一般財団法人森記念財団都市戦略研究所は、世界の都市総合ランキング2018年度版を発表しました。ランキングにおいて、トップのロンドンに次いで2位はニューヨーク、東京は3位にランクインしました。
今後、東京が順位をあげるにはどのような課題を改善すべきなのか、影響力の高いトップ都市であるロンドンなどのデータと比較しながら解説します。
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「世界の都市総合力ランキング」東京は第3位
世界の都市総合力ランキングは、一般財団法人森記念財団都市戦略研究所が2008年より毎年調査・発表している世界の主要 44 都市を対象に都市の力を総合的に評価した日本初のランキングです。評価基準は、経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスの6分野からなされており、同分野における国際的な第一人者によって構成される実行委員会の監修の下、作業委員会が具体的な分析をしています。
世界の都市総合力ランキング2018年版によると、上位5都市はロンドン、ニューヨーク、東京、パリ、シンガポールとなり、昨年同様の結果となりました。
2008年に世界の都市総合力ランキングが発表されて以降、ロンドン、ニューヨーク、東京、パリ、シンガポールの5都市は、10年間連続で上位を維持しています。
大きな変動として、ロンドンオリンピックが開催された2012年、ロンドンはニューヨークを抜いて2位から1位へ浮上、2016年に東京はパリを抜いて4位から3位へ浮上しました。
過去のオリンピック開催にまつわるインバウンド事例3選
※新型コロナウイルスのパンデミックを受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年程度の延期が決定しました。詳細な日程、選考基準などは、公式情報が発表され次第、順次更新します。2020年7月の東京オリンピック開催まで、もうすぐ1年となります。国内ではNHKの「NHK東京2020オリンピック・パラリンピック放送スペシャルナビゲーター」にタレントの嵐が就任することが発表され、ますます注目を集めていくことになりそうです。インバウンド業界では、開催に合わせて訪日外国人がこれまでにないほど増え...
ランキング1位のロンドンは、2016年のEU離脱国民投票後もスコアの勢いは留まることなく、落とすことなく、7年連続で総合力1位を維持しています。
ロンドンはとりわけ、文化・交流分野に強みがあり、「世界的な文化イベント件数」や「歴史・伝統への接触機会」といった指標が高く評価されています。
ランキング2位のニューヨークは、「法人税率の低さ」における評価が改善された影響もあり、経済分野は今年も1位を維持し、「スタートアップ環境」や「ワークプレイス充実度」の高評価によって、スコアに大きなの伸びに影響を与える一方、25位の環境、28位の居住は低評価となっています。
そして、ランキング3位の東京は、上位2都市ほどの伸びはなかったものの、「GDP成長率」が上がったことなどにより、経済分野でも3位に上昇するなど、ランキングを維持しています。居住分野において、「総労働時間の短さ」の改善が評価され、トップ10入りを果たしたものの、「環境への取り組み」の評価が相対的に低く、環境分野は12位から29位へ下落する結果となりました。
唯一トップ10入りしていない環境分野の改善が今後の課題となるでしょう。また、ロンドンのようにオリンピック開催後も長期間に渡りスコアを伸ばし続けられるかが注目されています。その他、日本の都市は28位に大阪、37位に福岡がランクインしています。
「グローバル都市調査」東京は第4位
続いてアメリカのコンサルティング会社A.T. カーニー(A.T. Kearney)が2019年5月に発表した「グローバル都市調査」の結果です。同調査は今年で9回目となり、2019年は全世界130都市が対象とされています。
グローバル都市調査の評価は主に2つの構成からなされており、現在の都市のパフォーマンスを評価する「グローバル都市指標(Global Cities Index:GCI)」は、「ビジネス活動」「人的資源」「情報交換」「文化的経験」「政治的関与」の5つの観点、27の評価基準を基にランク付けしています。
