過去のオリンピック開催にまつわるインバウンド事例3選 | 2020年東京五輪が抱える3つの課題・その解決方法とは?

公開日:2019年06月07日

2020年7月の東京オリンピック開催まで、もうすぐ1年となります。国内ではNHKの「NHK東京2020オリンピック・パラリンピック放送スペシャルナビゲーター」にタレントの嵐が就任することが発表され、ますます注目を集めていくことになりそうです。

インバウンド業界では、開催に合わせて訪日外国人がこれまでにないほど増えることも考えられます。滞在時の旅行消費や、帰国後の口コミ効果によるインバウンド観光客の増大などポジティブな経済効果に期待が高まります。

ただし、オリンピックの開催はメリットばかりではありません。国土交通省は5月29日に、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会での駐車場対策を検討すると発表しています。開催期間中は、交通機関の混乱や宿泊施設の不足など、さまざまな課題が発生すると考えられます。

そこでこの記事では、過去のオリンピックの事例から、東京オリンピックに向けたインバウンド対策について解説していきます。


2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて日本が抱える3つの課題

現在、日本がインバウンドにおいて抱えている課題とは何なのでしょうか。詳しく解説していきます。

1. 交通機関の混乱

東京オリンピックの開催期間中は、選手、スタッフ、観光客などを含め、約1,000万人が東京を訪れると言われています。

特に電車の混雑はかなり酷くなることが予想され、新宿駅は通常の2倍・四ツ谷や新木場は3倍もの乗客であふれるとの予測もあります。

2. 宿泊施設の不足

オリンピック期間中の宿泊者は約26万人が見込まれ、そこから割り出される必要客室数は約170万室と言われています。オリンピックは17日間あるため1日に約10万室が必要であり、東京で1万室が不足するというデータが出ています。一方、近隣県も含めれば約20万室が供給可能であるとする主張もあります。

単に不足するということ自体が問題なだけでなく、オリンピックに向けて建てた宿泊施設がオリンピック後も運営していけるのか、できないとすればどのように活用していくべきなのかといった問題もあります。

3. 多言語対応

多言語対応は近年かなり進んできているものの、一般の飲食店などでは英語や中国語への対応も行われていないというのが現状です。

平昌オリンピックではボランティアスタッフの多くが韓国語しか話すことができず、外国人客とコミュニケーションを取れないという問題が発生していました。東京オリンピックでも多くのボランティアスタッフを募っているので、同じような問題が起こると考えられます。

過去3つのオリンピック事例・政策から得る成功へのヒント

では、過去のオリンピックで行われていたインバウンド対策事例から、東京オリンピックでの課題を解決するヒントを探っていきます。

1. ロンドンはオリンピックの「遺産」を活かし持続可能な街づくりへ

「オリンピックレガシー」という言葉があります。レガシーとは「遺産」という意味で、オリンピックのために建設した施設などをどのように後世へ引き継いでいくかという議論の中で使われる言葉です。日本でも東京オリンピックに向けて競技場や宿泊施設等が新たにオープンしているので、それらを「レガシー」としてどう活用していくかが問われています。

ロンドンオリンピックの舞台となったイーストロンドンのストラットフォード地区は、以前「巨大なゴミ捨て場」と呼ばれていました。2005年のロンドン五輪開催決定を機に、この地区をロンドンの「レガシー」として引き継いでいくために再開発が開始されました。2012年のオリンピックメイン会場として整備された後も、長期的なビジョンのもと、新しい街づくりのプロジェクトが進められています。

このプロジェクトでは、新たにIT産業や教育機関が誘致されたほか、住宅地区が整備され、巨大なショッピングモールが新設されました。ホテルの誘致も積極的に行われ、MICEを含めた観光素材の開発も進められています。

2. バルセロナは戦略的な取り組みで観光都市として発展

バルセロナはオリンピックの開催5年前から観光に関する会議を開催していました。このことから、かなり早い段階から観光推進に向けて取り組んでいたことがわかります。

バルセロナの取り組みの大きな特徴として、イメージ戦略が挙げられます。オリンピック後もスポーツイベントを継続して開催するなどの取り組みが行われ、国際的なスポーツ都市として知られるようになりました。また、オリンピックを契機として、「工業都市」というイメージから「地中海に面したリゾート地」というイメージへと変わりました。

これにより、ビジネス目的よりも観光目的でバルセロナを訪れる人が増え、バルセロナはスペイン随一の観光都市となりました。

3. シドニーの観光客はオリンピック後も増加せず。なぜ?

シドニーはメディア対策を中心としたインバウンド対策を行いました。聖火リレーを活用したプロモーションなど、体系的な戦略を行ったものの観光客が増加しませんでした。

その原因は、オリンピック後の投資やマーケティングを行わなかったことであるといわれています。シドニーのオリンピック期間中の取り組みは先進的なものでしたが、期間が終わった後の取り組みの重要性を示す結果となりました。

各企業ができる3つのインバウンド対策とは?

ここまでは国単位のプロジェクトとしてのインバウンド対策をお伝えしてきました。1つの企業が行うには大きすぎる対策ばかりだったかと思いますが、一事業者としてもオリンピックという一大イベントを活かさない手はないでしょう。

そこでここからは、各企業が行えるようなインバウンド対策を紹介していきます。

1. テレワーク・時差Bizの適用

テレワークとは、通信技術を活用し、時間や場所にしばられず働くことを言います。そして時差Bizとは、通勤ラッシュ回避のために通勤時間をずらすことを言います。

サマータイムを導入するという案もありましたが、システムの問題や反対的な世論を受けて見送られました。現在は、東京都が公式ページ等を通じて時差Bizを推進しています。

先ほどお伝えしたように、東京オリンピックでは交通機関の混乱が予想されています。東京周辺の電車はオリンピック期間中でなくても世界一混雑しているので、オリンピック開催前や開催後も含めてテレワークや時差Bizを取り入れることで、快適な勤務スタイルを手に入れることができるでしょう。

2. 多言語対応

多言語対応には、メニューやフロア案内などを多言語化したり、スタッフが研修を受けたりといった本質的な対応から、翻訳機(音声で翻訳できるポケトークなど)など費用はかかりますが手軽に導入できるものもあります。

また、店舗のターゲットや地域によってどの国籍の訪日外国人がよく来るのかは変わってきます。

各企業の実態に合わせて対応を変えていくことが重要です。

下記の記事では、多言語対応の方法や事例を紹介しています。

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特に宿泊施設業界は、現在オリンピック開催期間の大きな需要に備える時期です。ただし、急激に施設を増やすとオリンピック後に不要になってしまう恐れがあるので、今あるホテル・民泊等を最大限活用して供給する必要があります。

そこで海外からの予約に対応する施設をうまく活用すれば、訪日外国人が安心してオリンピックを楽しむことができます。

持続的に人が訪れる観光地を目指して

東京オリンピックに向けて、日本は交通機関の混乱・宿泊施設の不足・多言語対応の遅れなどの課題を抱えています。

ロンドンのようにオリンピック開催地を「レガシー」として引き継ぎ、そしてバルセロナのようにイメージ戦略を行うことができれば、より多くのインバウンド需要を獲得できます。またそのインバウンド需要を維持するために、シドニーの教訓を活かし、オリンピック後もマーケティングを行っていくことが必要でしょう。

各企業ができるインバウンド対策としては、テレワーク・時差Bizの適用、多言語対応、海外からの予約対応が挙げられます。

東京オリンピックという一大イベントを活かし、今できる対策を行うことでインバウンド業界を盛り上げていきましょう。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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