インバウンド業界でのクラウディングアウト(crowding out)とは、オリンピックをはじめとする国際的な大型スポーツイベントなどが開催される際に起きる混雑を嫌って訪日外国人観光客が減ってしまう減少です。
東京オリンピック・パラリンピック2021年に延期となり、9月7日には国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長が再延期や中止はないとの方針を示しました。
2021年に東京オリンピック・パラリンピック大会が開催されることによりクラウディングアウト(crowding out)は起こるのか。
この記事では、クラウディングアウトの概要、要因、オリンピック開催地での事例と対策を解説します。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
訪日ラボに相談してみる
クラウディングアウトとは?
クラウディングアウトは、経済用語として使用される場合と、観光業界で使用される場合で意味が異なります。
以下では、それぞれの違いをご紹介します。
【金融・経済】クラウディングアウトとは?
政府が財政政策の一環として、国債の大量発行や減税をした場合に、実質利子率が上昇して民間の資金調達が圧迫されてしまう現象です。利子率の上昇に伴い、投資が減ることが主な要因です。「押し退け効果」とも呼ばれており、国民の所得の増加を妨げるなどの悪影響も指摘されています。
【インバウンド】クラウディングアウトとは?
オリンピックをはじめとする国際的な大型スポーツイベントなどが開催される際に起きる現象です。イベントを目当てとする旅行者(国内外を含む)の増加で、大会開催地とその周辺地の混雑、宿泊施設の不足、渡航費や宿泊費が高騰すると予想されるため、それらを嫌う訪日外国人旅行者が減少するとみられています。
2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックでもクラウディングアウトが発生しており、大会期間中(7~9月)の外国人旅行者数は前年同期比ー4.2%となりました。
ロンドンオリンピックのクラウディングアウト事例
先にも述べたとおり、2012年に開催されたロンドンオリンピック・パラリンピックでは大会期間中(7~9月)の外国人旅行者数が前年同期比ー4.2%でした。
イギリスの観光シーズンであった大会期間中だったにもかかわらず訪英外国人観光客が減少したのは、オリンピックによる混雑や宿泊費などの高騰を嫌った動きだったことが予想されます。
この現象は東京オリンピック・パラリンピックでも起こる可能性があり、その対策について「クラウディングアウト対策」でご紹介します。
ラグビーW杯はなぜ、クラウディングアウトが起こらなかったのか?
オリンピックと並ぶ世界的イベントであったラグビーワールドカップ(以下、RWC)では、クラウディングアウトが起こりませんでした。
その理由の一つが、開催期間が2か月間にわたる長期だったこと、試合日程の間隔が3日から6日と長かったことが挙げられます。
観戦目的の旅行者は、試合がない日に観光やグルメ、ショッピングを楽しむ余裕がありました。
さらにRWCは日本全国12開催都市で行われたため、観戦目的の旅行客が分散したのではないかと考えられます。
そのため、街の混雑や宿泊施設の不足、それに伴う価格高騰などが起きにくかったようです。
オリンピックに向けたJNTOやJR東日本のクラウディングアウト対策
東京オリンピックの開催を前に、日本政府観光局(JNTO)やJR東日本をはじめ、さまざまな組織がクラウディングアウトへの対策に取り組んでいます。以下では、対策の事例を紹介します。
JNTO:3つの「分散」の促進
JNTOでは、「分散」をキーワードとして対策に取り組んでいます。対策としてあげているのは、宿泊地の分散、旅行先の分散、時期の分散です。
- 宿泊地の分散:東京観光を希望する旅行者に対して、空室を確保や都内へのアクセスがしやすい近郊の宿泊施設を提案します。
- 旅行先の分散:地方の魅力を積極的に発信して東京以外への旅行者の増加をねらいます。
- 時期の分散:事前に周知し、大会前後の時期に訪日旅行を計画するよう誘導します。
これらの対策には、ターゲットに応じて分散を促し、東京への観光客集中を防ぐねらいがあります。
JR東日本:鉄道パスの提供
JR東日本では、訪日外国人旅行者向けの鉄道パス「JR EAST Welcome Rail Pass2020」を販売します。このパスは、東京オリンピック開催による都心の混雑を緩和するために、期間限定で販売されます。
首都圏のJR East Travel Service Centerやびゅうプラザなどでの販売を検討しており、大会期間に合わせて2020年7月21日から9月11日まで利用できるよう設定する予定です。
購入者は、設定期間中の連続する三日間、JR東日本管内の新幹線や特急を含む列車に何度でも乗車できます。
JR東日本では、パスの販売により大会期間中の観光客を東北、信越エリアへと分散させられると考えています。
連携:特別連携サイトの開設と特典
交通インフラ、宿泊、買いもの、配送など、訪日旅行者が必要とするサービスに携わる7社が連携して期間限定の特設サイトを開設しました。サイトの立ち上げに際して連携した企業を以下にまとめます。
- 東日本旅客鉄道
- JR東日本リテールネット
- JTB
- 東急ホテルズ
- 百戦錬磨
- プリンスホテル
- JR東日本ホテルズ
同サイトでは、訪日旅行者が必要な情報をまとめて配信し、お得なプランを提供していました。
また、首都圏でのスポーツ観戦後に東北エリアを周遊できるプランなども用意し、宿泊分散を促しました。
2020東京五輪に向けてクラウディングアウト対策
観光業界でのクラウディングアウトとは、大規模なスポーツイベントの開催などで起こりやすい現象のことです。大会期間中をはじめ、開催年に開催地の混雑や宿泊施設の減少、旅行の手配が難しくなり費用が高騰しやすくなります。
そのため、それを嫌った観戦目的以外の旅行者が減少してしまうことがあります。
大会の開催を目前に控え、国と企業が一体となって宿泊地や旅行先、旅行の時期を分散させる対策に取り組んでいます。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
訪日ラボに相談してみる
<参照>
東海東京証券株式会社:クラウディングアウト(くらうでぃんぐあうと)
東日本旅客鉄道株式会社:For 2020 東日本・東北エリアを鉄道で旅しよう!
