ハラールやベジタリアンのインバウンド需要、どう取り込む?必要なのは「違和感のあるなし」目線へのシフトだった!

公開日:2019年10月25日

食の多様化対策について支援するフードダイバーシティ株式会社の守護です。

最近弊社では量販店を運営される企業様からご相談をいただくことが多くなってきました。

「売り場でスタッフがハラールやベジタリアン等について聞かれることが増えてきた」とのことです。

今回、ご相談時に毎回必ずお伝えするポイントについてまとめてみました。 ベジタリアンも混ざると文章が複雑になるので、ここからは「ムスリム」に絞って話を進めていきますが、基本ベジタリアンについても同じです。

どのように「ハラールフード」を伝えるか?

まずは以下の図に示した、3つの食品の見せ方をご覧ください。

▲[ハラルフードの見せ方]:フードダイバーシティ作成
▲[ハラールフードの見せ方]:フードダイバーシティ作成

例えばハラール牛丼弁当を量販店で売る場合を考えてみましょう。

基本大手量販店やコンビニ等でいくと、棚あたりの売上などが正確に管理されています。

最初に私がお聞きするのは「棚あたりの売上を上げたい」のか、それとも「テストマーケティングをしたい」のかです。

それによって下記のように回答が変わってきます。

図のパターン2を採用すべき場合

図のパターン2を採用するべきは、以下の2つのケースです。

  • テストマーケティングをしたい
  • ムスリムのみで棚あたりの売上をしっかりと達成できるエリアに店舗がある(大きなモスクが近隣にあるなど) 

図のパターン3を採用すべき場合

図のパターン3を採用するべきは、以下のケースです。

  • 現状一般日本人がメインのお客様だが、棚あたりの売上を純増させたいと考えている

「得たい結果」から採用すべきパターンが決まる

パターン2とパターン3のどちらを採用するか見定めるためには、店舗の置かれている環境を把握することも必要ですが、何よりも経営側が「得たい結果は何か」をしっかりと定めることが重要になります。

これを定めずに対応して「結果が出ないから辞める」という事例もありますが、残念ながらゴール設定が不明確なことが要因である場合も少なくありません。

誰からの売上げアップを目指すのか、あるいはテストマーケティングを行い結果を次につなげるのかということを、まず考える必要があります。

対象者に買われるためではなく、”対象者以外”に違和感なく買われるという販売戦略

民間企業は当然ながら慈善事業ではないので、継続のためにはしっかりと利益を生むことが重要です。

図のパターン2、現状ムスリムのみでしっかりと棚売上が成り立つエリアというのは日本ではまだまだ限られています。

そこでパターン3で行く場合、重要なのは「対象者にどう買って頂くか」ではなく、「対象者以外にどう違和感なく買って頂くか」に考えをシフトすることです。

【実例】ブラジル産の鶏もも肉

例えばよく見るブラジル産の鶏もも肉は、多くの飲食店が使っている食材ですが、実は右下にハラール認証マークがついています。

しかし、ほとんどの飲食店がそれを知らずに使っています。

ブラジル産の鶏もも肉
▲ブラジル産の鶏もも肉

つまりハラールであることは対象者と販売者側にのみ分かればいい情報であり、今普通に買ってくれている大多数のお客様を第一に考えるべきです。

もし、ハラールであることを全面に出してしまえば、こうした大多数のお客様は「ハラール肉?ん?いつもと違うお肉なのかな?」と違和感を持ってしまうでしょう。

そうです、何も知らずに買っている人は「鶏もも肉」を買っているわけであり、「ハラール肉」を買っているわけではありません。

しかしこれがいざ「ハラールコーナー」などに置かれたり、商品名が「ハラール鶏もも肉」となった瞬間に対象者以外は買わなくなります。 

どのように販売するのが正解?

対象者(ムスリム)以外にハラール商品を違和感なく販売する方法例としては下記です。

  1. ハラールフードコーナーは作らず、一般の商品に紛れ込ませておく(アジアフードコーナー、輸入食品コーナーなどは可)
  2. ハラール●●であったり、ハラールマークを強調した売り方はしない(最小限の大きさで表示)
  3. ハラール商品を売っているという情報は弊社サイトのようなムスリムのみが見るサイトで出す 参考:https://fooddiversity.today/halal

2の施策を試みる場合には、日本メーカーの協力も重要になります。(日本メーカーのハラール認証マークは世界で見てもとにかく大きく、かなり強調されているためOnly Muslim感がどうしても出てしまいます)。

下の写真はニューヨークでの事例です。「木は森の中に隠せ」感で、多くの表記を紛れ込ませることで特定の対象者という色を消しています。

▲ニューヨークで販売されている食品。使用していない原材料等についての情報がわかりやすく記載されていると同時に、一般の消費者には気にならないデザインとなっている。
▲ニューヨークで販売されている食品。使用していない原材料等についての情報がわかりやすく記載されていると同時に、一般の消費者には気にならないデザインとなっている。

まとめ

こうしたハラール食品の取り扱いにより「どれだけの成果が見込めますか?」との質問を多くいただきますが、対象者にのみ伝わる商品を、一般向けに陳列するパターン3の販売では、購入者の内訳を把握するのは非常に困難です。

私共ではこうした販売戦略の導入に際して、ムスリムによる売り上げへの貢献度の変化は読み解けませんとはっきりと申し上げております。その代わりに、棚あたりの売上指標で考えていただきたいということもお伝えしております。 

もちろん、パターン2のテストマーケティングをやれば、ある程度の成果は見えると思います。どちらを採用しても正解です。先述の通り、どこにゴール設定をするかによって、どちらが正解になるのかが分かれます。

実は、ハラール食品の販売においては、成果を出して販売を継続している量販店はパターン3がほとんどです。当然、上記の通りデータは棚あたりの売上しか分からないケースがほとんどです。 しかし、現場の声や肌感覚でムスリムにも多く売れているという実感があるので、継続するという判断をされているようです。

ゴールを明確に設定し、施策を選択するなかで、今後増えていく訪日外国人の「食」分野の需要を効率良く取り込める道が見えてくるのではないでしょうか。

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この記事の筆者

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フードダイバーシティ株式会社

フードダイバーシティ株式会社 代表取締役 守護 彰浩。千葉大学卒。2007年楽天株式会社入社。2014年に日本国内のハラール情報を多言語で世界に発信するポータルサイトHALAL MEDIA JAPANをサービスイン。またハラールにおける国内最大級のトレードショーであるHALAL EXPO JAPANを4年連続で主催し、2万人以上動員。現在ではフードダイバーシティをコンセプトにハラールだけでなく、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャなどありとあらゆる食の禁忌に対応する講演やコンサルティングを行う。流通経済大学非常勤講師も務める。