近年ロシアで、「Made in Japan」と書かれたウィスキーやコーヒーが人気を博しています。しかしこれらの製品が日本で製造されたものかどうか、その真偽は定かではありません。
今回はこれらのウィスキーやコーヒーの正体や問題点、さらに中国企業による日本のキャラクター「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」、人気ブランドの著作権侵害の実態について取り上げます。
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ロシアで「日本製」として売られるウィスキーやコーヒーの謎…正体は?
ロシアの高級酒小売店で売られているウィスキーの中には、日本製と思しき製品があるそうです。ラベル表面には、ローマ字と漢字が印刷されています。
- 「KENSEI」(剣聖)
- 「NOBUSHI」(野伏)
- 「TOKINOKA」(刻の香)
一見すると日本産のブランドのように見えますが、実はどれも日本国内では見かけない銘柄です。こうした製品は、製造元を確かめようにも、詳しい記載は見当たらないといいます。
背景には、この十数年の間の日本産ウィスキーの評価の高まりがあるでしょう。サントリーなどの日本の大手飲料メーカーが生産するウィスキーは、昨今、海外で知名度を高めています。味の良さを認められ「ジャパニーズウィスキー」として世界におけるブランドを確立したと言えるでしょう。
こうしたムーブメントに伴い、度数の高いお酒が好きなイメージのあるロシアでも、多くの純正日本製ウィスキーが輸入されました。しかし日本産のウィスキーは値段が高く、ロシアの庶民が気軽に買える値段ではないと言います。
また近年の日本国内におけるハイボールブームにより、原酒の生産が追いついておらず、2019年現在、ウィスキーの対ロシア輸出はストップしているそうです。
こうした状況を踏まえて考えてみると、から現在ロシア国内に出回っているこれらのウィスキーは、日本製を模した、どこか別の国で作られた製品である可能性がありそうです。
コーヒーも
コーヒーについても同様の構図があるようです。
ロシアでは「武士道コーヒー」という名前のインスタントコーヒーが良く知られています。Instagramでは、忍者風の格好で刀を持った男性や金閣寺とともに商品を宣伝する投稿が確認できました。

Instagram:日本ブランド風コーヒー「BUSHIDO」を投稿(https://www.instagram.com/p/BbO5HJ-l1P7/)
同商品の名称やこうしたビジュアルは日本のものであることを連想させますが、原産地は日本ではなくスイスだそうです。ロシアでも「日本製の食品」に対する評価はおおむね高くなっているそうで、こうしたイメージに乗っかった販売手法であると考えられるでしょう。
これらの製品は日本と関係ないものを日本製と勘違いさせる可能性があるものの、ネーミングやパッケージのデザインは企業独自のものと考えられ、知的財産を侵害するものとは言えなさそうです。
日本製を模した商品、著作権侵害の実態
一方で、すでに存在する商品やキャラクターをまねた製品は、その程度がはなはだしければ法律上アウトとなります。日本製を模した製品の生産、販売による著作権の侵害や、商標の商標権侵害は、特に中国によるものが有名です。
2005年には文化庁により「中国における著作権侵害対策ハンドブック」が作成されるなど、日本側が対策できることについて認知を広める動きも拡大しています。
それでもなお、著作権の侵害は数多く報告されています。表立って話題になるのは氷山の一角で、実際には数え切れないほどの日本の商品が「パクられている」現状は、いまだ変わらないようです。
ここからは中国による著作権侵害の実態を例示していきます。
多発する人気キャラクターの「パクリ」
アジア圏で大人気の日本のアニメ「ドラえもん」は、漫画やキャラクターグッズなどが中国で模倣されています。
2012年に福建省の企業が「ドラえもん」そっくりのキャラクターを商標登録し、知識産権法院(中国の知的財産裁判所)で無効とされる事件がありました。しかし以後も「ドラえもん」を勝手に使ったハンドメイド作品や、そっくりな偽物キャラクターを使ったグッズなどが、国内外の市場に出回っているのが現状です。
熊本県庁が生み出したPRマスコットキャラクター「くまモン」も、パクリの被害にあっています。そのデザインに酷似した偽物キャラクター「好運熊」(ラッキークマ)が中国のテレビ番組で登場し、物議を醸しました。このキャラクターは2016年の熊本地震のタイミングに登場したこともあり、「不謹慎ではないか」と中国人からの批判を浴びることになりました。
これ以外にもクマもんの模倣キャラクターは多く出回っていますが、熊本県は中国で使える商標「熊本熊」を新たに登録し商標を登記することで、少なくとも同様の商標を第三者に利用されることを防ぐ体制をとっています。
中国のキャラクターパクリ問題とどう戦う?大人気「ドラえもん」が裁判で著作権侵害認定
漫画は1969年から連載、アニメは1973年から放映されている日本の国民的アニメ「ドラえもん」は世界中でアニメが放映されるなど、国内外に多くのファンを抱えています。特にアジア圏での人気が高く、中国、台湾、香港、マカオ、韓国などの国々には小さい頃からドラえもんを観て育ってきた若者が大勢います。そして中国ではこうした人気を受け、「パクリ作品」も生み出され、近年では裁判で争われるといった事態にまで発展しています。関連記事【韓国の反応】デモ飛び火で「ドラえもん」上映、無期限延期へ『千と千尋』の舞台...
