大阪インバウンド事情、客層に変化アリ:欧米豪市場をAI解析、さらなる成長目指す

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東京に次ぐインバウンド市場を形成する大阪は、毎年数多くの訪日外国人を受け入れています。また、2025年には万博こと日本国際博覧会が大阪で開催されるため、今後も大阪のインバウンド市場は盛り上がるとみられています。

一方で2019年上半期には、大阪インバウンド市場の客層に変化が見られました。そこで今回は、2019年上半期の大阪におけるインバウンド事情を改めて紹介するとともに、2019年上半期に観測された客層の変化を分析し、今後の大阪インバウンド市場を展望します。

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大阪インバウンドデータ

最初に、2018年上半期から2019年上半期に至るまでの大阪府におけるインバウンド事情の変化を解説します。

この1年間で大阪府を訪れた外国人観光客約6.0%増加し、宿泊者数や延べ宿泊者数も合わせて増加しました。

訪問者数と消費金額の推移

▲[2019年上半期における大阪府の訪問者数]:インバウンド調査報告書2020
▲[2019年上半期における大阪府の訪問者数]:インバウンド調査報告書2020

▲[2019年上半期における大阪府の訪問者構成比]:インバウンド調査報告書2020
▲[2019年上半期における大阪府の訪問者構成比]:インバウンド調査報告書2020

2019年の上半期に大阪府を訪れた外国人観光客は、合計623万2,689人でした。2018年の上半期は合計587万7,861人だったので、大阪府を訪れた外国人観光客は1年間で約6.0%増加しています。

また、2019年上半期の宿泊者数は25.8%延べ宿泊者数は21.3%それぞれ2018年上半期と比べて増加しています。

2019年上半期に大阪府を訪れた外国人観光客を国籍別に見てみると、最も多かったのは中国からの観光客で、次に韓国、台湾、香港、アメリカと続きます。これらの5か国からの観光客は外国人観光客全体の約79.9%を占めており、中でも中国人観光客は全体の約41.5%を占めています。

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客層が入れ替わる大阪、その理由は?

大阪を訪れる外国人観光客の人数は上昇していますが、その国籍は入れ替わりつつあります。

2019年上半期は特に韓国人観光客の人数が大きく減少しましたが、一方でイギリスやイタリアなど、欧米豪からの観光客は増加傾向にあります。

ここでは大阪における外国人観光客を国籍別に比較し、外国人観光客の客層が入れ替わりつつある理由を分析します。

アジア市場が減少、代わりに欧米豪市場が増加

▲[2019年上半期における大阪府の訪問者数月別推移]:インバウンド調査報告書2020
▲[2019年上半期における大阪府の訪問者数月別推移]:インバウンド調査報告書2020

2019年上半期と2018年上半期の大阪府における外国人観光客を国籍別に比較すると、いくつかの特徴が掴めます。

まず、中国を除く東アジアからの観光客が軒並み減少しました。韓国人観光客は前年同期と比べて約14.8%と大きく減少していますが、他にも台湾人観光客は約5.2%、香港人観光客は約4.7%と、全体的な減少が見られます。

一方で、イギリス人観光客は前年同期と比べて約104.4%、イタリア人観光客は前年同期と比べて約117.5%それぞれ増加しており、他にもアメリカ、カナダ、オーストラリアなど、欧米豪からの観光客は軒並み増加しています。

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客層に変化が起きた理由は?

この1年間東アジアからの観光客が減少し、欧米豪からの観光客が増加したのは何が原因なのでしょうか。

▲[2019年上半期における訪日台湾人の構成比]:インバウンド調査報告書2020
▲[2019年上半期における訪日台湾人の構成比]:インバウンド調査報告書2020
▲[2019年上半期における訪日香港人の構成比]:インバウンド調査報告書2020
▲[2019年上半期における訪日香港人の構成比]:インバウンド調査報告書2020

まず、東アジアからの観光客が減少した原因としては、ゴールデンルートを一通り楽しんだ観光客が増えたと予想できます。

ゴールデンルートは東京から富士山を経て名古屋、京都、大阪などを結ぶ観光ルートです。日本の観光地の中でも特に有名どころが集まっているため、多くの外国人観光客がこの経路を選んでいます。

一方、ゴールデンルートの観光を一通り終えた観光客は、次回の訪日旅行ではドラゴンルートなど他の観光ルートを選ぶことも考えられます。

例えば台湾人観光客や香港人観光客などは、大阪府を訪問した人数こそ減少しているものの、日本を訪れた人数そのものは増加しています。また、台湾人観光客では全体の約87.0%、香港人観光客では全体の約86.8%が訪日旅行のリピーターであるため、2度目以降の訪日旅行ではゴールデンルート以外の観光ルートを選ぶ観光客が増加しているとも見てとれます。

また、韓国人観光客は前年同期と比べて14.8%と最も高い減少率を記録していますが、これには2019年から続いている数々の日韓関係に悪影響を及ぼす情勢が少なからず影響しているでしょう。

その一方で、欧米豪からの観光客は全体的に増加しています。これには2019年のG20サミットが大阪で開催されたことや、2025年に大阪万博が開催されることなどが影響を及ぼしていると考えられます。大阪ではIRカジノを含む統合型リゾート)の誘致も進んでおり、今後も欧米豪からの観光客は増加の傾向となると予想できます。

