文化の盗用とは?なぜ着物という名前の下着はNGなのか「敬意」の示し方を事例に学ぶ

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文化の盗用とは、自分が所属する文化圏とは異なる文化の一部を用いて、その文化に所属する当事者の感覚とは乖離したメッセージを展開することを指します。

2019年のラグビーワールドカップ日本大会は、海外からも多くの観戦客が訪れ、国内が熱く盛り上がりました。イングランド代表のスポンサー企業が公開した日本大会に臨む選手たちの応援CMが話題になりました。コンテンツでは、文化の盗用とならぬような配慮がなされ、日本へのリスペクトと世界を相手に戦う選手への熱い期待と誇りが表現されています。

日本人にはあまりなじみのない「文化の盗用」という言葉ですが、 日本に多くの訪日外国人観光客が訪れるようになった今日、インバウンド対策としては注意すべき事項のひとつとなっています。

文化の盗用」の意味や文化をモチーフとした商業利用の際の線引きについて解説します。

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文化の盗用とは?

文化の盗用とは、ある文化圏の人々がほかの文化圏の人々の宗教や文化、伝統的衣装などのシンボルとなるような要素を流用し、商業利用することを指します。

よく論争になるものの例としてマジョリティ(主に白人やその組織)がマイノリティ(ネイティブアメリカン、インド系やアジア系などの人たち)が持つ文化を相手へのリスペクトなしにビジネスに利用することが挙げられます。

配慮に欠けた文化の盗用で批判を浴びるのは、誰もが知るセレブリティや 世界的な大手企業、ファッション業界だけの話ではありません。

今は誰もが発信者となれるソーシャルメディアが発達している時代です。たとえ一般人であっても、社会的に少数派の伝統的なファッションなどをその文化や歴史を深く理解せず、またリスペクトする姿勢もないまま安易に着用したり、デフォルメして取り入れたりすると炎上につながる可能性は十分にあるでしょう。

”盗用”という言葉に込められた意味

文化の盗用」と批判を浴びるケースは、一時的な借用、その形式が生み出された背景をなかったことにするような取り扱いをしたものがほとんどです。

マーク ジェイコブスが2017年春夏コレクションにパステルカラーのドレッドヘアのアレンジをした白人モデルらを出演させて物議を醸しました。ドレッド風のスタイルが黒人カルチャーへの侮辱であると非難の声が上がったのです。

理不尽な強制労働に従事させられ、激しい人種差別を受けてきた歴史や今も続く偏見が確かに存在しています。そうした彼らの痛みを無視して黒人文化のシンボルを借りることは、あまりにその文化に帰属する人々をばかにしているのではないかと、バッシングを受けました。これを受け、マーク・ジェイコブスは一時反論しましたが、謝罪しました。

マジョリティがマイノリティを虐げてきた歴史や今も続く搾取や差別が残る中、その対象となっている文化を一時的に借りる行為は「文化の盗用」とみなされます。ファッションとして文化を起用されることに、心を痛める当事者がいる限り、安易な文化のアイコン化は避けるべきでしょう。

ファッションと盗用の線引きは?

ファッション業界では「文化の盗用」が話題になるケースが相次いでいます。2015年には、フランスのブランド「イザベル・マラン」がメキシコ先住民の伝統的な衣装の盗用して非難されました。

2017年日本文化の盗用として批判が集まったのは、アメリカのファッション誌ヴォーグ。白人モデルのカーリー・クロスさんが芸者のような格好で力士風の男性らと撮影し、英語圏から批判を浴びました。カーリーさんは「文化的な配慮の欠けた撮影に参加したことを心よりお詫びします」と謝罪しています。

ファッション界で文化の盗用が問題にならないようにするためにはどうすべきなのか、異国の文化を取り扱う際に注意すべきこととは何なのか、日本文化を扱った2つのケースを見ながら考えてみましょう。

キム・カーダシアン「KIMONO」非難ごうごう

2019年6月、アメリカのセレブリティとして知られるキム・カーダシアンが女性用の補正下着ブランドの名前を「KIMONO」と発表して文化の盗用と激しく批判されました。

