3月30日、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界全体の感染者数は70万人を超えました。日本国内においても多くの著名人の感染が報じられ、緊迫した状況は続いています。
今なお全世界に感染が拡大している新型コロナウイルスの影響を受け、インバウンドに関わる方々はどのようにインバウンド戦略を立てたらよいのか、非常に悩ましい状況にあるのではないでしょうか。
今回は、これまでの経験を踏まえ、新型コロナウイルス影響下及び、「アフターコロナ」におけるインバウンド戦略についてお話しようと思います。
結論から述べると、新型コロナウイルス影響下の真っ只中にある「今このタイミング」ですぐに狙うべきターゲットは中国市場です。
少々過激に聞こえるかもしれませんが、これまでのコロナに関する定量的な情報と、中国現地の方から収集した定性的な情報から判断した上で上記の結論に帰着します。
今回はその理由についてお話しようと思います。
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新型コロナウイルス感染の現状
まず、現在までの新型コロナウイルスについての現状を整理します。
WHOの情報によると、2020年3月29日時点で最も累計感染者数が多い国はアメリカであり、次いでイタリア、中国、スペイン、ドイツと続きます。
一方で、感染している人の数を国別に見ると、アメリカ、イタリアで急速に感染者が増加している中、中国は2月18日の5万8,016人をピークに、コロナから回復した人が増え、感染者の減少が続いていると報じられていることから、中国の感染状況はピークを越したと考えております。
したがって、現在アメリカ、イギリス、イタリア、スペイン、インド、中国など世界の国や都市で外出が制限されている状態が続くなか、こうした厳戒態勢が最も早く解除されるのは中国ではないかと予想されます。
「今」中国を狙う5つの理由
感染状況のピークを脱したようにみえるとはいえ、「今」このタイミングで中国市場を狙う理由はどこにあるのでしょうか。
狙うタイミングは「今」が最もよい理由を5つに分けて説明します。
1. 最大かつ、なおも成長する中国市場
言わずもがなですが、中国は日本のインバウンドにおける最大市場です。そして、毎年二桁以上の伸長を続けている驚異的な市場であるということも再認識するべきです。
JNTOが発表している訪日外国人消費動向調査(年間推計値)によれば、2019年の訪日外国人外客数3,188万2,000人のうち、訪日中国人の数は959万4,300人と30.9%を占めます。訪日中国人外客数は2018年に初めて800万人を突破し、そこからさらに14.5%増加していることになります。
また、訪日外国人の旅行消費額全体の4兆8,113億円のうち、中国は1兆7,718 億円と約37%を占めています。旅行消費金額も増加傾向にあり、2018年と比較して14.7%増加しています。
これだけ大きなインバウンド需要が、「アフターコロナ」に戻ってくる可能性があります。その準備は万全にしていなくてはなりません。
2. 中国ではすでに自粛ムードは終わっている
中国ではトヨタ工場の稼働再開をはじめ、新型コロナウイルス流行以前の生産活動に徐々に戻りつつあるのが現状です。
そのほか、感染拡大が深刻だった中国湖北省で移動制限措置を解除する動きも出はじめています。
新規感染者数の減少を受け、武漢市を除く省内の各地で経済活動の再開を進めるため、制限を緩めているかたちといえます。
こうした状況から、中国は旅行の自粛ムードから脱しているのではないかと推察できます。
3. 日本からの支援物資提供により、親日度が上がっている
また、今回の新型コロナウイルスの流行によって、中国人の中で日本に対してとてもよい印象を持つ人が増えていることも注目しておきたい事実です。
大分市が武漢市に3万枚のマスクを支援物資として発送したニュースは、中国のネット上で大きな反響を呼びました。こうした出来事も、訪日中国人の今後の増加に寄与すると考えられます。
【海外の反応】日本からの支援物資に中国で感謝の声|新型コロナウイルスめぐり
2019年12月29日に政府が派遣したチャーター機で中国湖北省武漢から206人が帰国しました。このチャーター機の往路にて、日本政府からの支援物資として中国国内で品薄状態となっているマスクを運んだといいます。日本各地からも支援物資の提供がすすみつつありますが、それに対し、中国ではSNS上で感謝の声が上がっています。今回は速報として中国SNS上での反応をスクリーンショットでご紹介します。関連記事韓国版「マスクマップ」登場!アメリカ、フランスのディズニーも続々閉鎖!【速報】WHO「新型コロナウイ...
