訪日外国人観光客の地域別の割合は、2018年11月時点で約80%がアジア圏となっています。しかし、アジアの訪日意欲が成熟化の兆しにあることや、アジア全体で自然災害への懸念を示す傾向にある点から、リスク回避のためにも訪日客の多様化が求められています。
今回は、黒人の若者の間で海外旅行への関心が高まっていることを受け、新たなインバウンドのターゲット層としての可能性を見ていきましょう。
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
日本のインバウンドPRの対象は「白人」ばかり!?

DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査(2018年度版)の結果から、アジア圏における訪日意欲の成熟化や自然災害への懸念の広がりが見受けられます。現在訪日外国人観光客の地域別の割合で過半数を占めるアジアを、引き続きインバウンドのメインターゲットとするのは、リスクが高いと言えるでしょう。JNTOは、欧米豪へ向けたアプローチにも着手しており、2018年には「Enjoy my Japan」キャンペーンを始動させました。
観光庁&JNTO 欧米豪向け大規模プロモーション「Enjoy my Japan」を2月からスタート
以前の記事でもご紹介したように、欧米豪圏のインバウンド市場は、滞在日数が長いことや訪日旅行中の支出が多いこと、「コト消費」にお金を使うことなどを理由に注目されています。観光庁とJNTO(日本政府観光局)でも 2018年から欧米豪圏向けの訪日旅行プロモーションに本腰を入れていくようです。まずは知ってもらう!旅マエに有効なインバウンド集客の資料を無料でダウンロードする「インバウンド動画プロモーション」の資料を無料でダウンロードする「SNSを活用したプロモーション」の資料を無料でダウンロードする...
訪日客の多様性実現に向けた取り組みが進む一方で、北米やヨーロッパの民族・人種的マイノリティーに向けたプロモーションはいまだ十分とは言えません。日本で欧米旅行者というと白人をイメージする傾向にあり、実際に欧米豪向けプロモーションにおいて白人を起用する例が多いです。
しかし、日本が訪日客の多様化を実現し、真の観光立国として成長し続けていくためには、有色人種の若者「ミレニアル世代」もターゲットとする必要があります。
アメリカの有色人種の割合は、将来的に白人層を大きく上回り、社会的な影響力が増していくと言われているためです。今後の日本のインバウンド戦略において重要になるであろう「ブラックトラベルムーブメント」について、次項で詳しく紹介していきます。
インバウンド誘客の鍵「ブラック・ミレニアルズ」とは?

「ブラックトラベルムーブメント」という、都市における黒人層のとりわけミレニアル世代「ブラック・ミレニアルズ」を中心に、積極的に海外旅行を楽しもうといった動きが活発化しています。しかし、人種隔離政策時代は黒人が旅に出ることは危険であったという背景から、「黒人は旅に出ない」といったステレオタイプが残っているのも事実です。
現在は、特に高いレベルの教育を受け、収入も高いアフリカ系アメリカ人のミレニアル世代の間で、旅行を楽しむ人たちが急増しています。自らの旅の体験をSNSを通して積極的に発信する傾向にあり、黒人コミュニティーで旅行への興味関心を集めようとする動きが見られます。SNSを通じた情報発信の活発化から、旅行業界における黒人の存在感を高めたいといった意図が伺えるでしょう。
「ブラック・ミレニアルズ」による最大級のオンラインコミュニティ「Nomadness Travel Tribe」は、旅する黒人たちが旅の体験を共有できるプラットフォームとして注目を集めています。参加条件はパスポートのスタンプ1つで、世界各地から集まるメンバーとの旅や年に一度ニューヨークで開催される"旅の協議会"を通じ、オンラインだけでなくオフラインでの交流も活発です。
ほかにも「Black & Abroad」「Travel Noire」「Black Travel Movement」といった黒人コミュニティー向けの旅のプラットフォームが存在し、Instagramやブログから海外旅行に興味を持つ黒人層が増えています。実体験を元にした東京の楽しみ方や黒人グループで日本のスキー場を満喫した様子などを紹介するブログも掲載されていることから、「ブラック・ミレニアルズ」の間で訪日旅行への興味も高まっていると言えるでしょう。
黒人のインフルエンサーを起用してインバウンド対策を

黒人をプロモーションに起用することで、人種としてのアイデンティティーに理解と存在としての認識を示すことにも繋がり、仲間意識が強い彼らの心を一気に掴みやすくなります。現時点では訪日旅行の黒人たちの写真や体験談が少ないため、一度ブームが起きれば彼らはより強い反応を示し、注目の旅先として話題となる可能性も期待できるでしょう。
黒人の旅行ブロガーやSNSなどのインフルエンサーを起用したプロモーションも1つの手段です。これまでも写真家・映像作家でナイジェリア系アメリカ人Amarachi Nwosu氏が、黒人をモデルに東京で撮影した写真をSNSにたびたび投稿し注目を集めているほか、黒人ミュージシャンのミュージックビデオが東京で撮影されるなど、東京がクールな文化が根付く都市として黒人コミュニティに発信されています。
英国の黒人が生み出した音楽のジャンル「グライム」「アフロスウィング」界の人気アーティストたちは、日本が好きでツアーの開催や新たなビジネスチャンスに興味を示しています。しかし、日本がインバウンド誘客における「ブラック・ミレニアルズ」へのPRの重要性にまだ気づいていない点こそ、大きな課題と言えます。
まとめ:インバウンド誘客のターゲットの多様化が課題
インバウンド誘客のターゲットをアジア圏中心だったところから欧米豪にも目を向けるようになった日本ですが、2020年の東京オリンピックパラリンピック以降も真の観光立国として成長を続けていくためには、訪日客のさらなる多様化が求められます。
「ブラック・ミレニアルズ」をターゲットとしたプロモーションは、他国もまだ取り入れていないところが多いため、今こそ開拓すべき潜在層だと言えるでしょう。今後は従来の方法にとらわれず、黒人のアーティストやインフルエンサーの動向や「ブラック・ミレニアルズ」の旅行の趣向にアンテナを張り、さらなる訪日旅行の魅力発信が期待されます。
<参考>
- nippon.com:インバウンドは「マイノリティー市場」攻略をー若い英米黒人の間で高まる日本への関心
- HEAPS:動き出す、肌の黒いミレニアルズ。"旅をしない人種"の「ブラック・トラベル・ムーブメント」とは?
- JNTO:日本の観光統計データ(2018年11月)
- DBJ日本政策投資銀行・日本交通公社:DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査(2018年度版)
- NOMADNESS TRAVEL TRIBE:公式ウェブサイト
- Black & Abroad:How To Maximize A Short Trip in Tokyo, Japan
- BLACK TRAVEL MOVEMENT:Japow Powder Party:Black Skiers and Snowboarders Hit the Slopes in Japan
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
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詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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