ブラジル人の多い町、群馬県大泉町 | 大泉町のデータ・ブラジル色・関連する諸問題

公開日:2020年02月03日

群馬県は、居住者に占める外国人の割合が全国3番目に高くなっています。特に、群馬県で最も小さな町、大泉町は多くの外国人が生活しています。

大泉町には日系ブラジル人が多く、ブラジル雑貨店やブラジルの食品が手に入るスーパーが並ぶブラジリアンタウンとしても知られます。

大泉町の日系ブラジル人受け入れの歴史や、異文化との共生について考えます。


大泉町のブラジル人データ

群馬県は外国人の割合が高く、県人口の2.9%が外国人です。東京都や愛知県に次ぐ、全国3位の割合の高さです。

群馬県内でも、大企業の工場が立ち並ぶ東毛地区において外国人人口が多い傾向にありますが、大泉町はとりわけ外国人が多く住む町として知られています。

大泉町のブラジル人比率

外国人人口の多い群馬県の中でも、大泉町は特に外国人比率が高い自治体です。バブル期に出稼ぎのために来日した外国人労働者の多くが定住し、現在に至るといわれています。

2018年時点では住民のおよそ5人に1人が外国人であり、なかでもブラジル人の比率は56.93%を占めます。

つまり、日本人も含めた大泉町の人口全体に対し、10人に1人はブラジル人ということになります。

ブラジル人の次に比率が高いのはペルー、ネパール、フィリピンからの移住者であり、南米やアジア出身者の割合が高い傾向にあります。

大泉町では、外国人住民向けにポルトガル語版広報紙の提供や日本の文化・習慣を伝える事業を展開し、多文化共生を目指しています。

日系ブラジル人

大泉町に住む日系ブラジル人は1990年に入管法が改正された際に、在留資格制度に加わった「定住者」ビザを利用して来日した人が多いとされています。

これをきっかけに20世紀初頭に南米に渡った日本人の子孫である日系ブラジル人が特に多く来日し、現在の高いブラジル人比率につながっています。

背景

大泉町は北関東でも有数の製造品出荷額を誇る工業の町です。

第二次大戦後の高度経済成長期に多くの企業が北関東に工場を建設しました。大泉町はこうして形成された北関東工業地帯に属します。

バブル期になると、働き手の不足が顕在化しました。そこで企業は海外に住む日系外国人の採用に着目し、地元企業が協働し日系外国人の求人を展開する協議会を立ち上げました。

採用担当者のブラジル派遣や現地の新聞に求人広告を掲載するといった活動により、多くの日系ブラジル人が働き手として来日しました。

行政・地域の暮らしに関するサポートもあり、多くの人が定着し現在に至ります。

大泉町のブラジル色

ブラジル人割合の高い大泉町にはブラジルにまつわる店が集まり、駅や街中にはポルトガル語表記の表示案内や看板が掲出されています。

異国情緒あふれる街並みから、ブラジリアンタウンとも呼ばれています。

レストラン・食材

大泉町にはブラジル料理のレストランやブラジル食材を取りそろえるスーパーマーケットがあります。

ブラジルの食文化が息づいており、日本に移り住んだ人たちも慣れ親しんだ故郷の味を楽しむことが可能です。

今年で創業30年を迎える老舗レストラン「レストラン・ブラジル」は大泉町で最初のブラジル料理店です。

ポルトガル語が飛び交う店内で、ブラジル料理としてよく知られるシュラスコや各地の郷土料理、ブラジルのお酒やジュースなど本格的なメニューを味わえます。

「アソーゲタカラ太田店」はブラジル食材が豊富なスーパーとして有名です。ブラジルの調味料やお菓子が揃い、精肉コーナーが充実ぶりが好評です。店内の雰囲気も、日系ブラジル人からブラジルに来たようだと評されています。

