で補えていると考えると、市場の多様化が進んでいると松本氏は述べました。

実際に、台湾や韓国は前年同期比20%以上の伸長をみせ、アメリカ、タイ、豪州もプラス成長となっています。この理由について松本氏は、アジア・東南アジアからの直行便増加に加え、円安の影響があるとし、「日本の魅力+コストパフォーマンスの良さ」が評価されているとまとめました。

消費獲得の鍵は自地域への理解

島国である日本において、訪日客は必ず空港もしくは海港から出入りします。受け入れ側は、訪日客の滞在期間中のルート内に自地域や施設をどう組み込んでもらうか、理由の創出や消費の獲得に向けた検討が必要となります。

そのために必要なのが、自地域への理解です。じゃらんインバウンドカルテでは、これを手助けするため、都道府県単位で以下のデータをクラスター分析し、エリアの特徴を示しています。

  • 訪問率
  • 消費単価
  • 延べ宿泊者数
  • 平均泊数
  • 空海港利用人数
  • 新幹線駅数
▲じゃらんインバウンドカルテの項目:じゃらんリサーチセンター発表スライドより抜粋
▲じゃらんインバウンドカルテの項目:じゃらんリサーチセンター発表スライドより抜粋

同カルテは今回、訪日外国人観光客のニーズをより把握しやすくするため、新たに「訪日前に楽しみにしていたこと」「出入国の多い空海港」「周遊ルート」「直前直後の都道府県」の計4項目が加えられました。

「訪日前に楽しみにしていたこと」については、頻出するキーワードが大きく表示される直感的なデザインとすることで、訪日外国人が広域ルートをどう捉えているかなどの傾向が見えるようになっています。松本氏は、これらのデータから導かれるタイプ分類を自地域のエリア戦略にぜひ活かしてほしいと語りました。

都道府県ポジショニング調査から読み取る訪日客の変化の兆し

今回のセミナーでは、じゃらんインバウンドカルテのデータを用いて行われた、都道府県ポジショニング調査の結果にも触れられています。2026年の結果からは、訪日客の動向に二つの変化の兆しが見られました。

一つ目は、「ルート伸びしろから、消費・周遊へ」といった動きです。

たとえば、2025年の前回調査では新幹線立ち寄りがメインとなっていた宮城県、神奈川県、愛知県などの地域が、今回の調査では周遊+消費獲得エリアへと変化しています。

松本氏はこれに対し、定番ルートから離れた拠点・ルート形成を望む訪日客の増加に加え、各地域が独自のテーマ性を持つことで海外の富裕層向けメディアに取り上げられるなどの動きがあったと解説しました。

二つ目の変化は、「一点突破から、周遊・消費へ」といった動きです。この傾向は、フランス×茨城県・滋賀県といった国×都道府県の組み合わせで見られており、松本氏は「長期滞在や周遊型観光が進むことで、テーマや滞在エリアの拡張につながっているのではないか」と仮説を述べています。

▲都道府県ポジショニング調査 2026年全国変化(代表例):じゃらんリサーチセンター発表スライドより抜粋
▲都道府県ポジショニング調査 2026年全国変化(代表例):じゃらんリサーチセンター発表スライドより抜粋

地域別の広域観光ルートを集客のヒントに

続いて松本氏は、観光庁「インバウンド消費動向調査」の個票データをもとにつくられた「全国のルートMAP傾向比較」の内容について紹介しました。これは東アジア・東南アジア・欧米豪の市場区分ごとに、広域観光のルートが可視化されたものです。

どの市場区分も関東・関西・北海道を中心にルートの広がりを見せていますが、東アジアは関東圏・関西圏・九州圏など、比較的地域ブロックごとにまとまったルートが形成されている様子がうかがえます。

東南アジアは、東アジアと類似するエリアも含まれますが、長野県が加わる一方で、沖縄県が入っていないのが特徴です。熱帯地域の国が多い市場であるため、自分たちの国にない冬や雪を楽しめるエリアを求める傾向が見られます。

なお、欧米豪市場では、いわゆるゴールデンルートが上位の多くを占めており、ここに広島が含まれているのが特徴です。

▲全国のルートMAP傾向比較:じゃらんリサーチセンター発表スライドより抜粋
▲全国のルートMAP傾向比較:じゃらんリサーチセンター発表スライドより抜粋

松本氏はこのほかにも、関東・甲信越地方の周遊ルートランキングや、各市場の訪日客が期待する観光スポットや行動をマッピングした表を紹介しました。

そのうえで、自地域や施設への集客を考える際には「ルートとしてどう組み込めるか」「狙えるテーマはないか」「テーマや体験を、商品として予約・アクションに結び付けられる状態までもっていけるか」といった視点が重要だと強調。データとこれらの視点を掛け合わせながら、検討していくと良いとアドバイスしています。

非観光地であることが価値に? データを使った施策実践例

最後に松本氏は、こうしたデータを活用してツアー商品化や施策実施を実現した事例を複数紹介しました。本記事では、そのなかから二つ抜粋してお届けします。

茨城県:観光地化されていない=リアルな人の暮らしを価値に

茨城県では、「ハイパーローカル」をコンセプトとし、信仰・食・農業といったリアルな人の暮らしを体験できるツアーがつくられています。データから茨城県がまだ十分に観光地化されていないことを把握したうえで、あえて「人」を打ち出そうと設計されたものです。

この事例で特筆すべきは、ガイドとDMCがタッグを組み、地域の人を主役とした一貫性あるストーリーをつくった点にあります。商品設計の段階から地域の人の声を交え、旅行会社が販売しやすいようにマニュアルや情報の整備がなされました。

また、実際に予行演習としてモニターツアーやファムトリップを実施し、販売前にストーリーのブラッシュアップも行っています。海外の旅行会社など、参加者から聞いた意見を反映することで、茨城県まで来てもらう理由を上手につくった事例だといえます。

静岡県熱海市:データを用いて旅行者のニーズに合わせた情報を発信

熱海市では、「訪日前に楽しみにしていたこと」のデータを用いて、旅行者のニーズがあるテーマをWebサイトにまとめています。

この施策では、SEOで上位に表示されるよう、他サイトとの比較や地域が持つ一次情報を詳しく載せるなど差別化も実施。旅マエだけでなく旅ナカでも使われるような仕組みを整備しました。

セミナーでは、そのほかにも三重県が実施する観光ガイド登録制度「ミエナビゲーターズ」の取り組みや、じゃらんレンタカーと海外OTAの在庫連携事例などが紹介されました。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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