最近、日本の若い女性の間で「チャイボーグ」という言葉が使われています。
これは「チャイナ」+「サイボーグ」を掛け合わせた、”サイボーグのように人間離れした美しい中国の女性”をあらわす言葉です。
中国発のメイクやファッションに注目する人の増加を受けて、この「チャイボーグ」という言葉も広まりつつあります。
女子中高生向け雑誌「Seventeen(セブンティーン)」2019年10月号でも「中国メイク研究」という特集が組まれ、日本のSNSで話題になりました。
今回はこのような言葉やブームがどこで生まれ、なぜ広がっているのかを解説します。
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インターネット時代が生んだ「チャイボーグ」というジャンル
「チャイナ」+「サイボーグ」を掛け合わせた「チャイボーグ」という言葉はメイク自体にフォーカスをされることが多いですが、実は単にメイクだけを指すのではなく、髪型やファッション、独特のカルチャーを含めて「チャイボーグ」というスタイルが存在します。
これまでも存在していた「網紅(ワンホン)」という言葉が単にネット上のインフルエンサーを指すのに対して、チャイボーグは強く大胆で女性の憧れになるようなロールモデルを指していると筆者は考えます。
これまでの「網紅(ワンホン)」は自身のファッションブランドを淘宝(タオバオ)で立ち上げたり、微博(Weibo)などの個人SNSを運営することで多くの人にファッションやメイク、着こなしやライフスタイルを提案してきました。
それを真似してSNSに自身のメイクやファッションを上げる人が増え、独特の強さや大胆さのあるメイクがジャンル化し、日本においては、中国らしいメイクでこうした活動をてがける女性をも「チャイボーグ」と呼ぶようになりました。
「チャイボーグメイク」とは?日本と韓国との違い
メイクに注目し、特徴を挙げるとするならば、「チャイボーグメイク」は自然に残した眉(野生眉)、前髪をかきあげた黒いロングヘア、マットな質感で作る肌、しっかりと陰影を出したアイシャドウ、顔の凹凸にメリハリを出すシェーディングとハイライトなどが特徴です。全体的にはっきりした印象、強く媚びない印象を与えます。
日本のメイクでは眉や髪色を比較的明るいトーンで統一し、全体的にふんわりとした印象があります。
女性誌の種類の多さからも分かるように、ナチュラルな「オフィスメイク」にはじまり、まるで湯上りで火照ったような印象を与える「おフェロメイク」、泣き腫らしたような目を強調する「病みメイク」まで、ジャンルが多いのも特徴です。
韓国では平行の眉にツヤ感のある肌づくり、ティントで作るグラデーションリップなど、全体的に透明感があり、シアーな印象です。基礎化粧品や肌の質感、水分量を強調するメイクであると言えます。
これらのメイクは「オルチャンメイク」と呼ばれており、「チャイボーグメイク」とは何が違うの?と比較されることも多いです。
中国のSNSでは日本風のメイクを「日系」と呼び、小書紅(RED)で検索をすると多くの投稿がヒットします。
日本の女性が中国や韓国のメイクを参考にするように、日本のメイクを参考にしている中国人女性も多いということが分かります。
消費者の独自アレンジの存在感と「完美日記(Perfect Diary)」の成功ストーリー
これまで中国ではネット上のインフルエンサー「網紅(ワンホン)」がファッションやコスメを提案し、販売するという一方通行の流れでしたが、現在では消費者たちが独自にアレンジして新しいカルチャー生みだす流れが出現しています。
消費者たちの独自のアレンジには、肌にグリッターを乗せるメイクや、鎖骨に入れるハイライト、目尻にカラーのアイライナーを入れるなどといったものがあります。どれも日常メイクやオフィスメイクとは対極にある大胆なメイクであるのが特徴です。
こうしたトレンドを察知し、中国発コスメブランドのラインナップも遊び心のあるものが多くなっています。
