訪日ラボが、日本各地の観光地の口コミを独自分析して発表している「インバウンド人気観光地ランキング」。同ランキングの東京編で1位に輝くのが「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」です。
同施設をはじめ、アートを愛する国内外の人々から支持される体験型ミュージアムを世界で展開するチームラボは、2025年10月7日に国内最大のチームラボのミュージアム「チームラボ バイオヴォルテックス 京都 - 大成建設(以下、チームラボ バイオヴォルテックス 京都)」をオープンしました。
京都市が2017年3月に策定した「京都駅東南部エリア活性化方針」に基づき、京都駅東南部エリアにおける「文化芸術」と「若者」を基軸としたまちづくりの一環として展開されるチームラボ バイオヴォルテックス 京都は、すでに「インバウンド人気観光地ランキング[京都府編]」でも7位にランクインし、来館者の約44%が訪日客だといいます。
今回は、チームラボでコミュニケーションディレクターを務める工藤岳氏に、京都にミュージアムをつくった背景や来館者の動向、今後の展望などについて話を聞きました。また、チームラボ バイオヴォルテックス 京都開館後のまちの変化などについて、京都市からの声も掲載しています。
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大好きな京都のまちの新たな目的地づくりに貢献
──チームラボ バイオヴォルテックス 京都は、京都駅から徒歩圏内の利便性が高い場所に位置していますね。まずは国内最大のチームラボのミュージアムとして、なぜ京都という場所を選んだのか教えてください。
チームラボは、2018年6月に東京・お台場に「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」をオープンして以降、国内外で大規模なミュージアムを開館してきました。豊洲、麻布台、京都、シンガポール、マカオ、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなどにあり、今後はハンブルクでもオープンを予定しています。
関西はマーケットが大きく、これまで関西で開催してきた期間限定の展覧会にも、多くの方にお越しいただいていました。そのため、常設のミュージアムにも多くの方に足を運んでいただけるのではないかと考えていました。そして何より、私たちは以前から京都のまちが大好きで、このまちにミュージアムをつくりたいという思いがありました。
京都は、長い歴史のなかで積み重なってきた文化が今も色濃く残るまちです。また、その個性に引き寄せられ、世界中から多くの人々が集まるとても特別なまちでもあります。こうしたまちにチームラボが現代アートのミュージアムをつくるのは、とてもチャレンジングであると同時に、意義のあることだと考えました。
──チームラボ バイオヴォルテックス 京都が位置する東九条エリアは、京都市が現在進めている京都駅東南部エリア活性化に向けた各種取組*の対象地域ですね。実際にこの場所にミュージアムをオープンしてみて、実感していることはありますか?
一番は立地のすばらしさですね。京都駅から歩いて7分の場所に、約1万平方メートルの広さがあるミュージアムを構えられるなんて思ってもいませんでした。
京都駅東南部に位置するこのエリアは、京都駅から近く、観光客が宿泊するホテルも数多くあります。一方で、これまでは観光の目的地として訪れる人が少なく、「JR京都駅を境に人の流れが分断されているのではないか」と言われることもありました。
そうしたなか、チームラボ バイオヴォルテックス 京都には、「伏見稲荷に行く途中で立ち寄る」「京都駅に着いて最初に訪れる」といったように、来館をあらかじめ旅の予定に組み込んでくださる方が多くいらっしゃいます。旅マエの予約が大半を占めており、訪日外国人の約25%は、来館日の30日以上前にチケットを購入しています。こうしたことからも、最初から目的地として選んでいただいていると感じています。
*京都駅東南部エリア活性化に向けた各種取組:京都の玄関口・京都駅に隣接する東南部エリアのまちづくりに「文化芸術」の視点を取り入れ、若者を中心とした新たな人の流れの創出や京都駅周辺地域・京都全体の活性化につなげることを目的に、京都市が2017年3月に策定した「京都駅東南部エリア活性化方針」に基づくもの
チームラボ バイオヴォルテックス 京都の開館後、まちはどう変わった?京都市の声を紹介
京都市内を訪れる観光客の新たな目的地として、東九条に誕生したチームラボ バイオヴォルテックス 京都。京都市は、このエリアの変化をどうとらえているのでしょうか。
訪日ラボが京都市にインバウンド観光の推進に向けた考えや同施設開館後の変化について質問したところ、書面での回答を得ることができました。
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【京都市からのコメント】 京都市では、インバウンド観光の推進にあたり、市民生活と観光が調和・両立した「持続可能な観光」の実現を目指しています。その実現に向けた対策の1つが「観光客の分散化」です。 特に努めているのが、朝・夜観光の情報発信強化やコンテンツの造成などによる「時間の分散化」と、混雑情報の見える化などを通じた周知・啓発の強化です。 これまで居住者以外に訪れる方が少なかった京都駅東南部エリアに、チームラボ バイオヴォルテックス 京都開業以降、駅から途切れず人の流れが生まれており、国内外から非常に多くの方にお越しいただいているのを実感しています。また、市内に新たな目的地ができたことは、京都を訪れる方にとって観光における場所の分散化につながっているものと認識しています。 加えて、チームラボ バイオヴォルテックス 京都は午後9時まで営業しているため、夜観光の推進を進めている京都市にとっては、観光における時間の分散化の観点からも大変意義深いことととらえています。 京都市では、寺院や庭園などを活用したナイトタイムコンテンツの拡大を図っているところではありますが、ここに新たに夜の時間帯も多くの方に選ばれるアートミュージアムが追加されたことは、ありがたく感じています。 |
関連記事:チームラボ、京都に常設アートミュージアム「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」2025年秋オープン
地域活性化に加え、場所・時間・天候3つの視点から観光客に選択肢を提供
──京都市は、伏見や大原、高雄、山科、西京、京北など、市内のさまざまなエリアの魅力を発信する「とっておきの京都プロジェクト」も実施しています。今回の京都市の回答から、特に「観光客の訪問先の分散化」という視点において、チームラボ バイオヴォルテックス 京都の存在意義や貢献度の高さを感じましたが、この点についてはどうお考えですか?
