2014年ごろから、にわかに脚光を浴びるようになった訪日中国人観光客による爆買い。百貨店や家電量販店に訪日中国人観光客が押し寄せ、大量に商品を買っていく様はニュース番組などに取り上げられ、2015年には流行語大賞を獲得。同時に、インバウンドビジネスにも注目が集まるようになりました。
その一方で、爆買いはかねてからバブルに例えられ、「この活況はいつまで続くのか」と疑問視されてきました。長年の蓄積により、変化しにくい日本製品への信頼だけでなく、中国の税制の事情から日本製品は日本で買ったほうが安かったこと、円安が続いていたことなど比較的変動しやすいファクターが爆買いを支えているとされていたためです。日本観光ではなく、日本製品を国内で転売することを目的に、日本を訪れる中国人も多かったと言われています。
中国政府が平成28年(2016年)4月に、国内消費を喚起しようと個人への関税を強化して以降、爆買いは完全に失速。客単価は一気に落ちてしまい、訪日外国人観光客向けに設置した免税エリアには閑古鳥が鳴いている……そんな光景が、しばしば取り上げられるようになりました。
しかし、このような状況に影響しているのは、百貨店や家電量販店ばかりではありません。販売されている商品の製造を行っているメーカーにも大打撃を与えていると言われています。今回は、爆買いの終焉によって影響を受けた業界はいったいどれくらいあるのか、ご紹介していきます。
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爆買いはなぜ終焉した?:理由は円高だけではない
インバウンドビジネスの代名詞とさえ言えるほど、人口に膾炙していた「爆買い」。そもそも、なぜ終焉してしまったのでしょうか。というのも、日本を訪れる訪日外国人観光客は年々増加しており、インバウンドビジネス自体は衰えを見せていないのです。
訪日中国人観光客が爆買いを利用していた理由は主に「日本の製品が魅力的だから」、それから「日本の製品は、旅費などを考慮しても日本で購入したほうが安いから」の2つ。
まず、日本の製品の魅力について考えてみましょう。中国では自国製品に対する根強い不信感があり、中国人向けではなく、日本人向けに製造された商品に強い魅力を感じると言われています。これは中国の産業構造に起因する問題で、すぐに変化することはありません。これからも長期にわたって続くのではないでしょうか。「訪日中国人観光客の多くは日本を体験することではなく、買い物をすることを目的にしている」と言われていたほどで、日本の製品にはかなりの強みがあります。
しかし、日本で購入する日本製品の安さは、どうでしょうか。中国政府が税制を改正したり、円高になったりすれば、すぐに事情が変わってしまいます。実際、これにより転売目的で日本を訪れる中国人は激減してしまったと言われています。
また、海外の品質の高い製品を買うことを目的にわざわざその国の小売店まで足を運ぶというのは、労力がかかりすぎるため、一般的な行動とは言えないのではないでしょうか。中国ではインターネットの発達、スマートフォンの普及に伴って、ECサイトを利用する人が急激に増加しており、買い物のために日本に来る必要のない状況が整いつつあります。
爆買い失速は、メーカーにも大打撃
こういった事態の変化から爆買いという現象は見られなくなり、訪日中国人観光客向けに販売体制を整えていた百貨店、家電量販店は大打撃を受けました。たとえば、ラオックスは2016年12月期の業績見通しを8割の営業減益とし、35%の減収と大幅は下方修正をすることになりました。
しかし、爆買いの終焉により経営状況を悪化させたのは小売店ばかりではありません。セイコーホールディングス、シチズンHD、カシオ計算機といったメーカーは2015年4~9月期、高級腕時計の販売が好調だったため、営業利益を大きく伸ばしましたが、2016年には減収減益することに。円高や訪日中国人観光客が購入しなくなったことなどが原因と見られています。
資生堂、カネボウ化粧品などの化粧品メーカーにも影響が。特需をもたらした訪日中国人観光客から狙いを改め、国内営業の強化、海外進出などを図っています。
また、一時期、高性能な炊飯器が人気を集めていましたが、その人気も収束。日本で爆買いが発生したことから、中国国内のメーカーが高性能な製品の製造に取り組むようになり、需要を獲得したと言われています。
まとめ:爆買いはもう訪れないかもしれない
2014年ごろから広く知られるようになり、2015年に流行語大賞を獲得した「爆買い」。2016年には中国が個人への関税を強化したこと、円高になったことなどを理由に、失速したと言われています。その影響は百貨店や家電量販店だけでなく、腕時計、化粧品、電化製品などのメーカーにも及びました。
中国にとって、爆買いは国内需要を低下させる原因。当然、国内メーカーや政府は何かしらの対策をとるでしょうから、再び似たような現象が起きたとしても、比較的短期間で収束するのではないでしょうか。また、わざわざ日本に来なくてもECサイトで日本製品を購入できる環境が整いつつあり、再び爆買いが起こる可能性は極めて低いと思われます。
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