中国で市場拡大中「ライブコマース」って?「コンテンツ」がモノを売る時代に、マスク半顔メイクがヒットした理由

公開日:2020年03月19日

タレントやインフルエンサーがライブ動画を配信し、視聴者はリアルタイムに質問やコメントをしながら商品を購入できるという新しいECの形、「ライブコマース」の市場が近年注目されています。

日本でも今後成長が期待される「ライブコマース」ですが、中国の事例を元にその背景と今後の展望を解説します。


ライブコマースとは?

その名のとおり、ライブ配信の機能に加え、動画の中で紹介された商品が購入できるECの機能がついていることが特徴です。

先行する中国では既に2時間で3億円を売り上げるようなトップインフルエンサーも誕生しており、日本でも『メルカリチャンネル』『SHOPROOM』、『Live Shop!』、『MimiTV』といった関連アプリが続々とリリースされました。

▲「タオバオライブ」のライブ配信の様子

左のキャプチャは、黒いワンピースを着た女性(ライブ配信者=ライバー)がライブ配信をしている様子です。この着用ワンピースは198元(約3,000円)で販売されており、画面下部の価格が表示されている商品見出しをタップすると直接タオバオの商品ページに遷移することができます。

画面上部左上を見ると、1,788人がリアルタイムでライブ配信を視聴していることが分かります。

視聴者はライブ配信者に対して随時コメントすることができ、細かいサイズや生地の質感の確認や着まわしやコーディネートのアドバイスを受けることもできます。

こうして多くの視聴者がライブ配信者とのやりとりを見ながら、購入の判断に役立てています。

右のキャプチャ「タオバオライブ」コーナーのトップ画面から分かるように、ライブ配信の商材はアパレルに限らず、食品や旅行用品まで多岐に渡ります。

巨大な中国のライブコマース市場「タオバオライブ」1.5兆円規模の取引

しかし日本での認知度と普及度はまだまだ高いとは言えず、2018年のマクロミルによる15歳から49歳の男女2万人を対象にしたライブコマース利用実態調査でのライブコマース認知率は約30%、認知している人のうち視聴に至った人はさらに半数以下という結果になっています。

一方中国ではライブコマース市場が大きく成長しており、先に紹介したECプラットフォームの「タオバオ」が提供する「タオバオライブ」では2018年すでに1,000億元(日本円で約1兆5,280億円)規模の取引があったことが報告されています。

タオバオライブ以外にも、京東(JD.com)や拼多多(ピンドゥオドゥオ)のようなECプラットフォームでも商品ページ直結型のライブ配信機能が用意されています。

TikTokの本家である抖音(Douyin)や快手(Kwai)といった短尺の動画を扱うショートムービープラットフォームでは、外部ECへのリンクを貼ることができ、商品プロモーションにも活用されています。

能動的な買い物から受動的な買い物へ

中国のEC化率(すべての商取引の内、電子商取引が占める割合のこと)は15%を超えており、世界を見渡しても群を抜いてEC化率が進んでいます。

しかし快手(Kwai)や抖音(Douyin/TikTok)をはじめとするショートムービーサービスなどの登場に伴い、従来のオンラインショッピングの時間が動画視聴の時間などに奪われ、天猫(Tmall)や京東(JD.com)といったECの閲覧時間はどんどん短くなっています。

閲覧たったの6秒「モノを探さない、説明文を読まない」でも買い物はしたい

ECの商品ページ平均閲覧時間はわずか6秒とも言われ、ユーザーはどんどんモノを探さない、説明文を読まない傾向が強くなっています。

従来のオンランショッピングでのユーザーの行動は、検索→商品認知→購入という流れでした。ただし検索から商品の認知、購入の決定までに「商品理解」の過程が存在します。日常生活が忙しい、単純に気が向かないなどの理由で説明文を読まないユーザーであれば、この過程のいずれかで脱落し、商品の購入には至らないでしょう。

ライブ動画の中で商品に出会った場合には、商品認知や購入検討のプロセスを、動画の視聴だけで済ませることができます。購入に際しての消費者の心理的負担を下げることができるといえるでしょう。

こうした消費者心理に気づいたECプラットフォームにより、「ライブコマース」の市場は開拓され、発展してきました。

「認知獲得」だけじゃない、ライブ配信のメリット

天猫(Tmall)や京東(JD.com)といったECプラットフォームでは、すでに数え切れないほどの店舗や商品がひしめいており、ユーザーに従来の商品ページへたどり着いてもらうだけでも至難の業になっています。

すでに成熟し、日常に溶け込んでいる大手ECを中国では「伝統EC(電商)」と呼んでおり、ユーザーが能動的に検索し、商品を認知し、購入に至るという買い物体験は既に古典的でベーシックなものと考えられています。

こうした大手EC「伝統EC(電商)」に出店しているブランドにとっては、どのようにすれば「売れるのか」以前に、どうすればユーザーに商品を「認知してもらえるか」が大きな課題となっています。 