実際に私たちのミュージアムが、訪問先の分散やオーバーツーリズムの課題解決にどれほど貢献しているかは、まだわかりません。私たちは、京都市が進める京都駅東南部エリアの活性化方針に賛同し、この場所への進出を決めました。この取り組みが結果として、東南部エリアだけでなく、京都のまち全体にとっても良い影響をもたらすことができれば、うれしく思います。
──訪れるエリアの分散化に加え、京都市の回答では「時間の分散化」にも触れられています。チームラボ バイオヴォルテックス 京都では、来館する時間帯にどのような特徴がありますか?
チームラボ バイオヴォルテックス 京都は朝イチに加え、夕方以降の需要も非常に高く、京都らしい動きだなと感じています。
豊洲や麻布台は、午前中の時間枠から順番に埋まる傾向にあります。京都では朝イチの時間枠が埋まりやすい一方で、夕方以降にも客足が伸びるのが特徴です。朝イチにチームラボ バイオヴォルテックス 京都を訪れてから、神社仏閣や庭園など京都ならではの場所を巡る。あるいは、昼間に神社仏閣や庭園を巡り、拝観・開園時間が終了した後、1日の締めくくりにミュージアムを訪れる。朝イチと夕方以降のどちらも、京都観光と組み合わせて楽しんでいただける時間帯だと考えています。
──全天候型のミュージアムですし、雨の日に来館者が増えることもあるのでしょうか?
雨の日は、前日や当日のいわゆる「旅ナカ」予約が増えますね。館内での滞在時間も、天気が悪い日は長くなる傾向にあります。
──雨で庭園など屋外の観光を見送る旅行者にとっても、チームラボ バイオヴォルテックス 京都は天候に左右されずに楽しめる選択肢となりそうですね。
開館から1年、167の国・地域から130万人以上が来館 チームラボのリピーターも
──エントランスに書や盆栽による作品が展示されていたり、館内では京都生まれの日本画家・伊藤若冲の作品をモチーフにした作品《Nirvana: Fleeting Flowers》があったりと、和を感じました。展示する作品を決める際、考慮したことはありますか?
チームラボは、近代以前の東アジアの古典絵画に見られる、視点が固定されない空間認識をヒントに模索し、構築した「超主観空間」という論理構造を用いて、インタラクティブな作品をつくっています。これは、画面が境界となるカメラのレンズとは異なる論理構造です。これによって、来場者の身体がある空間と作品世界との間に境界が生まれず、自分の身体と作品世界が連続する体験をつくってきました。
そのため、和の要素を感じていただけたのであれば、「京都だからこうした」のではなく、チームラボがこれまで探究してきた表現によるものだと思います。
私たちは、伝統的な庭園や襖絵などを、「身体を動かしながら体験する空間芸術」ととらえています。今でこそイマーシブという言葉が世界的に浸透していますが、実は「作品のなかに入る」という体験は、京都などの歴史的な空間のなかで、古典絵画や庭園を歩きながら体験することを通じて、古くから実現されてきたと考えています。
フランスのルーヴル美術館などで見られるパースペクティブ(遠近法)による絵画は、正面から鑑賞するのが一般的です。その一方で、京都の神社仏閣では、庭園や襖絵などのある3次元の空間に身を置き、自分で動いて視点を変えながら鑑賞します。
チームラボはデジタルという道具を使ってアート表現をしていますが、私たちの作品も、伝統的な美術や空間芸術の連続性の上にあると考えています。京都の伝統的な神社仏閣や庭園を楽しむなかでチームラボ バイオヴォルテックス 京都にも訪れることで、時代を超えたつながりを感じていただければと思っています。


──古都を楽しむ延長線上で見ても違和感のない現代アートを実現できているのですね。「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」での体験が、京都の文化や歴史への理解を深めるきっかけとなり、まちを楽しむ入り口のひとつにもなりそうです。ちなみに、「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」では来館者の約44%が訪日客だとお聞きしました。国・地域の傾向を教えていただけますか?
