北海道は中国人に人気の観光地の1つです。同じく人気観光地の京都同様、新型コロナウイルス流行前には中国人を見かけない日はありませんでした。
観光だけでなく、移住を考える中国人もいるようです。平成17年(2005年)には「北海道1,000万人計画」が株式会社北海道チャイナワークの張代表によって提唱されました。
同計画は移民の受け入れによる北海道の人口増加、およびそれに伴う経済成長を目指した戦略であり、各所から注目を集めました。
2020年9月には、この移住計画は国土交通省が計画したものであるとの誤解がネット上でひろがっており、それを否定する報道が出ています。
この記事では、北海道1,000万人計画の概要、中国と北海道の関係性、日本における移民受け入れの現状について解説します。
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「北海道人口1,000万人」とは?
北海道人口1,000万人計画とは、民間企業である北海道チャイナワークにより提案された計画です。
人口増加による北海道の将来的な可能性に期待した計画であり、その背景には中国資本が大きく関わっていました。
以下では、北海道人口1,000万人計画の概要について解説します。
国土交通省 北海道開発局で提案された計画
「北海道人口1,000万人」は、平成17年度(2005年)に国土交通省および北海道開発局が主導して開催した「夢未来懇談会」において、株式会社北海道チャイナワークの代表取締役である張相律氏によって提唱されています。
同計画は、海外からの移民受け入れ促進により北海道の人口を1,000万人規模に増やすことで、計画的な経済成長を促していくための戦略を示したものです。
その規模の大きさや発想の飛躍に、当時、懇談会参加者に大きな衝撃を与えたと言われています。
土地を購入し続けて中国太平洋進出の拠点に?
近年、北海道では外国人による森林購入が相次いでいます。
北海道庁が公表したデータによると、2017年には法人13件、個人12件による海外資本により、500ヘクタール以上の森林が購入されています。
同じく同庁の資料によれば、2019年1月から12月までの期間の海外資本等(居住地が海外にある法人及び個人並びに国内の外資系企業)による森林の取得事例には、35件、199ヘクタールが確認されています。2019年の買収のうち、中国(香港)が保有する森林面積の合計は、14件、34.15ヘクタールです。
2019年末の時点で、外国資本によって購入された森林の面積は合計2,946ヘクタールとなったことも公表されました。購入者はカナダやタイ、フィリピンなども含まれますが、多くが中国や香港に居住あるいは本社を構える中華系の企業や個人でです。
専門家の中には土地購入の背景に何らかの意図を指摘する人もおり、北海道人口1,000万人計画との関連性も疑われています。
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北海道を訪れた中国首相
北海道の将来性に期待する意向は中国企業や中国人の間だけでなく、中国の李克強首相にも伝播しています。
2018年に催された日中韓3ヶ国首脳会談で来日した李首相は、北海道を訪れた際に日本国内でも高い競争力を持つ北海道の農業に興味を示しており、北海道における日中の先端技術を活かした農業活性化に協力したい旨の発言を残しています。
中国では民間レベルだけでなく政府レベルで北海道の将来的な発展に期待しており、中国資本を組み込むことによりシナジー効果を生み出そうという考え方が広まっています。
なぜ北海道に中国人が多いのか?
