豪華客船に"本当の"お金持ちを連れてきてもらうために今、日本ができること

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訪日外国人客数が右肩上がりに伸びている中、ここ数年の訪日客一人あたりの消費単価は鈍化しており、「富裕層の取り込み」は、観光消費を拡大させていくための課題となっています。

その一つの取り組みであるクルーズ船での訪日観光は、各自治体による誘致活動の甲斐あって、海外からの豪華客船が日本各地に寄港するようになりました。例えば中国からは、3日に1回のペースで1,500〜4,000名が乗船する大型クルーズ船が長崎に寄港しています。こうしたクルーズ船寄港は、一度に多くの誘客を可能とし、同時に消費も期待されていました。

しかし実際には、その乗船客は日本での消費に寄与しておらず、大きく期待された経済波及効果が得られていないようです。



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豪華なクルーズ、しかし乗っているのは…

過去10年ほどの海外クルーズ寄港誘致活動の成果もあり、2017年には267隻(77万人)、2018年には220隻(70万人)と、10年前に比べおよそ7倍の乗船客数に増加しています。乗船客らによる消費経済効果に期待が持たれていましたが、実際のところを調査した報道機関によると、彼らの滞在時間は、昼間のわずか5、6時間のみで地元への消費にはほとんど貢献していないようです。

乗船客は日本に着いた途端に観光バスに乗り換え、韓国系企業が運営する諫早市貝津にある大型免税店に向かい、その後は中国系の家電量販店に寄り、そして船へ戻ります。午前中に到着したクルーズ船は、夕方には次の目的地へ出航するため、こうして買い物をしていては、長崎市内を観光する時間はありません。

宿泊や飲食の消費活動はほぼなく、現地に落ちるお金は微々たるものとなっているようです。こうしたクルーズ客を呼び込むための施策に税金を投入することへの批判の声も高まっています。

本当の富裕層を誘致するには?

日本各地での寄港誘致の結果、海外からのクルーズ船寄港回数や上陸客数は飛躍的に増加しました。しかし、上記で述べたように、ただ上陸する観光客数を増やすだけでは、本来の目的である消費・経済効果を生み出すことはできません。今後は、どうしたら「富裕層」「優良観光客」を取り込んでいけるのかという量よりも質へのシフトを図る段階に来ています。

そもそも本当の豪華クルーズ旅行とは?

クルーズ旅行は、他の移動手段、例えば高級車やプレイベートジェット、ファーストクラスの飛行機とは違い、世界中を暮らしながら移動できる「動く別荘」のようなものです。世界の富裕層セレブたちは、プライベートクルーザーで究極の贅沢船旅として世界の海を周遊しています。

日本の観光業界でクルーズといえば、大型豪華客船でゆったり世界一周するイメージを持っていますが、世界のセレブたちの間では、長期休暇を利用したもっと小規模で、のんびりプライベートな時間を過ごせる、カスタマイズができるようなクルーズ旅が人気です。

例えば、船内の食事では、旅行者個人の好みや状況に合わせたサービスや臨機応変なメニューを楽しめます。自分が本当に求める特別な体験や、大切な人とのんびり過ごせる時間にお金を払うことが、豪華クルーズ旅行の大きな価値となっています。

彼らは日本になぜ来てくれないのか?

年々旅行者たちは、他人とは違うもっと自分だけの特別な体験を求める傾向になっています。このことはクルーズ船の乗船者に限ったことではありませんが、訪日旅行全体においても、思い出に残る特別な時間を過ごしたいと考える旅行者が増加しています。富裕層に限らず、旅行スタイルの主流は、決められた場所に行く「団体旅行」から自分で自由に決められる「個人旅行」に移りつつあります。

日本各地の様子を知りたいという観光客にとって、縦長の地形である日本には、陸路移動では時間がかかりすぎてアクセスが難しい地方観光地も多くあります。実は、こういった点もクルーズ船の活用で解決できる課題です。船で宿泊移動しながら地方周遊ができれば、こうした移動時間の削減と地方の文化体験需要を同時に解決することも可能です。

しかし、このような周遊の仕方を知る外国人観光客は多くありません。さらには、誘客する地方側もこうした発想がないこともあります。自分たちの持つ港への寄港のみを考え、一部を海外へPRしていくだけでは、訪日外国人観光客は実際に行動できない場合もあるのです。

今後は例えば、効率的でよりディープな地方の文化体験ができるような日本周遊ルートを提案したり、コンテンツを発掘、整備したりしつつ、この就航ルートを新しい日本の楽しみ方として世界に発信していく必要があります。

まとめ:中国にとどまらない、富裕層ターゲットの観光資源育成が必要

圧倒的な訪日数を誇る中国市場を対象にした誘致も大切にしながらも、地域問わず、世界の富裕層に楽しんでもらえる、満足してもらえる観光資源を開発し、育てていくことを忘れてはいけません。長期休暇が比較的取りやすい欧米富裕層らは、空路アクセス上、北アフリカや南米、インドから東南アジアへの海外旅行経験が多いと言います。その一方で、未知の旅行先として日本への関心も高まっています。これまで遠いという理由で足を運んでもらえなかった地域であるからこそ、PRの仕方によっては、今後欧米富裕層からの訪問が期待できるはずです。


<参照>


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2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

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  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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