パンフレット配布、本当に効果があると思いますか?日本の企業・自治体が失敗しがちな3つの台湾向け残念インバウンドプロモーション事例

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台湾向け訪日サイト「ラーチーゴー!日本」を運営するジーリーメディアグループ(吉日媒體集團)代表の吉田皓一です。こちらのコラムでは、ふだん台湾で見た事、聞いた事の中から、皆様に有用な情報を整理し、共有して行きたいと思います。

台湾では、1年を通じて日本の企業や自治体がさまざまなプロモーションを行っています。それらが奏功し、台湾から日本へ来る観光客はいまだに伸び続けています。いっぽう、プロモーションの中には効果が曖昧で、KPIが不明確で、効率の悪いものもあります。 皆様の台湾におけるより良いPR活動のため、それらの残念なPR事例を紹介したいと思います。


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残念なインバウンドPR事例その1:旅行博でパンフレットを配布

展示会で配っても捨てられるパンフレット

展示会で配っても捨てられるパンフレット

日本の企業や自治体は、とかくパンフレットを作るが大好きです。台湾で行われる旅行博などのイベントには、日本から多くの団体が大挙して押しかけ、来場者にパンフレットを配っています。しかし会場の片隅に置かれた大型のゴミ箱には、日本のパンフレットが大量に捨てられています。なぜでしょうか?

その理由を解明するためにはまずもって、来場者が何をしに旅行博の会場に来ているか、認識すべきです。 台湾の大規模旅行博の入場料は無料ではなく、200元、日本円にして約720円 かかります。来場者はそれだけのお金をかけて来場するのは、会場で売られるおトクな旅行商品をチェックし、購入するのが最大の目的であり、わざわざパンフレットをもらいに来ているわけではありません。 また、ノベルティを貰いに来る人も多く、盛り上がっているブースは、だいたい日本のボールペンやキーホルダーをタダで貰えるイベントを開催しているところ です(それなりにコストのかかる記念品を大盤振る舞いしたところで、どれだけ訪日につながるかも疑問ですが)。

わざわざパンフレットを刷って配ったところで、それは来場者が欲しいものでは必ずしもありません。中には中国大陸で使う簡体字のパンフレットを配っているブースもあって、恥ずかしくさえ思います。

当社は過去に6回、台湾旅行博に出展しましたが、あまりに効果が不透明で、なおかつブース代もどんどん値上がりするので、去年から出展するのを止めました。また、ここ1〜2年では、日本からの出展事業者があまりに多過ぎて、出展しても埋没してしまいます。企業や自治体の中でも、先進的なところは出展を見合わせるところが多くなっています。

残念なインバウンドPR事例その2:テレビCM

私は大学卒業後、日本の放送局でテレビのスポットCM営業に3年間従事しました。モノであれば、売れれば売れるほど増産することが出来ますが、テレビCMの場合、放送枠数が決まっているので、売れるからといって増産する事ができません。ゆえに プライシング(値付け)が非常に重要 になってきます。

出典:潤利艾克曼国際事業有限公司

出典:潤利艾克曼国際事業有限公司

3年間、需要の増減により変動するTVCMの値付け担当をしてきた身として心から思うのは、台湾のテレビCM価格は、現地の物価からして高すぎます。 いま手元に、台湾の大手テレビ局から送られて来た、日本の某自治体のCM放送明細がありますが、その視聴率1%あたりの価格(パーコスト)は約30,000円。 これは日本でいうと在名基幹局より高く、在阪準キー局と同水準くらいです。台湾の人口・物価水準から鑑みて、この値段はあまりに高いです。

上述したようにTVCMの価格は需要に応じ常に変動しますので、定価はありません。ですから契約前に価格交渉を重ね、より効率よいCMの投下を行うべきであり、放送局からの見積もりを「こういうものだ」と鵜呑みにしない事 です。

残念なインバウンドPR事例その3:ブロガー・インフルエンサー

台湾はブロガーの影響力が強い」そう言われていたのも今は昔。FacebookInstagramの普及とともに、インフルエンサーを用いたプロモーションも多様化 して来ました。昨今、非常に多くの企業・自治体がブロガーを日本に招聘しています。交通費・宿泊費全額無料、有名ブロガーともなれば掲載費1本あたりいくら、という話にもなってきます。あまりに多くの企業や自治体がブロガー招聘するので、フォロワー数が数千程度の、どこまで影響力があるのか疑問の残るブロガーですら、重宝されています。

そもそも、お金を払って情報発信してもらう際にPR表記をしないのは、優良誤認を招く、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)と言われても否定できません。台湾は、テレビに関してはNCCという放送運用に関する厳格な取り決めがあり、特定企業の露出には非常に厳しいですが、ウェブに関しては日本に比べ寛容です。企業がステマで炎上することも、あまり多くありません。どこまでの倫理観をもってインフルエンサーマーケティングを行うかは、企業・自治体次第ですが、ユーザは気づいています。

また、単純にブロガーを呼んで、食べさせて飲ませて、アクセスがいくらありました、というのでは、いつまで経ってもお金がかかるばかりで、プロモーションの経験値が企業・自治体に蓄積しません。 砂漠に水を撒いているようなものです。多角的にデータを取り、プロモーションを絶えず最適化していくためには、単純なブロガー・インフルエンサー招聘は、大いなる時間とお金と手間の無駄だと言えます。

以上、3つの残念なプロモーションについて触れました。では何から始めるべきなのか?それは次回、ご紹介したいと思います。

【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」

インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。

<本セミナーのポイント>

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宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】

【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

<こんな方におすすめ>

  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
  • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
  • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
  • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
  • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生

「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる

【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


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この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

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この記事の筆者

株式会社ジーリーメディアグループ

株式会社ジーリーメディアグループ

株式会社ジーリーメディアグループ 代表取締役 吉田皓一。奈良県生。防衛大学校を経て慶應義塾大学経済学部卒業後、朝日放送入社。総合ビジネス局にて3年に渡りテレビCMの企画・セールスを担当したのち退職、2013年ジーリーメディアグループ創業。台湾香港向け日本観光情報サイト「ラーチーゴー!日本」(日経優秀製品サービス賞・最優秀賞受賞)を運営するほか、台湾現地のメディアに多数出演。ラーチーゴー!日本と連動したアンテナショップを台北に運営する。中国政府公認の中国語検定試験・漢語水平考試(HSK)最高級所持。

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