西小泉駅

大泉町に位置する東武鉄道小泉線の終着駅である西小泉駅は、2017年に駅舎がリニューアルされました。

ブラジル料理店やブラジル雑貨店が並ぶブラジリアンタウンの玄関口として整備された新駅舎は、南米をイメージしたデザインで利用客に親しまれています。

ブラジルカラーの黄色と緑を配し、ブラジルを代表する鳥「トゥカーノ」をイメージしたシンボルも描かれています。

駅の表示案内にはポルトガル語やスペイン語も含まれ、大泉町に多数居住する南米系の住民に対する配慮がみられます。

外国語表記

大泉町の街中にはポルトガル語の看板を掲出する商店があります。

また、上記の西小泉町駅構内の案内の一部は日本語、英語、中国語、韓国語に加えてポルトガル語、スペイン語でも表記されており、多様なルーツの利用者がストレスなく施設を利用できるよう配慮されています。

ポルトガル語はブラジルの公用語で、スペイン語は大泉町の外国人人口で2番目に多いペルーをはじめとした南米の国々で広く話されています。

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関連する諸問題

大泉町において外国人の住民受入れは町の活性化の原動力となってきました。しかし、受入れ開始から30年程度経過した現在、当初は予想されていなかった問題が顕在化してきました。

町行政は多文化共生をうたっていますが、日本人住民の中には反感を持つ人も一部存在します。

生活保護

2018年3月末における群馬県大泉町の生活保護受給者数は407人でした。そのうち、外国人は94名で大泉町の生活保護受給者全体の23.1%を占めています。

受給率ベースでは、約7,600名の外国人のうち、1.24%が生活保護の対象者です。同様に計算すると日本人の受給率は0.91%となり、外国人の受給率のほうが高いことがわかります。

外国籍であることや言語の問題が貧困リスクを高める要因の一つだと考えられています。

大泉町では外国人の生活保護申請者のため、独自でポルトガル語の資料を用意するなどの対策をとっており、申請受付事務にかかる負担も指摘されています。

言語の壁

日本人と外国人の間に大きく立ちはだかるのが言語の壁です。

2008年のリーマンショックでは工場で働く労働者が多数失職する事態となりました。工場での仕事に従事する場合、日本語での会話はそれほど必要がないケースもありますが、やはり日本語のできる人材が好まれる傾向にあります。

こうした事情から、なかなか再就職できず、生活保護に頼らざるを得なくなってしまったケースが多く見られました。

また、日本語が不自由な日系ブラジル人の子女が学校になじめず不登校に陥るケースも問題となっています。大泉町にあるブラジル人学校「日伯学園」では、そうした日系ブラジル人子女を対象に勉強を教えています。

1歳から高校生までが通うこの学校では、ブラジル社会と日本社会どちらにも適応できる人材を育成することを目指します。

生徒はブラジルの公用語であるポルトガル語と日本語、両方の言語を学習します。高校卒業までに日本語能力検定の「N1」を取得することを目標に掲げています。また、地域社会との交流にも力を入れています。

サンバパレード

大泉町では1991年から2001年にかけてサンバパレードを、2007年から2017年にはブラジルのイベント「大泉カルナバル」を開催してきました。いずれのイベントも現在は中止されています。

1990年代に実施されてきたサンバパレードには多くの見物客が訪れ、盛況でした。しかし観光客の多さから安全が担保できないなどの理由で、2001年を最後に中止に至りました。

6年後の2007年にはサンバなどのダンスショーとグルメを主体としたイベント「大泉カルナバル」が企画され、その後毎年開催されるようになりました。

しかしこのイベントも公費を充てることなどに対する不満の声が日本人住民から上がり、2018年からは中止されています。

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課題も残る大泉町だが、インバウンドの参考に

群馬県大泉町は日系ブラジル人をはじめとした外国人が多数生活しています。一方、言語の壁や社会リソースの分配の面で、不満を持つ日本人住民といった課題もあるようです。

多様な背景をもつ住民の共生モデルとして、全国に先駆けた事例となっており、その対応や諸問題の構造など、学ぶべき点は多いでしょう。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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