文化の盗用(Culture Appropriation)とは?異文化へのリスペクトと尊重がポイント

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文化の盗用とは、文化の背景にある歴史や解釈を無視して、商業的な思惑のもとに表層的に文化を取り入れることを指します。

キム・カーダシアンが自身の下着ブランドに「KIMONO」と名付けたことで、文化の盗用が問題とされたことは記憶に新しいでしょう。

日本人にとってはそれほど馴染みがなく、これまであまり意識されてこなかった文化の盗用ですが、背景にはどのような問題があるのでしょうか。

この記事では、文化の盗用の概要、実際の事例、文化の盗用に注意するためのポイントについて解説します。

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文化の盗用(Cultural Appropriation)とは?炎上事例からわかる人種問題

さまざまな場で問題となっている文化の盗用(Cultural Appropriation|カルチュラル・アプロプリエーション)とは、どのような問題なのでしょうか。

以下では、文化の盗用の概要、文化の盗用によって問題となった事例について解説します。

文化の盗用とは

文化の盗用とは、文化の背景にある歴史や解釈を無視して、商業的な思惑のもとに表層的に文化を取り入れることをいいます。

特にアメリカでは、文化の盗用はデリケートな問題とされています。

例えばマジョリティである白人が、マイノリティであるネイティブアメリカンや移民人種の伝統的な衣装や装飾品などを取り入れて商業利用する際には文化に対する配慮が求められます。

文化の盗用の背景には、支配や搾取の史実、現代に残る差別などの関係しています。

そのような背景を持つ文化を一時的に借用することに対して心を痛める当事者がいることを忘れてはいけません。

下着に「KIMONO」と名付けたキム・カーダシアンのケース

アメリカの女優であるキム・カーダシアン氏がプロデュースした補正下着ブランドに「KIMONO」と名付けたことも文化の盗用として批判を浴びました。

本来の着物とは関係のない下着であるにも関わらず、「KIMONO」と名付け商標登録申請をしていたことが明らかとなりました。

日本の伝統文化をネームバリューのために利用しようとしているのではないかと疑問に感じた人々によって非難された事例です。

問題を受けて京都市長の門川大作氏は、着物について「日本人の美意識や精神性、価値観の象徴」であるとして「私的に独占すべきものではない」と書簡をしたためています。

その結果、キム・カーダシアン氏はブランド名を変更してブランドを展開することとなりました。

タトゥーで「七輪」アリアナ・グランデのケース

アメリカのアーティストであるアリアナ・グランデ氏が掌に「七輪」とタトゥーを彫ったことについてもアメリカでは文化の盗用ではないかという声があがりました。

同氏は自身の曲である「7 rings」になぞらえて「七輪」と彫ったようですが、アメリカでは文化の盗用であると捉える人が多かったようです。

一方、日本では同氏に対して文化の盗用であると批判する声はほとんど聞かれず、むしろ炭火焼の道具である七輪とかけて面白い発想であると受け取る人が多くいました。

アリアナ・グランデ氏の事例によって文化の盗用に対する日米の意識の違いが浮き彫りとなっています。

日本人が文化の盗用に鈍いのは歴史が関係している

日本人は文化の盗用にそれほど馴染みがなく、キム・カーダシアン氏の「KIMONO」の例のように、明らかに商業的に利用されているととれる事例でなければ炎上することは少ないようです。

日本と欧米の意識の違いはどのような点にあるのでしょうか。

以下では、日本人と欧米人にとっての文化の盗用について解説します。

日本人にはなじみがない「文化の盗用

海外のセレブやインフルエンサーが浴衣や着物をファッションとして取り入れた際に、欧米では文化の盗用であるという声があがりやすいのに対し、日本では和の要素を取り入れた新たなスタイルへの称賛の声があがりやすいようです。

上記を表す象徴的な事例としてボストン美術館での着物の展示があります。

クロード・モネの描いた「ラ・ジャポネーズ」の展示において着物を着用して記念撮影できるイベントを催したところ、アメリカのボストン美術館ではバイアスやステレオタイプの助長によって人種差別につながりかねないとの声があがりました。

一方で日本の世田谷美術館や名古屋ボストン美術館では好評となりました。

文化の盗用について日本人が鈍感であることは前述の通りですが、中には自覚しつつも文化の盗用についての理解が得られない人も少なくないようです。

なぜ欧米で文化の盗用問題の議論が白熱するのか?

文化の盗用に対する日本と欧米の意識の違いが生まれるのは、それぞれの国の歴史に要因があると考えられています。

日本は島国ということもあり移民が流れ込んでくる機会が少なかったため、人種差別や文化的な差別が少なかったことが要因の1つとしてあげられます。

そのため日本でマジョリティのうちの1人として暮らす日本人と、アメリカでマイノリティとして暮らす日本人では受け取り方に差が生まれるということも考えられるでしょう。

文化の盗用をしないためのポイント|歴史背景の配慮と文化への尊敬が重要

文化の盗用には気を付けなければいけませんが、他国の文化や異文化を取り入れた事例のすべてが批判されているわけではありません。

中にはうまく異文化を取り入れることで、異文化交流を促進するための架け橋として機能している事例も存在します。

以下では文化の盗用ではない事例、文化の盗用であると捉えられないためのポイントについて解説します。

文化の盗用ではない事例紹介

2019年に開催されたラグビーワールドカップにおけるイングランド代表のCM映像は、日本の文化をふんだんに取り入れたもので、甲冑や弓、太鼓などが登場します。

前述の事例のように文化の盗用を指摘する批判の声はほとんどあがっておらず、むしろ好意的にとらえる意見が多く聞かれました。

イングランド代表のCMが高く評価されている要因として、甲冑や弓、太鼓の描写が日本の文化や歴史に即した形で描かれており、そこに独自の解釈が含まれていないという点がポイントです。

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本来の文化を尊重し「解釈を変えない」ことがポイント

前述の通り、他国の文化や異文化を取り入れる際には、本来の解釈を変えずに文化を尊重した上で取り入れることがポイントです。

時代背景や歴史的背景を正確に描写しないことや衣装を着崩すことなどは、本来の文化を尊重していないと捉えられてしまう可能性が高いため、避けるべきであると言えるでしょう。

表層だけを取り入れるのではなく、背景にある文化や歴史を理解した上で、現地の人々が違和感を抱かないような形で取り入れることが大切です。

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インバウンドプロモーションの際にも細心の注意を

ラグビーワールドカップのイングランド代表の事例のように、海外向けのプロモーションにおいて他国の文化や異文化を取り入れたコンテンツ作りは効果的な手法です。

しかし、背景にある文化や史実を無視して表層的に取り入れてしまわないよう注意が必要です。

日本人にとってはそれほど馴染みのない文化の盗用ですが、欧米圏では文化の盗用に対する目は厳しく、他国の文化や異文化に対する配慮は高いレベルで求められています。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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