2021年への延期が決定した東京パラリンピックでは、ボート競技が開催されます。障害の種類や程度により3つのクラスに分けられている、各クラスでボートの乗員数が異なるといった多くの特徴がありますが、あまり知られていないのではないでしょうか。
この記事では、パラリンピックのボート競技の概要とルール、見どころ、競技日程を紹介します。
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パラリンピック・ボート競技の特徴、ルールについて
まずは、ボート競技の概要、パラリンピックの競技ならではの特徴について解説します。
ボートとは何か?
ボートとは、甲板のない小型船の総称です。カヌーとよく似ていますが、カヌーは漕手から見て前方に進むように漕ぐのに対し、ボートは漕手から見て後方に進むように漕ぎます
オリンピックやパラリンピックのボート競技は「ローイング」とも呼ばれ、パラリンピックのボート競技では1名から5名が乗れるサイズのボートを使用します。
ボート競技では、6杯のボートが同時にスタートして、直線コースで競います。前回のリオデジャネイロ大会までは、オリンピックは2,000メートル、パラリンピックは1,000メートルのコースを使用していましたが、東京大会からはいずれも2,000メートルのコースを使用することが決定しています。
パラリンピック・ボート競技の特徴
ボート競技には、1名で漕ぐものと複数名で漕ぐものがあります。オリンピックでは、各種目ごとに男女が分かれて競いますが、パラリンピックでは、性別の他に、障害の種類や程度によってPR1、PR2、PR3の3つのクラスが用意されています。
PR1は、歩行できない選手や車いすの選手が対象です。腕と肩のみでボートを漕ぎます。
PR2は、下肢切断や脳性まひの選手が対象です。胴体と腕を使ってボートを漕ぎます。
PR3は、上下肢障害、視覚障害の選手が対象です。片足と胴体、腕を使ってボートを漕ぎます。
一般的なボートは、シートがスライド式になっていますが、PR1およびPR2で使用されるボートは、シートがスライドしません。スライド式では、力強く漕ぐために脚を伸ばしてオールを引くことが求められますが、下肢に障害のある選手は脚を使って反動をつけられないためです。スライド式でない場合には、脚力を使わずに肩と腕、体幹をうまく使ってオールを漕ぎます。そのため、オリンピックのボート競技とは漕ぐ際のフォームが大きく異なります。
パラリンピック・ボート競技の各クラスについて
先述のとおり、パラリンピックのボート競技では、障害の程度によってPR1、PR2、PR3の3クラスに分かれます。各クラスは種目としても分かれており、PR1では男女別の1人乗りボート、PR2では男女1名ずつの2人乗りボート、PR3では男女2名ずつとコックスと呼ばれる舵手1名の5人乗りボートを使用する種目となっています。
障害の程度はPR1が最も重く、PR2、PR3になるにしたがい、軽くなっていきます。PR1とPR2の最大の違いは体幹の有無です。PR1に出場する選手は、胸から上のみを使って漕ぐため、体幹が使えません。
一方、上半身が自由に動かせるPR2の選手は、いかに体幹をうまく利用するかがポイントとなります。また、PR3のコックスは健常者が務めることも認められています。コックスは舵をとるだけでなく、漕手たちが息を合わせるための掛け声をあげたり、レースの状況に応じた指示を出したりする役目もあります。
パラリンピック・ボート競技の見どころ
各選手が異なる障害を抱えているため、パラリンピックのボート競技では正しいフォームが選手によって異なります。選手たちは自らの障害を理解したうえで、効率よくオールを漕ぐための方法を模索しなければなりません。
また、複数人で漕ぐ種目では、障害の異なる選手同士がチームを組むケースもあります。ここでは、パラリンピックのボート競技の見どころを詳しく紹介します。
個人技や身体能力といった個人の実力勝負
ボート競技では、個人技や身体能力などの実力による部分が大きく、1人乗りボートを使用するPR1ではその傾向が特に顕著です。しかし、勝負を左右するのは力の強さだけではありません。
漕ぐ力だけでなく、その力を無駄なく推進力に変えられるかがポイントです。オールでしっかりと水をとらえて力を伝えることで、ボートの速度が上がります。そのためには正しいフォームで漕ぐ必要がありますが、障害を持つ選手たちにとって難しい動作もあります。たとえば、ボートでは両手でオールを操作しますが、半身障害を持つ選手は、左右均等に力を配分して漕ぐことが難しくなります。
選手たちは、自らの障害の種類や程度に応じて、効率よく漕ぐためのフォームを編み出さなければなりません。シートの高さやオールの取り付け位置などのセッティングは選手によって大きく異なるため、パラリンピックのボート競技における正しいフォームは千差万別です。自らが抱える障害と向き合ったうえで、正しいフォームを追求してさまざまな工夫を重ね、集大成として全力でオールを漕ぐ姿は、パラリンピックならではの見どころです。
身体・視覚障害という異なる組み合わせでのチーム戦
4名の漕手と1名のコックスでチームを組むPR3では、身体障害選手と視覚障害選手がチームを構成するケースもあります。このような場合には、選手同士が積極的に意思疎通を図り、オールを漕ぐタイミングやスピードを合わせる必要があります。
コックスは、選手たちが息を合わせられるよう、号令をかけたり、波や風の状況を把握しながら指示を出したりします。また、漕手の配置なども自由に配置できるため、戦略を組むうえでのカギとなります。チームの状況に合わせた戦略の実行や、互いに異なる障害を抱える選手同士のチームワークは注目すべきポイントです。
パラリンピック・ボート競技の日程・会場
パラリンピックのボート競技は、東京パラリンピックの2021年への延期決定前の時点では、2020年8月28日(金)から30日(日)にかけて行われることになっていました。
会場は東京都江東区の「海の森水上競技場」で、試合は主に午前中に行われる予定でした。
延期決定後は競技日程、競技会場が未定となっているため、訪日ラボでは情報が公開され次第随時更新していきます。
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チームワーク、フォームが見どころのパラリンピック・ボート
「ローイング」と呼ばれるパラリンピックのボート競技では、PR1、PR2、PR3の3クラスに分かれて試合を行います。クラスは障害の種類や程度によって分けられ、それぞれ1人乗りボート、2人乗りボート、コックス付きの5人乗りボートを使用する点が異なります。
PR1では胸から上のみ、PR2では上半身のみ、PR3では片足、胴体、腕を使用して、オールを漕ぎます。各選手が工夫の末に生み出した、障害に適したフォームが特徴の一つです。また、PR3では障害の異なる選手が1つのボートを操ることもあるため、チームワークに注目するとより試合を楽しめます。
自らが抱える障害と向き合い、さまざまな工夫を重ね、集大成として全力でオールを漕ぐ姿は、パラリンピック競技ならではの見どころといえるでしょう。
来年夏に開催を控えた東京パラリンピックを最大限に楽しむため、競技の特徴や魅力について今のうちに抑えておきましょう。
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