政府は7月21日、「経済財政運営と改革の基本方針2026」(通称「骨太の方針」)を閣議決定しました。
これは、政権の重要課題や翌年度予算編成の方向性を示す方針として、毎年6月ごろに策定されるものですが、今回は7月の発表となりました。
本記事では、そのなかからインバウンドや観光に関連する内容をピックアップしてご紹介します。
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骨太の方針2026が閣議決定
「経済財政運営と改革の基本方針(以下、骨太の方針)」とは、政府の経済財政政策に関する基本的な方針に加え、経済・財政・行政・社会などの分野における改革の重要性やその方向性を示すものです。
2026年の骨太の方針(以下、骨太の方針2026)では、「『責任ある積極財政』元年 ~日本の挑戦を起動する!~」といったテーマのもと、以下のような章立てでそれぞれの詳細が記されています。
- 第1章 マクロ経済運営の基本的考え方
- 第2章 日本の成長力強化と安全・安心の確保
- 第3章 責任ある積極財政に基づく「中長期経済財政計画」
- 第4章 当面の経済財政運営と令和9年度予算編成に向けた考え方
ここからは、各章で触れられているインバウンドや観光に関わる方針について解説します。
「強い経済」の実現に向け国内投資強化 インバウンド・観光関連の項目は?
日本の成長力強化と安全・安心の確保について述べられている第2章では、「強い経済」の実現に向けた方針として、国内投資へのてこ入れが急務だと記されています。
具体的な官民目標として、2040年度に250兆円の国内投資を実現することを新たに示したうえで、以下の方針がインバウンドや観光にも関連する項目として記述されました。
AX / DXの推進、フロンティアの開拓
AI開発・利活用に関する法整備の見直しや自動運転社会の早期実現、信頼性あるデータ利活用、政府のデジタル基盤強化や行財政改革について触れられている本項では、有人国境離島地域の保全および地域社会維持のための施策として、滞在型観光の促進や先端技術の実証・実装などといった取り組みが提示されています。
有人国境離島地域は、「有人国境離島法」で明示されている島々が該当し、骨太の方針2026内では、これらの島々が領海保全などの活動拠点として重要な役割を果たしていると記されています。
企業の経営力向上
企業価値向上や、諸外国との商品・サービス提供における競争力向上を図るため、本項では新たなクールジャパン戦略の推進について触れられています。
これらは、2026年6月12日に知的財産戦略本部が決定した「知的財産推進計画2026」に基づくもので、知的財産・無形資産の活用・保護・標準化の国家戦略や経営における活用を促進するほか、コンテンツと連携した日本の魅力の発信、一体的なブランディングによる農林水産物・食品、ファッション、J-Beauty(日本の化粧品、美容家電、美容機器、美容商材、ヘア、ネイル、エステなどの商材・サービス)などの価値創出を目指すとしています。
実現に向けては、知的財産戦略本部による施策統括体制の整備や、事務局の組織体制の抜本的充実が挙げられました。
「地域未来戦略」の推進等
2027年3月19日より開催される「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」については、「地域未来戦略」について記した本項で触れられています。
地域未来戦略とは、従来の地方創生の取り組みに加え、強い地域経済の構築に重点を置いたものです。
同博覧会では、グリーン技術の産業見本市として官民が緊密に連携し、オールジャパン体制で実施に向け万全を期すとともに、自然と共生し、持続可能な社会の日本モデルの提示を目指すとしています。
個性を活かした地域づくり
本項では、地域未来戦略の推進に関連し、沖縄と北海道での施策強化について記されました。
沖縄では、強い沖縄経済の実現を目指し、沖縄振興に向けた以下の取り組みが国家戦略として推進されます。
- 沖縄科学技術大学院大学による産学官連携などの産業振興
- 「GW2050 PROJECTS*」の早期実現
- 北部・離島地域振興
- 子どもの貧困対策やWell-being実現に向けた取り組み など
*GW2050 PROJECTS:沖縄の経済界や地元自治体による将来の基地返還跡地と、那覇空港との一体的な利用を目指す構想
また、北海道開発の推進においては、以下の取り組みが挙げられました。
- 食・観光・ゼロカーボン北海道を担う生産空間の維持・発展
- GX(グリーントランスフォーメーション)やAI・DX産業の集積促進
- 北方領土隣接地域一体での安定振興
- ウポポイの充実など、アイヌの人々の誇りが尊重される社会の実現
持続可能で活力ある国土の形成と「交通空白」の解消
インバウンドの拡大に向けては、地方交通手段の維持・発展も欠かせません。
本項では移動制約を打破すべく、交通空白解消に向けた取り組みの深化・加速化や、地域交通DX、規制改革などによる自動運転社会の早期実現、移動の足不足の解消を目指す旨が記載されています。
推進策の具体案は、以下のとおりです。
- 物流・人流ネットワークの早期整備・活用(高規格道路、整備新幹線、リニア中央新幹線、都市鉄道、港湾、空港など)
- 渋滞対策
- モーダルコネクトの強化
- 航空・海運ネットワークの維持・活性化
これらに加え、骨太の方針2026では担い手の確保・育成にも触れられました。
また、本項では成田空港の機能強化についても、府省庁横断で推進する項目が以下のように記されています。
- 道路・鉄道アクセス整備
- 周辺の産業集積
- 農林水産物輸出拠点化
このほかにも、以下の施策の推進・加速化などが明示されました。
- 国際空港アクセス鉄道、在来線の高速化
- 基本計画路線のケーススタディを通じた検討の深化
- ローカル鉄道の再構築
- 鉄道ネットワークの財源確保
- バスのキャッシュレス化
- 良好な自転車利用環境の整備・活用
- 陸・海・空の新モーダルシフト
- 物流効率化・脱炭素化(中継輸送・自動物流道路の推進など)
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持続可能な観光立国の実現