中国広東省に本社があり、2018年に天猫(Tmall)での99セールイベントで世界の名だたるブランドを抑え化粧品カテゴリーで売上1位となった中国コスメブランド「完美日記(Perfect Diary)」のシングルアイシャドウD01番(星屑アイシャドウ)はその代表例の一つです。
さらに、この商品は日本のコスメ好きの注目を集めるのにも成功しています。同商品を紹介するTwitterの投稿には数万を超えるいいねがついており、チャイボーグへの関心の高まりがうかがえます。
「チャイボーグ」が日本で注目されるようになったワケ
中国の若者カルチャーが日本で認知される1つのきっかけとなった理由に、韓国アイドルグループに所属する中国人メンバーの存在が挙げられます。
例えば、韓国のアイドルオーディション番組「PRODUCE 101」(2016年、2017年)は日本のK-POPファンから多くの注目を浴びましたが、2018年には中国でも「PRODUCE 101」と同じコンセプトであるアイドルオーディション番組「偶像練習生(偶像练习生)」が放送されました。
この番組の総合プロデューサーを韓国男性アイドルグループ「EXO」の中国人メンバーであるRAYが務めていました。
「EXO」には当然、日本のK-POPファンも多数おり、これが日本人が中国の番組を視聴するきっかけになりました。
また、韓国女性アイドルグループ「PRISTIN」の元中国人メンバーギョルギョンはダンス監修担当として同番組に参加しています。
国内だけでなく、海外からも注目されるアイドルたちのバックグラウンドの多様化は、カルチャーや流行の越境を引き起こします。
今では中国SNS「小紅書(RED)」や「Weibo」で中国のメイクやファッション情報を取得し、TwitterやInstagramなどSNSで中国カルチャーを発信する日本人も存在します。
そうした情報発信者の存在もあり、「チャイボーグ」という言葉が徐々に日本の一部コミュニティで定着していくようになりました。
日本は「チャイボーグ」文化にどうアプローチすべきか
日本においては、中国コスメやファッションをはじめとした中国の若者カルチャーを指して「チャイボーグ」という言葉が広まりつつあります。
「チャイボーグ」が使用する中国コスメや身に着ける中国製ファッションに日本の若者の注目が集まりますが、日本のコスメブランドやファッションブランドにおいても「チャイボーグ」に見られる「強さ」「大胆さ」といったトレンドを取り入れることで、日本の若者の消費を喚起できる可能性があるでしょう。
また、日本で「チャイボーグ」と呼ばれるような中国の美しい女性たちは、SNSでの発信力もあります。
彼女たちは、中国内のコスメブランドやファッションに限らず、国外のコスメやファッションを貪欲に試したり、中国国内に限らず海外においても写真映えするスポットで写真を撮影するなどして新しいトレンドを作っています。
チャイボーグたちの情報発信:フォトスポットや豆柴カフェなど、日本の情報も
小紅書(RED)やWeChatモーメンツ(LINEのタイムラインに相当)では、日々、チャイボーグたちの発信する、中国国内、そして日本を含む海外のおすすめ商品やフォトスポットが拡散されています。
こうした情報は中国国内で拡散されるだけでなく、「チャイボーグ」に注目する日本の若者の一部にもリーチしており、一種のプロモーションの効果を発揮しています。
「自由が丘のベニス」と呼ばれる東京・自由が丘の「ラ・ヴィータ」や、豆柴(体高の小さい柴犬)と触れ合うことができる「豆柴カフェ」で撮影された投稿も複数確認できます。
トレンドが海を越えて越境しやすくなったインターネット時代、「チャイボーグ」文化に見られるようにSNSでの情報発信は海を越えて思わぬブームを起こすことがあります。
アパレルやコスメなどの実店舗においても積極的に店内での撮影を許可したり、撮影ブースを設けるといった施策はSNSへの投稿を促し、国内外を問わず商機に繋がる可能性があるのではないでしょうか。
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