訪日外国人を対象とした観光庁の調査(※1)によると、出発前に得た旅行情報源で役に立ったものは「個人のブログ」(30.6%)、「SNS」(23.7%)、「自国の親族・知人」(17.6%)の順で多くなっています。
また、日本滞在中に得た旅行情報源で役に立ったものでは「インターネット(スマートフォン)」の選択率が 69.9%と圧倒的に多い事が分かっています。(※2)
多くの訪日外国人は、旅マエ・旅ナカでの情報収集の際にインターネットを活用し、自国の言葉で語られた信頼性の高い情報を求めていると言えるでしょう。
年々、質の高いインバウンド情報が求められる中、D2CXが運営する訪日観光客向けのサイトである「tsunagu Japan」が、今年に入り月間220万UU(※3)を達成し、tsunagu Japanの記事を読んで実際に行動に移す訪日旅行者が急増しているなど、インバウンド業界の注目を集めています。
今回、訪日ラボは「tsunagu Japan」を運営する株式会社D2CX 代表取締役 萩原良氏へインタビューを行ってきました。

※2:観光庁「平成 29 年 年次報告書 訪日外国人の消費動向」
※3:UU(ユニークユーザー)決まった集計期間内にウェブサイトに訪問したユーザーの数を表す数値。 集計期間内に同じユーザーが何度か訪問した場合、1UU(ユニークユーザー)としてカウントされます。
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月間220万UUを達成!tsunagu Japanの誕生秘話
tsunagu Japanの前身は、社長の萩原氏が個人で立ち上げたFacebookページでした。
萩原氏は幼少期のご自身の海外生活を通じて、現地の友人がゲームボーイやウォークマンなどの日本製品に夢中になっている状況を目の当たりにしていました。
日本人としてそれが嬉しくて、その原体験から、将来は日本の情報を世界に発信して、日本と世界をつなぐような仕事を自ら立ち上げたいとの想いを抱いていました。
2012年頃、起業の準備として、海外の方向けに日本に関する情報を発信するFacebookページを個人ではじめたところ、たった1年でファン数が約60万人に増えました。
tsunagu Japan誕生のきっかけ
Facebookページでは、日本文化や製品に関わる事、アニメなどのポップカルチャーや、日本の歴史など様々な情報発信をし、海外の方から好評を得ていました。
その後「日本と世界をつなぐ」をミッションに掲げ「日本のことを知りたいときに訪れてもらえるサイト」として日本のモノ・コトを総合的に発信するWEBサイトtsunagu Japanのベータ版をリリースします。
2014年7月には発信する内容を訪日関連情報にフォーカスし、現在の訪日メディアであるtsunagu Japanが正式にスタートを切りました。
訪日メディアへ特化した理由としては、配信した記事の中で訪日観光に関する記事の反応が群を抜いて良かったことや、ちょうど東京オリンピックが決まったタイミングで広告主である日本企業や自治体の関心がより高まっていたという背景がありました。
ローンチ当初は英語のみの対応でしたが、2014年の秋には繁体字対応を開始、当時急拡大をはじめていた中国語圏マーケットにも乗り出します。
現在では7言語(英語、繁体字、簡体字、タイ語、ベトナム語、韓国語、インドネシア語)に対応し、これまでに公開した累計記事数も6600以上に達するなど、広がり続けるインバウンドのニーズに対応しています。
「外国人視点」を一番大切にしたい。ネイティブ人材確保に走り回った創業当初
萩原氏も海外暮らしの経験があり英語に堪能だったものの、外国人に圧倒的に支持されるサイトになるには、「外国人視点」が最も重要だと考えていました。
日本人が発信したい情報ではなく、あくまで外国人が求める情報を、外国人に刺さる表現で発信することが必須と考え、まずはネイティブ人材の確保に奔走しました。
当時は採用コストもそれほどかけられなかったため、毎日大学に出向いては学食に居る留学生に声をかけるなど地道な努力を重ねます。
こうして、ようやく日本文化や日本の観光情報にも造詣の深いアメリカ人女性を2名採用できました。
tsunagu Japanのクオリティを支える「ネイティブ人材」と組織
外国人ネイティブ人材による外国人視点のコンテンツ制作を可能にしたことにより、ユーザーから支持されるのはもちろんのこと、タイアップ記事などを発注したクライアントからも「tsunagu Japanの記事のクオリティは高い」と評価されるようになりました。
クオリティを担保するために、組織運営上でも工夫をしています。
外国人ライターは厳しいテストを合格した人のみを採用し、また各言語ごとにネイティブ人材を一人リーダーとして置き、ファクトチェックや表現のチェックなどクオリティチェックは基本的に言語ごとに行います。
また、クライアントに見せる際に日本語のニュアンスが違っているとトラブルにつながるため、日本語編集チームという組織がチェックを行うようにしています。
情報収集の段階でも、日本人の方が容易な場面も多々あるため、日本語編集チームは組織の横ぐしを通す存在として全体的なフォロー役を担っています。
