【法改正】増加する「タダ乗り医療ツーリズム」にSTOP!中国人観光客の日本の健康保険悪用に対抗する健康保険法改正とは

公開日:2019年08月01日

医療保険の適用対象を原則として日本に居住する扶養家族に限定するといった改正を盛り込んだ「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」が、2019年5月15日に参議院本会議で可決・成立しました。

訪日中国人観光客による「タダ乗り医療ツーリズムの現状をふまえ、健康保険法改正に至った背景について、インバウンドの視点から見ていきましょう。


健康保険法改正で適用対象を限定

これまでの制度では一定の要件を満たすことで、居住地や国籍に関わらず医療保険が適用されましたが、今回の改正により一定の例外を設けつつ、日本に居住する家族に限定するとしています。具体的には、オンライン資格確認の導入マイナンバーカードを健康保険証として利用できる規定を設けるなどの措置を講じる方針です。

今回の改正に至った背景としては、外国人人材の受け入れ拡大による医療費の財政負担増大の恐れが指摘されていますが、中国人の医療ツーリズムブームが影響している可能性も否定できないでしょう。

訪日中国人観光客の「タダ乗り」が増加

インバウンドの巨大市場である中国では、コト消費需要の高まりが顕著ですが、中でも日本の医療を受けるために訪日する医療ツーリズム」がブームとなっています。日本の医療水準の高さに対する関心が高まる一方で、「日本の高度な医療をお得に受けること」と目的に、後述するように日本の健康保険などの医療制度を悪用するケースが見られます。

中国のまとめサイトの中には、日本での医療ツーリズムに関心がある中国人に向けて、「中国人が日本に行っても無料で医療を受けられる方法」といった、いわゆる「タダ乗り医療ツーリズムに関する情報が見受けられます。今回の法改正は、こうした日本の医療制度に「タダ乗り」する中国人にとっては、悪いニュースとして受け止められていると考えられます。

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中国で注目される「タダ乗り医療ツーリズム」とは?

本来日本で治療や人間ドック等を受けることを目的として訪日する外国人は、「医療滞在ビザ」の取得が必要です。平成28年の時点で、医療ビザの9割近くが中国人によって取得されており、中国人の日本における医療ツーリズムへの関心の高さがうかがえます。

医療ビザでの滞在の場合、医療費は100%自己負担となるため、健康保険に加入している居住者と比べると高額な支払いが発生します。そこで注目され始めたのが、「タダ乗り医療ツーリズムです。

以前から「経営者ビザの取得」や「留学生として入国」といった手法で日本の医療機関を利用する中国人について、多数報道されてきましたが、「家族の扶養に入る」ケースも新たに問題となっています。日本に長期滞在する家族の扶養に入ることで、治療目的の一時的な滞在にも関わらず日本の医療保険を利用することができ、格安で高い水準の医療が受けられる仕組みです。

保険加入後、半年以内に高額治療を受けたケースは1,600件

2017年に国が実態調査を実施したところ、外国人が国民健康保険に加入後、半年以内に800万円以上の高額な治療を受けたケースは、1年間に約1,600件にものぼっています。内訳として、医療目的の訪日であることを隠し保険証を取得した疑問のある件数は明らかになっていませんが、はっきりと偽装滞在で違法の疑いがあると確認できたケースもあるそうです。

日本人と結婚した娘の夫の扶養に入る名目で来日し、保険証を取得しがん治療を受け、200万円の負担を20万円に抑えたケースもあります。年間2万人近くの外国人が治療を受ける国立国際医療研究センターでは、2017年度に保険証を取得した経緯に疑問のある患者が、少なくとも140人いることが判明しました。

具体的には、重度の病気を患う中国人患者が、日本語学校で学ぶ名目で入国することで保険証を取得し、入学後半年も経たないうちに手術を受けたケースがあるそうです。重い病の人が留学に来ることは不自然であり、初めから治療が目的だったのではと見られています。

まとめ:健康保険法改正で「タダ乗り医療ツーリズム」撲滅へ

健康保険法改正の背景の1つとして、近年問題となっている、訪日中国人観光客を中心とした「タダ乗り医療ツーリズム」の現状を見ていきました。

これまで留学や家族の扶養に入るといった名目で日本の保険証を取得し、格安で医療を受けるケースが増加していました。

保険の適用対象を日本に居住する扶養家族に限定するといった内容を盛り込んだ今回の健康保険法改正は、今後日本の外国人材の受け入れ拡大により、医療費の財政負担が増大するおそれがあるとの指摘に基づくもののようですが、同時に中国人による「タダ乗り医療ツーリズム」の撲滅に向けた第一歩となることも期待できるのではないでしょうか。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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