飲食店が訪日外国人観光客をおもてなしするためのインバウンド対策を考える際に、相手の立場に立つと 「食べることが出来ないもの」「食べてはいけないもの」「食べたくないもの」 でそのニーズを整理することが出来ます。
特に世界の宗教の中には 「食べてはいけないもの」 を定めた宗教も数多く存在します。その中でも世界の中で特に人口が多いイスラム教徒の訪日外国人観光客向けインバウンド対策をする際に、飲食店が気をつけるべきポイントは何なのでしょうか?
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宗教別インバウンド対策基礎知識:イスラム教徒の分布
イスラム教徒は世界各地に存在し、特にアジア、北アフリカ、中東における人数が多いという特徴があります。中途諸国はほとんどの国がイスラム教徒ですが、世界におけるイスラム教徒の人数で考えるとアジアが多数を占めます。世界で見ると イスラム教徒の人口は約15億人 とされ、インドネシア・マレーシア・トルコ・エジプト・サウジアラビア・イラン・イラク・中東などの国が主にイスラム教を信仰している国です。
宗教別インバウンド対策基礎知識:イスラム教徒が食べてはいけないもの「ハラーム」とは
イスラム法で 合法であるものをハラール と呼び、 合法でないものをハラーム と言います。これは食に関することだけではなく、清浄、安全、良いとされる事全般はハラールと呼び、その逆をハラームとしています。
基本的に全ての動物はハラールとされていますが、その中でも食べてはいけない動物が定義されており、ハラールに屠殺されていない動物、犬、豚、こうした動物の血などナジス(不浄)とされるもの、牙を持ちその牙で獲物を得る動物、捕食動物、害虫、イスラム法で殺してはいけない動物、ナジスを餌として与えられたハラールな動物、ロバ、ラバなどイスラム法で食べることを禁じられたものなどはハラームとされます。
また酒に関してもナジス(不浄)のものとされており、水の中と外で生きることが出来るもの(ワニ、カエル)もハラームとされています。さらにこうしたハラームとされるものに直接触れたハラールなものもハラームとされます。
宗教別インバウンド対策実践編:飲食店が注意すべき点
上記のように、 イスラム教徒は宗教戒律上ハラームとされるもの、ハラームとされるものに触れたハラールなものを食べることが禁じられています 。実際にこれらをすべて守っている厳格なイスラム教徒は少数ですが、すべての条件を満たした料理しか食べないイスラム教徒も存在します。
そのためイスラム教向けインバウンド対策をする場合は、予約時、オーダー時などに何を食べる事が出来て、何を食べることが出来ないのかをしっかりと確認する事が必要です。
また、イスラム教徒の教義に従って処理された食材はハラール食材と呼ばれ、専門店などで購入が可能です。なお、こうした食材を使用し、適切な調理を行った料理に関しては、日本国内外のイスラーム団体、機関あるいは組織等によって認証される ハラール認証という仕組みで、適切なハラールミールであることをアピールできるので 、イスラム教徒の多い東南アジア系訪日外国人観光客をターゲットとするインバウンド対策として有効な集客施策となるでしょう。
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宗教別インバウンド対策実践編食材別に注意すべき点
イスラム教徒のハラーム「豚肉」
豚肉はそもそもナジス(不浄)なものとされているためイスラム教徒は食べる事が出来ませんが、豚肉そのものだけではなく、ブイヨン、ゼラチン、肉エキス、ラードなど豚の肉、骨などから作られたものも避けなければいけません。また、厳格なイスラム教徒の場合、”ナジス(不浄)とされている豚肉が触れた調理器具を使って調理された、豚肉を使用していない料理”を忌避する人もいるので、インバウンド対策として注意が必要な場合も。
イスラム教徒のハラーム「アルコール類」
アルコール類は直接口にする以外にも、料理酒、みりん、デザートの香り付けのリキュール類なども禁忌とされます。また感覚的にアルコール類を連想させるものも拒絶されるため、食事の際にワイングラスで水を提供するなど、アルコール類を連想させるということに嫌悪感を示す方もいるので、インバウンド対策として注意が必要でしょう。つまり、飲食店の中にはワインボトルに水を入れて注ぐ形で提供するようなケースもありますが、こうした形でアルコール類を連想させる可能性があるような提供の仕方は避けるべきでしょう。
イスラム教徒のハラーム「血液」
血液はナジス(不浄)のものとされているため、肉類の焼き加減、魚の焼き加減、調理方法には注意をしたほうが良いでしょう。なお、魚料理に関しては食べても良いとされていますが、刺し身など生魚に関しては食べる習慣があまりないということに加え、活き造りなど血が付着する可能性のある料理の提供には注意が必要です。
イスラム教徒のハラームではないものの、避けたほうがよい食材「うなぎ、イカ、タコ、貝類、発酵食品、その他」
イスラム教で食べることが禁じられている食材ではありませんが、嫌悪感を示されることが多いため避けたほうが良いでしょう。また日本料理で食材として使うことは稀ですが、爬虫類、昆虫類は料理の食材として使う事は避けたほうが良いでしょう。
まとめ
こうして詳細に見ていくと、イスラム教徒のお客様を接客する際には何がハラールで何がハラームなのかをしっかりと理解してインバウンド対策に望むことの大切さがわかりますが、適切に処理をされたハラール食材を使用して調理された料理であれば、申請を行ってハラール認証を取得することが出来ます。(※もちろん審査に通過する必要があります。)また、これらのハラール認証はイスラム教徒の多い東南アジア系訪日外国人観光客のインバウンド集客施策として有効だと考えられます。
東南アジアで経済発展&海外旅行ブームが起こっていることから、イスラム教徒のインバウンド市場は今後も増加すると考えられています。しかしながら、そうしたイスラム教徒の観光客は、日本ではハラールフードを提供する飲食店が少ないことを不満としています。例えば、外国人旅行者受け入れの先進国タイでは、自国にイスラム教徒が多いこともあって、ハラール認証表示が随所で見られます。
日本を訪れたいが、 ハラールフードが提供されていないためにタイやマレーシアを観光先に選んでいるとされる東南アジアの富裕層 を取り込むためにも、イスラム教徒のお客様をおもてなしするためのインバウンド対策が出来ているか確認されてはいかがでしょうか。
<参考>
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