そして、将来の有望性を分析する「グローバル都市展望(Global Cities Outlook:GCO)」は、「個人の幸福度」「経済」「イノベーション」「ガバナンス」の4つの観点、13の評価基準を基にランク付けしています。
2019年グローバル都市指標(GCI)ランキング |
都市名 |
1位 | ニューヨーク |
2位 |
ロンドン |
3位 |
パリ |
4位 |
東京 |
5位 |
香港 |
6位 |
シンガポール |
7位 |
ロサンゼルス |
8位 |
シカゴ |
9位 |
北京 |
10位 |
ワシントンD.C. |
2019年グローバル都市展望(GCO)ランキング |
都市名 |
1位 | ロンドン |
2位 |
シンガポール |
3位 |
サンフランシスコ |
4位 |
アムステルダム |
5位 |
パリ |
6位 |
東京 |
7位 |
ボストン |
8位 |
ミュンヘン |
9位 |
ダブリン |
10位 |
ストックホルム |
グローバル都市調査2019年度版のランキングにおいて、グローバル都市指標(GCI)は、ニューヨークが「ビジネス活動」と「人的資源」において高スコアを獲得し、3年連続で首位を記録しています。グローバル都市展望(GCO)は、ロンドンが昨年より順位をあげ首位となり、4年連続トップを保っていたサンフランシスコが3位へと順位を下げた結果となりました。
同グローバル都市調査において、日本の都市のうち東京がランキング上位に食い込み、グローバル都市指標(GCI)は7年連続で4位を維持し、グローバル都市展望(GCO)は14位から6位に浮上し、調査開始以来、最も高い順位を記録しました。
その他、大阪は、グローバル都市指標(GCI)は昨年同様50位、グローバル都市展望(GCO)は39位から37位に浮上し、名古屋は、グローバル都市指標(GCI)は昨年同様70位、グローバル都市展望(GCO)は昨年34位から31位に浮上しています。
世界の都市別「域内総生産」ランキング
内閣府のデータによると、2018年度の日本の名目国内総生産(GDP)は550.3兆円で、米国、中国に次いで世界第3位です。2015年1月、アメリカのシンクタンクであるブルッキングス研究所より公表された世界の都市の域内総生産(GRP)2014年度のランキングでは、日本の東京が1位を記録しています。
2014年域内総生産(GRP)ランキング |
都市名 | 合計値 |
1位 | 東京(首都圏) | 1兆6,170億ドル |
2位 |
ニューヨーク | 1兆4,030億ドル |
3位 |
ロサンゼルス | 8,605億ドル |
4位 |
ソウル(仁川、京畿道) |
8,459億ドル |
5位 |
ロンドン | 8,357億ドル |
6位 |
パリ | 7,151億ドル |
7位 |
大阪(京阪神) | 6,713億ドル |
8位 |
上海 | 5,940億ドル |
9位 |
シカゴ | 5,632億ドル |
10位 |
モスクワ | 5,533億ドル |
上図のとおり、日本の都市でランクインしたのは、1位を記録した東京(首都圏)の1兆6160億ドル、7位大阪(京阪神)の6712億ドルとなります。
東京(首都圏)で1位を記録していますが、神奈川、千葉、埼玉を除いて東京都単体でも同年東京都GDP(約1兆ドル)に対し、ニューヨーク市は6,108億ドルとなるため、東京は群を抜いて世界一の都市ということになります。
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とはいえ、同データは2014年のものであり、それ以降の統計公表はされておらず、ここ5年間の推移にどれだけ変化があるか注意が必要といえるでしょう。
データをおさえてインバウンド対策に活用を
今回は、世界の都市総合力ランキング2018年度版を紹介しました。1位の順位を維持しているロンドンですが、ロンドンオリンピックが開催された2012年にニューヨークを抜いて2位から1位に浮上しています。3位を維持する東京は、2020年にオリンピックを控えており、影響が期待されています。
一方で、東京の課題として環境分野の「環境への取り組み」の評価が低いことが挙げられており、どれだけ改善できるかによって、今後の世界の都市総合ランキングに影響力を与えるといえます。これらのデータをしっかりおさえて、インバウンド対策に活用しましょう。
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