最近、中国系の企業が日本の観光施設を買収したというニュースを聞くことが増えています。こうしたことは今後増えていくのでしょうか。
中国系企業が日本の観光関係施設等を買収することで、生み出されるメリットは「雇用が守られる、地域の産業が継承される、中国からツアー客を呼び込んで売り上げを伸ばすことができる」などが考えられます。
各地での事例を見ながら検証してみましょう。
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ハウステンボスに中国企業の出資
先日、長崎県佐世保市のハウステンボスが中国企業からの出資を受け入れる方向で検討しているというニュースが流れました。
これはハウステンボス株式会社が、商業施設運営会社などを傘下に持つ中国の投資会社復星集団から最大25%の出資を受け入れる方針を固めたものです。ハウステンボスの親会社である株式会社エイチ・アイ・エスが過半の出資比率を維持し、引き続き経営を主導しますが、復星集団から取締役を受け入れる意向も示されています。
狙いは、中国人客の集客などで協力体制を築くことです。ハウステンボスの2018年9月期の入場者数は前期比5.5%減の約272万人、うち海外客は3.8%減の約18万人でした。復星集団は年間20万人程度を中国から送客することを目指しています。
ハウステンボスに出資する企業は過去に星野リゾート トマムを買収
復星集団は世界各地で観光関連の企業に積極的に投資を続けており、日本では2015年に「星野リゾート トマム」を買収したことで有名です。
北海道占冠村にある星野リゾート トマムは、スキー場、ホテル、ゴルフ場などを備える総合リゾート施設です。
もともと米国系のファンドが80%、星野リゾートが20%の株式を所有していましたが、復星集団傘下の上海豫園旅游商城が100%の株式を所有することになりました。
運営は星野リゾートが引き続き行っています。星野リゾートでは他の施設でも、売却して運営のみを行っているところがあります。
ちなみに、2018年1月には星野リゾート トマムの遊休施設を活用した「クラブメッド北海道トマム」が開業しましたが、フランス・パリに本社を置くクラブメッドも復星集団の傘下企業です。
観光分野での中国企業の日本進出事例は他にも各地でみられます。
訪日外国人観光客の中でも中国からの観光客は最も人数が多く、2017年で約736万人、前年より15.4%増えています。
この訪日中国人観光客を取り込むことを狙って、中国企業が日本への進出を考える流れがあります。
中国系企業が買収を進めながら地域の魅力向上に取り組んでいる夕張市
2017年2月には夕張市が保有するホテルマウントレースイやスキー場など観光4施設が中国系企業、元大グループの元大リアルエステートに売却されました。
元大は現地法人として元大夕張リゾートを設置し、これまで指定管理者として4施設の運営をしてきた夕張リゾートを買収して、元大夕張リゾートの子会社としました。
アルバイトまで含めて全員の雇用を維持し、夕張リゾートの社長には旧体制でのホテル支配人を就任させています。
これまで館内の非常放送設備を修理したり、Wi-Fiを充実させたりといった設備投資を行い、夏の夜にスキー場の夜景を楽しんでもらう「ナイトゴンドラ」も始めました。そして、ホテルのハード部分の改装も進められています。
4施設以外にも、資金難で閉館していた国の登録有形文化財、夕張鹿鳴館(旧北炭鹿ノ谷倶楽部)を所有者から買い取り、レストランや宿泊機能を備えた観光施設として公開しました。さらに、地域の空き物件を買い取り、飲食店を出店させることも始めています。夕張の地域全体の観光の魅力を向上させる取り組みです。
その一方、中国最大のインターネット旅行会社(OTA)であるシートリップ社と契約し、中国での夕張のPRを進めています。
インバウンド増により、2018年夏の宿泊予約数は施設始まって以来の多さとなりました。
旅館を中国系企業が買収 新潟県阿賀町ホテルみかわ
これほど大規模でなくとも、一つの旅館、ホテルを中国系企業が買収している事例は各地に数多くあります。
その一つが新潟県阿賀町にある「ホテルみかわ」です。
山あいにある18室の旅館。もともと旧三川村が1994年7月に開業させ、その後町が100%出資する第三セクターが経営していましたが、開業以来24年連続で赤字となっていました。
ここを買収したのが中国資本の日本法人「日本山嶼海(さんよかい)株式会社」。親会社は中国・上海市に拠点を置く投資コンサルティング業の「上海山嶼海投資集団」で、中国国内に観光、健康、金融などの子会社を持っています。
山嶼海では老朽化した施設の改修や、中国人ツアー客の誘致を進めており、これまではほとんどいなかった外国人客を迎え入れるようになっています。
奥阿賀秋景
外資系企業の買収が中小企業の廃業を防ぐことにも
実は観光分野に限らず、外資系企業による買収で中小企業の廃業を防ごうとする動きもあります。
経済産業省では中小企業基盤整備機構が持つ引継ぎ支援センターのデータベースを外資系企業に公開することを決定しました。
これは中小企業が廃業するのを防ぎ、高品質の製品や技術を守るとともに雇用も確保するのが狙いです。中小企業の人手不足は年々深刻化。経営者が高齢化する一方、後継者のいない会社も多く、廃業を選ぶ場合が増えてきています。
こうした状況は観光業界でも同様に見られるようです。例えば夫婦で経営している旅館が、経営者の高齢化により売却を決意するような場合もあります。
まとめ:中国系企業の買収をお互いにとってよい状況につなげる
これまで見てきたことから考えると、中国系企業が日本の観光関係施設等を買収することで、雇用が守られる、地域の産業が継承される、中国からツアー客を呼び込んで売り上げを伸ばすことができるというような、お互いにとってよい状況をつくりだすことは、不可能ではないように感じられます。
経済産業省の動きからも、今後も中国系企業による日本の観光関係施設等の買収は行われ続けるであろうことが予測できます。そうしたときに、お互いにとってよい状況をつくることがスタンダードとなっていってほしいものです。
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2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
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- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
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