また、毎回の取材ではディレクターの日本人、ネイティブのライター、カメラマンというチームを組んで臨み、クライアントである日本人の意図も汲めるような体制をとっています。
あえて日本語の記事を配信しない理由
インバウンド関係者以外の日本人でtsunagu Japanを見たことがある方はあまりいないかもしれません。実は、tsunagu Japanは日本語では記事を配信していません。
日本語の記事を配信しない理由としては、tsunagu Japanを「訪日外国人のためのメディア」という本筋からずらしたくないからだと萩原氏は言います。
ターゲットではない日本人に向けた記事作成ではなく、訪日外国人に見てもらうためにリソースを配分したいという考えです。その言葉が目指すもののとおり、今回達成した月間220万UUの内訳は99%が外国人からのアクセスとなっています。
記事を見て実際に行動に移す訪日外国人
冒頭でも述べたとおり、tsunagu Japanの記事をみてたくさんの訪日外国人が実際の行動を起こしてきました。
例えば、外国人対応をしている東京や大阪の美容院を紹介する記事を発信したところ、その記事経由で毎日1組以上の訪日旅行客が来店するような美容院もでてきています。
大手旅行会社が運営する日帰りバスツアーについても、ネイティブライターが取材して紹介したところ、記事経由で8カ月間で2400件以上も売れました。
15万円もするような高級寿司のツアーについても、記事経由でコンスタントに売れています。
「訪日旅行者の行動を喚起するメディアとしてNo.1を目指す」
tsunagu Japanでは毎日のように「大阪に行く予定だけどどこに行ったらいい?」「おすすめのホテルは?」「自分の旅程が現実的か添削してほしい」などの問合せがSNS経由などでダイレクトにきています。
また約6年間にわたるサイト運営を通じて、どのような記事の反応がよいかなどのデータが蓄積されています。
このようにユーザーの顕在および潜在ニーズを熟知し、ユーザーに刺さる質の高いコンテンツをつくることができるからこそ、訪日外国人の行動を喚起できているといえますが、今後、tsunagu Japanではこの部分をさらに強化すべく「訪日旅行者の行動を喚起するメディアとしてNo1を目指す」という目標を掲げています。
ユーザー数やPV数だけにコミットするのではなく、旅行メディアの本質的価値である「どれだけ読者の行動を喚起できたか」という部分にさらにフォーカスし、そこを最大化していく取り組みを強化していきます。
クライアントからの要望ではなく、社内で企画して行う独自取材には工数もかかりますが、今後独自取材記事の割合はさらに増やしていく予定です。
また例えば、繁体字圏などリピーターが多い国では「日本人しか知らない穴場スポット」の情報が求められています。
こうしたニーズに応えるため、リピーター向けのネタ集めをするために、穴場スポットへの独自取材や、地方の周遊ルートの提案なども積極的に行っています。萩原氏は、ユーザーにとっての本質的なメリットを考え、追及するという姿勢を大切にしています。
クライアントの目標達成にとことんこだわる
日本企業や自治体などのクライアントに対しては、tsunagu Japanを活用したプロモーション施策のみならず、様々なソリューションを提供しています。海外向けFacebookページの運用代行、海外向けオウンドメディアの記事制作代行、インフルエンサーマーケティングなど短期から中長期の施策を取り揃えております。
また、代理店機能も持ち合わせており、代理店として国内外50社以上の豊富なパートナーネットワークを構築しているため、クライアントのニーズに合わせてその都度、最適な提案をすることが可能です。
ここでも最も大事にしているのは「クライアントの目標達成にとことんこだわる」ということです。
日々、数多くの日本企業、自治体から様々な引き合いがあり、その後も継続してお付き合いをするようなクライアントが多数いるのも、このような方針が評価されているからに他なりません。
tsunagu Japanの「訪日旅行者の行動を喚起するメディアとしてNo.1」という目標、またクライアントの目標達成にとことんこだわるという方針は、まさに訪日旅行者とクライアント双方のニーズを満たすものと言えるでしょう。
今後もtsunagu Japanの動向に注目です。
D2CX社
NTTドコモと電通、NTTアドの合弁会社「株式会社D2C(ディーツーシ-)」が、TSUNAGU社(19年1月にD2C X=ディーツーシークロスに社名変更)の全株式を取得して、18年12月に子会社化した企業です。
【タイアップ記事などに関するお問合せ】
株式会社D2C X インバウンド担当E-mail:inbound@d2cx.co.jp
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
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- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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