政府は、2026年3月に「観光立国推進基本計画(第5次)」、7月に「観光白書」を公表していますが、骨太の方針2026内でもこれらに基づいた打ち手の方向性が示されています。
政府目標として掲げる2030年訪日客数6,000万人・消費額15兆円などの目標達成に向けて行われる取り組みは、以下のとおりです。
- 地方誘客推進などインバウンドの戦略的な誘客
- 国内交流・アウトバウンド拡大
- 宿泊業など観光産業の強靱化
これらに加え、オーバーツーリズム対策を強化し、住民生活の質の確保との両立を図るとしています。
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文化芸術・スポーツの振興
本項は、昨年発表された骨太の方針2025から引き継がれるかたちで今年も記載されています。文化・スポーツがもつ力を経済活性化の強力な原動力とすべく、文化芸術政策の推進や、運動・スポーツを活用した健康インフラ構築やスポーツの成長産業化、武道・スポーツツーリズム振興に向けた具体例が示されました。
文化芸術政策の推進については、文化資源を活用した地域活性化や次世代継承を図るべく、以下の項目が挙げられています。
- 文化財の保存・修理・高付加価値化(「文化財の匠プロジェクト」の継続、国立文化財修理センターの整備および人員体制の構築、高松塚古墳壁画保存管理公開活用施設(仮称)の整備推進、日本遺産の活性化など)
- 伝統行事・芸能、食文化などの生活文化の振興
- 舞台芸術の振興(首都圏の劇場不足対応など)
- 新国立劇場をはじめとするバレエなどのグローバル展開
- 博物館・劇場などの機能強化
- 方言の保存・継承
- 書店の活性化
- 実写作品や音楽などのデジタルアーカイブ化
- 子どもや障害者の鑑賞・体験機会の充実化
- 官民連携によるメディア芸術ナショナルセンター(仮称)の機能を有する拠点整備
- 国立劇場再整備
- 国立公文書館の新館開館
- クリエイター育成や関連人材育成
- 海賊版対策の抜本的強化
なお、スポーツ分野においては、スポーツコンプレックス、eスポーツの活用を含むDXの推進、大規模国際大会の招致・開催に向けた支援、国際競技力向上とインテグリティ確保、視聴機会の確保、パラスポーツ振興、国際交流などに取り組むとしています。
外国人政策の推進
骨太の方針2025では、「外国人との秩序ある共生社会の実現」という項目名で言及されていたJESTA導入に向けた動きや、観光客・短期滞在者への対応策。今回の骨太の方針では、内容を引き継ぎつつも「外国人政策の推進」と名を変え、方針が記されています。
本項は、2026年1月23日開催の「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」で決定した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」に基づいたもので、一部の外国人による違法・問題行為への毅然な対応や、対処に向けた取り組みについても言及されています。
これらの実現に向けては、2026年10月1日に施行が予定されている在留許可手数料の見直しや、2028年度中の導入が見込まれている電子渡航認証制度(JESTA)の手数料などから得られる収入を財源とする方針が示されました。出入国在留管理の一層の適正化に向け、優先して行われる施策は以下のとおりです。
- 出入国在留管理庁の人的・物的体制の抜本的強化
- 2028年度中のJESTA導入に向けた準備作業
- DXの推進による審査の迅速化・高度化
- 2026年5月22日に公表された「不法滞在者ゼロプラン」の強力推進
- 育成就労制度の円滑な施行
- 不法就労対策に向けた必要な体制の整備
また、各種民泊については、適切な運営確保の徹底が明示されています。
このほかにも、日本語および日本の制度・ルールなどの教育強化や、「日本語・生活学習プログラム(仮称)」の創設、プレクラスなどの全国展開、登録日本語教員の処遇改善に向けた取り組み、地域・学校の体制整備など、施策の充実化を地方公共団体などと連携しながら行う方針が示されました。こうした外国人受け入れの基本的な在り方については、有識者会議で議論したうえで2026年度中に基本方針として取りまとめられる予定となっています。
加えて、安全保障などの観点から、「土地等の調査・利用規制等を図る重要土地等調査法」の執行体制強化についても言及されました。外国人の土地取得におけるルールの骨格については、2026年夏中にまとめられる予定です。
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日本の成長に必須な地方の発展 インバウンド施策の位置づけとは
2024年、2025年は「地方創生」が独立した項目として記されていた骨太の方針ですが、2026年は直近2年と毛色が少し異なり、安全保障に重きを置いた項目が目立ちます。
これは世界情勢を鑑みたものと予想される一方で、地方創生や観光、インバウンド(外国人)に関連する施策案が減少したわけではなく、各項目に分散している点にも注目したいところです。
日本の経済成長や改革を実現するにあたり、地方の発展に貢献する観光の推進は、すでに切っても切り離せないものだと考えられます。また、これらを進めるうえでDXやAIの活用も欠かせません。
骨太の方針2026は、観光立国推進基本計画(第5次)や観光白書をふまえ、持続可能な観光立国の実現に向けた大方針が端的に記されています。訪日客数6,000万人・消費額15兆円といった2030年までの目標に向けた道筋は、これらに任せている様子もうかがえます。あわせてチェックしてみると、より理解が深まるでしょう。
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<参照>
- 内閣府:経済財政運営と改革の基本方針2026
- eGov 法令検索:有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法
- 内閣官房
- 出入国在留管理庁
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