古民家など「地域に眠る歴史的観光資源」を発掘せよ!2020年までに全国200地域での取組を目指す「歴史的資源を活用した観光まちづくり」とは?古民家や城下町などを活用した観光施策事例も交えて解説

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

観光庁では、歴史的資源を活用した観光まちづくりの取組の全国拡大に向けて、10月18日より順次、「歴史的資源を活用した観光まちづくりセミナー」 を全国9都市で開催します。これは 地域に眠っている資産である古民家等の歴史的建造物を宿泊施設やレストラン等に活用し、地域の活性化につなげる という取り組みです。実際の取組の内容や事例などを詳しく見てみましょう。

歴史的資源を活用した観光まちづくり より引用

歴史的資源を活用した観光まちづくり より引用

インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)

歴史的資源を活用した観光まちづくりタスクフォース

これは平成28年3月30日に 明日の日本を支える観光ビジョン構想会議 にて決定された「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づき、農山漁村を含めた地方に広く存在する古民家等を活用した魅力ある観光まちづくりを推進する方策等の検討等を行うために、内閣官房長官を議長として立ち上げられたものです。

明日の日本を支える観光ビジョンとは?わかりにくい政府や観光庁の取り組みの構造をまとめました

政府は観光先進国への新たな国づくりに向け、明日の日本を支える観光ビジョン構想会議を行い「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました。しかしその取り組みについてわかりづらくなっています。そこでこの記事では、政府の取り組みの全体像についてわかりやすく解説します。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!訪日ラボに相談してみる目次観光立国に向けた政府の取り組み、団体などの相関図インバウンドに関わ...

政府では、古くから住まう地域の人々と、外部の様々な専門知識を持った事業者とが一体となって地域再生に取り組み、そうした中で、観光による交流人口の拡大を通じて、

  • 耕作放棄地が解消されるなど限界集落が一変する姿
  • 地域の空き家や商店街の空き店舗が改修・活用されて、本来のまちなみを取り戻した姿
  • さらには、新たな雇用が生まれ、UIターンの若者が増加したり出生率が大幅に向上するなど、まちやむらに人が戻り活気がよみがえってきたという姿

の中に、今後の観光・地域振興の鍵がある という課題認識をしています。こうした課題の解決のために「歴史的資源を活用した観光まちづくりタスクフォース」が生まれ、この中で、古民家等の歴史的資源を各地域で観光資源として再生・活用する民間有識者へ複数回ヒアリングが行なれ、その内容が中間取りまとめとしてまとめられました。

中間とりまとめにおける各課題と対応策

中間とりまとめとしては、「人材」「自治体・情報発信」「金融・公的支援」「規制・制度改革」に関してそれぞれ以下の対応策がまとめられました。

「人材」に関する対応策

  • 2017年1月に「歴史的資源を活用した観光まちづくり官民連携推進チーム」による地域からの相談や要望にワンパッケージで対応する体制を構築。
  • 異業種からなる専門家チームによる、地域ごとの熟度に応じたオーダーメイドの支援を開始。

「自治体・情報発信」に関する対応策

  • 各都道府県の市長会等の会議を活用し、本取組の重要性・有用性を市町村長にダイレクトに働きかけ。
  • 全国の自治体・日本版DMO候補法人に対して、ワンストップ相談体制の整備に関する情報を提供するとともに、本取組への意向調査を実施。
  • JNTOと古民家活用に取組む組織が連携し、歴史的資源を活用したインバウンド地方誘客を促進。

「金融・公的支援」に関する対応策

  • REVICの有する投資ノウハウ・人材支援に関する機能の最大限の活用。
  • 事業性評価に基づく融資等の促進に向けた深度ある対話及び優良事例の公表や、REVICとの連携等による、地域金融機関の取組促進。
  • クラウドファウンディングによる資金調達の事例・具体的な手法を周知し、活用を促進。
  • 支援プロジェクトを特定したふるさと納税の事例・具体的な手法を周知し、活用を促進。
  • 「重伝建地区の建造物の宿泊施設等への活用事業への重点支援」、「農泊実施民間組織への直接支援制度の新設」等の公的支援の充実。

「規制・制度改革」に関する対応策

  • 建築基準法関係(歴史的建造物を建築基準法の適用除外にするための条例の制定が進んでいない)
  • 歴史的建造物に関する建築基準法適用除外の条例の制定・活用に関するガイドラインを策定。
  • 市街化調整区域(都市計画法)開発関係(市街化調整区域においてオーベルジュ等が柔軟に開業できるよう制度・運用の改善できないか)
  • 古民家等の既存ストックについて、地域の実情に応じて円滑な用途変更が可能となるよう、用途変更に当たり弾力的に許可できる用途の類型を整理し、技術的助言を国から地方自治体に対して発出。
  • 旅館業法関係(時代に見合ったシンプルな制度に見直し)
  • ホテル・旅館営業の一本化等の法律改正を予定。