2019年2月に北海道が発表したデータによれば、2018年4月〜9月の半期において北海道を訪れた外国人客数135万5900人の内、約2割は中国からの訪日客でした。
北海道にこれほど中国人が訪れている背景にはどのような要因があるのでしょうか。
以下では、北海道が中国人から人気を集めている理由について解説します。
ブームのきっかけ「非誠勿擾」
2008年に中国で公開された映画「非誠勿擾」は北海道を舞台としたラブストーリーで、中国の歴代興行収入1位を記録しています。
釧路や阿寒湖、網走をはじめ道内各地で撮影された映像の美しさは多くの観客を魅了し、中国における北海道人気の先駆けとなりました。
公開から10年以上が経過した現在でも「非誠勿擾」のロケ地を訪れることを目的とした中国人観光客は少なくありません。
中国において北海道旅行の人気が高まった要因として「非誠勿擾」が果たした役割は非常に大きいと言えるでしょう。
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良質な雪
スキーは訪日中国人の間で特に人気の高いレジャー体験の1つです。
広大な国土を有する中国ですが降雪地帯はそう多くないため、雪を見たことがないという中国人も多く、北海道で楽しめるウィンタースポーツは人気のアクティビティです。
はじめのうちは上手く滑るのが難しいスキーですが、雪になじみのない中国人にとっては幻想的な白銀の世界で良質な雪と触れ合える環境に身を置くこと自体が貴重な体験ということもあり、満足度も高いようです。
また、中国の大型連休である春節が雪まつりの開催時期と重なるため、北海道を訪れる中国人が多くなっています。
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食べ物や自然
おいしい食べ物や美しい自然も北海道が人気を集めている理由の1つです。
中国では衛生管理などの問題から魚介類を生で食べられる場所が少なく生食の習慣がありません。
そのため、新鮮な魚介類を楽しめる観光地として北海道が人気となっています。
また、黄砂や排気などの環境問題を抱えており、都市開発が進む中国ではありのままの自然の美しさを感じられる場所も少なくなっています。北海道で自然に癒されたいという中国人も多いようです。
北海道のインバウンド需要
北海道は数値も全体的に高く日本でも有数の高いインバウンド需要を誇るエリアです。北海道は様々なサイトにてニセコなどのスキー場の雪質についての口コミがあり、欧米圏の人たちにとって日本でも有数の観光名所となっています。
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日本への移民の現状
北海道人口1,000万人計画では、移民に広く門戸を開くことにより、人口増加を目指すというビジョンが提示されていますが、現在の日本において移民の現状はどのようになっているのでしょうか。
以下では、現代日本における移民の現状について解説します。
外国人人口は名古屋市の人口を越えた
総務省は「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の中で日本に住む外国人人口について発表しています。
2018年時点における在日外国人の人口は250万人を突破しており、日本有数の地方都市である名古屋市の人口を超えるほどの人数となっています。
このままのペースで増加した場合、2020年頃には市区町村別人口で全国1位である横浜市の人口370万人に追いつく可能性もあると言われています。
大まかな内訳としては永住者が75万人、留学者が31万人、技能実習者が27万人です。永住権を持っている外国人も投票権はないため、事実上移民であるとみなされます。
増え続ける留学生や外国人労働者
近年では留学や労働を目的として日本を訪れる外国人の数も増加傾向にあり、留学生の中にはそのまま日本で就職することによって永住権を得る人々も少なくありません。
また、2019年4月には新たな在留資格「特定技能」も設けられ、移民の受け入れ体制がより一層整備されました。
今回の在留資格新設を機に、今後さらに多くの外国人が日本で暮らすようになる可能性が高いと言えるでしょう。
自分の生活の質を高めたい中国人
中国のポータルサイト捜狐では、日本で生活する中国人が増加している背景について以下のように解説しています。
衛生や環境面に気を配る文化が根付いていない中国に比べて、クレンリネスに徹底している日本の生活環境に魅力を感じることが1つ、もう1つは中国に比べて日本では生活する上で体面やメンツを過剰に気にせずに済むという点です。
中国で他人からの評価や見られ方を意識する生き方をするよりも、日本で自分なりに生活の質を高めることに魅力を感じる中国人が多いようです。
中国人は増え続ける : 土地の買収も続く?
訪日外国人の増加や在日外国人人口の増加が進む現代の日本ですが、在留資格の新設や外国人労働者を受け入れるための法制整備が進んでおり、今後も日本を訪れる中国人や日本での生活を選ぶ中国人の数は増える可能性が高いでしょう。
また、北海道においては中国人を中心とする土地の買収が続いており、日本における移民の受け入れ体制整備と相まって将来的には北海道人口1,000万人計画が現実となる可能性も否定できません。
今後日本のグローバル化を考えるにあたり、北海道における中国資本の流入や移民の受け入れ状況については注目に値すると言えるでしょう。
<参照>
北海道庁:海外資本等による森林取得状況
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