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今後の展望

最後に、今後の大阪インバウンド市場を展望します。

大阪は東アジアからの観光客こそ減少傾向にあるものの、万博やIRの誘致などで上手く外国人観光客を取り込んでいる地域です。しかし、今後も外国人観光客が増え続けた場合、宿泊施設の数が不足しかねない懸念もあります。

また、宗教上の理由で豚肉や牛肉を食べない外国人観光客も中には存在するため、諸外国の食文化に対応した受け入れ体制の構築も今後の課題となります。

大阪観光局の動き:データ解析でさらなる対策

大阪観光局では、今後の欧米豪系観光客の増加を見越して、マーケティングプラットフォーム企業と共同でAIを活用したデータ解析を実施しています。

この解析は、インターネット上に溢れている欧米豪系観光客の情報から行動パターンや嗜好を割り出すもので、解析から得られた情報をもとに今後のインバウンド対策などを改善したり、新たな計画を実施する予定です。

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宿泊施設のキャパシティに限界か

▲[2019年上半期における大阪府のエリア別延べ宿泊者数/エリア別宿泊施設稼働率]:インバウンド調査報告書2020
▲[2019年上半期における大阪府のエリア別延べ宿泊者数/エリア別宿泊施設稼働率]:インバウンド調査報告書2020

外国人観光客が増加したことにより、大阪府の宿泊施設は非常に高い割合で稼働しています。2019年上半期の宿泊施設稼働率平均約84%と、全国平均である約69%を大幅に上回っており、今後も外国人観光客の増加が続けば受け入れ可能な人数の限界を迎えてしまう懸念があります。

宿泊需要の増加に対応するため、2020年には30軒以上のホテルが新たに開業する予定です。

フランス人はホテル内のバーやレストラン、イタリア人は部屋のユニークさなど、欧米豪からの観光客はホテルのハード面を重視する傾向にあるため、これらの基準に適うようなホテルが今後の大阪には求められることとなるでしょう。

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食の多様性への配慮

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また、近年は菜食主義者(ベジタリアン)の人口も増えつつあり、これらの食文化に対応した食事を提供できる場所が求められています。

大阪ではお好み焼きや串カツなど多くのご当地グルメが愛されていますが、これらの大阪名物と世界各国の食文化を上手く組み合わせることで、より多くの外国人観光客に大阪を楽しんでもらえるでしょう。

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まとめ

近畿地方には大阪以外にも京都、奈良、神戸など、多くの外国人観光客が集まる地域が集中しています。そのため、近畿地方における外国人観光客の動きは比較的複雑です。

近畿地方のインバウンド事情を知ることで大阪のインバウンド事情もより詳しく分かるように、ある都市に絞ったインバウンド対策を考える場合でも、周辺地域のインバウンド事情や周遊ルートを調べることは人の流れを把握するのに役立ちます

訪日ラボによる最新のデータと分析が掲載されたインバウンド調査報告書2020」では、各地域のインバウンド事情が分かりやすく整理されているため、インバウンド対策の策定に最適です。プロモーションの企画やインバウンド市場の調査には、インバウンド調査報告書2020をご活用ください。

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本調査報告書について

本調査報告書は「訪日ラボ」が、2018年上期から2019年上期にかけてのインバウンド市場を徹底的に分析することで、2020年上期のインバウンド市場を展望する内容となっております。

本報告書の制作にあたり、観光庁JNTOなどが提供する公的なデータ、株式会社ナビタイムジャパンからのデータ協力、そして自社メディアにて集積した膨大なデータを基に分析しており、変化の激しいインバウンド業界の方にとって価値のある情報を提供することを目的としています。

構成・各章の概要は以下の通り。

  • 第1章「市場全体データから分析するインバウンドの現在」
    • 訪日者数や消費金額総額等のマクロデータに加え、業界を支える事業者へのアンケートも交え、インバウンドの現在の趨勢についてまとめています。
  • 第2章「都道府県別インバウンドデータに見る トレンドと課題」
    • 全国47都道府県を9エリアに分け、県別に各種の公的データを集計。また、NAVITIME提供のインバウンドGPSデータによる宿泊者数や移動データも収録し、外国人訪問者の動向と消費の詳細が分かるデータとしてまとめています。
  • 第3章「国・地域別インバウンドデータに見る トレンドと課題」
    • 政府の指定する重点市場20か国について各種データを集計し、各国の訪問動向と消費内訳をまとめています。どの月にどの県へ訪問、宿泊がなされ、なにを期待して訪日したのか。またどの品目により多くの消費がなされたのか。次にインバウンド対策として打つべき手についてデータを分析しています。
  • 第4章「業界別インバウンド市場ニュースと事例」
    • 2019年1月-6月期において訪日ラボの人気記事を業界ごとにリストアップし、それらをPVの大きかった順に並べ、キーワードを抽出しています。メーカー、交通、宿泊、小売、そして地方自治体のニュースの記事が注目を集め、話題となったのか。業界ごとに分析・解説しています。
  • 第5章「インバウンド対策ソリューション企業一覧」
    • インバウンド向けに受け入れ対応したい・プロモーションしたい事業者をサポートする、インバウンド対策サービスをまとめ、リストアップしています。

書籍情報

書名:インバウンド調査報告書2020[2019年上期のデータから2020年上期を展望する]

著者:訪日ラボ

発行所:株式会社インプレス

発売日:2019年12月24日(火)

価格:CD(PDF)版、ダウンロード版90,000円(税別)CD(PDF)+冊子版100,000円(税別)

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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