▲天猫(Tmall)と京東(JD.com)アプリのホーム画面

奪い合いの「バナー広告」枠、アピールできる道は「ライブ」へと変化

店舗や商品がひしめいているのはさることながら、ユーザーに認知してもらうためのバナーの露出枠も熾烈な奪い合いが起きています。

そんな中、ライブ配信を行うとプラットフォームのライブ配信枠に載ることができ、新規ユーザーに出会う確率をあげたり、ライブ配信の告知や通知行うことで既存ユーザーの注意を促せるというメリットがあります。

さらにはライブ配信中にユーザーの反応を見て今後の発注に活かすことも可能なため、ブランド側も積極的にライブ配信を試して多くの新しい事例を作っています。

「情報収集ツール」としてのライブ配信:新型肺炎にちなんだコンテンツも

ライブ配信ではライブ配信者が商品の紹介をして購入をしてもらうことが特徴ですが、ただの商品の押し売りではなく、商品の使い方といったレクチャーを伴うことが多いです。

日本でライブ配信がその効力を発揮したといえるケースの一つが「BEAUTY THE BIBLE」です。美容界を牽引するプロのビューティストたちが、ワンランク上のメイクアップやスキンケアのHOW TOを惜しみなく披露する、アマゾンプライムビデオのコンテンツの一つです。

プロが自信を持って紹介するのだから間違いないと、番組の中で紹介された商品は売り切れになることも多くなっています。

ライブ配信で紹介された「&be UVミルク」という、ノンケミカル処方で肌にやさしい強力UVカットクリームは、現在売り切れで2020年3月下旬まで入荷待ちとなっています。

▲Amazonプライム「BEAUTY THE BIBLE」視聴ページ
▲アマゾンプライム「BEAUTY THE BIBLE」視聴ページ

そのため、誰が何を紹介するかの選定も重要ですが、それと同じくらいどのようなテーマで商品をみせるか、どのようにすればユーザーの役に立つコンテンツができるのかという構成が重要になってきます。

新型肺炎でマスク着用時間が激増→「マスク半顔メイク」誕生

武漢で発生した新型コロナウイルスの流行に伴い、中国では”マスク着用でも映える”がコンセプトの髪型と顔の上半分のメイクアップを入念に行う「マスク半顔メイク」(口罩半面妆)というトレンドが若い女性の間で生まれました。

「中国版Instagram」とも呼ばれるECアプリ「小紅書(RED)」でも多くのユーザーが自身の半顔メイクとHOW TOを投稿しています。

▲「小紅書(RED)」に投稿された「半顔メイク」


タオバオが公式に発表しているデータ「淘宝経済暖報」によると、今回のコロナウイルスによる外出自粛を受けて「半顔メイク教えます」というテーマのライブ配信をするライブ配信者(ライバー)が増加しました。

合計で820万人のユーザーが半顔メイクのレクチャーを閲覧し、関連コスメの売り上げ増加に影響を与えたそうです。

このように、ライブ配信では何を誰が紹介するかに加え、配信内容全体のテーマ設定、ユーザーが今知りたいことに合わせて商品を提案するという構成が求められます。

ユーザーはただ時間つぶしをしているだけでなく、情報収集をして自分の生活に役立てたいと考えていることが見えてきます。

形式は変わっても変わらない、消費者が「買い物に求めるもの」見極めの重要性

多くのプラットフォームや売り手が注目する「ライブコマース」ですが、配信者の育成やLIVE配信中のカスタマーサポート、消費者とのミスマッチによる返品率の改善など、整備すべきルールはまだまだ山積みです。

ライブ配信は誰もが気軽に配信できる反面、購入に至るロジックや話術といったものは実践と改善の繰り返しなしに簡単に手に入るものではありません。その場数を踏めるライブ配信者の育成には時間もお金もかかり、売上金の分配といったルール整備も必要になってきます。

2019年は中国で一気にライブ配信プラットフォームが新規参入しましたが、2020年はこれらがより健全に運用されるためのルールづくりが重要となってきます。

今後は健全なルールの中で「ライブコマース」が成長を遂げ、商品を軸とした新しいコンテンツ作りや、リアルタイムで確認できる消費者の反応を活かしたより良い商品作りを担い、新しい買い物のあり方がスタンダードに変化していくかもしれません。

日本においても現在は国内での認知や利用率において若干の課題はあるものの、配信プラットフォームや配信者は確実に増加してきています。

国内に向けての配信だけでなく、日本ブランドに信頼を置いたり日本独特の雰囲気が好きだという海外の人に向けて、日本にしかないコンテンツの強みや企画力を武器に商品の魅力を伝えていけば、海外を見据えた商品の販売も可能になってきます。

日本の商品の魅力を海外に届けるため、ライブ配信という手法でPRをするという新たな流れや手法にも注目していきたいです。


<参考>

https://baijiahao.baidu.com/s?id=1660685919741195337&wfr

https://www.sohu.com/a/312896854_117951

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この記事の筆者

兵頭 和(ビントウ)

兵頭 和(ビントウ)

2016年中国北京での社会人インターンを経て2017年よりEC事業会社にて越境EC(天猫国際)運営、国内ECの開発企画、ディレクションを担当。現場目線で中国のアプリやサービスを解説する。愛媛生まれ。