観光庁が行っている「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関する現状調査」によれば、「訪日外国人の困りごと・不満」は、2015年まではWi-Fiがトップを独占していました。しかし、 2016年からは一転「英語などでコミュニケーションがとれない」が一躍トップに躍り出ます。また「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」に関する不満も2014年から2016年にかけて着々と増加しており、言語の壁に関する不満度が年々増してきていることがわかります。
だからこそ多言語対応を行うことは、インバウンド対策する上で必須と言えるでしょう。そこで今回、多言語対応が簡単にできるサービス「QR Translator」を提供している株式会社PIJINの代表取締役松本恭輔氏に、「QR Translator」の事例や多言語対応についてインタビューしてきました。
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訪日ラボのメールマガジン登録はこちら>(無料)QRコードで多言語対応ができる「QR Translator」とは?
ー「QR Translator」について教えてください
株式会社PIJIN代表取締役松本恭輔氏(以下、松本): 弊社では「QR Translator」という看板や印刷物をとても簡単に多言語対応できるソリューションを提供しています。多言語対応したい商品や情報などをPIJINが開発・管理する「QR Translator」のウェブサイト上に登録いただくと、QRTコードが発行されます。そのQRTコードを看板や印刷物に貼付し、訪日外国人にスマホで読み取ってもらいます。すると、端末の言語情報を自動的に読み取り、登録した商品や情報を適切な言語で表示します。現在は39カ国語に対応しています。さらに、音声読み上げ機能も付いているので、表示したコンテンツを音声で聞くことも出来ます。
「QR Translator」は、QRコードを活用しているので、訪日外国人の方に個別のアプリをダウンロードしてもらう必要がありません。そのため、スマホさえあれば、誰でも利用できるサービスです。また、看板や印刷物で活用するにしても、QRコードなのでスペースも取らず、デザインへの影響も少なくてすみます。

ーこれ1つで複数言語に対応できるのであればコストも削減できそうですね。
松本:
そうですね。コスト削減という意味でも活用いただけます。例えば、観光地の案内パンフレットを多言語展開しようとしたら、ギュウギュウに各言語の情報を詰め込むか、言語ごとに用意し、かなりの数を刷らなければいけません。しかし、「QR Translator」を活用いただくと、QRコードを1つ作り、パンフレットにつけて印刷すれば、言語ごとに情報を表示できるようになり、対応する言語ごとに印刷しなくても済みます。
多言語対応は、お金と労力をかければなんとかなる分野でもあります。それこそ、人を雇って翻訳したり、たくさん印刷したりしてお金と時間をかければできます。しかしながら、「QR Translator」を活用し、多言語対応の手間とコストを削減して、その分の空いた時間やお金を、訪日外国人の集客や受け入れに使って欲しいと考えています。
「QR Translator」は鉄道、地方自治体、飲食店と幅広く活用可能!「QR Translator」の活用事例とは?
ー「QR Translator」の具体的な事例を教えてください。
松本:
鉄道会社さんで利用いただいている事例があります。その鉄道会社さんでは、訪日外国人が増加してきたので多言語対応をしようと思い、多言語対応サービスを検討していました。
アプリによる多言語対応も検討したようですが、そうすると「アプリをダウンロードする」というハードルがあり、訪日外国人の方に利用いただけないのでは、という懸念があったようです。そこで、専用アプリ不要、ブラウザベースで多言語コンテンツを提供できる「QR Translator」を提案しました。「ユーザーにとって、QRコードをスマホで読み込むだけで簡単に多言語対応できる」という点を気に入っていただき、その鉄道会社さんで「QR Translator」が採用されました。
用途としては、乗り換えがわかりにくい所の掲示物などにQRTコードを貼付いただき、多言語で乗換案内を伝えています。その他にも、鉄道の近くに隣接する関連観光施設でも「QR Translator」を活用頂いており、駅内のQRTコードのコンテンツを見た訪日外国人が、隣接している観光地に流れ込むような動線の設計をご提案しています。
ー「QR Translator」を活用した飲食店の事例はありますか?
松本:
全国でチェーン展開されている飲食店さんで使われています。ご相談いただいた飲食店さんは、旧式の券売機を使っていました。最新の券売機であれば、デジタル画面で多言語対応できるのですが、買い換えに莫大なコストがかかるので、何とかできないかと弊社にご相談いただきました。
そこでご提案したのが、一度QRTコードで外国人が商品情報を読み取ってから、券売機で買ってもらうオペレーションです。つまり、券売機は既存のままにして、メニューボードを作ってもらい、そのメニューボードに「QR Translator」で作成したQRTコードを貼り付けていただくということです。単純な「QR Translator」の導入だけでなく、実際に使えるようになるための現場のオペレーションまで提案したことを評価いただき、導入に至りました。結果としては、券売機を全部買い変えるよりも、コストを抑えて多言語対応を実現できました。
ー地方で「QR Translator」を使われている事例はありますか?
松本:
あります。道の駅での事例です。最近では、訪日外国人のレンタカー利用率が上がってきており、ゴールデンルート以外の地域にも訪日外国人が向かうようになってきています。それこそ、道の駅など地域のスポットにも訪日外国人が増えています。
そのため、訪日外国人に、道の駅で販売している商品や地域の魅力を伝えるために「QR Translator」を利用いただいております。ほかにも、道の駅では、災害時での地域防災拠点となる場合もあります。最近だと、訪日外国人だけでなく、在日外国人も増えてきているので、災害時における案内の多言語化のニーズがあり、そのようなニーズに対しても「QR Translator」が活用できるのではないかと考えています。

