タイは東南アジアの中でも経済的に発展し、社会的にも成熟しつつあります。訪日タイ人も年々増加しており、2018年には初めて年間の訪日外国人数が100万人を超え、113万人を記録するに至りました。
今回は、今後日本のインバウンド市場にとってますます存在感を高めていくであろうタイの基本情報、経済状況や訪日市場について、最新情報を解説します。
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タイの基本情報
東南アジアからのインバウンドが存在感を増しています。その中でもタイは東南アジア各国の中で最も訪日客が多く、親日国としても知られます。
ここでは国の概要や国民性など、基礎データをチェックしていきます。
タイの概要
タイは日本の約1.4倍の温暖な国土に6,900万人ほどが暮らす国です。民族的にはタイ人が優勢で、仏教が広く信仰されています。
言語はタイ語が話されていますが、若い世代を中心に英語を話せる人もいます。
タイは立憲君主制をとっており、現在の国家元首はワチラロンコン国王(ラーマ10世)です。今年5月に戴冠しています。
ASEAN成立時の原加盟国であり、目覚ましい経済成長を見せています。主軸国として基盤をASEANにおき、日本を含む諸外国との外交方針は柔軟かつ友好的です。
タイ人の特徴
「微笑みの国」と呼ばれるタイの国民性はおおらかでです。「マイペンラーイ」(気にしない、大丈夫)の言葉がよく知られます。一方で飽きっぽく面倒なことはしないという面もあります。
家族や友人を大切にし、目上の人を敬う文化をもちます。王室は人々の尊敬の対象であり、侮辱することは御法度です。
親日国であることでも知られ、あらゆる業種の日本企業がタイに進出しています。ショッピングセンターにも日本食のレストランが並ぶなどタイの人々にとって日本は身近な存在です。
タイではITが発展しスマートフォンの普及率も高く、若者を中心にSNSの利用も多く見られます。訪日旅行にあたってはJNTOや旅行会社のウェブサイト、友人知人の口コミがよく参考にされています。
タイ経済の現状と課題
東南アジアの中でも存在感の高いタイですが、工業化が進み発展した国の一つである反面世界景気の影響を受けやすいという弱点があります。成熟社会特有の問題点も少なくありません。タイ経済の動向を知り、今後直面するであろう課題と中期展望を紹介します。
タイ経済の現状:2020年の実質成長率をマイナス8.1%に下方修正
ASEAN主要国の一角を占めるタイは、海外企業の受け入れを積極的に行った結果先進国のメーカーの工場が多く進出しており、東南アジアの製造業の拠点となっています。 日系企業の進出先としても人気が高く、近年では非製造業の進出が目立ちます。全体としては2014年のクーデター後に低迷するものの、政情が安定すると徐々に回復基調に転じました。
後述する外需依存や少子高齢化の問題のほか、製造業中心の首都圏と農業中心の地方との間に経済格差や家計における債務過多など、成熟社会特有の問題も抱えています。
タイ中央銀行は6月、新型コロナウイルスの流行により、2020年の実質成長率の見通しは下方修正されマイナス8.1%となることを明らかにしています。従来予測はマイナス5.3%だったところ、観光産業と輸出産業に対する影響が響いた形です。
タイ政府は金融政策によりこうした事態を乗り切る方針を示しています。
低迷する成長率:2017年以降は4%台から2%台へ
タイ政府は2019年3月にも経済成長率の見通しを4%から3.8%に下方修正していましたが、この年の実質GDP成長率は2.4%となっています。2017年、2018年の実質GDP成長率はそれぞれ4.1%、4.2%、2.4%です。主要輸出品の天然ゴムやコンピュータおよび部品などの輸出が大きく減少したことが影響を及ぼしたとみられます。
輸出の減少に加え、観光や国内消費も力強さを欠く状態です。タイ経済は外需依存度が高く、世界景気の減速に連動して成長が停滞する現状があります。
輸出先には中国が大きなウエイトを占めるため、中国経済の鈍化はタイ経済にも大きな影響を及ぼします。米中貿易戦争の煽りを受ける可能性も考えられます。
社会的な課題:政情不安
タイは軍主導のクーデターや大規模な反政府デモがしばしば発生し、政治的に不安定という側面があります。
2014年にはクーデターにより軍事政権が誕生し、2019年3月には民政移管を争点とした選挙が行われましたが、軍部が政権を継続する結果となっています。
