ムスリムの人たちは宗教上、食べられないものがいくつかあります。その宗教上の決まりに配慮した食材や食事をハラル(ハラール)フードと言います。訪日外国人観光客の増加に伴い、日本でもハラルフード対応のメニューを提供するお店が増えています。
先月17日おこなわれた「ハラールフードアワード」の表彰式では、インバウンド部門の最優秀賞に静岡県が選出されました。ハラール対応した飲食店を掲載したサイト「ハラール・ポータル」などが、都道府県単位では先進的と評価されたとのこと。
このように、自治体でも対応事例が増加しているものの、ハラルフードについてあまりよくわからないという人が多いのも事実です。そこで今回は、ハラルフードとはどのようなものなのか詳しく見ていきます。
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ハラルフードの基本情報
ハラルフードに関する基本的な情報をお伝えします。
ハラルフードとは?
ハラルフードとは、ムスリムが宗教上、食べることを許された食材・食事のことです。「ハラル」という言葉はアラビア語で「許された」を意味します。
イスラム教では、宗教上の教えで食べることができない食材があり、ムスリムはこれらに配慮しながら食事しています。
禁止されている食べ物の具体例は?
ムスリムが禁止されている食材の代表例としてよく挙げられるのが「豚肉」と「お酒」です。
豚肉とお酒を直接口にしなければ良いというものではなく、例えば豚の脂や血液、エキスなども禁止されているほか、アルコールを使用した料理も口にすることができません。
また、豚肉以外の牛や鶏などの肉であっても、イスラムの法律に基づいて処理されたものでなければ食べることができません。
ただし、実は全てのムスリムが上記のような料理を食べることができないというわけではありません。
宗派や国によって違うほか、個人の解釈によっても違います。ムスリムであっても豚肉やアルコールを口にする人たちもいるため、それぞれの事情によって柔軟に対応する必要があります。
ハラルフードの注意点は?
日本で行われている牛や豚などの「と畜」は通常、気絶をさせてから行うのが一般的です。
しかしイスラム教では「死んだ動物の肉を食べてはならない」という決まりがあります。気絶をさせる段階で、動物が死んでしまう可能性があるため、気絶させてからと畜するということも忌避する傾向にあるというわけです。
このようにハラルフードは、豚以外の肉であれば全て食べられるというわけではなく、食肉加工の段階から細かく処理方法が決められています。
さらに、豚のエキスが使われているものやアルコールを使用しているものもNGのため、それらも明確に把握をしなければなりません。
例えば、ゼリーのゼラチンは見落とされがちですが、ゼラチンは豚から作られています。また、日本ではよく使われる「醤油」は製造過程でアルコールが自然発生するため、ハラルフードとして製造され認証を受けたものでなければ食べることができません。
食べ物以外でも、豚毛のブラシなどの使用も禁止されているので注意が必要です。
ハラル認証とは
ハラルフードであることを証明する「ハラル認証」という制度があります。
ここでは、ハラル認証の取得をはじめ、ムスリムに信頼される食事を提供する方法についてお伝えします。
ハラル認証とは?
食品加工の技術が発達したこともあり、ハラルフードなのかそうではないのかが見た目だけでは判別できないことが多くなりました。
そこでムスリムの人たちが安心して食事ができるように整備された制度が「ハラル認証」です。
ハラル認証は1970年頃にマレーシアで始まったと言われ、宗教と食品科学の両面から専門家が認証する制度です。
取得するのはかなり難しい
ハラル認証は、申請をすれば誰でも受けられるというものではありません。認証を受けるには厳しい基準をクリアする必要があります。例えば、「ムスリムのシェフかオーナーが在籍していること」や「お店で提供する食材の全てがハラルフードである」「アルコールを販売しない」などの基準があります。
取得するのが難しいこと、認知度が低いことなどからまだ日本では十分に普及しているとは言えないのが現状です。
まずは取り組みやすい方法から
日本でハラル認証を受けるとなると、コストやスタッフの教育などの面から見てもハードルは高いと考えられます。近年の訪日外国人観光客の増加によってムスリムの観光客も急激に増えていますが、日本の飲食店にとってハラル認証は必須ということはありません。逆に言えば、ムスリムの客層のみで経営を成り立たせることを目指すほどムスリム観光客数が十分とは言えません。
ハラル認証を受けなくても、ハラルフードを提供しているお店から取り寄せるなど、ムスリム向けメニューを提供する方法はあります。まずは取り組みやすい方法から行うのが良いでしょう。
事例:ハラルフードの採用
近年の訪日外国人観光客の増加に伴い、ムスリムが日本を訪れる機会が増えています。そのため、日本国内でもハラルフードを採用する店舗や企業が年々増加しています。ここでは、具体的な事例を紹介します。
1.大学
日本の大学への留学生が増えており、ムスリムの留学生も数多くいることから、学食でのハラルフード対応が増えています。
また大学近くにある飲食店などにもムスリムの留学生が訪れる機会が増えたことで、ハラルフードを取り入れる飲食店が増えています。
2.ANA機内食
ANAは、ハラルフードの世界最大手であるブラヒムと業務提携をすることで、ハラル認証を受けた機内食を提供しています。チキンカレーやノンアルコールのスパークリングワインなど、味も美味しそうな仕上がりになっています。
3.ラーメン屋「Halal 麺亭 浅草 成田屋」
お客さんの8割がムスリムであると言われるほど、ムスリムから支持されているラーメン屋が「Halal 麺亭 浅草 成田屋」です。 東京浅草にあるこちらのお店では、チャーシューが豚肉ではなく鶏肉で作られているほか、礼拝ができるお祈りスペースを完備するなど、ムスリムのためのラーメン屋と言っても過言ではないほどです。4.牛角赤坂店
牛角赤坂店はムスリムに人気の焼肉屋として知られています。「ムスリムフレンドリー牛角コース」というハラルフードに対応したコースを提供することで、ムスリムの人たちが安心して焼肉を楽しめる工夫がされています。
ハラルフード対応でムスリムへ向けたインバウンド対策を
近年の訪日外国人観光客の増加によって、日本を訪れるムスリムの人たちが増えています。ムスリムの人たちはイスラム教の決まりによって食べられないものがあります。日本でのハラルフード対応はまだまだ十分とは言えませんが、着実に進んできています。
ハラル認証は基準が厳しく取得をすることが難しいのですが、ハラルフード対応のメニューがあるお店と提携するなどの工夫次第で、ムスリムの人たちにも安心して利用してもらうことができます。
日本の飲食店も積極的にハラルフードへの対応をすることで、客層を広げることができるでしょう。
<参照>
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「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
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