【10/21開催】今こそ見直したい、EC・店舗のカスタマージャーニーの重要な3つのフェーズ 〜集客・購買・リピート施策をアップデート〜
顧客が商品を知り、購入し、継続的に選び続けてもらうまでの一連の体験(カスタマージャーニー)には、フェーズごとに異なる課題と有効なアプローチがあります。
本ウェビナーでは、「実店舗・ECへの集客」「シームレスな購買体験の提供」「ロイヤル顧客の育成」の3つの重要フェーズに着目。小売企業が今注力すべき施策と、その成果につなげるためのポイントをわかりやすく解説します。
マーケティング・販促・デジタル推進に携わる皆さまにとって、課題解決のヒントとすぐに実践できるアイデアが得られる内容です。ぜひご視聴ください!
<セミナーのポイント>
- Googleサービスと在庫情報を連携させ、“実店舗・ECどちらにも送客できる最新手法”が学べる!
- 実店舗とECの購買データを統合し、“チャネルをまたいだシームレスな購買体験”の設計方法がわかる!
- 購入者を“ロイヤル顧客”へと育てるための、導線設計とコンテンツ施策が学べる!
詳しくはこちらをご覧ください
→【10/21開催】今こそ見直したい、EC・店舗のカスタマージャーニーの重要な3つのフェーズ 〜集客・購買・リピート施策をアップデート〜
【10/24開催】インバウンド好調の流れはこのまま続くのか?今後の見通しと、今やるべきこと
かつてない好調ぶりを見せているインバウンド。2025年の訪日外国人客数は4,000万人超と予測されていますが、「今後もこの流れは続くのか」「今と同じ戦略でビジネスを伸ばせるのか」懸念を抱いている人は少なくないでしょう。
そこで本セミナーでは、これまでのデータからインバウンド市場の今後を予測し、いま取るべき行動や準備すべきことを解説します。
インバウンド事業に携わる皆さまにとって、ご自身のビジネスに役立つヒントが得られる内容です。ぜひご視聴ください!
<セミナーのポイント>
- 最新のインバウンド動向と今後の見通しがわかる
- 専門家3名による議論から、インバウンドの今後の動きに対してやるべきことがわかる
- 短期的に役立つ施策の話から、中長期的に考えていかなければならない戦略の議論まで、幅広く聴くことができる
詳しくはこちらをご覧ください。
→【10/24開催】インバウンド好調の流れはこのまま続くのか?今後の見通しと、今やるべきこと
訪日ラボ主催「THE INBOUND DAY 2025」アーカイブ配信中!
訪日ラボを運営する株式会社movが8月5日に開催した、日本最大級のインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」のアーカイブ動画が公開中です。
アーカイブ配信では、元大阪府知事の橋下 徹氏と大阪観光局理事長の溝畑 宏氏による基調講演のほか、脳科学者の茂木 健一郎氏、日本文学研究者のロバート・キャンベル氏、アパグループ 社長兼CEOの元谷 一志氏などの貴重な講演の様子を一挙公開(一部を除く)。
参加できなかった方はもちろん、もう一度議論を見直したい方も、ぜひご覧ください。
【インバウンド情報まとめ 2025年10月前編】中国の大型連休「国慶節」8日に終了、2025年も日本人気が続く ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に10月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→中国の大型連休「国慶節」8日に終了、2025年も日本人気が続く ほか:インバウンド情報まとめ【2025年10月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!