マリオにそっくり!中国共産党の動画とは | 中国、日本の反応は?著作権問題についても解説

アニメやゲームなどの分野において、日本は世界的に注目される存在となっています。キャラクターやコンテンツの人気が秘める影響力は「ソフトパワー」と呼ばれます。日本コンテンツのソフトパワーは日本で生活していては気づかないほど大きくなっています。文化的な関心から日本を訪れたい、日本語を勉強したいと考える外国人も多く存在しています。

そんな中で、人気があるからこその悩みともいえるのが、著作権侵害問題です。中でも中国では遵法精神の希薄さから簡単に「パクリ」を展開しており、もは「中国といえばパクリ」のイメージが広がっています。

なんと中国共産党の組織が公開した宣伝動画でも、こうした「パクリ」行為が見られました。

今回は、日本のゲームキャラクターである「マリオ」に酷使したキャラクターが登場した動画について、その詳細と中国国内での反応を紹介します。

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中国共産党が公開した宣伝動画”完全にマリオ”と話題に

2019年1月に中国国内のSNSを通じて中国共産党中央政法委員会が配信した動画が、「スーパーマリオ」に似ていることが指摘され、数日内に削除されるという騒動が起きました。

ここでは、それらの騒動の顛末、動画の内容について、簡単に紹介していきます。

動画投稿の経緯は?

騒動のきっかけは、2019年1月30日に、中国の治安・司法部門を統括する共産党中央政法委員会が中国のソーシャルサービス、微博(ウェイボー)で配信した動画でした。

湖南省の裁判所が昨年の取り締まり実績をアピールするために作成したPR動画の構造が、任天堂の人気ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」によく似ていることが、国内外から指摘されました。

投稿自体は、翌月2日までに削除されています。

微博(ウェイボー)とは

微博(ウェイボー)とは、中国版のTwitterのようなソーシャルサービスです。実際は、TwitterとFacebookの中間のような機能を持ち、一度の投稿で可能な文字数は、Twitter同様に140文字とされていますが、長文の投稿機能もついてます。

自分の投稿ができるだけでなく、他人の投稿に対してコメントやいいね、シェア、ブックマークなどの機能を備えています。テキストに沿えて画像や動画を投稿することも可能です。

TwitterやFacebookの使用が禁止されている中国では、微博(ウェイボー)の利用者は多く、全体での利用者数は7億人にも上ります。

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動画の内容を紹介

動画の構成は、ゲーム「スーパーマリオ」同様に、メインキャラクターがゴールに向けて様々な障害を乗り越えていく形となっていました。画面の中には英語で「スーパーマリオ」と書かれ、キャラクター自身も、ゲームキャラクターの「マリオ」に酷使しており、さらには動画の中で流れる音楽までもがゲームのものとほぼ同じとなっています。 

具体的には、「トラもハエも叩け」という習近平主席の反腐敗を示した政治スローガンに則り、政府高官をトラ、一般職員をハエに例え、それらを退治する場面が登場したり、犯罪者に対する厳罰化を誇示するため、車を暴走させた人に対して死刑判決したりしながら障害をクリアしていきます。

さらには「知的財産権」や「破産案件」と記されたコインを集める場面もあります。動画をシェアした投稿のコメント欄には、「この動画こそが知的財産権の侵害なのでは」という声も寄せられたといいます。

日本と中国の反応は

なにかと「パクリ」が指摘される中国ですが、この動画に対する民間人の意見は、おおむね日本も中国も同様に「著作権違反に値する」というものが多かったようです。

特に微博(ウェイボー)でのこの投稿に対しては、多くの中国人から様々な意見が寄せられたので、ここでいくつかのコメントを紹介します。

日本での反応は

日本国内では、取り締まり強化について言及するための動画であるにも関わらず、「言っている本人がパクっている。ちょっと面白かった。」という、その明白な矛盾に混乱する声や、「知的財産権の保護や政府高官・一般職員の腐敗について触れている動画そのものが、日本のキャラクターの知的財産権を侵害しているのだから、ギャグにすらならない。」という厳しい声が上がりました。

著作権違反について言及する動画としてはあまりに不適切であり、批判の声は当然ながら、意図を探るような感想を持った人が多くいたようです。

中国での反応は

中国国内でも、日本での反応と同様に、微博(ウェイボー)のコメント欄には著作権違反を指摘するコメントが多く寄せられました。しかし、任天堂の法務部による著作権違反に関する警告に対しては、「公益性の高い用途においては、版権がフリーになる事例があるのでは」という意見もみられました。

基本的には「任天堂の法務部は厳格に取り締まる姿勢がある」という業界の常識を踏まえた議論が展開されており、「最終的にはこれは著作権違反になるだろう」という見解のコメントもありました。

反対に、一部のコメントでは、「このマリオと任天堂のマリオに、何の関係があるのか」といった、しらばっくれたような発言もコメント欄に見られました。

また、任天堂が以前に各国法令の範囲内での利用許可を出したことがあるので、この動画がその範囲に適用されるのか?という意見や、任天堂の現地法人のサイトにもこの動画が掲載されたことを指摘する声もありました。(こちらは、任天堂本社の指摘後に削除されたようです。)

▲[動画のシェアについたコメント]:事件を解説するWeChatコンテンツより引用
▲[動画のシェアについたコメント]:事件を解説するWeChatコンテンツより引用

中国での著作権問題は過去にも

中国における、著作権侵害問題が明るみになったのは、これが初めてではありません。日本の人気アニメのキャラクターなどが、中国国内で商標登録されそうになるなど、日本の版権元と裁判になったことが過去にも何度かありました。

ここでは、「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」の例について解説します。

「ドラえもん」そっくりの商標を登録

日本の国民的アニメ「ドラえもん」は実は、日本国外でも広く放映されており、アジアだけでなく、ヨーロッパでも人気があります。

そんな「ドラえもん」にそっくりな商標を、中国福建省の企業が登録しようとしたことについて、2018年4月30日、北京市の知的財産裁判所が「著作権違反に相当する」という判決を下しました。

申請した企業は、「これは『日本のドラえもん』ではなく、『中国のドラえもん』です。似てはいるけど別物。」と主張しましたが、ポケットなどの特徴がが酷似していることから、主張を退け、商標登録を無効としました。

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過去には「クレしん」も

過去には、人気アニメ「クレヨンしんちゃん」のキャラクターに似たキャラクターの商標登録が申請されていたことについて、版権を持つ双葉社が著作権侵害訴訟を起こしていました。

この「クレヨンしんちゃん」に関する裁判でも、上海市第一中級人民法院(地裁)で双葉社の勝訴にて判決が下りました。

この裁判は、日本企業がすでに版権を持っている商標に対し、中国企業に勝手に他の商標登録を行おうとした代表的な案件として、日本でも話題になりました。

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近年では著作権侵害に対する意識が向上、取り締まりの強化に期待

今回の中国共産党の「スーパーマリオ」への著作権侵害は、取り締まる立場にあるはずの政府による失態といえるでしょう。中国での著作権違反に対する意識の低さが露呈してしまったようです。

しかし、SNSのコメント欄では「これは違反ではないのか」という発言が確認でき、中国国内でも著作権に対する意識変革が起こっていると考えられます。今後は著作権の侵害の取り締まりが強化されていくことも予想されます。

変化の速い中国ではこうした意識改革も想像以上のスピードで進むことも考えられます。ただし、現在はまだ移行期間であることに違いはありません。こうした中国の振る舞いに対し、都市ごとの違いに注意しながら、どのような対策を打っていくべきかを検討することが、中国市場の開拓にあたっては必要でしょう。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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