4. 春節で使えなかった予算を使うタイミングを見計らっている
今年の春節は中国人は満足に海外旅行に行くことができませんでした。旅行に使う予定だったお金は未だ使うことができずに残っているものと考えられます。
地理的な近さも追い風となり、新型コロナウイルス終息後、反動として日本にもたらすインバウンド消費額は他の国籍と比べて最も大きいと考えられます。
そのほか、弊社の中国の情勢に詳しい社員に聞くと、訪日旅行を考えていた中国人は3月に行く予定だった花見の予定をキャンセルせざるをえなかったとのことです。
次に日本へ行くタイミングを考えた時、今年の夏に開催される予定だった東京オリンピックが来年に延期となったため、避けていた時期であった今年の夏休みシーズンに日本に行くことを考えている中国人も少なくないとのことです。
5. (日本の)競合他社が国内の自粛ムード及び予算削減により、訪日中国人向けのプロモーションを休止している
もう一つの理由は、日本国内が自粛ムードであり、各企業が情報発信に慎重になっているこのタイミングでの行動で、他の企業に差をつけられるということです。
実際に、弊社の取引先の大手商業施設がこのタイミングでWeibo、WeChatのアカウントを開設しています。企業の中には着々と、新型コロナウイルス終息後の準備を進めているところもあるという訳です。
上記5つの理由から、訪日中国人市場の「旅マエ」はすでに始まっているのです。
具体的な戦略
中国市場への具体的な準備として何をすべきなのでしょうか。その一例を紹介します。
まずは、Weibo、WeChatでの積極的な情報発信が考えられます。事態が落ち着いたら日本に来てくれるよう、今のうちからPRをしておくべきでしょう。
また、在日のKOL、KOCの起用の準備も進めておくべきです。前回のシリーズでも説明しましたが、実際に日本に住んでいるKOLやKOCから情報発信することは中国で日本への旅行を検討している方にとっては安心感があります。
在日のKOL、KOCは中国からの訪日が制限されている中、終息が見えたタイミングで比較的スピーディーなアサインが可能でもあります。
上記のSNSで情報発信する際、発信すること自体が目的ではないため、投稿内容には工夫が必要です。
自社の商品のPRや価格訴求に関する投稿ではなく、今のタイミングの投稿は日本及び、周辺観光地の魅力や「日本は安全で安心して旅行に来れますよ」というメッセージ(風評被害の払拭)のような内容が望ましいでしょう。
考慮すべきポイント
具体的な施策を実行するにあたって、クリアにすべきポイントが2つあるのではないでしょうか。
一つは、日本の新型コロナウイルスの感染状況は未だにピークが見えておらず、「今」インバウンドのプロモーションを実施することに対する社内的な理解が得られない可能性があるということです。
二つ目は、報道によっては中国はまだ新型コロナウイルスは終息していないとの情報もあり、中国で再び感染が拡大する可能性もあるなど、情報が錯綜している中でインバウンド施策を進めなければならないということです。当然状況に応じて、計画を練り直す必要もあることでしょう。
その他、業種や業界によって、クリアにすべきポイントは違ってきます。
「旅マエ」は既にはじまっている
今まさに、日本ではコロナの感染がピークに差し掛かっていると言われている中で、「今」中国のインバウンド市場を狙いに行くのは非常に勇気のいる決断かもしれません。しかし、前述の通り中国では、徐々にコロナ発生前の経済活動に戻りつつあり、既に次の国慶節の「旅マエ」がスタートしているのです。「アフターコロナ」を見据えた直近の動きが、競合他社との差別化につながると感じています。
コロナ影響下の「今」だからこそできること、インバウンド担当としてできることを、もう一度考えてみてはいかがでしょうか。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月前編】最新の「観光白書」公開!インバウンドに関わる政策の変更点を徹底解説 ほか
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