「KIMONO」の商標登録申請をしていることもわかって、さらに非難を浴びます。

この件に対して、京都市の門川大作市長は、着物は「日本人の美意識や精神性、価値観の象徴」「私的に独占すべきものではない」、 当時の経済産業相・世耕弘成氏もTwitterで、アメリカ特許商標庁にも話をしたいと述べていました。

結局キム・ガーダシアンは、多くの日本人のバッシングを受けてブランド名を「Skims」に変更しました。9色展開の下着は大ヒットしているそうです。

多くの日本人が誇らしく感じるであろう伝統文化のひとつである着物を、多くの日本人にとって隠すべきものととらえられる下着のブランド名にするということに対して、日本文化で生活する多くの人々から批判がぶつけられました。

日本人と着物の関係やその歴史や文化について綿密に調査し、また制作過程において日本人スタッフが参加していたら下着のブランドに「KIMONO」というネーミングがふさわしくないものと却下されていたのではないでしょうか。

当時の経済産業相世耕弘成氏によるTwitter投稿
▲当時の経済産業相世耕弘成氏による投稿:Twitterより訪日ラボ編集部スクリーンショット

Twitter:当時の経済産業相世耕弘成氏による投稿(https://twitter.com/SekoHiroshige/status/1144628495114334208)

ラグビーイングランド代表の武士をモチーフにした動画は日本文化へのリスペクトがあふれていた

ラグビーワールドカップ2019日本大会で決勝戦に挑む、イングランド代表。白地に薔薇の紋章がデザインされたユニフォームに身を包んだ選手たちが今大会で大いに会場を沸かせました。この選手たちを応援する1分半の動画が話題になりました。

この動画の舞台は戦国時代の日本をイメージさせるものでした。まるでNHKの大河ドラマを思わせるような重厚な作りこみで圧倒されます。

真っ白で中央に薔薇の紋章が入ったラグビーのユニフォームを思わせる甲冑や鎧を身にまとい、馬を駆って戦場へ。その途中で選手たちがユニフォーム姿になりスタジアムへ走っていくという内容です。

この動画には、日本の戦国時代の農村の風景や、ユニフォームのデザインを鎧や甲冑に落とし込んでいます。戦に向かう武士がやがてフィールドをかける選手となります。

動画は日本人が見ても違和感なく、むしろ感心してしまうほどクオリティの高い仕上がりです。日本の歴史や伝統、サムライ魂、そしてその魂が宿る鎧や甲冑をテーマにしており、その完成度の高さから日本をリスペクトする気持ちが伝わってきます。この動画に対して、文化の盗用などと声を上げる日本人はあまりいないでしょう。

【ラグビーW杯】イングランド代表がサムライに!話題の動画から「異文化描写」成功のコツを学ぶ

先月から始まったラグビーワールドカップでは、日本は現在3勝をあげ快進撃を続けています。選手だけでなく、英語の歌詞カードを持ち込んで対戦国の国家を熱唱する日本人など、観客のフェアプレーも話題になっています。応援CMも例外ではありません。イングランド代表のスポンサー企業「O2」が制作したCMは、日本の伝統や歴史を尊重しながら選手たちの闘士を表現した内容になっています。そこには「文化の盗用」にも配慮した、制作陣の熱意がありました。CM制作の背景と、世界中から寄せられた反響を紹介します。目次動画"...

まとめ

文化の盗用」にあたらないかどうか見分ける感覚は、これからインバウンドにおいて重要なキーワードになるでしょう。

育ってきた環境によって、こうした問題に対する感度は様々でしょう。しかし、インバウンド市場の拡大に伴い、異文化を持つ国や地域からの訪日客は増えていきます。

こうした様々な人が日本で快適に過ごせるような環境づくりが日本には今、求められています。異文化、特に少数派に属する人々に対する配慮やリスペクトする気持ち、そしてそれを誤解なく表現する”礼儀正しさ”は、今後社会に欠かせない態度といえるでしょう。

広告などのビジュアルに異文化を起用する際には特に慎重に、その国の歴史や文化を理解して住む人々の思いを知った上で、コンテンツに取り入れることが大切です。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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