また、タイは少子高齢化に起因する将来的な労働力不足の問題を抱えています。
2030年ごろにはASEANの中でも低水準に落ち込むと懸念されています。こうした状況は将来的に労働集約型産業へ大きな影響を及ぼすとみられ、産業構造の高度化を迫られています。
タイランド4.0:産業構造の高度化
タイ政府が2015年に策定した「タイランド4.0」構想は、産業構造の高度化を通じて経済成長をはかる計画です。具体的には、経済社会のデジタル化をすすめて生産性を向上させることを通じ、2036年までに一人当たりのGDPを13,000ドルまで上げるという数値目標が掲げられ、高所得国の仲間入りを目指します。
これまでの産業構造(農業・軽工業・重工業)の次の段階として産業の高度化・高付加価値化に取り組みます。なかでも次世代自動車や航空宇宙分野など10分野へ注力し、育成を推進しています。
またタイ東部の3県を経済特区「EEC」と定めて新産業の受け皿とするべく開発がすすめられているほか、デジタル産業を強力に後押しする政策も打ち出されています。
インバウンドタイ市場
ここまでのタイ全体の基本情報や現状と課題をふまえたうえで、実際に日本へ訪れるタイ人の層や消費志向の特徴を押さえます。タイにおける日本の位置づけや提供できる価値を今一度見直します。
訪日外国人の推移
訪日タイ人の人数は年々増加しています。昨年は前年比14.7%増の伸び率をみせ、推計で113万2,100人を記録しました。100万人を超えたのは東南アジア市場で初めての数字です。2018年の訪日外国人数全体でみても、国別内訳で5位にランクインしています。
JNTOは、タイが年間を通じて東南アジア市場を牽引したと評価しています。タイ人の渡航先として日本は人気が高く、マレーシアやラオスに次ぐ選択肢として挙げられます。
LCCをはじめとする航空路線の拡大やビザの緩和により日本へ訪問しやすくなったことに加え、旅行フェアや特設サイトなどのプロモーションにより、新たな需要の掘り起こしに成功したことも要因となりました。
訪日タイ人の特徴
タイ人の訪日旅行の傾向としては、個人旅行が多いことやリピーターが多いこと、比較的日数が長いことが挙げられます。旅行全体における個人旅行の比率は7割以上にのぼるといわれます。時期としてはタイの祝日が多い4月に訪問者が多く、長期休暇を利用してゆっくり観光する旅行者が多いと考えられます。タイは年間を通じて気温が高いため日本の四季は珍しく、桜や紅葉などのはっきりした季節が感じられSNS映えする風景が好まれます。冬の季節も喜ばれ、北海道も人気の行き先のひとつです。
消費内訳の3割以上を構成する買物については、訪日タイ人に女性の比率が高いこともあり日本製の化粧品が人気を集めています。日本でしか買えないお菓子や食料品も好まれるほか、日本のアパレルブランドも若い世代に高い知名度を誇ります。
訪日タイ人に対するインバウンド対策
タイ市場は日本政府が主導する「ビジットジャパン」プロモーションにおける20カ国の重点取り組み地域の一つに設定されています。2018年から始まった3か年計画はこれまでより対象を広げ、タイの日本大使館と連携したFIT旅行フェアや特設サイトの制作、オンライン広告の展開を通じ、リピーター層と初訪日層の双方に向けた誘致活動に取り組みました。
IT化が進むタイではインターネットを通じた情報収集が目立ちます。特にFacebookやInstagramなどのアカウント保有率は高く、SNSを通じたマーケティングも重要です。
まとめ
タイは東南アジアの中でも先進国の一角を占めています。中長期的には課題も抱えていますが、経済発展とともに海外旅行の需要が高まっています。
日本政府の誘致活動もあり訪日旅行の人気が高く、訪日外国人の国別内訳で5位と重要な市場です。
また、個人旅行のシェアが高く、インターネットやSNSで旅行情報を収集する傾向があります。
四季折々の景色や体験、グルメ、ショッピングといった日本の魅力を、SNSプラットフォームに適したコンテンツの形で届けることで、潜在的需要を喚起したり実際の旅行関連商品の申込みにつなげたりすることができるでしょう。
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<参照>
日本経済新聞:20年のタイ経済はマイナス8.1%成長 中銀、下方修正
JETRO:タイ 基礎的経済指標
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