「くまモン」やっぱりパクリが登場…新中国名「熊本熊」で商標を守れるか?
日本でも人気なゆるキャラは、海外でも多く取り上げられ人気を博しています。ゆるキャラによるインバウンド向けPRの代表例にくまモンがあります。くまモンは、熊本県庁が2010年から展開しているPRマスコットキャラクターで、2011年のゆるキャラグランプリの王者となっています。くまモンはその表情や可愛さから多くの人を魅了しさまざまなところで商品化され、外国人にとっても人気を博しています。日本のアニメやキャラクターのファンが多い中国でも、当然注目を集めており、ECサイトのタオバオでも様々な商品が販売...
パクられた側が敗訴!?
海外27店舗に展開している日本の生活用品ブランド「無印良品」は、中国でも熱心なファンを多く持ち、中国市場での小売成功組として名高い存在です。
実は2017年、同社は中国で「無印良品Natural Mill」を運営する北京棉田紡績品有限公司に商標権侵害で訴えられたばかりか、第一審で敗訴してしいます。
「無印良品Natural Mill」の店内の内装や商品展開、各商品のパッケージデザインは日本の「無印良品」に酷似しています。しかしバスタオルなどの24品目については、「無印良品Natural Mill」の方が先に商標登録を済ませていたとして裁判に発展、本家が商標権侵害で訴えられる形になりました。
日本の「無印良品」が1980年にブランドを開始したのに対し、「無印良品Natural Mill」はここ数年で台頭したブランドだそうです。全体的なブランドイメージやデザインを先行して販売していたのは前者のはずですが、商標登録の順序で判断されるという本家にとっては何とも理不尽な展開だったと言えるでしょう。
なぜ中国にパクり問題が多発するのか:法整備にも問題
日本製を模した製品の流通や、著作権や商標権の侵害の実態について解説してきました。こういった問題にはどのような対応が可能なのでしょうか。著作権侵害への訴訟でうまく行ったケースを紹介します。
著作権侵害についての訴え、きちんと認められた事例も
2012年3月、双葉社が中国企業と争っていた「クレヨンしんちゃん」の著作権侵害訴訟で勝訴し、双葉社側の主張が認められました。これは「クレヨンしんちゃん」の図形や、クレヨンしんちゃんを意味する中国語「蝋筆小新(ラービーシャオシン)」を付したグッズを、中国企業が無断で販売していたことによる事案です。
2004年の時点では、本家の方が中国での商標権を侵害していると認定されてしまい、双葉社が不利な状態に置かれたこともありました。実際に1997年、日本よりも中国の方が先に「蝋筆小新」の商標を登録していたからです。
中国の商標法は国際的なルールに準じて、先願主義を採用しています。しかしその著名性を判断するうえでは、中国国内での著名性が重視されます。そのため中国国内でそれほど認知されていないブランドやマークであれば、どれほど海外で著名なものであろうと商標登録ができてしまいます。
日本の商標法では海外での著名性も含めて検討することとされているので、日本で流通していないからといって海外のブランドによく似た商標を登録することはできません。著名性の判定基準を国内に限定している点は、中国商標法の抱える大きな課題といえるでしょう。
8年がかりで勝訴となったこのの判例が、中国における著作権また商標侵害を食い止めるためのブレイクスルーとなることを祈るばかりです。
法的に問題がなくとも、市場の縮小には警戒が必要
前半で取り上げた、日本製を模したウィスキーやコーヒーのようなケースでは、消費者の誤解を招くような宣伝手法ではあるものの、知的財産権の侵害という観点からはその違法性を問うことは難しいでしょう。そうした中で、これら「日本製」もどきの製品がどのように日本に対する脅威になるかというと、「日本ブランドの棄損」におけるリスクがあると言えるでしょう。味や品質面で消費者の期待に応えられなかった場合、メイド・イン・ジャパンの価値そのものを落としてしまい、致命的な傷を負いかねません。
昨今、爆発的な生産力でシェアを伸ばしている中国製品は世界の市場でも存在感を発揮しています。例えばダイソー+ユニクロ+無印良品とも言われる「MINISO」は、東南アジアはじめ、世界中に展開しています。
こうした中でどこまで日本製品のシェアを伸ばせるかは、知的財産権の範囲に留まらず「メイド・イン・ジャパン」のイメージをいかに守り、確立できるかがより重要になってくるかもしれません。
<参照>
BUSINESS INSIDER JAPAN:中国のパクリ無印良品で売られている残念な商品たち
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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