ソースネクストの「POCKETALK(ポケトーク)」が自動音声翻訳機の中で圧倒的なシェアを誇っています。一方で自動翻訳で馴染みがあるものとしてGoogle翻訳が挙げられますが、翻訳精度はどちらのほうが優れているのでしょうか。
今回は、ポケトークとGoogle翻訳それぞれの翻訳精度を確かめるべく、日本語から中国語、英語への翻訳とその逆パターンの翻訳精度を比較・検証しました。
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POCKETALK(ポケトーク)とは?
POCKETALK(ポケトーク)とは、ソースネクスト株式会社から発売されている74言語対応のAI音声翻訳機です。
近年はさまざまな自動音声翻訳機が発売されていますが、その翻訳機能は日本語から外国語だけ、というように一方向のみの場合が少なくありません。一方でポケトークは、日本語から外国語、外国語から日本語、外国語から他の外国語への翻訳ができるのが特徴です。
また、2つのボタンがあり、画面はスマートフォンのようにタッチで操作できるのも大きな特徴です。
さらに、対応言語を日本語のほか数言語にしぼっている自動翻訳機が多いなか、ポケトークは74言語に対応しています。
もともとポケトークの原型はオランダのベンチャー企業・トラビス社が開発した翻訳機であり、その国内の独占販売権を得てトラビス社とともに日本向け端末の開発をしたのがソースネクストです。もともと海外の製品なので対応言語数も多いということです。
重要な翻訳機能についてですが、ポケトークはAIを利用しているため、長文の翻訳が可能です。また、翻訳データはインターネット上にあるため、精度も日々向上しているとのことです。本体価格は1台24,880円です(記事執筆時点/2019年7月)。
なおポケトークには、初代モデル「POCKETALK」と2018年秋に発売された新型「POCKETALK W」がありますが、この記事では「POCKETALK W」について解説します。
ポケトークの使い方
ポケトークはオンラインでの自動翻訳が特徴の翻訳機です。モバイル通信やWi-Fiを利用して翻訳を行います。
購入時に最初からSIMカードが入っているタイプと入っていないタイプがあります。SIMカードが入っている場合、2年分の通信料は購入時の料金に含まれているため、携帯電話の契約のように月々の料金を支払う必要はありません。
2年後も1年ごとに5,000円追加すれば、継続的にモバイル通信を利用して使い続けられます。Wi-Fi環境があれば、追加料金を支払わなくてもそのまま使えます。
初期設定
- 最初にメイン言語を選ぶ
- SIMカードが入っていない端末はWi-Fiを設定する必要がある
- 左上のメニューを開き、真ん中の「Wi-Fi」を押す
- やり方はPCやスマホなどと同じで、つなぎたいWi-FiのSSIDを選ぶとキーボードが表示されるので、パスワードを入力する
翻訳
- 初回起動時にはメイン画面の左に「日本語」、右に「English(US)」と表示される
- この場合左ボタンを押しながら話すと日本語から英語、右ボタンを押しながら話すと英語から日本語への翻訳ができる
- ボタンを押したあと、「話してください」という表示が出てから話しはじめる
- 話している間はボタンを押したまま、話し終わったらボタンを離す
言語を変える
- 「日本語」「English(US)」などの表示部分をタッチする
- 言語は画面をスクロールして選ぶか、左上のマイクをタッチすると音声入力もできる
Google翻訳とは?
Google翻訳とは、Google社が提供する翻訳アプリです。文字入力による翻訳は103言語、音声入力による翻訳は32言語に対応しています(記事執筆時点)。基本はオンラインですが、オフラインでも59言語の翻訳に対応しています。
特徴は画像入力に対応していることで、スマートフォンのカメラを対象物にかざすと、そのなかから文字を読み取り、翻訳してくれます。
パソコン・スマートフォンがあれば無料で利用できるのが利点です。
ポケトークとGoogle翻訳の翻訳精度を徹底比較!
それぞれに利点があるポケトークとGoogle翻訳ですが、翻訳精度はどちらのほうがよいのでしょうか。今回は、日本語から中国語、英語への翻訳とその逆パターンについて、翻訳精度を比較してみました。
日本語→中国語
ここから東京駅へ行くには山手線で8駅です。
- ポケトーク:从这里到东京车站坐山手线八站。
- Google翻訳:山手线有8个车站可以从这里到达东京站。
Google翻訳では「山手線には8つの駅があります」という意味になってしまっています。この場合はポケトークのほうが正確です。
次の信号を右に曲がってください。まっすぐ進めば着きますよ。
- ポケトーク:在下一个信号灯向右转直走的话就到了。
- Google翻訳:在下一个红绿灯处右转。你会直接到达。
信号のことをポケトークでは「信号灯」、Google翻訳では「红绿灯」としていますが後者の方が一般的とされる地域もあります。この場合、どちらの文も少し違和感はあるものの、通じなくはありません。
お会計は890円です。
- ポケトーク:共计八百九十日元。
- Google翻訳:您的帐户是890日元。
このような場合、一般的には「一共890日元」というように表現することが多いでしょう。この場合、どちらかというとポケトークのほうがより一般的な表現に近いと言えそうです。
日本語→英語
ここから東京駅へ行くには山手線で8駅です。
- ポケトーク: It is 8 stations by Yamanote Line to go to Tokyo Station from here.
