福岡県有数の観光地、太宰府の観光振興に注力している西日本鉄道は、6月に西鉄福岡(天神)ー太宰府間で観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(ザ・レール・キッチン・チクゴ)」の運行を開始しました。
新たな観光列車のコンセプトや旅のプランをふまえ、インバウンドの周遊観光促進による地域活性化に向けた取り組み例として見ていきましょう。
【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
観光列車の導入で鉄道沿線の活性化へ
西日本鉄道では、2013年から鉄道活性化に向けた事業の一環として、観光列車の導入を構想していたとのことです。背景としては、天神大牟田線沿線の人口や輸送人員の減少が挙げられ、特に福岡県南部の人口減少を危惧しています。筑後地方の鉄道の知名度を拡大し、地元の人々とともに地域を活性化させていこうといった想いが込められた取り組みです。
福岡都市圏や九州の人に対し、休日や特別な日の新しい過ごし方として提案するだけでなく、福岡に旅行に来た国内外からの観光客の、隙間時間に福岡市周辺も合わせて観光したいといった需要にも応えることが期待されています。
訪日韓国人観光客をはじめ、インバウンドにも人気の福岡都市圏から天神大牟田線を利用促進を促すことで、インバウンドのさらなる地方誘客が見込まれるでしょう。
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」で筑後の食をPR
西日本鉄道初の本格的な観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は、沿線の地域の魅力を乗せ、人・モノ・体験を繋いでいくことをコンセプトとしています。
ネーミングは、美味しい食事が楽しめる列車であることがインバウンドにもわかりやすく伝わり、地域の名前も入っていることから、筑後地域の知名度拡大にも効果を発揮すると見られています。ロゴにも、いちごやぶどう、お酒など、筑後にまつわる魅力がイラストとして隠れているユニークな仕組みが特徴です。
既存の車両を大幅に改造した3両編成となっており、座席数は52席です。天井には八女の竹を用いた竹細工、壁の一部に城島瓦を用いるなど、沿線の地域資源を活用した内装となっています。
車内で提供される料理も、シーズンごとに産地と旬にこだわった沿線地域の食材を使用予定です。ブランチ・ランチ・ディナーと3種類のメニューに合わせたコースが設定されており、それぞれ筑後地域の農園で栽培される野菜や、うきは市のリバーワイルド・ハム・ファクトリーの三元豚など、地産地消を目指したメニューになっています。

インバウンドに地域の魅力を発信する2つの旅のプラン
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は、西鉄天神大牟田線沿いを走行し、福岡市中心部から次第に田園風景へと車窓からの風景が移り変わっていくのが特徴です。
基本的に金土日祝日に運行され、ブランチの旅は福岡(天神)駅を出発し太宰府駅まで約40分の旅、ランチの旅は福岡(天神)駅を出発後、柳川駅を経由し(降車のみ)大牟田駅まで約2時間25分の旅、ディナーの旅はランチの逆ルートで運行し約2時間30分の旅になります。
公式ウェブサイトでは、"TRAVEL PLAN"としてオリジナルプランと沿線地域の観光情報へのリンク集を掲載しています。英語版サイトにも対応しているため、訪日外国人観光客も利用できます。
タクシーツアーも提案、2つのルートを用意
オリジナルプランでは、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の起終点である大牟田発着の観光タクシーツアーを提案しています。地域を知り尽くした地元のドライバーがメジャーから穴場まで、あらゆる観光スポットを案内するのが魅力です。
大牟田市内を巡る「私だけの大牟田コース」では、大牟田の神社、世界遺産からそれぞれ1カ所選択し、おすすめのカフェにも立ち寄ることができ、訪日客も効率的かつ気軽に大牟田市内を散策することができます
大牟田市内から各地を巡るコースには2種類のコースがあり、大川・柳川コースでは、老舗の酢造所やかまぼこ屋さん、柳川川下りの終着地点・沖端地区などを巡ります。
山鹿・平山温泉コースでは、老舗の酒造や国指定重要文化財の芝居小屋、熊本で最も歴史ある温泉地の1つである山鹿温泉・平山温泉を訪れることが可能です。
まとめ:観光列車と二次交通の整備でインバウンドの地方誘客促進
今回は、西日本鉄道の新たな取り組み「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」について見てきました。
移動中も地元の食や地域ならではの風景を楽しめる観光列車の導入は、コト消費需要が顕著なインバウンドからの注目度に期待が高まります。
観光列車と合わせて大牟田市内外も観光できるようタクシーツアーも用意していることから、訪日外国人観光客が地方を訪れる際の不安要素の1つとなる二次交通の課題も解消しました。今後も、ラグビーワールドカップで知名度拡大が見込まれる九州において、インバウンドのさらなる地方誘客促進が期待されるでしょう。
<参照>
・西日本鉄道:THE RAIL KITCHEN CHIKUGO
・西日本鉄道:News Release<2018年10月18日発表>
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「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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