歴史的資源を活用した観光まちづくり より引用

歴史的資源を活用した観光まちづくり より引用

地域の相談を受け付ける連携推進室を設置、解決策を協議する専門家会議を開催

意欲ある地域の相談を受けつける連携推進室では、

  1. まちづくり組織の組成
  2. まちづくり計画の策定
  3. 物件活用に向けた所有者との調整・交渉
  4. 物件活用事業者の募集とマッチング
  5. 物件の改修
  6. 事業の運営

について等様々な地域の取組について相談を受け付けています。相談に対しては、連携推進室と専門家会議が官民一体となって支援し、オーダーメイドで対応することにより、地域の特色を活かしつつ取組を実現化し、地域を再生・活性化することを目指しており、こうした取組を通じて2020年までに全国200地域での取組を目指しています。

歴史的建造物を宿泊施設やレストランに活用した実際の取組事例

「篠山(兵庫県)」

篠山藩の城下町として栄えてきた篠山町は少子高齢化の影響で過疎化が進行していましたが、篠山城の城下町全体を「ひとつのホテル」と見立て、築100年超の古民家を含む4棟を宿泊施設、飲食店等として改装した結果、その土地の文化や歴史を実感できる複合宿泊施設として再生しました。

「丸山(兵庫県)」

限界集落と言われた小さな集落であった「集落丸山」は、緑の柔らかい景色の中に築150年以上の古民家が点在する古き良き日本の原風景を残していました。この美しい村の古民家と自然環境を活用し、有志からの出資や補助金をもとに3棟の古民家を改修し、「日本の暮らし」を体験する滞在施設として再生しました。

クラウドファンディングを活用した取組事例

「壱番館(東京都あきる野市)」

元々、江戸の暮らしを支える拠点として発展し、歴史ある豊かな文化圏を形成した五日市も、交通網の発展による都市部への人口流出という時代の流れを受けて、地域の高齢化が進んでいました。かつては五日市憲法の草案を作った土屋勘兵衛の邸宅であり、その後も商店街の中心地として多くの人たちに愛され賑わってきた 「壱番館」 も、建物の老朽化により姿を消してしまう恐れが出ていました。

豊かな自然と古き良き時代の面影が残る「昔ながらの東京」を彷彿とさせる五日市の良さを維持し、活気溢れる街とするために、築130年の「壱番館」を文化と歴史を継承していく複合施設とする計画が持ち上がり、クラウドファンディングでは 170人から350万円の支援 が集まり、「壱番館」は 地域内外の人が集うカフェや交流会等を行うイベントスペース として生まれ変わりました。

「旅館喜多屋(神奈川県横浜市)」

明治時代には、東京に住む役人や官僚が別荘を建て、多くの人が旅行に訪れて磯遊びなどをする一大避暑地であった横浜市金沢区も、現在では横浜市の平均より10年以上早く少子高齢化が進み、みなとみらいエリアを抱える中区と比べると観光客数も少なく、横浜市の課題先進地域となっています。創業100年の歴史を誇る料亭の「金沢園」 は、当初庭園を望む割烹旅館として人気を博し、潮干狩りや海水浴、貸しボート、釣堀、遊覧船といった海の楽しみや、四季折々の花を鑑賞できる遊園地、大弓場など周辺の施設を含めて、横浜金沢のレジャー施設へと発展しました。

このような金沢区ならではの魅力を発信するために、登録有形文化財に指定されている料亭「金沢園」をリノベーションするプロジェクトが立ち上がり、この呼びかけに対し、169人から499万円が集まり 、名称を新たに 「旅館喜多屋」 とし、地産地消をメインとしたカフェレストランと大正から昭和時代の雰囲気を味わえるゲストハウスを兼ねた ゲストハウス&カフェレストラン」 として生まれ変わりました。

まとめ:まずは東京から「歴史的資源を活用した観光まちづくりセミナー」が開催

観光庁の歴史的資源を活用した観光まちづくりの取組の全国拡大に向けた「歴史的資源を活用した観光まちづくりセミナー」は、まずは東京で10/18に開催された後、近畿 (10/27 和歌山市)、北海道(11/2 札幌市)、中国(11/17 米子市)、北陸(11/22 富山市)、四国(11/24 高知市)、九州(12/1 福岡市)、中部(12/5 名古屋市)、東北(12/15 仙台市)といった日程で順次全国で開催されます。2020年に向けて全国で宿泊施設不足が叫ばれ、地方への誘客が課題とされる中、期待される取組と言えるでしょう。

<参考>

中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】

短時間でインバウンドが学べる「訪日ラボ トレンドLIVE!」シリーズの第6弾を今月も開催します!訪日ラボとして取材や情報収集を行う中で、「これだけは把握しておきたい」という情報をまとめてお伝えするセミナーとなっています。

今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。

今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

詳しくはこちらをご覧ください。

中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】

【インバウンド情報まとめ 2024年11月前編】UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。

この記事では、主に11月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。

詳しくはこちらをご覧ください。

UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で:インバウンド情報まとめ【2024年11月前編】

今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。

「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!

→ 【無料】「インバウンドの教科書」を見てみる

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

プロモーションのご相談や店舗の集客力アップに