「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」には、オープンから1年で167の国・地域から130万人以上のお客様に来館いただいています。訪日外国人の来館者のうち、アメリカ、オーストラリア、カナダ、イギリス、ドイツなど、欧米豪からの方が約半数を占めており、日本全体の訪日外国人の国・地域別構成とは異なる点が特徴的だと感じています。

──こうした来館者の傾向は、チームラボとして特定の国・地域や客層を意識して来館を促した結果なのでしょうか?
特定の国・地域や客層を狙っていたわけではありません。私たちは、国や地域にかかわらず、すべての方に作品を楽しんでいただきたいと思っています。現状では欧米豪から多くの方にお越しいただいていますが、これからもさまざまな方に体験していただきたいと考えています。
──Googleマップの口コミでは、「東京のチームラボプラネッツやチームラボボーダレスも行ったけれど、チームラボ バイオヴォルテックス 京都が一番よかった」という声も見かけますね。
そうしたコメントはよく目にしますし、とてもうれしく思っています。どこが一番かはその方によって異なりますが、京都では東京とは違った体験ができるので、どちらも訪れて楽しんでいただけると思います。東京のチームラボのミュージアムを訪れたことがある方にも、ぜひチームラボ バイオヴォルテックス 京都に足を運んでいただきたいですね
なかには、初回の訪日時に東京のチームラボのミュージアムを訪れ、再び訪日する際に京都にもミュージアムがあると知って、来てくださった方もいるようです。SNSなどで、実際に訪れた方からの発信を通じてよさが伝わっていくことをありがたく感じています。
約半数を占める欧米豪からの訪日客 この状況を京都市はどう見る?
一般的に1回あたりの訪日における滞在日数が長く、消費額も高い傾向にある欧米豪の訪日客。こうした人々が魅了されるコンテンツが市内に増えた現状を、京都市はどう受け止めているのでしょうか。訪日ラボが質問したところ、次のようなコメントが寄せられました。
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【京都市からのコメント】 チームラボ バイオヴォルテックス 京都には、欧米豪からの来館者が年間を通して多いと聞き、京都での滞在日数が比較的長く、アートへの関心も高い方々が足を運んでくださっていることを実感しています。 観光の持続的な発展にあたり、京都市としてはその意義や効果を市民の皆様に実感いただけるようにしたうえで、観光客をあたたかくお迎えする機運を醸成していく必要があると考えています。 チームラボ バイオヴォルテックス 京都には、引き続き伝統と革新が融合するまち・京都を象徴するアートミュージアムとして、多くの訪日客を魅了し続けていただけることに期待しています。 |
アートは非言語体験 多様な来館者が楽しむためのチームラボらしい工夫
──さまざまな言語や文化的背景を持つ方が来館されていますが、言語や文化の壁を感じることもあるのではないでしょうか。
チームラボのミュージアムでは、言語や文化的な背景にかかわらず伝わるよう、館内の楽しみ方や鑑賞のマナーをチームラボらしいピクトグラムやインフォグラフィックで伝えるなど、工夫を重ねています。
インバウンド対応と聞くと、どうしても「多言語で説明をしなきゃ」などと考えてしまいがちですが、世界中の言語をすべて網羅するのは現実的にかなり難しいと思います。しかし、チームラボはアートを通じて言葉に頼らない体験を共有し、さまざまな国・地域の方とつながることができています。言語や文化的な背景の違いにかかわらず、訪れた方々に作品を楽しんでいただけていることを、うれしく思っています。
──最後に、チームラボ バイオヴォルテックス 京都という場を今後どのように成長させていきたいか、展望をお聞かせください。
チームラボ バイオヴォルテックス 京都が、京都のまちや、そこに積み重なってきた文化・歴史と連続する一部となり、末永く続いていく場所になればと願っています。
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<参照>
- 京都市
- 京都市観光協会:とっておきの京都プロジェクト
- チームラボ バイオヴォルテックス 京都 有限責任事業組合:来館者数100万人突破『チームラボ バイオヴォルテックス 京都 - 大成建設』オープンから9ヶ月で達成。世界150以上の国と地域から来館。
- チームラボ
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