5月26、27日に三重県で開催される伊勢志摩サミット。三重県が発表した3月時点での試算によれば、県内で約480億円、全国で1071億円の経済効果があるとのこと。2008年に開催された北海道洞爺湖サミットの道内への経済効果437億円を上回る数値です。このことは各新聞社が取り上げており、すでにご存知の方も多いでしょう。
サミットで訪日するのは政府要人、海外のマスコミなど一部の人々に限られます。どうして、このような大きな経済効果が発生するのでしょうか。また、一般人の訪日外国人観光客を対象とするインバウンドビジネスにはどのような影響があるのでしょうか。今回はサミットで経済効果が発生する理由、その影響力について解説し、観光業、飲食業などへの影響を考察します。
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サミットは、MICEの一部:日本では積極的な誘致、開催に向けた取り組みも
MICEとは、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行)、ConventionまたはConference(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字による造語。企業や産業活動、研究、学会活動などと関連している場合が大半で、日本やアメリカ、イギリス、フランスなどの各国首脳が集うサミットも含まれます。詳細は、こちらの記事「MICE(マイス)とは」をご参照ください。
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日本は国内外から人が集まるMICEの誘致、開催を行うための取り組みを行っています。主要な目的は世界の企業、学会の関係者とのネットワークを作ることによる「ビジネス・イノベーションの機会の創造」「国・都市の競争力向上」、それから、参加者の宿泊、飲食、観光による「地域への経済効果」。
このようにサミットを含むMICEは、将来の発展を見据えて行うものであり、一般的な観光とは大きく性格が異なります。インバウンドビジネスに取り組む観光業、飲食業との直接的な関係はありません。
サミットは開催中より開催後が大事?:報道による世界的な宣伝効果
では、サミットではどのようにして膨大な経済効果が発生するのでしょうか。先に取り上げた三重県の試算によれば、産業36部門別の需要増加額は建築業(約263億円)がトップ。伊勢志摩サミットの準備として道路、会場などのインフラ整備が行われたのが原因です。
また、大和証券は開催後5年間、三重県を訪れる訪日外国人観光客が急増し、約1750億円を消費するという見込みを立てています。これは三重県が試算したサミットによる同県の経済効果(約480億円)の3.5~4倍にあたる額です。地域経済にとって、サミットは開催中より開催後が重要とさえ言えるのではないでしょうか。
このようなことが起こるのは、サミットを開催することで大々的な宣伝が行えるためです。サミット自体には、観光業への直接的な影響はありません。しかし、サミットに関する報道は世界的に行われるため、開催地域の知名度が一気に高まります。これによって、数年にわたる訪日外国人観光客の増加という副次的な効果が現れるのです。
三重県では同県のWebサイトで観光情報を発信する、ご当地キャラクターや動画を使って観光地をプロモーションするなどの取り組みを行っています。期待通りの成果が上がれば、長期間、地域経済が活性化すると思われます。
洞爺湖サミット、九州・沖縄サミットでは訪日外国人観光客を招けず:宣伝効果は一時的
サミット終了後の経済効果は膨大で、地域振興の起爆剤として期待できます。しかし、必ずしもうまくいくとは限りません。
たとえば、2008年に開催された北海道洞爺湖サミットは不運なことに、終了後まもなくリーマン・ショックによる世界的な金融危機が発生。観光客数はむしろ低下してしまいました。
2000年に行われた九州・沖縄サミットは、開催翌年に20万人の訪日外国人観光客が訪れました。しかし、3年後には訪日外国人観客数は13万まで低下。目標としていた人数は23万人で、大きく見込みが外れてしまいました。
サミットのような世界的に重要なイベントは、報道によって大々的に宣伝されます。しかし、その効果は一時的であり、一過性のブームに近いものです。訪日外国人観光客を呼び込み続けるには、やはりその地域の持つ観光資源の魅力を発信し続け、関心を持ってもらうほかないのではないでしょうか。
まとめ:効果的なプロモーションを通じて、長期にわたるインバウンドビジネスの発展を
地方自治体や企業が、サミットと同規模の宣伝を行うことは予算面的に不可能だと思われます。それだけにサミットの高い経済効果には、大きな期待が集まります。しかし、これまでのサミットでは思うような成果を上げられませんでした。
三重県には伊勢神宮、熊野古道をはじめとした観光スポットや、海人、伊賀市の忍者といった訪日外国人観光客に理解されやすい観光資源があります。プロモーションに成功すれば、リピーターになる訪日外国人観光客が現れる可能性もあります。これから数年の動向には、注視していきたいところです。
【7/9開催】消費額1.7兆円超!最新中国インバウンド市場の攻略ポイント
2024年、訪日外国人による旅行消費額は過去最高の約8兆1,257億円を記録。 そのうち中国は1.7兆円超(全体の約21%)と圧倒的な1位を占めており、宿泊日数や訪問者数でもトップクラスの存在感を示しています。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
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- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
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