- Google翻訳:There are 8 stations on the Yamanote Line to get to Tokyo Station from here.
中国語と同様、Google翻訳では「山手線には8つの駅があります。」という意味になってしまっています。この場合はポケトークのほうが正確です。
次の信号を右に曲がってください。まっすぐ進めば着きますよ。
- ポケトーク:Turn right at the next traffic light. You will arrive straight ahead.
- Google翻訳:Turn right at the next traffic light. You will arrive straight ahead.
この場合どちらも同じになりました。翻訳結果は問題なさそうです。
お会計は890円です。
- ポケトーク:Your account is 890 yen.
- Google翻訳:Your account is 890 yen.
この場合も同じになりました。しかし、正しくは”The total is 890 yen.”または”That will be 890 yen.”などというようです。口語的・慣習的な表現は直訳だけではカバーしきれず、まだ自動翻訳機には訳しづらいのかもしれません。
中国語→日本語
从这里到东京车站要坐什么线(ここから東京駅までは何線に乗りますか?)
- ポケトーク:ここから東京駅までは何線に乗りますか。
- Google翻訳:ここから東京駅まではどの路線を利用しますか。
この場合、どちらも問題なく翻訳できました。
那我要买了,可以刷卡吗(じゃあ買います。カードで払えますか?)
- ポケトーク:ではカードを買うことはできますか?
- Google翻訳:それから私はそれを買わなければなりません、それをスワイプすることができますか?
ポケトークの方は、「じゃあ買います。カードで払えますか?」という2つの文を1文として訳してしまったようです。この他の例文でも試してみましたが、ポケトークはボタンを押してからはなすまでに話された文章は1文として認識する傾向が強いようです。
この点、Google翻訳では2文に分かれました。しかし後半の「刷卡」は「カードを使う」「カードで払う」という意味です。中国では買い物の時に使う慣用表現ですが、Google翻訳では「スワイプする」という直訳になっています。
可以刷卡吗(カードで払えますか?)
- ポケトーク:カードは使えますか?
- Google翻訳:カードをスワイプすることはできますか?
ポケトークの翻訳傾向を踏まえ、後半の1文のみ翻訳してみました。Google翻訳の訳は変わりませんが、ポケトークは正確に訳せています。少々面倒ですが、ポケトークを使う際には1文ごとに切って入力したほうがよいでしょう。
英語→日本語
Which train should I take to go to Tokyo station?(ここから東京駅へ行くには何線に乗ればいいですか?)
- ポケトーク:東京駅へいくにはどの電車でいけばいいですか
- Google翻訳:東京駅へはどの電車でいけばいいですか
翻訳結果は少し異なりますが、どちらも正確です。
Then, I'm gonna buy it. Can I pay by credits?(じゃあ買います。カードで払えますか?)
- ポケトーク:それから私はそれを買うつもりです。私はクレジットで支払うことができます
- Google翻訳:それから私はそれを買うつもりです。私はクレジットで支払うことができますか?
翻訳結果はほぼ同じですが、ポケトークは疑問形になりませんでした。
ここにもポケトークのくせが出ていますが、やはりボタンを押し直して別々の文として入力すれば、Google翻訳と同じように疑問形になりました。
うるさい場所でも使用できる/電話の音声は認識しない
また今回の検証では、駅のホームや構内など周囲の音が大きい場所でも試してみました。検証を行ったのは一日平均12~13万人ほどが利用する比較的大きな駅ですが、構内で音声入力を試したところ、ポケトークでもGoogle翻訳でも正確に認識されました。
電車の到着時や発車時など大きな音が発生する際にホームでも試しましたが、ポケトークもGoogle翻訳も問題なく認識しました。
一方、どちらも電話の音声は認識しませんでした。
スマートフォンの音量を最大にし、スピーカーをポケトークや別のスマートフォンのマイクに近づけたものの認識されなかったため、音量の問題ではなく、そもそも電話の声は音声として認識されないようです。
両方とも対面での使用には問題ないのですが、訪日外国人から電話で予約を受ける際や問い合わせが来た際などには使用できません。
精度はあまり変わらない/費用と使い勝手を考えて検討を
今回の検証では、ポケトークとGoogle翻訳の翻訳精度はあまり変わらず、音声認識のレベルにも大差はないということがわかりました。
使い勝手に関しては、ポケトークは音声翻訳に特化したデバイスなので、Google翻訳より勝っていると考えられます。接客はスピードが求められる場合も多いので、ボタンを押すだけで翻訳を開始できるというのは非常に便利です。
一方Google翻訳は、無料で利用できるという大きなメリットがあります。翻訳ツールを検討する際は費用対効果を考える必要があるでしょう。
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