災害時の利用にも活用可能、幅広い活用方法がある「QR Translator」
ー先程、災害時の案内にも活用できるとお伺いしたのですが、今後は災害対策にも力を入れていくのですか?
松本:
そうですね。実は、観光よりも災害対策を早急に整えないといけない自治体が多いのです。日本全国に数多くの市区町村がありますが、観光に予算を割ける市区町村は数が限られています。そもそも観光資源がなかったり、観光に対しての取り組みが進んでいないところが多いのです。それに比べて災害対策は違います。
以前、政府が「災害は予知できない」と発表したことにより、防災対策の考え方が変わりました。今まで東日本大震災や熊本地震など数々の災害を日本は経験していますが、それらの災害を予知するのは難しいと政府が判断したということは、どこの地域でも災害対策をしなければいけません。
「QR Translator」が各地方に普及すれば、QRコード1つで多言語情報を伝えることができるので、災害時にも訪日外国人に適切な情報を伝えることが出来ます。また、災害時対応においてこそ、QRコードとブラウザベースで多言語表示を実現している「QR Translator」の特徴が活きてきます。というのも、緊急時に専用アプリをダウンロードしているヒマはないですからね。

多言語対応の情報インフラを整備し、コスト削減を目指す。:株式会社PIJINの今後の展望とは?
ー今後の御社の展望を教えてください
松本:
私達は多言語対応を行っているだけと思われがちですが、本当に目指したいのは多言語情報のインフラ、プラットフォームを作ることです。「QR Translator」の中には多言語対応されたコンテンツが今後もたくさん増えてきます。そのコンテンツをAPIで提供して他のサービスと組み合わせると新しいサービスを作ることができます。
コンテンツのプラットフォームだからこそ、今後、色々な展開ができると考えています。これからもコンテンツを増やし、「QR Translator」のQRTコードがいろいろな所で見られるようにしていきたいですね。
ほかにも、インバウンド対策を進める企業や自治体のコスト削減のお手伝いを進めていきたいです。「QR Translator」を活用することで多言語対応におけるコスト削減が出来ます。さらに、「QR Translator」の運用で蓄積された翻訳データを再利用することにより、翻訳コストを下げることもできるでしょう。
そうやって浮いた予算を、訪日外国人の集客プロモーションや多言語化以外の受け入れ体制整備に当てることができます。その際には、プロモーションの専門家を私達が紹介したり、コーディネートを行っていきたいとも考えています。そのために今後は協力いただける会社とのネットワークも強めていきたいですね。
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